繰延内部利益の仕訳処理 繰延内部利益を根本的に理解するのは簡単ではありません。 2級検定では、 「決算整理前試算表に記載されている繰延内部利益は、期首商品に含まれる 内部利益」と覚えておけばOKです。 もし、127回2級試験のような内容が出題されても、わかる部分を埋めておけば合否に 影響ありません。しかし、これを深く理解したい方は以下を参考にしてください。 ①はじめに 経済的な価値である資産から、経済的な負担である負債を引いたら、正味の価値である純 資産です。これが貸借対照表のひとつの見方ですが、違う見方もできます。 株主から資金を集めた (借)現金 1,000 (貸)資本金 1,000 銀行から借り入れを行った (借)現金 500 (貸)借入金 500 資金投資して、建物 1200 を購入した (借)建物 1200 (貸)現金 1200 この時点におけるB/Sはこうなります。 B/S 現金 資金の運用形態 300 借入金500 建物 1200 資金の調達源泉 資本金1000 この貸方を資金の調達源泉、借方を資金の運用形態と捕らえます。 株主から1000集め、銀行から500集めた。 その資金のうち、1200を建物に投下した。 残り300は未投下で残してある。 と言うことになります。 この考え方だと、 負債と純資産に、 負債利息を払うのか、純資産配当を払うのか、 負債お金を返すのか、純資産お金を返さないのか の違いはあるものの、根本的な差はありません。 1 ②本店勘定と支店勘定の性質 そう考えると、 本店は支店に現金100を送金した場合、 支店の仕訳は、(借)現金100 (貸)本店100 となります。 この本店100は、本店からの出資である純資産とも、本店からの借入金である負債とも 考えられます。 しかし身内なので、そこは関係ありません。単なる資金の調達源泉と捕らえればOKです。 (外部報告用BSでは本店勘定と支店勘定は相殺されます。) 逆に本店ではこんな仕訳をします。 (借)支店100 (貸)現金100 この借方支店100は、本店にとって、投資(株式)のようなものであり、または貸付金のよ うなものでもあるわけです。 ③支店利益の処理 本支店会計においては、本店は本店、支店は支店で独自の帳簿組織をもっています。 そこでは合併の財務諸表とは違い、本支店間の取引を相殺しません。 支店の処理 支店の個別帳簿上、本店より仕入勘定は立派な費用です。本店勘定は、純資産または負債 をあらわします。さらに支店は内部利益などを控除しない数字で損益を出します。 支店にも支店独自の損益勘定があります。 利益が出たら、こんな仕訳をします。 (借)損益100 (貸)本店100 この貸方の本店100は、個人商店における資本金勘定、法人企業における繰越利益剰余 金勘定に等しくなります。 支店側 損 本店より仕入 700 給 料 200 本 店 100 1,000 益 売 本 店 上 1,000 ××× ××× ××× ××× 損 1,000 2 益 100 本店の処理 本店では、この結果を受けてこんな仕訳をします。 (借)支店100 (貸)損益100 これはこう考えます。 (借)支店100 (貸)支店価値増加益100 (借)支店価値増加益100 (貸)損益100 支店価値増加益(収益)は創作です。 実際にこんな勘定は存在しません。 本店では、支店という投資価値があがったので、もうかったわけですが、 本店があげた収益ではないので、支店価値増加益は相殺して、直接損益を計上します。 本店側 損 益 仕入 2,000 売 給料 500 支 店 上 2,000 ××× ××× 支店へ売上 1,000 ××× ××× 受 取 利 息 1,500 支 店 100 損益 100 ④このままではおかしい 本店は、支店の損益を受けて、こんな仕訳をしました。 (借)支店100 (貸)損益100 この中には内部利益(未実現利益)が含まれています。 本店では純資産を管理しており、全社合計の正確な繰越利益剰余金を出さなければなりま せん。しかし、このままではおかしいです。次ページでおかしい理由を探してみてくださ い。 3 参考このままではおかしい理由 数字は本文とは関係ありません。 ケース① 売れた場合⇒問題なし 本店側 支店側 仕入 100 現金 100 支店 110 支店へ売上 110 損 仕入 本店より仕入 110 本店 110 現金 115 売上 115 売上 115 益 100 損 益 支店へ売上 110 本店より仕入 支店から利益がやってきます。 支店 5 損益 損 仕入 利益を本店に振替えます。 5 損益 益 100 110 5 15 損 支店へ売上 110 本店より仕入 110 支店 5 本店 5 繰越利益剰余金 15 益 仕入 100 支店へ売上 110 繰越利益剰余金 15 支店 5 115 5 売上 115 損 益 115 損益 本店 115 4 115 ケース② 売れなかった場合⇒問題あり 本店側 支店側 仕入 100 現金 100 支店 110 支店へ売上 110 ※ 本店より仕入 110 本店 110 本店より仕入 0 繰越商品 0 繰越商品 110 本店より仕入 110 売上 0 損益 仕入 100 損益 支店へ売上 110 本店より仕入 支店から利益がやってきます。 支店 0 損益 0 利益を本店に振替えます。 0 0 損益 損益 仕入 100 本店 0 売上 0 損益 支店へ売上 110 本店より仕入 0 支店 0 本店 0 0 損益 10 繰越利益剰余金 10 0 ※本当はこういう処理をします(1級)。 損益 期首分 仕入 100 支店へ売上 110 繰越利益剰余金 10 支店 0 110 0 損益 繰越商品 0 外部仕入分・本店より仕入分 110 損益 0 仕入 0 損益 110 本店より仕入 110 損益 0 本当は 10 の儲けが出ていません 期末分 繰越商品 5 0 ⑤内部利益を控除する このままではおかしいです。 そこで、本店はこんな仕訳をします。 支店の期末商品に含まれる未実現利益が10だとした場合 (借)繰延内部利益控除10 (貸)繰延内部利益10 借方の繰延内部利益控除は、利益の減算項目です。 難しいので、単純に費用のようなものだと考えていただいても結構です。 繰延内部利益控除はこの後、 (借)損益10 (貸)繰延内部利益控除10 と、損益を減算させる事になります。 一方貸方の繰延内部利益は、「未実現利益の繰延勘定」です。これは今のところ繰越利益剰 余金にはならないが、そのうち繰越利益剰余金になるという特殊な勘定です。 本店・支店の帳簿上、ここまでの処理で未実現利益はまったく調整されていないので、最 後に本店で調整したわけです。 ⑥内部利益を戻し入れる これは次期会計期末にこう処理されます。 期首内部利益の修正※ (借)繰延内部利益10 (貸)繰延内部利益戻入10 ※ここも難しいのですが、こんな風に考えればOKです。 合併財務諸表とは違い、支店の帳簿上、期首商品は本来の金額より膨らんでいます。 その期首商品が売上原価(損益)に参入されます。 結果、売上原価は過大に計上され、支店の利益が本来の数字より少なくなっています。 当期はその分利益を増やしてやることになります。 貸方の繰延内部利益戻入は、利益の増加項目です。 難しいので、収益のようなものだと考えていただければ結構です。 繰延内部利益戻入はこの後、 (借)繰延内部利益戻入10 (貸)損益10 となります。 6 一方、借方は繰延内部利益となっています。繰延内部利益は未実現利益の繰延勘定だった わけですが、今回晴れて本物の繰越利益剰余金になる事が出来るわけです。 そして、当期の未実現利益についても、再びこんな処理をします。 (借)繰延内部利益控除××× (貸)繰延内部利益××× ⑤まとめ 以上繰延内部利益の処理をまとめるとこうなります。 期首分 (借)繰延内部利益 ××× (貸)繰延内部利益戻入××× (借)繰延内部利益戻入××× (貸)損益 ××× 期末分 (借)繰延内部利益控除××× (借)損益 (貸)繰延内部利益 ××× ××× (貸)繰延内部利益控除××× 勘定を示すとこうなります。 本店側 損 益 価 2,000 売 料 500 受 繰延内部利益控除 15 支 売 上 原 給 ↑期末商品の内部利益 上 3,000 息 1,500 店 100 繰延内部利益戻入 10 取 利 ↑期首商品の内部利益 (期首商品に含まれる繰延内部利益は 15 と仮定) その後、貸借差額 2,095 について (借)損益 2,095 (貸)繰越利益剰余金 2,095 という仕訳がされます。 ©山梨簿記学院 2013 7
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