── 実 施 例 ── 「イズミ広島物流センター」における 空調換気・冷却設備計画 のり つぐ 清水建設㈱ 広島支店 設計部 山 田 矩 胤 ■キーワード/冷蔵倉庫・空調計画・冷却設備 1.はじめに 2.建物概要 ㈱イズミの,中国地方における大型物流センター新築 建物名称 イズミ広島物流センター 工事。広島市西部流通業務地区にあり,幹線道路,高速 所 在 地 広島県広島市西区草津港3丁目1番1号 道路へのアクセスも良好。広島県西部から島根・山口の 建 築 主 ㈱イズミ 店舗網をカバーする広域配送拠点としての機能が期待さ 設計監理 清水建設㈱ 広島支店一級建築士事務所 れている。 建物用途 倉庫・作業所(物流センター) トラックバースは85台規模,一般倉庫 (ドライ倉庫)に 敷地面積 28,604.35㎡ 加え冷蔵倉庫,冷凍庫を持つ延床面積約28,000㎡の配送 建築面積 19,207.19㎡ センターであり,これまで広島県下に分散していたドラ 延床面積 28,415.29㎡ イ・チルド機能を集約し,輸送効率の向上をはかってい 規 模 地上2階 る。屋上には賃貸で太陽光発電設備 (約1,300kW)を設置 構 造 S造 している。 工事期間 2014年4月〜2015年1月 本報では,空調設備・冷却設備の計画概要を報告する。 施 工 清水建設㈱ 広島支店 写真-1 建物全景 ヒートポンプとその応用 2015.11.No.89 ─ 28 ─ ── 実 施 例 ── N 3.設備概要 <空調設備> (吹抜) 空調方式 空気熱源ヒートポンプエアコン (ビルマルチ主体) (吹抜) 室外機合計容量 620kW (冷房時) 事務所 室 内 機 天井カセット型,天吊型 (中温用) 換 気 クールルーフファン (ドライ倉庫) ,有圧扇等 ドライ倉庫 <冷却設備> 2階 冷 凍 機 空気熱源一体式屋外設置コンデンシング 42,700 ユニット (インバータスクロール) 52,500 冷凍機合計容量 1,200kW 冷 却 器 天吊型ユニットクーラー (縦型) <給排水衛生設備> トラックバース 給 水 直結直圧給水方式および受水槽+加圧給水 ドライ倉庫 方式 (クールルーフファン用) の併用 現場事務所 84,700 事務所 受 水 槽 FRP製パネル型 1㎥ (ポンプ・水槽一体型ユニット) チルド倉庫 鮮魚室 給 湯 個別給湯方式 (電気温水器) 精肉庫 排 水 屋内 汚水,雑排水合流式 屋外 一般排水,雨水分流式 トラックバース 1階 防災設備 屋内消火栓, 屋外消火栓 (ポンプ, 水槽兼用) 冷凍庫 179,200 ドライ倉庫 (成行) チルド倉庫 (0∼5℃) 冷凍庫 (-25℃) 事務所 図-1 センター内 エリア区分図 <電気設備> 図3−6−1 受 変 電 6.6kV 1回線受電 屋外キュービクル 1,800kVA <ドライ倉庫> 幹 線 低圧ケーブルおよびバスダクト方式 給気:クールルーフファン 電 灯 全館LED照明 排気:有圧扇による第一種換気方式を採用。 放 送 業務放送 配送ライン廻りでの作業を伴うエリアであり,夏期の 防災設備 非常照明・誘導灯・自動火災報知 作業環境向上のため,水の気化放熱を活用したクール ルーフファンによる涼風給気をはかっている。換気回数 4.空調換気設備計画 は2.5回/h程度,給気ダクトはFL+3,500まで立下げとし 本建物は大きく, 「ドライ倉庫エリア」 ・ 「チルド/冷 た。 (写真-2・3,図-2・3) 凍庫エリア」 ・ 「事務所エリア」からなっている。 (図-1) 各エリアの室内温度条件は以下のとおりである。 ドライ倉庫 夏期 成行 冬期 成行 チルド倉庫 夏期 0〜5℃ 冬期 0〜5℃ 冷凍庫 夏期 -25℃ 冬期 -25℃ 事務所 夏期 26℃内外 冬期 22℃内外 湿度条件はいずれも成り行きであり,ドライ倉庫は2 Fに一部空調ゾーンを有している。 写真-2 ドライ倉庫エリア ─ 29 ─ ヒートポンプとその応用 2015. 11. No.89 3.50m ── 実 施 例 ── 写真-3 涼気給気ダクト 写真-4 チルド倉庫エリア 冷却エレメント (4面) モータ 吸気ルーバパネル (4面) N 42,000 プロペラファン 1階 涼気給気ダクト 鮮魚室 チルド倉庫 精肉庫 冷凍庫 ▼屋根 低温部 (5℃未満) ドライ倉庫 外気 外気 トラックバース 179,200 :外気流入 涼気 :オフサイクルデフロスト :ヒータデフロスト 図-4 ユニットクーラーデフロスト区分 図3−6−4 図-2 クールルーフファン概要図 図3−6−2 すなわち,より低温(5℃未満)での運用となる鮮魚室・ 精肉室・冷凍庫と,外気流入の多く懸念されるチルド倉 クールルーフファン 庫南側 (トラックバース際) ・チルド倉庫出入口脇に配置 排気ファン ▽GL 涼気給気 ダクト 式を採用し,その他のエリアについてはオフサイクルデ 3,500 8,000 されるユニットクーラーについてはヒータデフロスト方 冷却器のドレン管は,周囲温度が0℃以下となる箇所 1Fドライ倉庫 フロスト方式を採用し省エネルギーをはかった。 について,凍結防止対策として電気ヒータ(自己保持型) を敷設した。 機器のメンテナンスについては,冷凍機を南側庇上部 図-3 クールルーフファン 気流イメージ図 に集中配置し,メンテナンスタラップから容易にアクセ 図3−6−3 スできるよう配慮した。南側庇は冷蔵/冷凍倉庫部から <チルド/冷凍倉庫> も最短で配管可能な位置であり効率が良く,今後の機器 空気熱源コンデンシングユニット+ユニットクーラー 更新時にも作業のしやすいスペースである。 ( 図-5, により, 冷蔵/冷凍倉庫の冷却を行っている (写真-4)。 写真-5) 各冷蔵/冷凍倉庫の温度は冷却設備監視装置にて測定管 理し,トレンド記録,デマンド制御等が行えるよう計画 した。今回は,パネル厚さについても100mm以上にて 選定し, より安心で省エネな冷蔵/冷凍倉庫をめざした。 ユニットクーラーのデフロストについては, 室温条件・ 想定される外気流入状況から,ヒータデフロストとオフ サイクルデフロストの併用方式とした。 (図-4) ヒートポンプとその応用 2015.11.No.89 ─ 30 ─ ── 実 施 例 ── 冷媒管 5.冷蔵倉庫廻りの結露抑制計画等 ▽水下梁天 とくに冷蔵/冷凍倉庫廻りにおいては,結露の抑制・ 室外機 結露水排出の計画が肝要となる。 6,100 室内機 <結露抑制計画> 一般エリアと冷蔵エリアの二重壁間,および冷蔵倉庫 メンテ歩道 ドライ倉庫 天井内において循環換気を行う計画とした。低温空気の ▽2FL 滞留による結露発生を抑制する対策である。換気機器は 4,800 二重壁内湿度によりグループごとに自動発停する計画と 室内機 チルド倉庫 した。また,結露水の滞留防止措置として,二重壁内下 部には水抜パイプを敷設し,結露水が屋外へ排出される ▽1FL 計画とした。 (図-6) 1,100 ▽GL 断熱パネルを貫通する配管・配線・支持材に対しては 全箇所,ヒートブリッジ対策として,防熱工事にて断熱 図-5 設備機器 断面レイアウト 措置を行った。 図3−6−5 エア搬送 ファン 断熱パネル チルド倉庫 (0∼5℃) 500 ドライ倉庫 (成行) 3,000 1,620 ストレート シロッコファン 屋外へ 写真-5 南側庇上部 設備機器置場 水抜きパイプ 図-6 結露抑制計画 模式図 <事務所エリア> 図3−6−6 換気は第三種換気主体,空調は空気熱源ヒートポンプ エアコン (ビルマルチ) を主体とした個別空調方式を採用 床面の結露・凍結防止については,躯体縁切りの上, した (写真-6) 。屋外機は冷蔵倉庫同様に,南側庇上部 フロアヒータ埋め込みにて対応した。異温度帯となる出 に集中配置している。 入口廻りにおいて,躯体を通じて伝熱し,高温側躯体表 床はOAフロアとし,事務所レイアウト変更に容易に 面にて結露・凍結することを防止するものである。ヒー 対応できるよう配慮した。 タは自己保持型としている。 (図-7) N 42,000 ドライ倉庫 (成行) 1階 チルド倉庫 (5℃) 鮮魚室 (5℃) 精肉庫 (0∼2℃) 冷凍庫 (-25℃) トラックバース 179,200 :フロアヒータ 図-7 フロアヒータ配置図 写真-6 事務所エリア 図3−6−7 ─ 31 ─ ヒートポンプとその応用 2015. 11. No.89 ── 実 施 例 ── <凍上防止計画> 冷凍庫においては,下部土中の水分が凍結・膨張する 6.おわりに と,躯体を持ち上げる凍上現象が生じてしまう。今回は イズミ広島物流センターにおける空調換気計画,冷却 冷凍庫床スラブ下部に通気管を設け,凍上防止対策をは 設備計画について,その概要を紹介した。 かった。通気管はパイプファンにより機械的に換気する 省エネルギーと作業環境の快適性,冷蔵倉庫と結露抑 ものとし,配管には勾配を設けて結露水の滞留を防ぐ計 制,どちらも両立することはなかなか難しい課題である。 画としている。 (図-8・9) 今回,気化熱の活用,冷蔵エリアと一般ゾーンの隙間に おける結露抑制対策等に取り組み,省エネルギー・建物 凍上防止用パイプ Ⓐ 1,500 1,500 1,500 1,500 1,500 1,500 1,500 冷凍庫 品質確保のための要素を盛り込んだ。本物流センターが, 今後ますますその機能を発揮していくことを期待すると ともに,ここで紹介した計画例が,今後の類似事例の計 画の一助となれば幸いである。 最後に,本プロジェクトにおいて,建築主として尽力 していただいた㈱イズミ様,また倉庫運用についてご助 言いただきましたヤマエ久野㈱様,その他関係者の皆さ ま方に,この場をお借りして厚く御礼申しあげます。 Ⓐ N 10,500 :パイプファン設置 図-8 冷凍庫 凍上防止対策 平面図 図3−6−8 冷凍庫 (-25℃) パイプファン 設置 排気 ▽1FL 給気 ▽GL 1,100 チルド 倉庫 (0∼5℃) 4,800 ▽2FL 断熱パネル 凍上防止用パイプ 10,500 VP200φ,水勾配 Ⓐ−Ⓐ断面図 水抜き パイプ 図-9 冷凍庫 凍上防止対策 断面図 図3−6−9 ヒートポンプとその応用 2015.11.No.89 ─ 32 ─
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