第210号 ダウンロード

アーバンレポート
VOL.2016 – 12
(第 210 号)
http://www.urbankk.co.jp
発行人 ㈱アーバン企画開発 三戸部 啓之
~ 賃貸経営における損害保険の重要性 ~
今後 30 年以内に震度 6 弱以上の揺れが起きる確率は横浜(市役所地点)では 81%と言われており、また近年では異常気象
の影響もあり自然災害(ゲリラ豪雨・ひょう・土砂災害・大型台風・大雪など)の発生も増加しております。こうした自然災害などに
備えるのが損害保険であり、さまざまな自然災害に対応している損害保険を総称して、火災保険といいます。
通常の火災保険は火災以外にも落雷・風災・雹災・雪災が補償されており、水災(ゲリラ豪雨・床上浸水・
土砂災害など)についてはプランにより補償があったりなかったりします。また地震保険は単独での加入ができ
ないため、必ず火災保険とセットで加入します。
■賃貸住宅に必要な保険
賃貸住宅には、オーナーが加入する火災保険と入居者が加入する火災保険があります。基本は「建物」を補償する火災保険はオー
ナーが、「家財」を補償する火災保険は入居者が加入します。そしてそれぞれ、基本の火災保険の内容にプラスして必要な特約を付
ける必要があります。
①オーナーが加入する保険について
オーナーが入る火災保険は「建物」を補償する保険です。火災による損害以外にも、破損・汚損等(例:自動車が飛び込んで
建物が壊れた)も発生する可能性があるので、契約プランを選択する際には注意が必要です。また、火災保険では地震・噴火
またはこれらによる津波を原因とする損害(火災を含む)は補償されないため、契約している火災保険に付帯して地震保険に
加入する必要があります。
地震保険は最高でも火災保険の 50%までの補償となり、補償が充分とは限らないため、場合によっては「地震危険等上乗せ補
償特約」を組み合わせることにより最大 100%の補償が可能となります。(保険会社により名称・補償内容は異なります。)
②入居者が加入する保険について
基本となるのが「家財保険」です。「失火責任法」では入居者が火災を起こし、隣家が延焼した場合であっても重大な過失がな
い限り、その入居者は損害賠償責任を負いません。これは逆の立場から見ると隣家からの火災によるもらい火で自分の家財が燃
えても、失火者に弁償してもらうことはできません。自分の家財は自分で守る必要があるので家財保険で備えることになります。
一方、入居者は賃貸借契約により原状回復の義務がありますので、オーナーに対しては損害賠償責任が発生します。そこで「借
家人賠償責任」の特約を付けると、原状回復費用が補償できます。(共用部分についてはオーナー様が修繕する必要があります。)
弊社の賃貸借契約の場合は基本的に全管協共済会の家財総合保険をご案内しています。この保険は A~C までの 3 コースあ
り、借家人賠償責任の保険金額は全て 2,000 万円です。コースの選択については家財保険金額と保険料を勘案して入居者
に選択していただいております。また、自然災害以外の不測の事態にも備える必要があります。例えば、次にあげる損害保険もリ
スクに備えるためには必要になります。
《施設賠償責任保険》
施設の欠陥や管理の不備などが原因で他人にケガをさせたり(対人事故)、他人の物を壊したり(対物事故)した場合に生じた、
被害者への法律上の賠償損害を補償する保険です。代表的な事例としては
【事例(1)】 屋上アンテナが車に落下
アパート屋上に設置していたアンテナが強風に煽られて落下し、駐車中の車を傷つけてしまった。修理費用の十数万円を大
家さんが負担することになった。
【事例(2)】 室内のガラスで入居者負傷
マンションの室内に設置しているガラス入りの仕切り戸が、取り付けが不完全だったために倒れ、ガラスが割れて入居者が負
傷。大家さんが治療費と慰謝料として数百万円支払うことになった。
万が一の様々な事故に備えるために必要な保険であり、物件の規模によりますが、一般的に年間の保険料も数千円と安く、補償額
が大きいのが特徴です。その割には管理物件でも付保されているオーナー様は多くありません。特に築年数が経過した物件には検討
が必要になりますので、一度お手元の保険証券を見直してみてはいかがでしょうか。
《個人賠償責任保険》
賃貸経営に必要な保険ではありませんが、オーナー様の日常生活でも、他人(いわゆる第三者)に対してケガをさせたり、人のモノ
を壊してしまったりして法律上の損害賠償義務を負うことがあります。例えば次のようなケースです。
・飼い犬が散歩中、通りがかった人に噛みついてケガをさせた。
・買い物に行った際、誤って商品を落として壊してしまった。
・自転車で駅に向かう途中、人にぶつかってケガ(後遺障害・死亡)をさせた。
・子どもがキャッチボールをしていて人の家の窓ガラスを割ってしまった。
こうした身近にありそうなトラブルに対応できるうえ、火災保険に個人賠償責任保険を特約付帯する場合、保険金額(補償額)を
1 億円つけても月々の保険料は百数十円程度です。また、保険対象者も本人のみではなく配偶者、同居の親族、生計を一にする
別居の未婚の子(仕送りを受けている学生など)対象となる人の範囲が広いのも特徴です。
このように自然災害または損害賠償責任など、リスクに応じて必要な損害保険も変わり、様々なリスクに対応できるよう、幅広い商品
があります。事故や災害は、いつ、だれに起こるかわかりませんから、何らかの備えは必要となります。
以前のアーバンレポート 207 号(旧耐震基準と新耐震基準について)でご案内した通り、2017 年(来年)1 月より地震保険
料が改定になります。全国平均では 5.1%の引き上げ幅となりますが、段階的に 19%の引き上げが必要なため 2019 年 1 月、
2021 年 1 月も値上がりする見込みです。
※神奈川県の地震保険料改定率は耐火構造(コンクリート・鉄骨造建物等)11.4%、非耐火構造(木造建物等)11.3%
の値上げとなります。
■地震保険の割引について
新耐震基準である 1981 年(昭和 56 年)6 月 1 日以降に建築確認を受けた建物については、建築年割引(10%)が適用
されますが、それ以前の建物については割引の適用はありません。
しかし、耐震診断(木造で数万円程度)の結果、「耐震基準適合証明書」を取得できれば耐震診断割引
(10%)が適用されます。また耐震基準に満たない場合でも耐震補強を行うことで「住宅耐震改修証明書」
の取得で同様の割引が適用になります。
耐震補強は施工方法により工事費が大幅に変わるため、耐震改修工事をした場合、費用を回収できるのか
が問題になるので、建て替えを含めた検討も必要になります。
実際に今回の値上げに伴いオーナー様のご自宅の保険についてご相談いただいたケースをあげると
【保険期間】2016 年 2 月 24 日~2017 年 2 月 24 日(契約期間 1 年)
【保険料】 火災(家財)保険 145,360 円 / 地震保険 104,320 円 / 合計 249,680 円
⇒ 2016 年 12 月 31 日で解約(解約返戻金 37,700 円)
⇒ 新たに 2016 年 12 月 31 日を始期とした保険に加入することで、地震保険が値上がりする前の
保険料で契約することができます。(同時に 5 年の長期地震保険に加入することで長期割引の適用)
例えば: 満期毎に 1 年契約の地震保険を 5 年間更改した場合
116,160 円(契約期間 1 年)×5 年間=580,800 円の保険料になりますが、
年内に 5 年契約(長期保険)にすると 464,320 円になり、116,480 円も削減することができます。
※保険会社を変更することで、さらに保険料負担を軽減できることもあります。
合わせて火災保険も 5 年の長期火災保険に加入することで、火災保険でも 97,950 円削減できます。
しかし、長期保険契約になるため、年間に支払う保険料 249,680 円(1 年分)から、1,093,170 円(5 年分)となり、
一時的な負担は増えてしまいます。長期保険契約で保険料を抑えたいが、大きな支出を控えたい場合は、長期保険契約で
も一括払いではなく年払い(年間 242,420 円×5 年)を選択することもできます。
コンサルティング事業部では保険代理店としての単なる保険契約だけではなく、どのような損害や事故が起こるかを想定し、リスクに合
った保険設計のコンサルティング提案を致しますので、どうぞお気軽にお声がけください。
コンサルティング事業部 管理受託課
小林 秀史