韓国のリメイクドラマ ―日本の漫画文化吸収― 日本の漫画文化吸収 問いと仮説 ○問い 韓国ドラマは日本のドラマより優れた作品を輩出して いるにも関わらず、なぜ日本の作品を原作にしたリメイ ク ラ を作 クドラマを作るのか ○仮説 日本の漫画作品を原作にした韓国のリメイクドラマは 韓国の文化向上を狙 ている 他国の文化に触れるこ 韓国の文化向上を狙っている。他国の文化に触れるこ とで、さらに高い文化を作り上げようという競争心を煽 り か り、かつ、リメイクドラマをきっかけに韓国人の関心分野 リメイクドラ をき かけに韓国人の関心分野 も広げ、日韓友好につながる (日本)相次ぐ漫画原作実写化についてどう思うか 1000人中6割以上が漫画の実写化に 良く思っていない 総合 3.8 31 男性 5.2 26.8 48.4 16.8 47.2 20.8 女性 2.4 35.2 49.6 12.8 10代 4.2 34 49.2 12.6 20代 3.2 3 2 23 6 23.6 53 4 53.4 19 7 19.7 30代 3.2 36.4 42.8 17.6 40代 4.8 32.4 47.2 15.6 0% 20% 40% 60% 実写化の占める割合、実写化に求め ること 80% 100% ■とても嬉しい ■まあ嬉しい ■あまり嬉しくない ■まったく 嬉しくない 日本のテレビドラマや映画に漫 画原作実写化が多く見られるよ うになった。2011年には150ほど の漫画原作が映像化された そ の漫画原作が映像化された。そ のうち、約3分の1がテレビドラマ や映画の実写化。 漫画原作実写化に求めること は、左記のアンケート参加者 1000名のうち約7割は「原作に 合ったキャスト人選」 合ったキャスト人選」。 (韓国)相次ぐ日本の作品のリメイク傾向ついてどう う 思うか 日本ドラマの質の高さ リメイクドラマによる韓国文化低迷懸念 視聴者の受信料を受けて運営される公営放送のKBSが、自 国のコンテンツ開発に努力せずに海外ドラマを持ってきて 複製することや学閥社会と入試教育を助長するドラマ制作 は問題。 日本ドラマの想像力は韓国ドラマよりはるかに立体的で豊 か。 ヒットする5つのリメイク傾向 する ク傾向 『悲恋』・『漫画原作』・『職業』・『ジャニーズ』・『タブー』 日本ドラマはジャンルが非常に細分化。実際に財閥、不 倫、復讐、出生の秘密など刺激的な千別一律的な素材に 深く掘り下げる韓国ドラマとは違う。 リメイクドラマは失敗の恐れを振り切るために難なく人が成 し遂げた実を取ってくることに過ぎず、ややもすると蔓延し た場合 良い韓国ドラマを作る滋養分さえ枯死させられる た場合、良い韓国ドラマを作る滋養分さえ枯死させられる 危険がある。 日本式思考を視聴者たちに注入する結果を産むこともあり うる。 公営放送が固有の新しいアイディア開発と作家などの人材 発掘に対する投資の無視は韓国ドラマの未来は暗鬱をま ねかざるを得ない。 『悲恋』難病系は、韓国ドラマの定番設定で、視聴者が最 『悲恋』難病系は 韓国ド 定番設定 視聴者が最 も好むジャンルのひとつ。 『漫画原作』日本の漫画は、1980年代から急速に愛読者 からの支持を得ている。 『職業』韓 『職業』韓国では、このテーマが扱われたことはほとんど が扱われた んど なかった。職業ドラマの先駆者となったのが、代表作が 「白い巨塔」だった。この作品では、リアルな人間を描い た同作は斬新的だった。韓国の医局も日本と似たような 状態で、また、主役の財前五郎は日本版よりも攻撃的な 性格 な たりと 韓国 風土 合わ られた 性格になったりと、韓国の風土に合わせられた。 『ジャニーズ』滝沢英明の「アンティーク」、松本潤の「花 より男子」、岡田准一の「フライ、ダディ、フライ」もリメイク された。韓国でのジャニーズ人気は高い。 『タブーに挑戦』「愛なんていらない」では、ホストという職 業が存在しても、そこにスポットライトを当てるという点で タブー視されていた。「101回目のプロポーズ」。美女と野 獣というテイストは、馴染みがない未知の設定だった。 原作とリメイクドラマの違い 「花より男子」 「ドラゴン桜」 日本では、第1シリーズが2005年10月~12 月で全9話、第2シリーズが2007年1月から 2007年3月で全11話を放送。 韓国では、2009年1月~3月で全25話を放 送。 日本版はごく普通のサラリーマン(後にリス トラになる)の娘。韓国版はクリーニング屋 トラ なる) 娘。韓国版はクリ ング屋 の娘の主人公が偶然金持ち学校に配達に 行き、自殺しようとしていた学生を救ったこ とを機にその学校に通うことになる。 原作の主人公ほどかよわく、貧しくない。 原作の主人公のアルバイト先は団子屋だ が、韓国版だとお粥屋さん。 原作の主人公の友人男性の一人が茶道の 家元の息子だったが 韓国版だと韓国最大 家元の息子だったが、韓国版だと韓国最大 の私立博物館の後継者で陶芸が得意。 日本では 2005年7月から9月で全11話を放送 日本では、2005年7月から9月で全11話を放送。 韓国では、2010年1月から2010年で全16話を放 送。 学歴主義を助長するという批判を考慮。韓国版は 学歴主義を助長するという批判を考慮 韓国版は ソウル大学とせずに架空の天下大学。 日本版は東大合格の秘訣を教えることに焦点を あてているが、韓国では共通試験の修学試験を 受 るため 「勉強 受けるため、「勉強のテクニック」的な要素が多く、 的な 素が多く 「勉強はなせばなる」というメッセージを強く含む。 日本版は特進クラスの人数が6名。韓国版はアイ ドル志望のクラスメイトがいない5名で、生徒の家 庭環境も一部異なる。 韓国版は先生同士、生徒同士の恋愛要素が多 い。 韓国版は日本のドラマではなく、原作の漫画をも とにリメイクしたもの。 韓国人の特性 『貴族社会の韓国の生活規範は朱子学の持つ原理主義が浸透』 →そういった原理主義的色彩の強い韓国の儒教の、厳しい長幼の序意識や男尊女卑、形式主 義、学問主義。 →現代の韓国社会に強く残ってるのは 韓国の儒教思想の源ともなっている両班の価値基準 →現代の韓国社会に強く残ってるのは、韓国の儒教思想の源ともなっている両班の価値基準。 『韓国人の約5割は無宗教、2.5割はそれぞれ仏教、プロテスタントとカトリックを合わせたキリスト 教』 →韓国で仏教が奨励された時期は高麗時代だけ →キリスト教は抗日運動、近年では軍事政権への反対運動や貧困救済などの社会活動、人権運 動の中心となったこともあり、社会的・政治的に強い影響力を持つ。 →韓国でキリスト教が広まったことには様々な要因が考えられる 朝鮮戦争やその後の分断国家 →韓国でキリスト教が広まったことには様々な要因が考えられる。朝鮮戦争やその後の分断国家 といった激動の中で、心のよりどころを求める人が増えた。 『韓国には両班的ビジネス観による日韓のビジネスコミュニケーションギャップ』 1つ目は「モノ造り」。日本はモノの質やそれ自体を実現する技術に関心を持つのに対し、韓国 →1つ目は「モノ造り」。日本はモノの質やそれ自体を実現する技術に関心を持つのに対し、韓国 では儒教的な価値体系が支配体系なため、「理論」を重視する傾向。 →2つ目は、「公私の感覚の違い」。日本人の組織対組織の関係が中心の会社への帰属意識に対 し、韓国人は個人対個人の関係が中心。 →3つ目は「信用についての考え方」。信用を基礎とする商業的意識が自然に根付いた日本では 約束はきっちりと守ること、韓国では約束はある程度どんぶり勘定。 韓国政策による影響 『韓国ブランドを世界的なブランドにする公約を掲げた李明博大統領』 →韓流ブームといった韓国の大衆文化を有力な輸出商品とみなして、海外進出 を加速。 『日本大衆文化の段階的な開放』 →韓国政府が文化を政策の対象にしていることからすれば、外国文化に対して 自国文化の発展に肯定的な効果をもたらす触媒剤としての役割を望み、その 負の影響を少なくする方便。 『ワールドリサーチが行った2000年3月の世論調査結果』 →日本の大衆文化開放政策による韓国の文化産業への影響に対して「影響な 日本の大衆文化開放政策による韓国の文化産業 の影響に対して「影響な し」が11.6%、「肯定的影響」が40.2%。 『日韓の均衡のとれた文化交流』 →文化的従属を憂慮する声を脱皮し、異文化の発展的な受容によって、交流し 合う新たなる文化創造を目標。 →最近は日本のTV番組と類似してきていることに大きな問題 日本大衆文化の →最近は日本のTV番組と類似してきていることに大きな問題。日本大衆文化の 段階的開放による多元主義的な実験が行った韓国で放送を通しての日韓の 均衡のとれた文化交流が可能かといった懸念がある。 フィールドワーク:アンケート調査① 2011年9月13日から2011年9月17日 年 月 日から 年 月 日 延世大学、東国大学にて男女60人に調査 2011年9月13日から2011年9月17日間に延世大学、 2011年9月13日から2011年9月17日間に延世大学 東国大学で、休み時間に中庭、休憩室、食堂にい た学生に直接交渉をしながらアンケート調査を実 施。 アンケート調査に参加した人数は60人。延世大学で は男性21人、女性23人。東国大学では男性7人、女 性9人。対象者となったのは大学生、大学院生の18 歳から28歳。韓国は兵役の関係もあり、全体的に年 齢層が高くなっている。 質問1、テレビはどれぐらい見ます 質問1 テレビはどれぐらい見ます か? 結果1、(利用率が高い順) c.週2 日から週3日…43%、a.毎日 …28%、その他(テレビを持って いない、テレビを見ていない等 ))…15%、b 15% b .週4日から6日 週4日から6日 …7%、d.週1日…7% 質問2、インターネットはどれぐらい 利用 ますか 利用しますか。 結果2、(利用率が高い順)a.毎日 …35%、b.週4日から6日 %、 週 から …28%、c.週2日から週3日 …19%、d.週1日…11%、その他 …7% フィ ルドワ ク:アンケ ト調査② フィールドワーク:アンケート調査② 質問3、よくみる番組ジャンル ニュース 報道 バラエティ 音楽 映画 アニメ 0% 6% 8% 19% スポーツ ドラマ 2% 18% 8% 39% 質問4、(質問3の回答でテレビ番組で映画、ドラマを 問4 (質問3の回答でテレビ番組で映画 ドラマを 選択した対象)以下の9作品の日本版と韓国版 の映画、テレビ、漫画を見たことあるか。 回答4、a.花より男子、b.イタズラなKiss、c.結婚で きな 男 d 世にも奇妙な物語 きない男、d.世にも奇妙な物語、e.ドラゴン桜、 ドラゴ 桜 f.星の金貨、g.やまとなでしこ、h.101回目のプ ロポーズ 結果4、 ・韓国のリメイクドラマを見ている人…60人中46人 (ドラマを見ている人が多い順)花より男子…42人、 ドラゴン桜…28人、イタズラなkiss …10人、結 婚できない男…9人 星の金貨…9人 やまとな 婚できない男…9人、星の金貨…9人、やまとな でしこ…7人、世にも奇妙な物語…1人、101回目 のプロポーズ…1人 ・韓国のリメイクドラマを見て、原作の日本の作品を 見たことがある人…60人中18人 (ドラマを見ている人が多い順)花より男子…15人、 イタズラなkiss …2人、ドラゴン桜…2人、結婚 できない男…1人、星の金貨…1人 フィールドワーク:アンケート調査③ 質問4の結果、8作品の韓国版と日本版を見たこ ~質問4の結果、8作品の韓国版と日本版を見たこ とあるか~ 45 42 40 35 30 25 20 15 15 10 10 6 5 11 0 28 22 9 9 4 0 1 03 4 0 7 01 01 12 1 00 (韓)映画 (韓)ドラマ (韓)アニメ (韓)漫画 (日)映画 (日)ドラマ (日)アニメ (日)漫画 まとめ ~先行研究~ 日本のドラマ、日本漫画も日本アニメや漫画を原作にしたドラマが増えている。 世界に認められるサブカルチャーとみなされる程、日本は他国に比べて良質な作品に恵まれている。 →漫画原作の実写化が増える傾向にあることは、必然の成り行き 韓国政府は海外進出するために韓国の大衆文化を有力な輸出商品とみなしているため、海外の作品をリメイクしたドラマの制作に力が入って 韓国政府は海外進出するために韓国の大衆文化を有力な輸出商品とみなしているため 海外の作品をリメイクしたドラマの制作に力が入って いる。 韓国のリメイクドラマは、言葉や環境などすべてが韓国風にアレンジ。そのアレンジは原作とかけ離れ過ぎてしまうことがあるため、しばしば他 国作品を韓国の作品だと思い込ませてしまう危険性が生じる。 日本文化解放で日本文化の影響について、韓国人は肯定的に受け入れているが、日本人に対して好感を持っている人は少ない ~フィールドワーク~ 日本のリメイクドラマが浸透 よく見られている上位3位のリメイクドラマの原作は日本の漫画 →韓国はより海外に進出するためにも 韓国はより海外に進出するためにも、海外から認められている文化「日本の漫画」を自国の文化に少しでも吸収 海外から認められている文化「日本の漫画」を自国の文化に少しでも吸収 リメイクドラマを見た半数弱の人々が日本の原作作品を、普段アニメ見ない人がリメイクドラマを通じて、日本の原作アニメを見ている。 →韓国のリメイクドラマは、韓国人の関心分野を広げるキッカケ アンケート調査を通じて韓国人と接触した際、彼らは私が日本人だとわかっても嫌がる素振りはなかった。積極的にアンケート調査に協力。 →日本に対する思いも、年代によってとらえ方が違うのかもしれない。 日本に対する思いも 年代によ てとらえ方が違うのかもしれない →大衆文化という身近なものから、日本の文化に触れることで日韓友好関係も徐々によくなっているのではないだろうか。 リメイクドラマの韓国風のアレンジが強かったせいか、原作も韓国だと思い込んでしまっている人と遭遇 →自国と他国の文化の区別をつけられずに、韓国文化や韓国人のアイデンティティも失ってしまう恐れがある。 今後の課題 韓国政府・韓国メディアは海外の作品を自国の文化に取り 韓 韓 デ 海 入れる時は、より忠実に原作を表現することを努める。 韓国のリメイクドラマ制作で原作にされた作品をもつ国か ら剽窃やパクリといった非難を防ぎ、より円滑な国同士の 友好関係を築く。 韓国人は自国と他国の文化の区別をつけながら、文化の 相違点や違いを把握することで、韓国人のアイデンティ ティを守る。 他国の文化触れることで、より自身の感性を磨き、韓国独 自の文化を支える柱となってほしい。 文 を支 柱 。 引用・参考文献一覧 ・『Business Media 誠』、http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1208/28/news007_3.html、閲覧 誠』 http://bizmakoto jp/makoto/articles/1208/28/news007 3 html 閲覧 日2012年10月12日 ・深川由起子『韓国の仕組み』、株式会社中経出版、2002 古田博司、小倉紀藏『韓国学のす て』、株式会社新書館、 ・古田博司、小倉紀藏『韓国学のすべて』、株式会社新書館、2002 ・岩男壽美子『テレビドラマのメッセージ 社会心理学的分析』、株式会社勁草書房、2000 ・『女性自身』 http://jisin.jp/serial/%E9%9F%93%E6%B5%81%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%B3/%E5 %A5%B3%E6%80%A7%E8%87%AA%E8%BA%AB%E6%9C%AC%E8%AA%8C%E8%BB%A2%E8%BC%89%E9%9F%93%E6 %B5%81%E9%80%9A%E4%BF%A1/773、閲覧日2012年11月10日 ・『韓国のテレビを見よう!~KOREA LIFE~』、http://www.koreatv.net/intro/station/index.html#kbs、閲覧日2012年11月9日 ・『livedoor』、http://news.livedoor.com/article/detail/6912561/、閲覧日2012年10月3日 ・『ORICON STYLE』、http://www.oricon.co.jp/news/ranking/2004213/full、2011年11月30日記 事、閲覧日2012年9月27日 ・朴順愛・土屋愛子『日本大衆文化と日韓関係-韓国若者の日本のイメージ-』、株式会社三元社、2002 朴順愛 土屋愛子『日本大衆文化と日韓関係 韓国若者の日本のイメ ジ 』 株式会社三元社 2002 ・『レコードチャイナ』、http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=63644、閲覧日2012年 10月3日
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