ようこそ 直流給電の世界へ

Cover Story
ようこそ
直流給電の世界へ
身の回りは直流で動くものばかり
テレビやパソコン,電話機,プリンター,携帯電話機,ゲーム機,
携帯型音楽プレーヤーなど我々の身の回りにある機器は,実は直流
で駆動するものばかりです。最近は洗濯機やエアコン,蛍光灯など
の機器もインバータを搭載しているため,これらの機器でも交流を
一度直流に変換し,その後,高周波の交流に変調しています。身近
なところでは,パソコンなどに装備されている USB 端子からは電圧
5V,最大電流 500mA の直流を供給しています。
エジソンの時代が再び
直流給電の歴史は古く,1880 年代までさかのぼります。発明家とし
て有名なエジソン(Thomas Alva Edison)は,白熱電灯などの機器に
電力を供給するために直流給電を提案していました。ですが,テスラ
という磁束密度の単位にもなっている Nikola Tesla と米 Westinghouse
Electric Co. が提案した交流給電が,世界の標準となってしまいました。
理由はいくつかありますが,長距離で大規模な送電を考えた際に電圧を
簡単に昇降できる交流の利点が大きかったといえるでしょう。それから
100 年後の今,送電距離が短いところでの利用を想定していること,効
率の高い DC-DC コンバータが安価に利用できるようになったことなど
から,直流給電に再び注目が集まっています。
一般ユーザーにも利点が…
電気料金を削減
家庭内に直流で給電した場合,ユーザー
直流化だけで変換ロスを2割削減する効果があり,
2kWh/日の電力消費量を削減できるとすると,
2kWh×26円/kWh×365日=年間約1万9000円の節約に
にも利点があります。家庭の大本で,高
効率な AC-DC コンバータを使って交流を
直流に一括変換できれば,効率の低い AC
アダプタで変換していた機器の変換ロス
を削減し,
電気料金の削減につながります。
また,コンセントに取り付けていた複数の
AC アダプタをなくすことができるように
なるかもしれません。
36 NIKKEI ELECTRONICS 2008.12.29
ユーザー
の利点
ACアダプタからの解放
直流の標準コンセントができれば,
パソコンや携帯電話機,
デジタル・
カメラ,
ゲーム機,
音楽プレーヤー
などでACアダプタが共通化され,
ケーブル1本で持ち運びが可能に
電気料金は1日当たりの電気使用量を10kWhとし,1kWh当たり26円として算出した。
特集
200∼300V
100∼200V
12∼48V
家庭で!
200∼300V
200∼300V
100∼200V
48∼200V
12∼48V
12∼48V
200∼300V
200∼300V(駆動系)
48∼200V
12∼48V(電装品)
12∼48V
200∼300V(駆動系)
12∼48V(電装品)
家庭では,太陽電池と蓄電池を組み合わせた直流給電システムが普及す
る。まずはLED 照明などの直流で駆動する機器とつながり,その後,エ
アコンや洗濯機など電力容量の大きな機器への供給も可能となるだろ
う。将来的には,フィットネス機器などを使ってゲーム感覚で発電する
ことを楽しんだり,電気自動車の登場によって家庭と電気自動車との間
で電力を融通し合う時代が来るかもしれない。
オフィスで!
!
300∼400V
12∼48V
300∼400V 300∼400V
12∼48V
12∼48V
300∼400V
オフィスでは,電力消費の大きいデータ・センターなどでIT 機器に300 〜 400V の直流給電が
普及する。その後,LED 照明や空調機器などにも浸透していくだろう。仕事場ではパソコンなど
への直流での給電が進み,最終的には卓上から直流の非接触給電が可能になるかもしれない。
12∼48V
(イラスト:楠本 礼子)
NIKKEI ELECTRONICS 2008.12.29
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