男性介護者の一ケース (2009.5.19) 1 被介護者の今日まで 2 現在の介護の一日 ➀ ➁ ➂ 一日の過ごし方 一週間のスケジュール 5 回の「時間調査」の結果から 3 自由時間の作り方 4 介護者としての健康管理のあり方 5 今日に至る経緯 ➀ 心の変化 ➁ これまでやって来たことの経緯と三つの生活信条 ➂ 介護の方向を決める要因 ⅰ これまでの二人の関係のあり方 ⅱ “妻は私のために頑張って生きてくれているんだ”という心理 6 最後に お伝えしたい私のメッセージ Mail: [email protected] URL : http://home.d00.itscom.net/uchida/index/htm 川崎市・宮前区 内田順夫 発病から今日まで 1 病人 : 妻(1937年生) (1) 病 名 アルツハイマー型若年性認知症 (2) 発病以来 −1992 年頃発病。以後5∼6年間ほどは徘徊、暴力的行 動、不眠、所構わぬ排泄、妄想など、最悪の状態 1997 年頃から歩行困難となり、寝たきり状態に至る −さらに人間としての基本的機能を次々と失い、オムツ 使用、歩行困難、笑顔失う、言葉を失う、失明、胃ろう 造設など、完全四肢麻痺、全介助状態 −介護保険 要介護度5、身体障害者1級、精神障害者1 級 (参照 「病気の進行と精神的・肉体的負荷との関係」) 2 介護者 : 夫(1937年生) (1) 子供がいないため、常時介護に当たっているのは夫一人、ただし・・・・・・ 介護暦 14∼15 年(うち発病からの5年間は勤務中) (2) 介護に取り組む信条 ① 一生懸命遊び、一生懸命介護する ② 今日一日を精一杯生きる、明日のことは考えない ③ 介護は恩返しと思うべし 一週間のスケジュール(2008.6.25 現在) 月 午 (買い物) 前 (外出) 火 水 木 金 10:00∼11:30 10:00∼ 10:00∼12:00 10:30∼ 訪問介護 訪問看護 訪問介護 訪問リハビリ 土 (PC) 日 (10:30∼ (買い物) (買い物) 日曜礼拝) (外出) (外出) (月 1 回) (12:30∼ 午 13:30∼ 13:15∼ 13:15∼ 訪問リハビリ 入浴サービス 入浴サービス (油絵) 後 (PC) (PC) (PC) 水泳) 14:30∼ 14:40∼ 主治医往診 入浴サービス (隔週) (PC) (読書) (読書) (読書) (読書) (読書) (読書) (読書) <私の自由時間の捻出法> 1 手抜き ・入浴の回数減 ・飲み物の量を減らす(冬場のみ 1,500→1,300cc) ・早起き 2生活の知恵による (1)外部の方の力を借りて ・ ヘルパーさん来訪時に、お任せしての外出(近場での買い物や都心への遠出) ・ 入浴サービス中はスタッフにお任せしてパソコン使用の時間に充てる etc (2) 仕事をまとめる ・ 同じ方向の仕事を貯めて一度に済ませる(銀行、区役所、スーパー、郵便局 etc) ・ 買い物の序でに銀行、郵便局 etc ・ 散髪の待ち時間に買い物 etc ・ 朝、新聞を取りに行く序でに、手紙出し、ごみ出し、同時にレンジのスイッチオン (3) ながら………仕事をする ・ トイレに入る前にパソコンの電源入れ ・ レンジ中に他の仕事を ・ テレビを見ながら読書 ・ 食事中に新聞、手紙を読む ・ 外出時の電車内での読書 ・ 食事でむせた場合、合間をとってやるため、その間、吸いのみを洗う etc (4)無駄な時間を作らないように ・全ての部屋に時計を置く ・用具の数を十分に持つ、また、品質劣化のないものは一回に多く購入する(吸いの み、オムツ、タオル、ふとん、寝間着、歯ブラシ、枕、オムツカバーetc) ・日常必需品に使用開始の日付を記入。発注時期を逃さぬよう ・日頃使う店の休日や営業時間を覚えておく ・作業の動線を極力短くするレイアウトを考える ・コインランドリーのあり場所を知っておく (5) 仕事を効率的に ・ 同一作業分を同じ場所に収納。例えばベッド上での着替えのため寝間着、タオ ル、オムツ、オムツカバー、チリ紙、化粧用品、薬品、吸引機 etc ・ e-mail の活用。空き時間に電話の代わりに 3 お金の投入 ・ 完全自動洗濯機 健康管理は心身の両面から (一男性介護者の健康管理法) 私は男性の一介護者です。妻の介護をしています。妻は 55 歳くらいで発病し、アルツ ハイマー型若年性認知症と診断されています。現在は、寝たきりのみならず、失明し、 言葉を失い、胃ろうで食事を取り、おしものケアから全てを他人に依存せねば生きてい けません。いわゆる全介助状態です。(介護保険は要介護度 5) こんな状態の妻を私達には子供がないこともあり私が常時介護しています。勿論、医 療、介護両面で多くの方々のお力を頂き、初めて妻の介護は成り立ちます。そのことに は、どれだけ関係者の皆様に感謝しているか、言葉では表現出来ないくらいです。 しかし、何と言いましても、私が圧倒的に長く妻の側にいる訳でして、仮に私が健康を 害して、寝込む、入院する、最悪あの世に逝く、などが起こると、これは大変なことにな ります。 現に、介護を始めた 1992 年当初は、ともかく介護に専念することを決めた以上、出来 ることは全てやってやろう!と「頑張って,頑張って」介護漬けの日々を過ごしました。そ の結果、2 年続けて大病で倒れるという事態を経験しました。その因果関係は明確で はありませんが、私は「介護漬け」が私の身体を一気に蝕んだに違いないと思っていま す。 そんな経験から、一日を健康で、しかも全力で妻の介護に当れる体力を作らねばだめ だと、つくづく思うようになりました。そして、その健康も唯単なる肉体的な健康だけで なく、精神的な面での健康と相俟って向上させねば、ということにも気付きました。 そこで、以下に私が現在試みている心身ともの健康管理について述べて見たいと思い ます。 1 肉体の健康管理 ・ 半日ドック(年 1 回) ・ 市の成人病検診(年 1 回) ・ ホ―ムドクター検診(月 1 回、全体的体調管理、薬受け取り) ・ 心電図チェック(2 ヶ月に 1 回) ・ 脳(MRI,MRA)検診(年 1 回) ・ 歯の定期健診(年 2 回) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 目の定期健診(年 2 回) 整骨、マッサージ(週 1 回) インフルエンザ予防接種(年 2 回) 胃カメラ検査(年 1 回) 大腸内視鏡検査(3 年 1 回) 耳鼻科、皮膚科等必要都度 体調不良時、即座に(早めに)ホームドクターへ 2 対人的交流 ・ 会社、学生時代の先輩、同僚、後輩との交流 月 7∼8 回の昼食会ないし は夕食会 ・ 医療、介護関係者との交流 不規則ながら回数多し ・ 教会関係者 月 1 回の日曜礼拝参加、賛美歌の会(於自宅 月 1 回) ・ 近隣や金融関係者等との交流 その都度 ・ PC E-Mail , Blog , MIXI による交流 (私はこの対人的交流が身体の面と心の面をつなぐリンクピンのような役割を 果たしており、心身の健康管理に極めて重要だと思っています。つまり、介護 で自由な時間が取れないという介護者にとって決定的な問題を抱えているとは いえ、そうした中でなんとか工夫をして関係の方々に協力をお願いして、簡単に 言いますと「おしゃべり」すること、もう少し硬く言いますと「社会的な接触」を 欠かさないことが大変重要だと思っています。 私は、多くの方々の協力を得て、月に 30 名から 50 名、多いときは 70 名くらい の先輩や同僚などと会っています。勿論、医療や福祉の関係で定期的に訪問し て下さる方は除いての話です) 3 運動 ・ 水泳 週 1 回 毎回 1,000M その後サウナ 年 40 回以上目標 ・ ・ 4 趣味 ・ ・ ・ ・ 買い物等近場の外出には車を使わない 本来はテニスがしたいのだが・・・・・・・ 油絵描き 年 5 作以上目標 読書 毎日 2 時間以上 クラシック音楽 毎日妻の夕食時から入眠まで、約 4 時間かけ放し PC E=Mail , Blog , MIXI その他作表、文書作成等 5 信仰 ・ 妻が約 30 年前に洗礼を受けクリスチャンとなっていたこと、加えて何か精神 的なバックボーンが必要だという常々の考えから、2001 年私も洗礼を受け クリスチャンとなる ・ 日曜礼拝参加(月 1 回) ・ 聖書読み(毎日 新訳 旧約 各 1∼2章) ・ 妻への聖書読み聞かせ(毎日 新訳のみ 1∼2章) ・ 賛美歌の集い(自宅 月 1 回 教会から 3∼4 名来訪、賛美歌の後歓談) ・ E 氏著作「一日一章」(毎日 10 ページ) ま と め 以上のような事柄を日常の生活スケジュールの中にキッチリと組み込み、 全体をうまく回すことにより、介護漬けになっていた当時より遥かに健康な 日々を送れるようになったと思っています。 つまり、繰り返しになりますが、肉体の管理だけでは真の健康は保てない、 精神面の安定、強化が相俟って初めて、介護に耐える健康が維持出来る (その中核となるのが対人的交流)と実感しています。 また、これは当然のことではありますが、日常生活において「早寝早起き」 を励行し、同時に規則正しい生活、十分な睡眠、休養、暴飲暴食(特に深 酒)を避ける、などが大前提であることは言うまでもありません。 以上 2007.7.4 介護者の心の階段 ? 心 の 変 化 感 謝 受け入れる(積極的) 受け入れる(消極的) あきらめる 憎む、恨む 1992 頃発病 1993.10 アルツハイ マー病と断定 病状の進行 1998頃 ほぼ寝たきり 現在 完全四肢麻痺 言葉を失う 失明他 これまでの介護の経緯 1 介護とうまく付き合わねば、と気づく道のり 1992 年頃(55才)∼ (勤務中) 妻の発病から 5 年間以上は、状況を怨み、本人を憎むというドロ沼状態。 日に日に起こる新たな事態に対処する方法が分らず、その事態への怒りと 悲しみ、さらには将来の不安など 1997 年(60 才)∼ (退職後) 仕事を断念し、介護に専念するようになって 出来ることは全部やってやろう!! と意気込む Ex ・3 回の食事つくりと介助 ・ 毎日の風呂いれ ・ 歩行訓練、外出も ・ 週 4,5 回の車イスでの散歩 ・ トイレへの誘導と排便を促すための肛門マッサージ ・ 医療、福祉関係者来訪時の全ての立会い ・ しどろもどろでの家事万般 ・ 自分の通院ほか、やらねばならぬこと全て ↓ 関係者からは 365 日 24 時間介護がベストでないと、たえず忠告を受けつ つも、頑張って、頑張って-----↓ 1998.3 (61 才)∼ 病気で倒れる (腸閉塞。高い授業料を払う。12 日間入院) ↓ 忠告が身にしみて判る ↓ 何か介護とうまく付き合う方法を 考えねば---との心理的変化 ↓ しかし、介護の質量を減らすこと、本人の 側を離れることの罪悪感 ↓ 2000.3(63 才)∼ 再度病気で苦しむ (尿管結石、通院で何とか遣り通す。全治まで約 8 か月) ↓ これでは駄目だと、漸く心の中で受け とめる。やり方を変えねば長期戦は戦え ないことを理解 現在∼ ↓ 如何に自分の自由になる時間を捻出するかを 考えるようになる。それによって、自己を再生 産し、そこで得た力を介護に充てる 2 私の三つの生活信条 (1)一生懸命遊び、一生懸命介護する (2)今日一日を精一杯生きる。明日のことは考えない (3)介護は恩返しと思うべし 3 自分の自由になる時間をどう作るか? (1) 先ずは環境作り 医療、福祉が一体になった介護体制を作ると同時に 支援戴く方々との人間関係、信頼関係作りが不可欠 これが出来なければ、効果的な先のステップへうまく進む のは難しい? 主治医 調剤薬局 訪問看護 訪問介護 病人 介護人 訪問リハビリ その他 病状の安定 入浴サービス 訪問歯科 <ハッピーリング> (介護者の精神的安定) アルツハイマー病の妻の 在宅介護者として お伝えしたい私のメッセージ 1 残念ながら悲しくも辛い時期はどうしても避けられない 「介護者の心の階段」(HP参照) 2 介護は一人でするものではない。多くの方々の援助、支援を得て初め て良い介護が確立する。また、介護を通じて実に多くのことを学ぶこと が出来る 3 介護は親族より地域に依存することが望ましい 4 辛い時期を乗り越えたあとは、それなりに自己実現の生活を送ることが 必ず出来るようになる。かくして介護は快護となる
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