平成25年度 卒業研究論文要旨 教育研究分野 認知行動科学 2322015 紅林巧人 振動の周波数が触感印象に与える影響 1. を表すオノマトペを回答してもらい,SD 法も実施した.振動 序論 3 種類×部位 4 ヶ所の計 12 試行行った. 日常生活において, ものに触れる機会が多いことから, 近年, 4-1. 実験結果 触覚が注目されており, 研究が盛んに行われている. また, 我々 先行研究[2]をもとに被験者が回答したオノマトペを快・不 は何かに触れた際の印象をオノマトペで表現することが多い. 快と結びつく語に分類した.その結果,快と結びつく語は 触感とオノマトペには関係があるという報告もされている 150Hz では 8 個,250Hz では 4 個,400Hz で 10 個回答され [1][2]. た.また,指・平で 2 個,指・甲で 4 個,手首・平で 7 個, しかし, これらの先行研究は触素材に関するもののみである. 手首・甲で 8 個回答された(図 1) .全体的には, 「さらさら」 そこで本研究では振動に注目し, 振動と触感印象の関係を調査 「がさがさ」 「つるつる」 「ちくちく」 「しょりしょり」などが することを目的とした. 多く回答された(図 2) .因子分析の結果からも手首の甲で不 2. 快さ因子が最も低く,不快と感じないという結果になった.し 刺激提示装置 たがって,振動周波数,部位によって触感印象が異なることを 本研究では,DC モータを刺激装置とした.モータを可変抵 確認できた. 抗により周波数を変化できる回路に接続した.また,本研究で が,本研究では周波数の厳密さは問わないため,この手法を採 用した. 実験 1(振動刺激の決定) 8 快オノマトペの個数 快オノマトペの個数 測定し,これを仮の振動周波数とした.相対的な値でしかない 3. 10 10 は WaveSpectra というソフトを使用し,モータの音の周波数を 6 4 2 0 指 平 実験 1 は,実験 2 で使用する振動周波数を決定するために 行った.150Hz,200Hz,250Hz,300Hz,400Hz の 5 種類を 指 甲 8 6 4 2 0 手首 手首 平 甲 150Hz 250Hz 400Hz 図 1:部位,周波数別の快オノマトペの個数 用意した.この 5 つの振動周波数を 2 種類ずつ被験者の利き 手第 2 指に提示し,2 つの周波数が違うか同じかを被験者に答 えてもらった.実験は 15 通り(両者異なる周波数 10 通り, 両者等しい周波数 5 通り)の組み合わせを 10 セットの計 150 試行, 20 代前半の女性 3 名, 男性 2 名の計 5 名により行った. 3-1. 実験結果 表 1:被験者 4 人の平均正答率 4人分 150Hz 200Hz 250Hz 300Hz 400Hz 150Hz 0.78 0.80 0.73 0.90 0.93 200Hz 250Hz 300Hz 400Hz 0.68 0.65 0.70 0.83 0.75 0.70 0.80 0.70 0.63 0.68 本実験は被験者 5 名により行ったが,クラスター分析によ 図 2:多く回答されたオノマトペ(大字)と回答されなかった オノマトペ(小字) り,1 名の実験結果が他の 4 名と明らかに異なるため,除いて 分析した.4 名の平均正答率を表 1 に示す.150Hz と 400Hz 5. は他と比べ正答率が高くなった.また,提示した 2 つの周波 数の差が小さいと回答にかかる時間も長くなり, 正答率も低下 した.以上の結果より,実験 2 で使用する周波数は 150Hz, 400Hz,その間の 250Hz に決定した. 4. 実験 2(触感覚とオノマトペ) 実験 2 は,振動の周波数がヒトの触感印象にどのような影 響を与えるかを調査することを目的とした.被験者は実験 1 と同じ人物で行った.150Hz,250Hz,400Hz の振動を指の甲 と平,手首の甲と平に提示した.その後,被験者に振動の印象 結論 振動において, ヒトの触感印象は振動周波数や部位によって 異なることが分かった. 振動周波数と身体部位の関係の最適化 を考慮する方法を提案した. 文 献 [1] [2] 早川智彦, “オノマトペを利用した触り心地の分類手法, ” 日本バー チャルリアリティ学会論文誌,Vol.15, No.3, pp.487-490, 2010 年 渡邊淳司, “触感覚の快・不快とその手触りを表象するオノマトペの 音韻の関係性, ”日本バーチャルリアリティ学会論文誌 Vol.16, No.3, pp.367-370, 2011 年
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