3.損害保険 - 中国日本商会

3.損害保険
(1) 中国損害保険の現状
市場:
1980 年∼2002 年の間、
年平均 34%で成長した中国保険市場の 2003 年の収入保険料は、
損害保険 869.4 億元(対 2002 年増加率 11.71%)、
生命保険 2669.5 億元(同増加率 28.7%)、
健康保険及び意外傷害保険 341.5 億元(同増加率 69.7%)
、合計 3880.4 億元(同増加率り
増加 27.1%)であった。対 GNP 比に占める保険料は世界で 48 位(保険深度 3.325%、各
国平均は 8.1%)、国民一人あたり保険料は 300.28 元で、世界 71 位である。世界の各国に
比較し、中国保険市場は今後の成長が見込まれる数少ない市場の一つである。
1997 年に生命保険収入保険料は損害保険を抜き、その後も両者の開きが拡大したが、今
後も更に生命保険の成長が見込まれる。
2003 年の損害保険収入保険料の内、自動車保険は 544.62 億元、62.64%を占めた(昨年
比 14.09%の伸び)。中国におけるモータリゼーションの本格的な到来により、さらに自動
車保険の増加が見込まれる。
支払い損害保険金額は 476.32 億元で損害率は約 54.79%だったが、02 年より 71.4 億元
の増加となり、昨年の保険料伸び率 5.92%と比較し支払いの伸び大きく、17.63%の負性増
加がある。そのうち自動車保険の支払い損害金額は 332.07 億元(増加 21.89%)で総支払
い保険金額の 69.72%を占める。未払い保険料は 33.76 億元で 02 年より 16.81 億元(増加
率 49.14%)増加した。結果保険会社の 2003 年度総資産額は 9122.8 億元となった。
監督官庁である中国保険監督管理委員会は、経済発展と個人分野への急速な保険の普及
により、2001 年から5年間の平均成長率を 12%と予想している。2004 年の保険総成長率
は 18%以上と予想、損害保険成長率は 10%―11%を予想している。損害保険会社の保険引
き受け利益率(net)は 4−5%と予想している。
損害保険会社
現在、内国 14 社、外資系 11 社が中国で損害保険事業を行っている。内国損害保険会社
の内、人民保険財産株式会社は 70%以上の市場率をしめる。以下太平洋保険(約 12%)、
平安(約 10%)となっている。外資保険のシェアは 1998 年の 0.64%から 2002 年の 1.15%に
増加した。
2003 年 11 月まででは未だ外資系損害保険会社は営業認可地域、扱い種目、顧客などに
関して内国保険会社に比べて制限をうけているが、2003 年 12 月の中国がWTOに加盟し
た2周年の際、外資保険の営業扱い種目は強制保険を除き、損害保険全ての種目に拡大し
た。(種目増加申請が必要)。開放地域も福州、アモイ、寧波、瀋陽、武漢を増加し、15 都
市までに拡大した。
外資系保険会社の内訳は日本3、アメリカ2、カナダ1、スイス1、フランス1、イギ
リス1、香港1、韓国1。
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(2) 国の保険行政の現状
管理当局
1998 年、中国人民銀行から保険を専管する中国保険監督管理委員会が独立発足し、PICC
会長の馬永偉が主席に主任したが、2002 年呉定富が後任に就任した。2003 年 3 月、保監
会は「副部級」政府機関から「正部級」にレベルをあがり、03 年後半、調整により、1主席、
4副主席、1規律検査書記、1主席助理体制となった。部門は外資保険を監督管理する国
際部を含む 14 部門になった。
法令整備
基本法である「中華人民共和国保険法」は 1995 年 10 月1日に施行されたが、2003 年1月
1日に改定された。また、2003 年1月1日に施行された「保険公司管理規定」に替え、2002
年 2 月1日には、「外資保険公司管理条例」が施行された。2003 年 7 月「外国保険会社管理
規定実施細則」意見募集、「保険会社管理規定」訂正版意見募集等を公布され、正式的な法律
の公布には 2004 年前半になる予定。なお、保険会社ソルベンシー能力についての監督管理
規定も 2003 年に公布され、法令の整備が進められている。
監督強化と規制緩和
保監会の呉定富主席は就任後
1. 市場の健全な発展のため、法令整備と監督強化を実施する。
2. 国有保険会社の株式上場を指導する。
3. 外資系保険会社の進出認可はWTOに加盟時の約束に従って実施する。
事を表明した。その後、以下のとおりほぼその通りに保監会は監督管理を行っている。
1に対して:保険会社のソルベンシー能力についての監督管理規定を作成、保険会社
高級管理人員に関する法律を作成するなど監督を強化。
2に対して:元PICCを改組し、香港市場に株を上場した。平安、新華保険(生保)
の国外と国内の株を上場する準備を指導。
3に対して:営業地域範囲と種目を拡大し、実現階段を分け、約束を実現してきている。
(3) WTO 加盟後この第 2 年の動き
外資保険会社
強制再保険の割合は 2003 年1月より、20%から 15%へと引き下げられた。
保険開放都市の拡大と引受け対象保険種目が拡大された。地域限定の緩和措置である大
規模商業物件や国内物流に関して適用条件が緩和された。
外資系保険会社会社の新規参入に関しては、日本からは損害保険会社では通算3社目と
な る 損 保 ジャ パ ン に 対し 認 可 が 与え ら れ た 。欧 米 系 で はり バ テ イ (Liberty Mutual
Insurance Group)の重慶、Groupama(フランス安盟)の成都でへの営業が許可された。
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内資保険会社
2003 年1月1日付けで自動車保険の使用約款が始まった。この結果、保険料率は政府機
関用自動車保険を中心に大幅に下がり、消費者の選択肢も広がった。自動車保険は内国損
害保険会社にとって収入保険料に占める割合が一番高いものであり、保険料の低下による
各社への影響を見定める必要がある。
2003 年 11 月 6 日、PICC は香港で株式を上場した。資金募集は香港ドル 54 億、全体の
28%の株を発行した。なお AIG と健康保険、意外傷害保険分野での協力契約を締結し、AIG
は約 9%の PICC の株を獲得した。
2003 年中国再保険会社の改組が完成した。
(4) 2004 年展望
保監会呉定富主席は 2004 年内に以下のことを達成したいとした。
1. 保険事業の改革を引続き推進し、企業発展の体制とメカニズム上での障害を除く。
2. 大型の保険会社は国際競争力を有するよう育成し、一方、中小の保険会社は専門分
野で活躍できるよう育成する。
3. 保険市場を更に開放し、WTO 加盟時の約束を厳守する。段階的且つ漸進的に外資
系保険会社に対する業務規制、営業地域等の制限を取り除く。
4. 保険監督管理を強化・改善し、監督管理方法を発展させ、保険会社のソルベンシー
能力の管理と監督を強化する。
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