リスク広がるタイル剥落 欧米では外装を避ける傾向〔PDF〕

Regul∬ Lecture運 載講座
>DBChallenge【 応用】
レ剥落、ドライアウト
今回のKeyWord Bタ イジ
E7 ア
図1〕 高さ45mか ら落下すると地上では時速約 1 00kmに
〔
・
よると、全 国平均で 50年 程度 に伸び
仕上げ トラカ レ撃退法
ラスト:平 田 利 之 )
を抱える。筆者は「剥落リスクは増大し
1フ
3つ 目は、熟練技能労働者 が減少
□
し続 けていることだ。なかでもタイル
□
□
精度 を確保することが、ますます難し
□
□
くなっている。
□
□
□
□
□
□
エや左官工の高齢化 は深刻で、施 工
コンステック執行役員研 究開発本書Б
長
数字で見る剥落 の怖 さ
な
もう 1つ 強調 しておきたいのが、タ
魂
イル剥 落 の恐 ろしさで ある。ここで
は、一 般 的な 14階 建 てマンションを
対策を施す必要がある」と警鐘を鳴ら
例 に、剥落 リスクを考 えてみたい。
この規模 のマンションに、最 もよく
す。(本 誌)
争
使用 される4511ull二 丁タイルを張 り付
タイルは日射や風 雨 にさらされて
けると、張 り付 け枚数 は何 と 100万
も変色や劣化が少なく、耐久性 に優
枚 になる。筆者 の経験 では、築後 10
れた仕上げ材だ。特 に焼成温度 の高
∼ 15年 以上経 過 した建物で は、状
いせっ器質 タイル、磁 器質 タイルは
態 の比較 的良 いものでも2∼ 3%の
半永久的な仕上げ材 といえる。
図 。
タイルで浮きが発 生する 〔
万 一 、高 さ45mか らタイルが落下
問題 点がある。接 着力低 下 による剥
す ると、地 上 到 達 時 の速 度 は時速
落 リスクだ。2015年 2月 10日 、東京
100km程 度。451剛 二 丁 タイル 1枚
が通行するなか、雑居 ビルの外壁 タ
写真1〕 後 を絶 たない タイル 剥落 事 故
〔
この2月 、東京都新宿区の9階 建て雑居ビルで外壁タイルが路上に落下 (左 )。 5月 には札幌市のアパート
で外壁タイルが落下し乗用車が破損 (右 )。 どちらもけが人はなかった (写 真:左 は朝日新聞社、
右は共同通信社
)
約 100g。 これでも人 を直撃すれば、
)
生命 に危 険が及ぶ。二 丁掛 けタイル
様 の事故 は多 く発 生 しており、なか
は約 500gな のでもっと危険だ。
1〕
には死 傷事故 につながった事例 もあ
する傾 向にあると感じている。理 由は
る。剥落対策 は、設計者や施 工 者 に
3つ ある。
1つ は、首都 圏や関西 圏で高層 マ
写真2〕 欧 米 諸 国 で
〔
はほとんど使 用 せず
欧米諸国では外壁にタ
レをほとんど使わない。
イリ
写真は米国ハワイ州ホノ
ルル市の様子。ビルの
外壁は、塗共仕上げか
乾式仕上げだった
の重 さは張 り付 けモルタルも合 めて
写真 。過 去 にも同
イルが落 下 した 〔
とって最優先課題 の 1つ である。
14階 建てマンションの
屋上からタイルが落下す
ると、地 上 到 連 時 の速
度は時速約 1 00 kmに な
り、大惨事を招く恐れが
'あ る (資 料:筆 者
1〕
士上 げには大 きな
しか し、タイルイ
都 新宿 区の繁華街 で大 勢 の歩行者
剥 地約
ているので、設計者や施工者は入念な
ロア6戸
延べ床面積7000m2
外壁面積5000m2
イ
タ
げ材だが、剥落リスクという大きな問題
局さ45m
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タイル は美 観 と耐 久性 に優 れた仕 上
:西 ,III忠
14階 建てマンション
ルの剥落 リスクも増大する。
リスク広 がるタイル剥落
欧米では外装を避ける傾向
講 師
□
丁
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第 0回
(イ
□
ている。耐用年数 が長 くなれ ばタイ
(写 真
193ベ ージまで筆 者 )
こうした危 険性 を踏 まえ、欧米先
るタイル仕 上 げ の設 計 ,施 工 に 当
近 の高層 マンションでは、高層部 に
進 国で は外装 としてのタイル仕上 げ
たっては、万全 な備 えが必要 だ。最
もタイルを張る例が目立つ。
は、一 部 の装飾 以外 はほとんど見 ら
近 は、モルタルの代 わりに有機 系接
タイル 張 り仕 上 げの トラブルで多
を回避 するのが基 本 だ。しか し、最
大敵 はドライアウト
ンションが 増 えていることだ。本 来、
2つ 目は建 物 の供 用 年 数 が長 く
写真幻。日本 でも高層建物 の
れない 〔
着剤 を使 ってタイルを張 り付 ける工
いのは浮 きや剥落であり、この対策
高層建物 にタイルを採用するときは、
なっていることだ。現在、鉄筋 ヨンク
外壁 タイル仕 上 げには、何 らかのガ
法 も普及 し始 めた。こうした技術 を
が最も重要だ。タイル仕 上 げの浮 き
筆 者 は、日常 の 改修 業 務 のなか
低 層部だけにタイルを張 り、高層部
リー ト造 (RC造 )の 供用年数 は、財
イドラインが必要だろう。
幅広 く検 討 し、安全性 を高 める努力
には、タイル陶片 の浮きと、張 り付 け
で、外壁 タイルの剥落 リスクが 増大
は乾 式仕 上 げにするなどしてリスク
務省 の PRE戦 略検 討会 資料 などに
が求められる。
モルタルの浮 きがある。
増大する剥落リスク
NIKKEI ARCHITECTURE 2015-725
I五
90
このように、剥落リスクが付 いて回
20H5-7-25 NIKKEI ARCHITECTURE
91
Regμ laF
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F ト
写真3〕 タイル 陶片 の 剥 落
〔
下地のコンクリート│こ ひび割れが生じたことが原因で、
周囲のタイル陶片が最U落 した
写真4〕 張 り付 けモル タルの浮 きには特 に要注 意
〔
張り付けモルタルの浮きは、大規模なタイル剥落につながるリスクがあるので
要注意。上は、張り付けモルタルの接着力不足が原因
写真7〕 リスクを増 大 させる深 目地
〔
目地に十分なモルタルを充填していない深目地
は、剥落リスクを増大させる
写真5〕 上 げ裏 部分 にはタイル を張 らない
〔
上げ裏部分はタイルの施工が難しいうえ、浮きが生じても確認しにくい。
上げ裏部分は塗装仕上げとすることが望ましい
写真6〕 構 造 スリットをまたぐとトラブジ
〔
レのもと
構造スリットをまたいでタイルを張ると、タイルが下地の挙動に追従できないの
で、構造スリットに沿って剥落が起こりやすい
写真10〕 伸 縮 調 整 目地 を設 けていない
〔
外壁の出隅部で鉛直方向に長いひび割れが生じた。壁面に日射が当たり、
タイル仕上げ層が膨張したことが原因。伸縮目地は必須だ
"Ch』
写真8〕 タイル 打 ち込 みも要 注 意
〔
タイル打ち込み工法も、背面のコンクリートに
充填不良があると剥落の原因になる
Iる ctwe連 載 講 座
にnge怖 刷
写真9〕 躯体 ひび割 れから連 鎖 反応
〔
身
区体コンクリートにひび割れが生じると、ひび割
れをまたぐタイルが割れたり浮いたりする
写真11〕 エフロレッセンスの発 生 は危 険な徴 候
〔
タイル仕上げの背面に雨水が浸入すると、雨水中のカルシウム分が表面に
新出する。これは裏面に雨水が入り込んだサインだ
タイル 陶片が浮 く原 因 は、張 り付
の水分が コンクリー トに奪われ、モル
浮 きを生 じても目視 で確 認 しにくい
タイル打ち込 み工 法 の例 である。深
写真 10は 伸縮 目地 のない大面積
けモルタル 内へ の裏足 の食 い込み不
タルの水 和反 応 が 阻害 され る現 象
ので、すぐに落 下することが多い。上
目地 工 法では、日射 などでタイルが
の外壁 の 出隅部 で鉛 直方 向 に長 い
足や、躯 体 のひび割 れ、タイル裏面
だ。夏 の強 い 日差 しを受けると、下地
げ裏部分 へ のタイル張 り仕上げは避
伸縮すると裏足 に応 力が集 中するた
ひび割れが生 じた例 である。壁面 に
へ の雨水浸入による接着力の低下な
コンクリー トの表面が乾燥 し、モルタ
け、塗装仕上げとすべ きである。
め、裏足 が破 断して落下する例が多
日射が当たり、タイル仕 上 げ層が膨
どが挙げられる 〔
写真9。
ルの水分 を奪う。これを防ぐには、下
い。タイル打ち込み工法は、背面 のコ
張したことにより生 じた。特 に濃色タ
こ充填 不良があると剥落
ンクリー トと
イルの場合は膨張量 が大きくなる。
かわただい
講師:西 川 忠 にし
ヨンステック執行役員研 究開発本部
長。1961年 北海道生まれ。北海道大
学大学院社会基盤工学専攻。工学博
士。83年 から北海道立寒地住宅都市
研究所に勤務。98年 にコンステック入
社。建築物 の調査診 断、耐震補 強、
改修などに幅広く携わる
張 り付 けモルタルの浮 きは、大面
地面 に吸水調整材 を塗布 して、ヨン
積 のタイル落下 につながるので危険
クリー トに水分を奪われないようにす
最近 の建物では、柱梁と雑壁 を縁
写真4〕 。原因の多くは、ヨン
性 が高 い 〔
る必 要がある。ドライアウトは、増加
切 りするために構造 スリットを設 ける
また、躯体 ヨンクリー トにひび割れ
すると、外部 に出る際にカルシウム分
連載の予定 (内 容は変更になる場合があります
クリー ト下地 の清掃不足やモル タル
傾 向にあると言 われているので、注
ことが多い。これをまたいでタィルを
が生 じると、ひび割れをまたぐタイル
が表 面 に析 出す る l写 真11〕 。エ フロ
第 5回
のドライアウト、寒冷地での張 り付け
意が必要だ。
張ると下地 の挙動 にタイルが追 従で
タイル仕上げの新工法
(3月 25日 号 )
の割 れや浮 きが生 じる 〔
写真倒。タイ
レッセンス (白 華 )の 発 生は、タィルや
第 6回
きず、早期 に剥落 を生 じることが 多
ル仕上げの接着力が大きい場合 はタ
張 り付 けモルタルの裏面 に雨水が入
タイルの点検と改修
(9月 25日 号 )
ヤ`〔
写真6〕 。
第 7回
イル面 のひび割れ として現れ、接着
り込んだ ことを意 味す る。接 着力低
シーリングの劣化
(10月 25日 号 )
力が弱 い場合 は浮 きが発 生する。
下 の原因 になるので要注意だ。
モルタルの凍害 などが挙げられる。
このなかで特 に多 いのんゞ
、ドライア
ウトによる剥落だ。これはモル タル 中
NIKKEI ARCHITECTURE 2015-7-25
分のタイル剥落である。上 げ裏部分
はタイル 張 りの施 工 が 難 しいうえ、
の原因 になる。
写真 7と 写真 8は 、深 目地 工 法 と
I良
92
写 真 51ま 開 口部 上 端 の上 げ裏 部
躯体のひび割れとも運動
タイル仕上げの背面 に雨水が浸入
)
(全 12回 の予定 )
2015-7-25 NIKKEIARCHITECTURE
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