基礎現代化学 基礎現代化学 ~第2回~ ~第2回~ 原子の電子構造と周期律 原子の電子構造と周期律 教養学部統合自然科学科・小島憲道 教養学部統合自然科学科・小島憲道 2014.04.18 第1章 §1 §2 第2章 §1 §2 第3章 §1 §2 §3 第4章 §1 §2 第5章 §1 §2 §3 原子 元素の誕生 原子の電子構造と周期性 分子の形成 化学結合と分子の形成 分子の形と異性体 光と分子 分子の中の電子 物質の色の起源 分子を測る 化学反応 気相の反応、液相の反応 分子を創る 分子の集団 分子間に働く力 分子集合体とその性質Ⅰ 分子集合体とその性質Ⅱ 参考書 『現代物性化学の基礎』小川桂一郎・小島憲道 共編(講談社サイエンティフィク) 『原子・分子の現代化学』田中政志・佐野充 著(学術図書) 宇宙からのメッセージ ~フラウンホーファー線~ 太陽の大気中の 様々な原子 太 陽 Joseph von Fraunhofer (1787 – 1826) 太陽周辺の大気中に含まれる原子に吸収された波長が、太陽スペクトル中の暗線として観測される。 原子はそれぞれ特定の波長(エネルギー)の光のみ吸収する。 暗線の波長を調べることにより、太陽に存在する原子種を特定できる。 c E = hν = h λ (参考:http://www.oao.nao.ac.jp/pub/telescope/sun/sun.htm) フラウンホーファー線 フラウンホーファーは太陽スペクトルの中に570本の暗線を発見した。 さらに、この中で特に顕著な暗線に対しては、赤色側から波長の短くなる方 向にA線、B線、C線、D線、E線、F線、G線、H線、K線と命名した。 18族元素の発見 1894年,空気から酸素を除いて得た窒素に比べ,窒素化合物を分解して作っ た窒素は密度が約0.1%低いというRayleighの発表を受けて,Ramsayは同年,空 気から分離した窒素を赤熱したマグネシウムと反応させて窒化マグネシウムとし て取り除くことにより,未知の気体を分離することに成功した.未知の気体は化学 的に不活性であることからギリシャ語の「働かない」(an-ergon)にちなんでアルゴ ン(Argon)と名づけられた.Ramsayはその後,Lindeによって開発されていた気体 の液化装置(1895年)を用いて空気の分別蒸留を行い,ネオン,クリプトン,キセ ノンを発見し,周期律における18族を確立した.こうして周期律は経験則としては, 18族の発見により19世紀末に確立した.一番沸点の低いヘリウムは常圧では固 体とならない.ヘリウムは1868 年に太陽の輝線スペクトル中の未知元素に命名 されたもので,これら18 族元素はメンデレ-フの周期表には無かった元素である. HeのD3線 L. Rayleigh, W. Ramsay, “Argon, a New Constituent of the Atmosphere”, Phil. Trans. Roy. Soc., 186, 187-241 (1895). 化合物から抽出した窒素の重量 大気から抽出した窒素の重量 不活性ガス・アルゴンの発見 0族元素の発見 1894年,空気から酸素を除いて得た窒素に比べ,窒素化合物を分解して作った窒素は 密度が約0.1%低いというRayleighの発表を受けて,Ramsayは同年,空気から分離した窒 素を赤熱したマグネシウムと反応させて窒化マグネシウムとして取り除くことにより,未知 の気体を分離することに成功した.未知の気体は化学的に不活性であることからギリシャ 語の「働かない」(an-ergon)にちなんでアルゴン(Argon)と名づけられた.Ramsayはその後, Lindeによって開発されていた気体の液化装置を用いて空気の分別蒸留を行い,ネオン, クリプトン,キセノンを発見し,周期律における0族を確立した.こうして周期律は経験則と しては,0族の発見により19世紀末に確立した. 希ガス 融点 沸点 He (1895年) ‒ -268.9 ℃ Ne (1898年) -248.7 ℃ -245.9 ℃ Ar (1894年) -189.2 ℃ -186.0 ℃ Kr (1898年) -157.2 ℃ -152.9 ℃ Xe (1898年) -111.8 ℃ -108.1 ℃ 1985年にLindeが考案した空気液化装置 ドイツのカール・フォン・リンデ(Carl Paul Gottfried von Linde 1842~ 1934年) は工業用空気液化装置を 開発して特許をとる。 初期の熱交換器は直径10cmの 外観の中に直径4cmの内観を入れ た長さ100mばかりのもので、それ を円筒型に巻きフェルトで断熱して あった。内管を高圧空気が、外管と 内管の間を定圧・低温の空気が逆 向きに流れるものであった。 図は 実用化された彼の装置の模式図で 三重管が用いられている。 http://frorio.com/ 最新 周期表 遷移元素 Cn Fl Lv 元素の分類 元素の周期には,8番目ごとの短周期と18番目ごとの長周期がある.前者 は最外殻のs,p軌道に電子が充填され,最高8個の電子が収容されることに 基づいている.一方,長周期はs,p,d軌道が合計9個あり,これに最高18個の 電子が収容されることに基づいている.IUPAC(国際純正・応用化学連合)で は,亜族による分類を止め,1族-18族に分類するよう勧告している. 元素の化学的性質は,内殻の電子にはほとんど影響されない.ある元素を 考えたとき,その元素より原子番号が小さい最近接の希ガスの電子配置を除 いた残りの電子を原子価電子または価電子という. この原子価電子の性質がその元素の化学的性質を決定する.元素は大き く分けて典型元素と遷移元素に分類される. 典型元素:周期表の1,2,12-18族の元素を指す.これら以外は遷移元素という. 典型元素は原子価電子としてd電子やf電子をもたず,sおよびp軌道が順次満たさ れていく元素である. 遷移元素:周期表の3-11族の元素を指す.原子番号が増すにしたがってd軌道 またはf軌道に電子が満たされていく元素である.12族(Zn, Cd, Hg)については,こ れを遷移元素と見なすか典型元素と見なすか,化学者の間で一致していなかった が、IUPACでは12族(Zn, Cd, Hg)を典型元素に分類している. ランタノイド:4f電子が順次満たされていく元素の総称で,原子番号57のランタン (La)から71のルテチウム(Lu)までの15元素を指す. 希土類元素:LaからLuに至る15元素とスカンジウム(Sc)およびイットリウム(Y)を 含む17元素を指す.ScとYは4f軌道に電子を持たないが,その化学的性質がランタ ノイドに類似していることからこれらの元素を含めて希土類元素と総称している. アクチノイド:5f電子が順次満たされていく元素の総称で,原子番号89のアクチニ ウム(Ac)から103のローレンシウム(Lr)までの15元素を指す.アクチノイドはすべて 放射性元素である. イオン化エネルギー (eV) イオン化エネルギーの周期性 価電子を原子から引き離すのに必要なエネルギー 希ガスに匹敵 (水銀が 室温で液体である原因) O2: 12.2 eV, Xe: 12.13 eV 原子番号 O2 + PtF6 → O2+[PtF6]− (N. Bartlett, D.H. Lohmann, Proc. Chem. Soc., 14 (1960),) 希ガス元素における最初の化合物 Xe+[PtF6]- の合成 L. Graham, O. Graudejus, N.K. Jha and N. Bartlett, Coord. Chem. Rev., 197, 321 (2000). PtF6 ・N. Bartlettは強力な酸化剤であるPtF6を用いてO2分子から電子を引き抜き、O2+[PtF6]を合成した。 ・彼は、Xeのイオン化エネルギーがO2分子のイオン化エネルギーと殆ど等しいことから、 PtF6を用いてXeから電子を引き抜き、Xe+[PtF6]- の合成に成功した(1962)。 電気陰性度の周期性 Cs: 0.7 Cu: 1.9 Ag: 1.9 Au: 2.4 I: 2.5 電気陰性度 何故、Auの電気陰性度が著しく高いのか 原子番号 Cs + Au → Cs+Au- (イオン結晶) Cs + Ag → CsAg (合金) 金属であるCsとAuをルツボで溶かすとイオン結晶になる。 原子模型の歴史 Thomsonの原子模型(1904) Bohrの原子模型(1913) 長岡半太郎の原子模型(1903) Rutherfordの原子模型(1911) 現在の電子軌道モデル 水素原子の古典的モデル 円運動の釣り合いの式 v r +e (向心力) = (クーロン引力) -e 重量:m 原子核 mv 2 e2 = r 4πε 0 r 2 ラザフォードモデル 原子核に捕捉された電子を無限遠に 引き離すのに必要なエネルギー E Ei = 2.18 × 10-18 J (水素のイオン化ポテンシャル) r=∞ Ei r 電子 -e 原子核 +e → r : Bohr半径 水素の場合:5.29 × 10-11 m 古典的原子模型の問題点 1) 半径rを連続的に変化させることにより、 どのようなエネルギーの光も吸収できるはず。 ⇒ 実際は、特定のエネルギーの光しか吸収しない。 2) 電場の中で電子が動くと仕事をしたことになりエネルギーが減少し、 最後に核に引き込まれるはずである。 (参考) 加速度運動する荷電粒子は 電磁波(エネルギー)を放出する。 -e +e hν 実際は、電子が核に飛び込 むことはない。 Bohrの仮定 (Bohrの原子モデル) 1) 原子中の電子は、特定のエネルギーしかとることが出来ない(量子仮説) 2) エネルギーのやり取りは、特定のエネルギー間のみで起こる(振動数条件) 3) 原子中の電子は、定常状態では古典的に振舞う。 Niels H. D. Bohrs (1885‐1962) ノーベル物理学賞, 1922 「原子構造とその放射に関する研究」 Bohrの原子モデル(1913) 主量子数 水素原子のエネルギー準位と発光スペクトルとの関係 バルマー系列 me e 4 ⎛ 1 1 ⎞ c ⎜ ΔE = − 2 2 ⎜ 2 − 2 ⎟⎟ = h λ 8ε 0 h ⎝ n2 n1 ⎠ ⎛ 1 me e 4 1 ⎞ = R⎜⎜ 2 − 2 ⎟⎟ R = 2 3 λ ch ε n n 8 2 ⎠ ⎝ 1 0 軌道エネルギー 1 リュードベリ定数 = 1.0973732 × 10 7 m −1 ライマン系列 ライマン系列 バルマー系列 パッシェン系列 ブラケット系列 (紫外領域) (可視領域) (赤外領域) (遠赤外領域) n1 = 1, n2 = 2, 3, 4, ・・・ n1 = 2, n2 = 3, 4, 5, ・・・ n1 = 3, n2 = 4, 5, 6, ・・・ n1 = 4, n2 = 5, 6, 7, ・・・ パッシェン系列 ブラケット系列 ライマン系列 バルマー系列 500 nm 200 nm 100 nm 電子は粒子 or 波動? 光は波(波長λ)としての性質だけでなく、 粒子(運動量p)としての性質を併せ持つ p = Mc = Mc 2 / c E = Mc 2 = hν p = E / c = hν / c = h / λ Louis de Broglie (1892‐1987) ノーベル物理学賞, 1929 「すべての物質『粒子』は粒子的性質とともに 波動的性質を持たなければならない。」 ~ de Broglieの仮説 ~ 電子は粒子と波動の二重性を持つ: h λ= p 波で表現される電子の軌道 Bohrの仮定 (Bohrの原子モデル) 1) 原子中の電子は、特定のエネルギーしかとることが出来ない(量子仮説) 2) エネルギーのやり取りは、特定のエネルギー間のみで起こる(振動数条件) 3) 原子中の電子は、定常状態では古典的に振舞う。 ドブロイのモデル λ 2πr n: 整数(1, 2, 3,・・・) λ= n hc hcn E= = のみ許容 λ 2πr r 原子核 存在できる 存在できない Bohrの仮定が説明できた 一次元の箱内の電子(一次元の波動関数) 一次元の箱 e- V(x) V0 境界条件:x = 0, L のところで ψ = 0 ? 0 L x 電子は箱の外側(x < 0, x > L)で V0 → ∞のポテンシャルを感じる 電子の波動関数(一次元) ψ = A sin 2π λ 境界条件を満たす波動関数 ψ x n=3 2π L = nπ のとき境界条件を満たす λ 2π Q sin L=0 x ψ n=2 x λ2 = L λ 従って波長が以下のときのみ定常波が立つ λn = λ3 = 2L/3 ψ n=1 2L (n = 1, 2, 3, 4・・・) n x 0 λ1 = 2L L (端は固定端として数に数えない) 一次元の箱内の電子のエネルギー 1 ⎛ h⎞ ⎜⎜ ⎟⎟ ∴ En = 2 m ⎝ λn ⎠ ここで λn = 2 n=5 エネルギー En 1 1 (mv )2 = 1 p 2 = 1 ⎛⎜ h ⎞⎟ E = mv 2 = 2 2m 2m 2m ⎝ λ ⎠ 2 2L n E5 n=4 E4 n=3 2 1 ⎛ h ⎞ h2n2 ⎜⎜ ⎟⎟ = 2 ∴ En = 2m ⎝ (2 L n ) ⎠ 8 L m E3 n=2 n = 1 E2 (n = 1, 2, 3, 4・・・) E1 結論:エネルギー準位は不連続となる 波動関数の持つ意味 原子核に捕捉された電子の振る舞いは、飛び飛びのエネルギーを もった定在波として表される。定在波は波動関数で表される。 ψ は電子の位置を示すもの? 電子の位置は定められないので、この解釈は成立しない。 (Heisenbergの不確定性原理) Bornは|ψ|2 を、ある座標に電子を見出す確率(確率密度)であると考えた。 x に電子を見出す確率を与える関数 1 ψ x |ψ|2 x 1 ψ : しいて言えば「確率振幅」 x Px = ∫ x + Δx x |Ψ |2 dx 二次元の波(ドラム) n = 1(最もエネルギーが低い) 正面図 半径: r 側面図 + 動径節線(なし),方位節線(なし) 節を数える(端は固定端とし、 数えない) n = 2 (二番目にエネルギーが低い) − − + − − + − 動径接線(0本) 方位節線(1本) 動径節線(1本) 方位節線(なし) 動径方向 (r変化) n = 3 (三番目にエネルギーが低い) + + − + − + − + − + − + 動径節線(2本) 方位接線(なし) − + 動径接線(0本) 方位節線(2本) 方位方向 (θ 変化) 三次元の波(原子中の電子の軌道) z n=1 n=2 (最もエネルギーが低い) (二番目にエネルギーが低い) 動径節:0 方位節:0 x +e 動径節:1 方位節:0 動径節:0 方位節:1 y p波 s波 s波 電子の確率密度 ψ ( x, y , z ) 2 波動関数 節球面 節 ψ 1s 腹 ψ 2s ψ ( x, y , z ) 節平面 ψ 2p 腹 節 1s 2s 2p 原子核に捕捉された電子の振舞いは、飛び飛びのエ ネルギーをもった定在波として表される。 各エネルギーに対応した特徴ある電子の分布をオー ビタル(orbital, 軌道)という。 Orbital http://www.chemcomp.com/Journal_of_CCG/Articles/molorbs.htm 水素の原子軌道関数を節で整理する 動径節 方位節 節の合計 (n − 1) 1s 0 0 0 2s 1 0 1 2p 0 1 1 3s 2 0 2 3p 1 1 2 3d 0 2 2 軌道(二次元表示) n 1 動径方向 (r変化) 方位方向 (θ 変化) 2 3 核の作るポテンシャル(三次元)内の電子のエネルギー 例:水素原子 n=3 1 me 4 − 9 8ε 0 2 h 2 軌道エネルギー 軌道エネルギー n=2 1 me 4 − 4 8ε 0 2 h 2 me 4 1 En = − 2 2 8ε 0 h 2 n 軌道エネルギーの差 me e 4 ⎛ 1 1 ⎞ ⎜ ΔE = En 2 − En1 = − 2 2 ⎜ 2 − 2 ⎟⎟ 8ε 0 h ⎝ n2 n1 ⎠ n=1 me 4 − 2 8ε 0 h 2 電子の軌道(オービタル)を決める3種類の量子数 主量子数 (n) n = 1(K殻),n = 2 (L殻),n = 3 (M殻) 方位量子数 (l) l = 0 (s 軌道),l = 1 (p 軌道),l = 2 (d 軌道) 磁気量子数 (m) (m = +l, …, -l) 水素原子の電子構造(陽子1、電子1) 前回の授業 3px,y,z 3s 3dxy,yz,zx,x2-y2,z2 水素の電子構造 M殻(18個まで) n=3 2s n=2 2px,y,z L殻 (8個まで) 1s n=1 K殻 (2個まで) 1+ e- 電子の量子数:電子の状態を決める因子として、4つの量子数がある。4つの 量子数をそれぞれ、主量子数・方位量子数・磁気量子数・スピン量子数という。 主量子数: 電子殻を決める量子数 方位量子数: 電子殻の副殻を決める量子数 *多電子を持つ原子では、主量子数が同じでも方位量子数の値が異なると、エネルギーが異なる。 磁気量子数: オービタルの広がる向きを決める量子数 スピン量子数: 電子スピンの向きを表わす量子数 *スピン量子数+1/2をもつ電子を “上向きスピン” といい、スピン量子数-1/2の電子を“下向きス ピン”という。 電子スピン(磁石の最小単位):自転による磁気モーメントの発生 NaのD線の分裂 ↓ 電子スピン(S = 1/2)の発見 Uhlenbeck & Gouclsmit (1925) 400 450 550 500 600 650 フラウンホーファー線 Na D線 3P3/2 λ (nm) 700 l l s -s 3P1/2 D1 589.594 nm D2 588.998 nm 3S1/2 Na原子の3p→3s遷移 炎色反応の橙色 右まわり軌道運動と右まわり自転 する電子(全角運動量 = l + s) 右まわり軌道運動と左まわり自転 する電子(全角運動量 = l − s) 軌道運動により電子が原子核から受ける磁場 軌道に電子を配置するときの規則 エネルギーの低い軌道から順に 同じ軌道に電子は2個まで (構成原理) (パウリの排他律) × 2s 2px 2py 2pz 1 s +e- 2s 2px 2py 2pz 2s 1s 1s 水素 +e- H− イオン × 2px 2py 2pz 3個目は入らない H2− イオン 遮蔽効果が軌道エネルギーへ及ぼす影響 軌道に複数の電子が入りだすと 2s 軌道と2p 軌道のエネルギーはもはや同じではなくなる! 水素様原子(電子一個)の場合 2s 多電子原子の場合(例:炭素) n = 2 (L殻) 2p E 2p 2s E 1s n = 1 (K殻) 1s 同じL殻に属する電子でも、エネルギーが異なる 2s 軌道と2p 軌道でエネルギーに差が出る原因 - 2s 軌道と2p 軌道の波動関数の違い 2s、2p 軌道は、内側の1s 軌道による遮蔽を受ける 2s 軌道の電子は、1s 軌道の内側まで浸透できるので、 2p 軌道の電子よりも遮蔽を受けにくい 原子核 2s軌道 2p軌道 多電子原子の電子の軌道エネルギー 3s (n = 3) 2p (n = 2) 2s (n = 2) 1s 軌道より外側にある軌道: 遮蔽の影響で核の電荷(Z)が増加しても エネルギーはそれほど下がらない 0 -5 -10 E / Hartree -15 ∝ − (Z − σ z ) 2 -20 -25 1s 軌道: 遮蔽の影響をあまり受けず、Zに応じて下がる -30 -35 -40 -45 En = − 4 me 1 2 ( ) Z − σ Z 2 2 8ε 0 h 2 n -50 H He Li Be B C N O ∝ −Z 2 1s (n = 1) F Ne Na Mg Z→ → Z eff = Z − σ Z ~ Z 単位:Hartree(ハートリー) = 4.35975 × 10-18 J 軌道エネルギー 多電子原子の軌道エネルギーの順番 E1s < E2s < E2p < E3s < E3p < E4s ~ E3d ・・・ p 軌道には三つの方向の異なる軌道、 d 軌道には五つの方向の異なる軌道が存在する。 それらのエネルギーはすべて同じである。 原子軌道に電子が詰まっていく様子を示す図式 遮蔽を考えなければ、n が小さいほど軌道エネルギーが低いと考えることができるが、 遮蔽を考慮に入れると、この関係が単純ではなくなる。 E 軌道に電子を配置するときの規則 構成原理 エネルギーの低い軌道から順に パウリの排他律 同じ軌道に電子は二個まで 3d軌道より4s軌道のほうが 軌道エネルギーが低い! 理由:3d電子は遮蔽を受けやすい 原子の電子構造にみられる周期性 元素 番号 元素 1 H 2 He 3 Li 4 Be 5 B 6 C 7 N 8 O 9 F 10 Ne 11 Na 12 Mg 13 Al 14 Si 15 P 16 S 17 Cl 18 Ar 19 K 20 Ca 21 Sc ⋮ 主殻 K L M 副殻 1s 2s 2p 3s 3p 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 1 2 3 4 5 6 6 6 6 6 1 2 2 2 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 6 6 6 6 6 6 6 2 2 2 2 2 2 2 3 4 5 6 6 6 6 N 3d 4s 1 1 2 2 4p 4d 4f 軌道に電子を配置するときの三つの規則 構成原理 エネルギーの低い軌道から順に パウリの排他律 同じ軌道に電子は2個まで(逆平行) フントの規則 エネルギーの等しい軌道がある時は、 なるべくスピンを平行に これらの規則に従って電子を軌道に配置することにより、 原子の性質やその周期性をうまく説明できる
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