「顔面部の血流改善による浮腫み・くすみ改善効果」 指導教員名:金子寿子 所属研究チーム名:○赤川優衣、嵐田真美子、今村桂子、佐々木泉、須藤早紀、田中美奈子 キーワード:浮腫み・くすみ・顔面動脈 目的 筋肉、血管・リンパ、東洋医学的の 3 つのグループに分け、鍼灸アプローチにより顔面部の積極的な血流改善 を試み、それぞれの有効性を比較する。 方法 顔面動脈の血流最高速度の変化を超音波血量計 ES-100V3(Hadeco 社製)で測定し比較する。 筋肉のアプローチ…①鼻筋②広頚筋③眼輪筋④咀嚼筋⑤大・小頬骨筋 血管・リンパのアプローチ…①鎖骨下リンパ節・鎖骨上リンパ節・腋窩リンパ節 ②深頚リンパ節(上部・下部)・浅頚リンパ節③浅側頭動脈、顔面動脈 ④顔面動脈・顎動脈⑤耳介後リンパ節・後頭リンパ節 東洋医学的アプローチ…①手の陽明大腸経②手の少陽三焦経③手の太陽小腸経 ④足の陽明胃経⑤足の少陽胆経 計測原理 ドプラ法:血流計測用プローブを生体の表面に接触させ超音波を、血管を流れる血球に照射しその反射を計測 する。 被験者:30代男性・40代女性・40代女性 実施日:(2011年 7 月 6 日、7 月 13 日、7 月 20 日、8 月 3 日、8月 24 日)水曜日 時間:13:00~13:30 室温:27度 ①使用鍼:「セイリン鍼」「ユニコ鍼」0.16×30mm 6本 ②置鍼時間:15min 結果 <筋肉のアプローチ> <血管・リンパのアプローチ> 30代男性 ④咀嚼筋 (㎝/s) 8 40代女性 ⑤耳介後リンパ・後頭リンパ節 最高血流量 (㎝/s) 0 -2 3.6 3 4 1.7 ① -1 ② ③ ④ 0.6 0 -1 2.8 2.4 0.1 0 1 -0.7 ⑤ 最高血流量 4 2 2 1.3 40代女性 ③小腸経 (㎝/s) 最高血流量 4 6.2 6 2 <東洋医学的アプローチ> ① 0.2 ② 0.2 ③ 11 -0.3 ④ ⑤ -2 -4 ① ② ③ -2.9 ④ ⑤-1.6 以上のような結果が出た中、刺鍼前後で積極的な血流改善が見られたのは筋肉アプローチ咀嚼筋であった。 考察 ・筋肉のアプローチ 筋肉は疲労すると硬縮状態になる。直接刺鍼し置鍼法を用いることによって、筋肉の過緊張が緩和し血流が 1) 改善する。1番効果がみられた咀嚼筋は5つの筋肉へのアプローチの中で、日常的によく使う筋肉で疲労の蓄 2 ) 2) 積も多い。そのためにそこを通過する動脈の血流が阻害されることが考えられる。よってこれを改善することで循 環が良くなった。 ・血管・リンパのアプローチ 後頭部や耳の周囲にリンパ小節が多くあり、そこへアプローチすることにより、血流が改善された。 1) リンパ節へアプローチすると、細胞外液の間質液が流れ、血管から血液が流出するので、血流が良くなる。後頭 リンパ節、後耳介リンパ節へアプローチすることにより頭頂部や後頭部の組織液が流れ、血流の循環が改善さ れた。 ・東洋医学的アプローチ 頭部、顔面部に流れている 5 つの経脈上に、それぞれ頭部二穴、顔面部に一穴を用いて血流改善を試みた。 結果としては顕著な効果は見られたかった。その原因としては、五つの経脈上の虚実を調べてない状態で行な われたものであり、補瀉の手技も行なわなかった。 それでも、効果判定の中で小腸経が一番効果があった。小腸経は黄帝内経において病症を「液」に関わるもの 4) 5) だと解釈し、骨や髄を潤し、体表部では目•鼻•口などの粘膜や皮膚に潤いを与える効果が知られている。 以上の各アプローチの結果を比較すると筋肉アプローチが一番有効であった。 1) 「東洋医学的アプローチ」では臓腑経絡経として十二経絡の虚実の判定を基本とし証という概念で診断する。 3) 顔面だけではなく、身体各部に鍼を刺し、全身の不調を整えることで肌のトラブルを解決していく。 「血管・リンパアプローチ」は、リンパ系に対しては流れの方向に向かって機械的刺激を与える。動脈系に対し 1 ) ては、血管拍動のリズムに働きかけるように、間欠的圧迫刺激が望ましい。よって的確にアプローチできることが 重要とされる。 「筋肉のアプローチ」の緊張などの所見は、ピンポイントにアプローチできるという鍼灸治療の特徴から、治療 1) 直後効果を期待できた。 刺鍼時の生体反応について述べると以下の 6 つのメカニズムに区別できる。 ① 組織破壊による生体防御機転の刺激 ② 筋への刺激により交感神経を、筋の過緊張を緩和し血流循環を良くする刺鍼局所作用。 ③ 筋刺激による交感神経を遠心路とする反射機転。 ④ 皮膚、皮下組織刺激による副交感神経機能を主体的に高め、自然治癒力を高める機転。 ⑤ 坐位時の低周波鍼による全体的で適度な交感神経機能亢進作用。 1 ) ⑥ 臥位時の低周波鍼による全体的な交感神経機能の過緊張を解く作用。 ②のメカニズムから今回の実験で筋肉のアプローチが血流改善において 1 番有効であった。刺鍼により筋肉 の過緊張の緩和が起きるメカニズムの最小の単位は軸索反射であるとされており、刺鍼反応の強さでは、局所 2 ) 反応は全身反応より強くみられ直後の効果が確認出来、それは鍼の最も通常な作用として証明されている。 結論 今回の実験の結果顔面部の浮腫みくすみ改善効果としては、東洋医学的アプローチより日常で使用頻度の 高く疲労の溜まりやすい筋肉である咀嚼筋に対して直接アプローチする西洋医学的アプローチが 1 番有効で あった。 参考文書 1)西條一止 「臨床鍼灸治療学」 医歯薬出版㈱ 2)河野邦雄・伊藤隆造 他 「解剖学 第 2 版」 医歯薬出版㈱ 3)兵頭明 「東洋医学のしくみ」 ㈱新星出版社 4)教科書執筆小委員 「東洋医学概論」 医道の日本社㈱ 5)左合 昌美 「図解入門 よくわかる黄帝内経の基本としくみ 第1版第1刷」 ㈱秀和システム 12
© Copyright 2024 Paperzz