第17回 森山グループ研修学会 プログラム・抄録集 日 時 : 平成27年2月14日(土) 会 場 : 旭川グランドホテル 会 場 : 3階 瑞雲東西の間 会 場 : 旭川市6条通9丁目 ℡24-2111(代) 顧 問 会 長 副会長 副会長 : : : : 森山 中島 松下 池田 主 担 : : 医療法人社団 元生会 社会福祉法人 敬生会 元生会企画広報学術委員会 催 当 領 進 元夫 定博 14:20~18:15 波岸 齊藤 裕光 哲也 研修学会プログラム 司会進行 元生会企画広報学術委員会 委員長 石川 清隆 開会の挨拶 14:20 研修学会顧問 医療法人社団 元生会・社会福祉法人 敬生会 理事長 森山 領 研修学会会長 医療法人元生会 森山メモリアル病院 院 長 中島 進 森山グループ特別研修 14:30~14:50 『 リハビリテーション医学の進展 』 森山メモリアル病院 副院長 休 憩 一般演題Ⅰ(1~6) 森泉 茂宏 先生 (14:50~15:05) 15:05~15:55 座長:森山メモリアル病院 リハビリテーション部部長……石 川 菜穂子 障害者支援施設敬愛園 生活支援主任…………………川 越 めぐみ 演題1.患者様に適した食事形態を目指して ………………… 森山病院 リハビリテーション部 ○ 若井 未来 前田 陽香 阿部 真伸 演題2.通所リハビリテーションにおけるSTの役割確立に向けて ~アンケート調査から考えるSTの現状と課題~ ………………… 森山メモリアル病院 リハビリテーション部 ○ 冨加見 美香 森山メモリアル病院 通所リハビリテーション事業所 岩瀧 廣大 演題3.当院リハビリテーション部における更衣評価の取り組み ………………… 森山メモリアル病院 リハビリテーション部 ○ 青栁 毅 演題4.看護師と理学療法士の連携により服薬管理が成功した症例 ~ハンチントン舞踏病による認知症状へのアプローチを試みて~ ………………… 森山メモリアル訪問看護ステーション ○ 田村 佳子 大西 愛深 演題5.環境制御装置の製作とその利用事例 ~ECSの活用増加を目指して~ ………………… 障害者支援施設 敬愛園 ○ 佐藤 穣 塚田 鉄平 本田 雅子 演題6.一人で歩く。みんなで歩く。 ~骨折後のADL低下から改善に向けたチームケア~ ………………… 養護老人ホーム 敬心園 ○ 伊藤 かおり 休 憩 一般演題Ⅱ(7~12) (15:55~16:05) 16:05~16:55 座長:森山メモリアル病院 看護部副部長……………………遠 藤 美紀子 森山病院 副院長…………………………………………髙 野 勝 信 演題7.よりよい病院環境を目指して ~サービス向上委員会の取り組み~ ………………… 森山メモリアル病院 サービス向上委員会 ○ 竹間 大剛 福士 彩加 堂田 泰平 大塚 和加子 松平 未来 澤向 尋子 斉藤 恵 高松 美也子 三上 幸子 演題8.急性期病棟に入院した患者のせん妄発症要因の検討 演題8.~日本語版ニーチャム混乱・錯乱スケールを用いて~ ………………… 森山病院 看護部 4階ナースステーション ○ 野裕 佳 千葉 麻理 中島 有志 演題9.安全で快適(安楽)な体位を目指すポジショニングの検討 ~従来の体位変換と小枕を利用した体位変換・スモールチェンジ法の比較から~ ………………… 森山メモリアル病院 看護部 2階ナースステーション ○ 竹下 忍 高田 妙子 森山メモリアル病院 リハビリテーション部 中村 賢 演題 10.各種統計の比較について ………………… 森山メモリアル病院 事務部 ○ 斉藤 恵 小倉 有加 演題 11.Neuro 3D Filter &IQ enhanceの有用性 演題 10.~BergBalanceScale と病棟内移動レベルの相関性について~ ………………… 森山病院 放射線部 ○ 村田 英輝 大坪 慎吾 演題 12.術後せん妄とその対策 ………………… 森山病院 麻酔科 ○ 三田村 小百合 加藤 涼大 休 憩 特別講演 17:10~18:10 『 Dr.らく朝の一笑健康 (16:55~17:10) 座長: 医療法人社団 元生会 社会福祉法人 敬生会 理事長 森山 領 ~笑って健康、笑って長生き~ 』 立川 らく朝 先生 あ落語家・医師 閉会の挨拶 18:10~18:15 研修学会副会長 敬生会常務理事・敬愛園 園長 波岸 裕光 森山グループ特別研修 リハビリテーション医学の進展 森山メモリアル病院 副院長 ○ 森泉 茂宏 現代医学において、リハビリテーション医学の役割は台頭してきており、その専 門性も高まってきている。地域では、健康寿命を延ばしていき、自立した生活をで きるだけ長く送れるようなサポート体制作りも考えられている時代となってきて おり、リハビリテーション医学の充実は、わが国の高齢者の医療と介護において最 重要の課題と言われている。 リハビリテーション医学(以下リハビリ)は、 「能力障害や社会的不利の状態の 影響を減らすことと、能力障害や社会的不利をこうむっている人達の、社会的統合 を実現することを目的とするあらゆる手段を含む。また、能力障害や社会的不利を 持った人達を、環境に適合するように訓練するばかりではなく、障害を持った人達 の社会的統合を促すために、身近な環境や社会において間をとりもつことをも含ん でいる」と定義されている。つまり、リハビリは医療のみならず保健や社会福祉の 領域も含んでおり、多義の分野に渡っている。 しかし、未だに我が国では病院等の施設で行われる機能訓練(つまり医学的リハ ビリテーション)が、 “リハビリ”と思われていることも少なくない。これは、日 本でのリハビリ医学の歴史や社会制度が要因と考えられるが、高齢化社会の到来で 本来のリハビリ医学の理念や活動が求められているのが現実である。さらにリハビ リ医学で重要なチーム医療も、ただ施設内医療スタッフ間の構成だけではなく、多 施設間での連携やチーム構成も必要とされてきている。そうした背景でリハビリ医 療も病期に合わせた分類となってきており、急性期、回復期、維持期(地域)リハ ビリと呼ばれて各々の役割も明確化され、病期のみならず疾患別の分類も提唱され てその治療内容や効果が認められている。今後“リハビリ”は、現行の脳血管疾患 や運動器疾患に対するリハビリに加え、がんのリハビリ、認知症のリハビリ、地域 リハビリなどのさらに細分化と専門性が進んで行くことと思われる。 演題1 患者様に適した食事形態を目指して 森山病院 リハビリテーション部 ○ 若井 未来 前田 陽香 阿部 真伸 【はじめに】 現在、森山病院には 3 名の言語聴覚士(以下 ST)が在籍しており、患者様 の嚥下機能の評価に関わる機会がある。患者様の状態が日々変化していく中で、 状態に合わせて適切な食事形態を選定できているのかという疑問を持った。そ こで、介入時と退院時の食事形態と、その形態に至った理由を後方視的に調査 した。今後の課題も含め報告する。 【調査方法】 1.対象:平成 26 年 4 月 1 日~9 月 30 日までに ST が介入を開始し、9 月 30 日までに退院された患者様 132 名中、死亡退院・全身状態悪化 により転院された方を除く 117 名 2.方法:過去の記録から介入時と退院時の食事形態、その形態に至った理 由を調査 【結果】 ・食事形態の変更が無かった方 ・食事形態の変更があった方 98 名 19 名(向上:12 名、低下:7 名) 向上:楽しみレベル(ゼリー・嚥下訓練食)からの向上 8 名、 ミキサー食・きざみ食からの向上 4 名 低下:楽しみレベル(ゼリー・嚥下訓練食)から経口摂取なしに低下 5 名、 ミキサー食・きざみ食から経口摂取なしに低下 2 名 ・食事形態の変化に至った理由 嚥下機能の変化、覚醒レベルの変化、全身状態の変化、認知機能の変化、 姿勢や介助方法の確立、誤嚥のリスクへの配慮、栄養確保困難 【考察】 ・食事形態を変更した方は、全身状態の変化や誤嚥のリスクに配慮した上で は適切な選定が出来たが、栄養の側面で見ると必ずしも適切ではない方が いた。 ・食事形態を変更しなかった方は、差し迫って介入する必要がなく、現状が 適切と判断していたが、再考すると ST の介入によって変化した可能性が ある。しかし、現状が適切であったか不適切であったかは不明であり、変 更の必要性の有無も判断出来なかった。 ・今後、より適切な食事形態への検討を行えるよう、患者様のもとへ足を運 ぶ機会を増やし、他部門との情報共有も深めていきたい。 演題2 通所リハビリテーションにおける ST の役割確立に向けて ~アンケート調査から考える ST の現状と課題~ 森山メモリアル病院 リハビリテーション部 ○ 冨加見 美香 森山メモリアル病院 通所リハビリテーション事業所 岩瀧 廣大 【目的】 近年、誤嚥性肺炎を含む肺炎が、高齢者の死亡原因第 3 位となっており、原因と して加齢による口腔機能低下があげられる。口腔機能低下はコミュニケーションに も影響を及ぼすこともあるが、訓練によって予防する事が可能である。当事業所で は ST の個別リハビリ実施者は PT・OT に比べ少ない。そこで、利用者・家族の 口腔機能に関するニーズと ST の認知度について調査を行った。ST の個別リハビ リ実施者が少ない原因を追究し、専門性をどのように活かすかを考察したので、こ こに報告する。 【方法】 1.期間:平成 25 年 2 月 3 日~2 月 15 日 2.対象:当事業所利用者・家族 85 件 (施設入所者・意思疎通困難な利用者を除く) 3.内容:無記名 yes/no 型質問用紙にて、利用者と家族それぞれに 1)~4)を調 査した。1)食事に関し気になる点がある、2)会話に関し気になる点が ある、3)口腔機能に関し主な相談者がいる、4)ST を知っている。 【結果】 記載ミスのない有効回答数は 61 件。 「はい」と答えた利用者は、1)25 名、2)32 名、3)50 名、4)37 名。 「はい」と答えた家族は、1)33 名、2)44 名、3)37 名、4)50 名。約半数が口腔機能に関し気になる点があると感じており、3)の相談相手として は家族が最も多く、そのうち ST と答えたのは利用者 5 名であった。ST の認知度 は利用者の方が低かった。 【考察】 当事業所は、旭川市において ST が在籍する通所リハビリテーションの数少ない 一つだが、ST の個別リハビリ実施者は少ないのが現状である。その理由として、 口腔機能に関しニーズがあるにも関わらず、ST の認知度が低いことが考えられる。 ST の認知度向上の為には、ST の専門性や口腔機能に関した情報を、利用者・家 族・他職種に伝えていく事が重要である。口腔機能向上は、栄養状態を改善し誤嚥 性肺炎を予防するだけでなく、認知機能や ADL 低下の予防にも効果を及ぼすとさ れている。今後、ST の認知度向上を目標に活動を行っていく事で、口腔機能に対 する関心を高め機能低下防止に繋げていく事が課題である。 演題3 当院リハビリテーション部における更衣評価の取り組み 森山メモリアル病院 リハビリテーション部 ○ 青栁 毅 小川 隆平 森山メモリアル病院 看護部 河野 つぐみ <はじめに> 回復期リハビリテーション病棟協議会のケア 10 項目宣言で「日中は普段着で過 ごし、更衣は朝夕実施しよう」という項目がある。退院先で多くの患者様が普段着 で過ごすため、当院リハビリテーション部では、独自の更衣評価表を用いて詳細な 更衣動作の評価を行っている。今回、更衣評価表を用いて困難な動作を明らかにし、 動作指導を実施した一症例について報告する。 <更衣評価表とは> 更衣の一連の流れを大項目「起き上がり」 「衣服の準備」 「上衣着替え」 「下衣着 替え」に分類した評価表である。大項目に対して細項目を設定し、それぞれに対し て、介助レベルを「自立」 「修正自立」 「監視」 「軽介助」 「中等度介助」 「最大介助」 「全介助」として、7~1 点で採点していく。 <事例紹介> A 氏は 79 歳の女性で、X 年 8 月に転倒し受傷。右大腿骨頸部骨折の診断受け人 工骨頭置換術施行。その後当院に転院。体幹と右下肢に筋力低下あり、右股関節に は可動域制限と疼痛残存。認知機能は、状況判断能力や記憶力が低下。ADL は、 セルフケアは自力で可能だが、移動を伴う動作には介助が必要。 <A 氏更衣評価> 更衣評価表では、 「下衣の着替え」の右下肢の着脱が 4 点で一部介助が必要な状 態である。さらに、脱臼肢位である股関節屈曲・内転・内旋位をとらないことを遵 守することが難しく、動作指導することが必要と考えられた。 <結果> 動作指導を反復して行うことで、脱臼肢位をとらずに更衣は自力で可能となり、 右下肢の着脱が 5 点となったが、日常生活への般化は困難であった。 <まとめ> 日常生活に般化させるためには、更衣評価表を元に動作レベルや注意点などを、 病棟スタッフと共有し、日常生活の更衣場面で A 氏に関わる全スタッフで指導し ていくことが必要であると考える。 演題4 看護師と理学療法士の連携により服薬管理が成功した症例 ~ハンチントン舞踏病による認知症状へのアプローチを試みて~ 森山メモリアル訪問看護ステーション ○ 田村 佳子 大西 愛深 塚田 鉄平 本田 雅子 【はじめに】 近年、在宅ケアを取り巻く環境は大きく変化し、地域包括ケア推進の中で、訪問 看護ステーションへの需要と期待はますます高まっており、訪問看護ステーション にリハスタッフを配置し、在宅療養者の生活を支え QOL を高めるために、相互の 専門性を理解し協働しておこなうチームケアの重要性が求められている。今回、ハ ンチントン舞踏病による運動失調、注意障害に伴う認知機能の低下により正しく服 薬できないという症例に対して、看護師と理学療法士が連携してアプローチするこ とで、服薬管理が成功したケースを紹介する。 【症例紹介】 対象:67 歳 女性 ハンチントン舞踏病~運動失調、難聴あり、認知症疑い、 評価により注意障害(持続・分配)。家族構成:夫(脳梗塞の既往あり)と二人 暮らし。 服薬管理:3 病院から処方あり、薬の紛失や飲み忘れ、服用の際の飲み落としな ど服薬管理ができず効用が薄れている状態がみられた。 【方法・介入】 薬カレンダー(曜日・服用時を記載)を導入したが、飲み忘れや服薬重複等の可能 性があり、残薬を当事業所で管理し看護師・理学療法士で再度服薬管理方法を検討。 注意障害・理解面に配慮し、服薬に対する理解や記憶への働き掛け行いながら、誤 薬を減少させるための工夫と協働による関わりを行った。 【結果】 薬の飲み忘れや飲み落としが減少した。本人から『ちゃんと薬飲めている』家族 からも『薬が自分で飲めるようになった』との声が聴かれた。 【考察】 今回のケースにおいて、看護師と理学療法士が協働して認知面を評価し、本人が 自立している面や援助が必要な面を明らかにして環境調整を行ったことで服薬管 理を行えた。今後も、在宅生活の中でお互いの専門性を生かして協働しておこなう チームケアの重要性を再認識するものと考える。 演題5 環境制御装置の製作とその利用事例 ~ECS の活用増加を目指して~ 障害者支援施設 敬愛園 ○ 佐藤 穣 【はじめに】 環境制御装置(ECS: Environmental Control System)とは身体障害者が残存 能力を活用して電化製品等の制御を自力で行うための福祉機器のひとつである。適 合が良ければ生活の質を高めることが可能である一方、価格面や給付制度には問題 があり、導入時の調整作業やその後のアフターケアなど、関係者の負担が増大する こともあるとされる。今回、限定的な機能ながら安価な ECS を現場で製作し、施 設利用者に使用を試み、利用者の満足感、適合性、介助量の変化、新たに生じた問 題点等について検証する機会を得た。 【研究方法】 簡易的な ECS(入力:タッチセンサー 出力:赤外線 LED によるリモコン操作) を試作し、施設利用者に使用させる。その後利用者や他職種の要望等を踏まえ、改 良を加えていく。結果、生活の質に対する影響を検証する。 【結果】 まず、安価な ECS を製作した。 (部品代 1500 円程度)構成はマイクロコントロ ーラーにタッチセンサーと赤外線 LED、表示機能に小型液晶パネルのみのシンプ ルなもので、機能としてはタッチセンサーに接触するとテレビ等のリモコン操作が できる仕組みである。今年 9 月頃より当施設利用者1名(CP 痙直型成人男性、四 肢体幹機能全廃、コミュニケーション可)に使用を開始した。 (使用前の当人のリ モコン操作は、口に棒を咥えてボタンを押す方法であった。 )使用方法の理解につ いて問題は無かったが、静電気の発生によるタッチセンサーの誤動作があった。本 体の改良を加えることで要望や問題点に対応した結果、操作性の改善に一定の効果 が見られている。 【結論】 製作には一定のスキル(電子工作やプログラミング)が必要であるが、価格面等、 導入にハードルのある ECS を自作することにより、低コストで操作能力の評価、 体験が可能であることが分かった。限定的であるが、リモコン操作が自立できるこ とにより、生活の質に対しても一定の改善があると考えられる。また、リハビリテ ーション職であるという利用者との距離が近い立場であったことも、導入が円滑で あった要因と考える。今後は継続的に活用事例を増やし、生活支援の一助としたい。 演題6 一人で歩く。みんなで歩く。 ~骨折後の ADL 低下から改善に向けたチームケア~ 養護老人ホーム 敬心園 ○ 伊藤 かおり 【はじめに】 当園では平成 18 年より外部サービス利用型特定施設の指定を受け、市町村の措 置を受けながら介護保険を利用できる施設となった。内部にある訪問介護事業所の ほか、昨年からは福祉用具の貸与、通所介護や訪問リハビリを利用する方が増えて いる。 今回、ADL の著しい低下と精神疾患により全介助状態となった利用者の事例を 通し、外部サービスを利用することの意味を考察する。 【事例】 統合失調症の既往をもつ利用者が、両膝痛から始まった長期的な体調不良により、 食事摂取以外 ADL ほぼ全介助となり、強度の依存、被害妄想など精神的に不安定 な状態から、 「もう歩けない。 」 「歩けるようになりたい。 」と日々変化する利用者の 気持ちに寄り添いながら、支援途上にある事例を報告する。 【目的】 これまで施設の中で提供してきたサービスに加え、外部サービスを利用すること で、利用者の生活の質や老後に立ち向かうモチベーションの維持を期待する。また、 専門職の協力を得ることで、施設の中だけでは対応できない困難事例を解決する。 【結果】 排他的な言動の多かった利用者が、徐々にリハビリや社会参加の機会を求めるよ うになり、現状でも、意欲と悲観が交錯する日々の中、通所介護と福祉用具のレン タル、施設内での運動を継続しながら屋内移動は自立できるまでになっている。 【考察】 施設の中だけで、対応、解決できなかった事例において、外部サービスの利用は、 利用者、職員共に良い刺激となる。今後も専門的な知識と技術を提供いただける各 事業所のご協力を得ながら、利用者の生活を支援したいと考える。 演題7 よりよい病院環境を目指して ~サービス向上委員会の取り組み~ 森山メモリアル病院 サービス向上委員会 ○ 竹間 大剛 福士 彩加 堂田 泰平 大塚 和加子 松平 未来 澤向 尋子 斉藤 恵 高松 美也子 三上 幸子 【はじめに】 サービス向上委員会は、平成 22 年から医療看護介護の質を向上させるため活動 を始めた。毎年患者・職員に対し満足度調査を行っているため結果を報告する。 【調査方法】 調査期間:患者→毎年 8 月の 1 ヶ月間。職員→毎年 8 月の 2 週間。 調査対象:患者→入院患者またはご家族。外来通院患者。通所リハビリテーシ ョン事業所利用者。職員→森山メモリアル病院全スタッフ。 調査方法:質問法で無記名回答のアンケートを配布。 調査内容:12 項目。質問に対して「満足 普通 不満足」の 3 項目の回答で○ 印方式とした。 集 計:患者に対しては改修箱を設置(各病棟・通所リハビリテーション・ 会計カウンター) 。職員は各部署の委員会メンバーが回収、後日集 計。 【結果】 平成 25 年度→患者と職員で共通して満足度が低いものとして歩く足音があげら れ、患者で低いものとして職員のネームの位置と患者への説明の項目だった。職員 で低いものとして身だしなみがあげられた。 平成 26 度→患者と職員で共通して満足度が低いものとして歩く足音があげられ、 患者で低いものとして職員のネームの位置の項目だった。職員で低いものとして身 だしなみ、相談に対して親切な対応ができているかという項目があげられた。 【まとめ】 以上の結果により以下の取り組みを行った。 平成 25 年度→接遇マニュアルの作成・各部署に配布.定期的な接遇研修会を開催 した。ネームの字を大きくすることにより見やすいものに改善。 平成 26 年度→研修会を 3 回に増やした。 また、患者に調査結果を提示することによりスタッフの意識を高めるため、調査結 果をロビーに設置し、ホームページにも掲載した。 今後も定期的な研修を開催していき、スタッフの接遇に対する意識を高め、患者 にとってよりよい環境作っていきたいと考える。 演題8 急性期病棟に入院した患者のせん妄発症要因の検討 ~日本語版ニーチャム混乱・錯乱スケールを用いて~ 森山病院 看護部 4階ナースステーション ○ 今野 裕佳 千葉 麻理 中島 有志 【はじめに】 4階病棟(以下当病棟という)では突然の受傷で緊急入院になる患者が多く、準 備性のない危機的状況下での手術や環境変化、不安により、せん妄のリスクがある と考えられた。せん妄は有効な治療の妨げとなり、二次的な障害を及ぼし、回復を 遅延すると言われている。今回、せん妄発症の危険を予測するのに有用とされてい る日本語版ニーチャム混乱・錯乱スケール(以下ニ-チャムスケールという)を用 いてせん妄発症要因を明らかにしたので報告する。 【研究目的】 ニーチャムスケールを用いて当病棟でのせん妄発症要因を明確にする。 【研究方法】 1.研究デザイン:量的記述研究 2.研究対象:65 歳以上の高齢者で手術をする患者 3.研究期間:平成 26 年 8 月~10 月 4.収集方法: 1)入院時、手術後 1~7 日までの状態を、ニーチャムスケールを用いて点数化 し、せん妄発症の有無を判断した。 2)入院時にニーチャムスケールの点数が、24 点以下でせん妄ありと判断し、手 術後の点数が入院時より下がっていた場合に、ありと判断した。 3)せん妄発症の要因を明らかにするため、先行研究を参考にし、準備因子、直 接因子、誘発因子を具体的にした。 5.倫理的配慮:研究の目的、プライバシーの尊重、研究以外でデータは用いな い事を説明し書面にて同意を得た。 【結果】 研究対象者 24 名中、せん妄発症群は 10 名、42%であった。男性が 2 名、女性 が 8 名、平均年齢が 79.9 歳。非せん妄発生群は 14 名、男性が 3 名、女性が 11 名、平均年齢が 82.6 歳であった。 せん妄発症あり群と非せん妄発症群の要因による有意差を認めたものは、年齢、 認知症の有無、緊急入院の有無であった。 【考察】 せん妄発症群は全体の 42%と高い割合であった。せん妄発症の要因として、急 な受傷、入院による環境の急激な変化によりストレスが生じること。また高齢や認 知症により、手術や麻酔、年齢に伴う情報処理機能の低下によって状況認知が困難 になりやすく、術後疼痛の出現や環境の変化に伴い精神的ストレスが高まることが 考えられた。今回、ニーチャムスケールを使用することにより客観的に評価するこ とで、せん妄の発症の有無を把握できより良い看護提供に繋がるのではないかと考 える。 【結論】 1.当病棟におけるせん妄発症の要因は、年齢、認知症の有無、緊急入院の有無 の 3 つであった。 演題9 安全で快適(安楽)な体位を目指すポジショニングの検討 ~従来の体位変換と小枕を利用した体位変換・スモールチェンジ法の比較から~ 森山メモリアル病院 看護部 2階ナースステーション ○ 竹下 忍 高田 妙子 森山メモリアル病院 リハビリテーション部 中村 賢 【はじめに】 当病棟は脳血管障害、骨折後の廃用症状を抱えた患者様が全体の 6 割以上を占めて いる療養型の病棟である。現在、実施している体位変換は左右交互に大きな動きを与 えての動的体位変換である。大きな動きを与えず、拘縮等に配慮した、静かな過程で の安楽な体位変換が出来ないか研究に取り組んだ。 従来の体位変換法と小枕を利用した体位変換「スモールチェンジ法」を比較考量し た結果を報告する。 【研究方法】 1.期間 平成 26 年 4 月 1 日 ~ 10 月 30 日 2.対象 自力体動困難で 24 時間、体位変換を必要とする患者 20 名 (日常生活自立度・寝たきり度 ランクC-2 / バルン留置者含む) 3.方法 ① 対象者全員に体圧分散寝具、オムニマット・トリオレを使用。 ② 従来の左右側臥位体位変換法とスモールチェンジ法の褥瘡好発部位 の体圧測定と発赤の有無。 ③ 体圧測定器はモルテン社の簡易式体圧測定器を使用。 【結果】 双方の体位変換法で少数の患者に発赤を有したが、持続する発赤は認めなかった。 麻痺の程度や体重による影響は少なく、麻痺が強い肥満体型であっても体表面積が大 きいと体圧は分散され低値となり、麻痺は軽度で低体重体型であっても筋緊張が強い と圧は分散されず特定の部位への負担がかかる為、体圧は高値となる事が判明。また、 筋緊張が強い人ほど褥瘡の既往がある事も分かった。 【結論】 ① 大きな動きを与えての体位変換は筋緊張を増幅させ体圧高値を招く。 ② スモールチェンジ法は身体要因リスクをアセスメントし、自然な体軸の流れを を整える事で全身の筋緊張を和らげ、静かな過程での体位変換が可能である。 ③ スモールチェンジ法においても体圧が分散され褥瘡予防が可能である。 演題10 各種統計の比較について 森山メモリアル病院 事務部 ○ 斉藤 恵 小倉 有加 【はじめに】 事務部では様々な統計をとり、各種調査や経営指針の為の資料、各部署への参考 資料として発信していることは以前報告させて頂いたとおりである。 今回は以前の統計内容を比較検討したものを報告する。 【比較した統計内容】 1.ベッド稼働率と収入 2.医療区分点数表 3.医療区分分布表 4.査定・返戻理由 5.入院・退院経路 6.待ち時間調査 【まとめ】 傾向としては前回(4年前)と大きく変わらないことがわかった。しかし、新た に取り組み、実践したものはその成果が数字となって現れることが比較することに より明確となった。ただ、この結果を十分に発信できていないことが問題点として 上げられる。各部署と共有することでより良い病院づくりに役立てられると考えら れるので、統計をとって満足するだけでなく、積極的に結果を発信し、今後の病院 経営の向上、より良いサービス提供のためのツールとなるよう、努めていく。 演題11 Neuro 3D Filter &IQ enhance の有用性 森山病院 放射線部 ○ 村田 英輝 大坪 慎吾 加藤 涼大 【目的】 CT装置の進歩により広範囲を短時間で撮影出来るようになってきたが息止め が困難な患者や体動のある患者に撮影時間短縮の為に高速ヘリカルピッチを使用 する事が多い。しかし高速ヘリカルピッチを使用すると風車型アーチファクトやノ イズが増加する。そこでCT装置のバージョンアップにより新たに実装されたノイ ズ除去フィルター(Neuro 3D Filter,以下 N3DF) 、風車型アーチファクト低減機 能(IQ enhance,以下 IQE)を使用し画質の改善が見られるか検討したので報告す る。 【方法】 1.CT用ファントムを管電流固定・ヘリカルピッチ変更とヘリカルピッチ固 定・管電流変更で撮影したものの標準偏差(以下 SD 値)を計測し、N3DF をそれぞれに LOW、MID、HIGH とかけて SD 値の変化を調べた。 2.臨床画像に N3DF 、IQE を使用し画質が改善されるか SD 値、視覚評価、 サブトラクションで比較検証した。 【結果】 ・N3DF を使用することで分解能を維持したまま SD 値、視覚的にも改善が見ら れた。 ・IQE を使用することで高速ヘリカルピッチ、thin slice での風車型アーチフ ァ クトの改善が見られた。 【考察】 N3DF、IQE を使用することにより高速ヘリカルピッチ使用時のノイズや風車型 アーチファクトを軽減しつつ時間分解能の向上や被爆線量の低下が期待できる。 演題12 術後せん妄とその対策 森山病院 麻酔科 ○ 三田村 小百合 【はじめに】 術後せん妄は安静保持困難、点滴やカテーテルの自己抜去などにより合併症発生 の増加や在院日数の延長をもたらすとされる。 せん妄の早期発見、治療により重症化、長期化を防ぐことができるとされており、 今後の当院における薬剤介入のプロトコル作成の前段階として術後せん妄の発症 と薬剤介入の効果を検討した。 【対象】 80 歳以上の整形外科定期手術を行った ASA1~2 の患者 【方法】 術前に MMSE 検査で認知機能障害の程度を確認し、必要があれば術前より抑肝 散とラメルテオンの投与、セレネースによる鎮静を行った。 手術はセボフルラン又はプロポフォールを使用した全身麻酔で行った。 術当日夜より、抑肝散とラメルテオンを内服させ、せん妄が出た場合にはセレネ ースを筋注または静注し、効果がないときはサイレースを使用する事とした。 【結果】 術後せん妄は 10 人中 2 人に発生した。 そのうちの 1 人は術前より認知症が強く、 せん妄が見られていた。1 人は術前にせん妄があったものの、術後には症状が改善 した。術後せん妄が発生し、セレネースを使用する必要があった患者はいなかった。 【考察】 高齢者におけるせん妄治療に漢方薬の抑肝散やメラトニン誘導体であるラメル テオンの使用が注目されてきている。これらは大きな副作用がないため、抗精神病 薬に比べて安全に高齢者に投与することができるためである。 今回は調査期間が短く症例も少ないために偏った結果が出た可能性があるが、術 前よりみられていたせん妄が改善した患者もいるため、抑肝散とラメルテオンの投 与が何らかの陽性効果を及ぼしている可能性も示唆できる。 【結語】 高齢者の術後せん妄の発生と薬剤介入について検討した。 抑肝散とラメルテオンが術後せん妄を抑制する可能性が示唆されたが、症例数が 少なかったため十分な検討ができなかった。
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