APS

中小企業の情報化のための企業・サービス(主に ASP に関して)
12月11日 野村 智史
中小企業が情報化するにあたって、様々な手段、サービスが考えられる。その中で昨年か
ら中小企業のためのサービスとして有効であると注目を浴びている、ASP についてとりあ
げる。
☆中小企業の情報化☆
・ パソコンなど、情報化ツールの低価格化
・ 公的支援の整備(ITSSP、通産省の
⇒情報化に追い風
中堅・中小企業情報化推進策)
・ 大企業の情報化
⇒情報化圧力
しかし、自前でシステムを導入するには大きなコスト、運用管理のための人材などの問題。
ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)
ウェブ経由でソフト機能だけを月額払いで利用できるサービス。またそのサービス
を提供する企業。一種の IT アウトソーシング。
ASP ビジネスが米国で本格的に立ち上がり始めたのは 1999 年の春頃。始めは ERP
パッケージを貸し出すサービスから始まった。
日本では 1999 年9月に ASP インダストリーコンソーシアム JAPAN が発足、この
ころから ASP ビジネスが注目される。始めはグループウェアなどコラボレーショ
ン関連が中心。
現在の料金は、サービスの内容にもよるが1ユーザーあたり月額 1000∼2000 円程
度。
日本のASP市場は 99 年には 21 億円、2000 年には 254 億円に拡大し、2004 年に
は 3000 億円を超える見込み。(日本ガートナーグループ調査による)
※ ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)
ERP(Enterprise Resource Planning:エンタープライズリソースプランニング)と
は、生産管理、在庫管理、財務会計など、企業の基幹業務から人事関係まで企業活
動全般を対象とし、資源の有効活用や経営の効率化のために統合的に管理するとい
う考え方である。
ERP を実現するために開発されたのが ERP パッケージである。ERP パッケージは
「統合業務パッケージ」のように呼ばれ、生産・販売・財務会計・人事などの経営
資源を、全社的に一元管理できるという点が特徴である。ERP パッケージ導入前で
も、生産管理、人事管理などひとつひとつを考えてみると、コンピュータで管理は
されていた。しかし、それは、個々のシステムで閉じていて、データの連携や共有
などは行われていず、重複したデータを個々のシステムで持っているということも
少なくなかった。ERP パッケージ導入により、データの連携、共有が図られ、業務
の効率化やスピードアップが可能となるのである。
代表的な製品として、SAP の R/3、オラクルの Oracle Applications、BAAN の BAAN
IV などがある。
・ ASP によるメリット
①
システム構築の初期投資を抑制 投資リスクの軽減
②
システム立ち上げまでの期間短縮 スピーディーなビジネス展開
③
運用管理の負担軽減 人材確保のリスク軽減
④
システムの安全性の向上
トータルコストに関する表
特に中小企業に関しては、経営資源に乏しくとも最新のシステムを使えるというメ
リットがある。
・ ASP の種類
提供するアプリケーションの種類によっていくつかに分かれる。
ⅰ.ERP など業務パッケージの機能をあまり修正せず、そのまま導入するパター
ン
ⅱ.業務パッケージを要求に応じて修正するパターン
ⅲ.グループウェアやイントラネットなど情報共有の機能を修正せずに使うパタ
ーン
ⅳ.EC(電子商取引)関連に利用するパターン
その他、以上のようなサーバ・アプリケーションだけでなくオフィス・ソフトウ
ェ
アのようなデスクトップ・アプリケーションも提供する動きがある。
最も提供で多いのはⅲのコラボレーション。基本かつ汎用的なアプリケーションの
ため。次が EC 関連。また、特定の業務・業種向けのサービスも急増。
ASP 業者はシステム・インテグレータが最も多い(69%)
・ ASP 導入にあたっての注意点
1.アプリケーションに関して・・・果して ASP を利用するメリットがあるのか?
(1) カスタマイズの必要がないもの・・・電子メールやグループウェア
(2) システム自体が急成長するもの・・・EC サイトやベンチャー企業の
基幹システム
(3) 継続的でなく一時的に利用されるもの・・・建設業界のプロジェクト
管理など
以上のようなものは ASP の特性を生かしており、ASP に向いていると言える。
2.プロバイダに関して・・・このプロバイダで大丈夫なのか?
安定性:
ASPのセンターシステムがダウンしてしまったら社内業務がすべて停
止する恐れがあるわけだから、システムがニ重化されているとか、災害
対策、バックアップ体制がちゃんとしている等の強固なセンターシステ
ムがASPには求められる。
信頼性:
場合によっては社内の機密データがASPのサーバ上に置かれることに
なるから、ASPセンターにはセキュリティレベルの高さが求められる。
ASPセンター内の監視体制や管理体制、システム運用者のモラル等も
チェック
起動性:
問題発生時に素早く的確に対応してくれるかどうか、業態が変化した場
合等どの程度のカスタマイズが可能かどうか
その他解約はスムーズにできるか、自社のデータは返却されるのか等々
サービス・レベルの確保・・・IDC(インターネット・データセンタ)
インターネットビジネスを手がける顧客のサーバを預かり、インターネット
への接続やセキュリティ確保などの運用サービスを代行する施設
耐震性に優れた建物、消火施設、非常用電源、物理的セキュリティ設備を備
え、サーバは常に監視されコンピュータセキュリティも対応
SLA(サービス・レベル・アグリーメント、サービスの内容と価格を保証)
を交わしサービス範囲を確認
・ ASP の利用実態(2000 年 7 月日経コンピュータ誌調べ、有効回答数 1637 社)
「現在利用している」と「今年度中に新たに利用予定」はあわせて 12.1%
導入は企業規模に関わらず、導入予定は大企業が中小を上回る
メリット・・・導入企業は「負担軽減」(62.3%)「コスト削減」「業務効率化」
非導入企業は「負担軽減」(40%)についで「メリットなし」が 2
位
ASP に関して期待が少ない
課題・・・導入企業の 1 位は「料金が高すぎる」(31.6%)
非導入企業は「内容がわかりにくい」(22.4%)が導入企業の 2 倍
サービス内容が十分に知られていない
ASPサービスの利用拡大にはサービスの内容のアピールに加え、料金の低価格
化が必要
<参考サイト・文献>
A−SPEED
国内のASP事業を分類、情報を提供
(http://pinkdiamond.com/aspeed/asp.htm)
日本ガートナーグループ
IT関連の調査会社 レポートが見れる
(http://www.gartner.co.jp/)
日経ストラテジー2000 年 4 月号・7 月号
日経コンピュータ 2000 年 3 月号・5 月号・7 月号