現代における貧困の諸相 日本福祉大学 山田壮志郎 1.自己紹介 (1)ホームレス支援活動の経験 (2)「家がないこと」の持つ意味 2.現代における貧困の諸相 (1)ホームレス数の増加 (2)相対的貧困率の上昇 (3)生活保護受給者の増加 (3)その他貧困の拡大を示す指標 3.貧困拡大の背景 (1)1990 年代後半以降の雇用環境の悪化(特に非正規労働者の増加) (2)非正規労働者が増加した政策的背景 (3)ワーキングプアの拡大(労働が貧困を解消しない) (4)ロストジェネレーションと少子化問題 4.貧困問題をどう捉えるか―ホームレス支援の経験から― (1)野宿からアパート生活に移行した後の生活上の諸問題 (2)食事会・交流会の開催による孤立化の防止(アパート生活への移行はホームレス支援 のゴールではなくスタート) (3)ホームレスとは何を「失った」人たちか―仕事と住居と関係性 (4)社会的排除から社会的包摂へ おわりに―貧困問題への日本福祉大学生の取り組み ・貧困の世代的再生産 ・日本福祉大学アンビシャスネットワークによる学習支援事業 子どもの貧困 ~いま大人にできること~ 日本福祉大学 中村強士 はじめに 1.「子どもの貧困」とは何か (1)「子どもの貧困」とは何か 子どもが経済的困難と社会生活に必要なものの欠乏状態におかれ、発達の諸段階にお けるさまざまな機会が奪われた結果、人生全体に影響を与えるほどの多くの不利を負 ってしまうこと(小西祐馬) (2)子どもの貧困を考える視点 (3)「子どもの貧困」という意味 2.明らかにされた「子どもの貧困」 (1)わが国の「子どもの貧困」の特質 ①幼い子どもほど貧困 ②稼働母子家庭の異常な貧困率(“元祖ワーキングプア”としての母子家庭) ③貧困をわざわざつくりだす政策(税制・社会保障制度の逆機能) (2)さまざまな「子どもの貧困」事例 (3)保育所をめぐる「子どもの貧困」事例 3.「子どもの貧困」を歴史的・構造的に理解する (1)「子どもの貧困」はいつから? (2)「子どもの貧困」の構造的理解 4.政府・行政機関に何を期待するのか (1)子ども・家族に関する施策の国際比較 (2)児童相談所の役割と現実 (3)「子ども・子育て新システム」で子どもは幸せか 5.地域子育て支援のために (1)子どもといっしょに生きる地域住民として (2)子どもと同時代に生きる大人として おわりに 児童養護施設からみた子どもの貧困と虐待 日本福祉大学 堀場純矢 1.報道からみた子どもの貧困と虐待 ・虐待を受けた子どもたちの「凍りついた瞳」(『いのち輝くとき』から) ・報道と現実のギャップ(『報道原人』から) ・児童自立支援施設X学園・職員強盗殺人事件からみた子どもの貧困と虐待 ・児童養護施設で出会った子どもたちとの関わりから考える ~幼児 A 男,小学生 B 子,中学生 C 男,D 子の事例~ 2.児童養護施設からみた子どもの貧困 ・東海地方の児童養護施設 6 ヶ所の調査(父母 352 名)からみた子どもの貧困 祖父母の代からの貧困と虐待の再生産を背景として,「低学歴→不安定就労→失業→借金→ 虐待→家庭崩壊→施設入所」というプロセス・・・労働・生活歴を把握することの重要性 ・「ネットカフェ難民」「ホームレス」・・・児童養護施設生活経験者や施設の親も ・保育問題と児童養護問題のボーダレス化 ・なぜ貧困は見えにくいのか?・・・階層的視点の欠落,「生活文化」の貧困の見えにくさ ・大企業の利益を最優先する社会のあり方 教育・社会福祉予算の低さ,OECD 加盟国中,最も不公平な税制,成果主義のもとでの過労 死・過労自殺・精神障害の多発,「ブラック会社」「名ばかり管理職」「周辺的正社員」の増加 ・国連子どもの権利委員会による日本政府への勧告(2010)・・・財界,発達障害の捉え方 ・貧困問題に有効な施策・・・現物支給(学費無償化,アウトリーチ型の家事・育児支援など) 3.貧困・虐待問題を抱えた子どもと家族への支援 (1)児童養護施設 11 ヶ所・母子生活支援施設 10 ヶ所の調査から~ ・「モンスターペアレント」論の問題点と「共同子育て」の重要性 高度成長期(映画「となりのトトロ」「ALWAYS 三丁目の夕日」)と現代の子育て環境の違い ・母子生活支援施設でくらす子どもの「ごっこ遊び」からみた親子の「生活文化」の貧困さ ・「溜め」(湯浅 2007)とは何か? ・・・ 貧困・虐待問題を抱えた親子に関わる際に重要な視点 (映画「グッド・ウィルハンティング」も参考に) (2)児童養護施設生活経験者からみた子どもの貧困~8 名の聞き取り調査から~ ・親の貧困が子どもにどのように現れ,彼らの人生にどのような影響を与えるているか? 例:学校で自分や家族のことを話せない精神的ストレス,暴力的な人間関係,食生活の貧し さ,誕生日を祝ってもらったことがない,旅行や映画,流行の服を買えないなどの社会経験 の少なさ,施設にいたことによる負い目・引け目。 →そのことが子どもの進路選択の幅を狭め,狭い人間関係のなかで結びつき,貧困問題 が再生産されている。この悪循環をどう断ち切るかが課題。
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