Chapter7

第7章 環境試料の分析
環境試料分析の流れ
調査の目的、試料採取計画
試料の質のバラツキに応じて採取数と量を
決める
要求される分析精度や試料の特性などに
応じて分析法を決める
試料採取、現場測定
フィールドワークに必要な物品の準備
分析するまで試料を変質させない
試料の前処理・保存
試料分析
分析のターゲットの妨げになるものを分離
試料の採取方法や前処理、保存方法が適切
でなければ、室内分析の精度をいくら上げて
もデータの精度(質)には限界があり、正しい
環境評価ができない
分析値評価
1
研究対象の数や量をいかに正確に測定するか
分析値の信頼性
• 正確さ、真度(accuracy)
• 精密さ、精度、再現性(precision)
信頼限界
Confidence Limit
x : 平均値
N : 測定回数
s : 標準偏差 (=
∑ (x i − x )
N −1
s
平均標準偏差s =
N
測定を繰り返して得られる測
定値から真の値が存在する範
囲を一定の確率で決めること
ができる
2
)
s
x
相対標準偏差(変動係 数)= ×100
ts
信頼限界 = x ±
N
t :自由度N − 1におけるtの値
95%の確率で真の値が存在す
ると決めた場合、その範囲を
95%信頼区間といい、両側の
境界値を信頼限界という
(表から読む)
2
検出限界
Detection Limit
統計的に目的物質が有ると判断し
てもいい最小値・・・・・・判定限界
無いものを有るという誤り
有るものを無いという誤り
βが5%となるような平均値・・・・・・(95%)検出限界
野外と実験室における環境試料の分析項目例
対象
水
土壌
廃棄物
大気
微生物
野外
実験室
pH,酸化還元電位、電
気伝導度、水温、流速
の測定、
試料採取、前処理
試料採取、保存
主要イオン、
金属イオン、
有機物の定性と定量
試料採取、保存
有害成分の定性と定量
浮遊状粒子の粒度分布測
定
単離、計数、種の同定、活
性測定
試料採取、保存
重金属、有機物含有量、
鉱物の定性と定量
3
環境試料分析法の例
ニーズ
分離法
環境水の中の水質
(主要イオン濃度、
pH)を把握したい
(不要)
土壌中の重金属の 湿式法
種類と含有率を知り
たい
非破壊法
定量法
イオンクロマトグラフィー
pHメーター
誘導結合プラズマ発光
分析、誘導結合プラズ
マ質量分析、原子吸光
分析
蛍光X線分析
土壌を完全分解
後、溶解している
重金属イオン
土壌中の重金属の 連続抽出法 誘導結合プラズマ発光
固定形態を知りたい
分析、誘導結合プラズ
マ質量分析、原子吸光
分析 X線光電子分光法
非破壊法
環境中に生息する
平板培養法
生菌の数を知りたい ハイブリッド
対象
Na+, K+, Ca2+, Mg2+,
NH4+, Cl-, SO42-,
HCO3-, NO3-,
pH
土壌
土壌からの抽出
液液中に溶出す
る重金属イオン
土壌
直接カウント
コロニー
直接カウント、画像解析 核酸
pH(水素イオン濃度)
最も基礎的な水質特性
pH = − log10 [H + ]
E = E 0 − pH[RT/F ]
(E 0 - E)F
pH =
RT
ガラス電極と試料溶液の間の
起電力によって測る
4
pH測定の原理
2本型
1本型
ガラス電極
参照電極
Ag / AgCl / 0.1MHCl / glass / solution / 3.33MKCl / AgCl / Ag
イオンクロマトグラフィー
Ion Chromatography (IC)
• 主要イオン
– 陰イオン(Cl-, SO42-, HCO3-, NO3-, NO2-, F-)
– 陽イオン(Na+, K+, Ca2+, Mg2+, NH4+)
• 遷移金属
• 有機物
分離目的に応じたカラムと分離条件を用いる
特徴:主要イオンが一度に測定される
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陰イオンクロマトグラムの例
信号強度
試料液を移動相に導入し、イオン
サイズと価数に応じて分離カラム
内で分離する
(サイズが小さく、価数が小さいも
のほど早く溶出する)
信号の検出には電気伝導度、
紫外線吸収などが用いられる
保持時間
ピーク面積が濃度に換算される
有効数字
分析結果を得る一連の操作の中で、最も低い精度の測定操作に
よって全体の精度が支配される
演算の原則
1)足し算、引き算:有効数字は小数点の位置によって左右される
答えの有効数字の桁は最も不確かさを含む数字の末端の桁まで
2)掛け算、割り算:答えの不確かさは有効数字の最も桁数の少な
いもの(キーナンバー)によって支配される
0.302 × 10.1 ÷4.0 = 0.76255
キーナンバーの有効数字は2桁なので、0.76
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3)対数:計算する数と対数の真数は同じ桁数の有効数字をもつ。
仮数から真数に変換する場合も同様である。その際仮数部分は0
を含む小数点以下すべての数字が有効になる
有効数字は3桁なので0.086
(小数点以下の0も有効数字に入る)
log1.22=0.08635
4)四捨五入:有効数字の最後の桁よりひとつ下の桁の数字が5
より大きいと切り上げ、小さいと切り捨てる。ただし、四捨五入する
数字が5の場合、直前の数字が奇数では切り上げ、偶数では切り
捨てる。
0.2235を有効数字3桁にすると、 0.224
0.2225を有効数字3桁にすると、 0.222
原子吸光法
Atomic Absorption Spectrometry (AAS)
バーナーヘッド
光源
光源増幅部
信号出力
試料
溶液試料に溶けている陽イオンの定量分析
原子に固有の吸収スペクトル強度を測定
特徴:共存元素の干渉を受けにくい
検出限界が低い(感度が高い、低濃度までより正確に定量できる)
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AASの検出限界
誘導結合プラズマ発光分析法
Induced Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometry (ICP-AES)
溶液試料に溶けている陽イオンの定量分析
原子に固有の発光スペクトル強度を測定
プラズマ発光分析は発光分析の“ルネッサンス”
長所
5桁以上のダイナミックレンジ
多元素同時分析が可能
短所
有機物濃度が高い試料は有機物分解の処理が必要
微粒子は徹底的に除去
アルカリ金属の感度がわるい
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分光器
励起源
検出器
光増幅部
データ記録部
ガス供給部
試料導入部
トーチ管の縦割り図
プラズマ内の温度分布
磁場
高周波誘導コイル
アルゴンのイオン化温度
アルゴンの励起温度
目的イオンのイオン化温度
石英管
試料エアロゾル
Ar+を発生させ、電子密度の大き
いドーナツ状のプラズマを得る
導入された化学種を励起させ、原
子に固有の波長で発光させる
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Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometry
(ICP-AES)
Plasma torch and ICP
Nebulizer
Droplet
Plasma
Mixing
chamber
RF coil
Magnetic
field
Argon plasma
Argon
Drain
Sample
Atomizer
Cooling gas
Argon
Sample
ICP-AESの検出限界
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