シミュレーションコロキウム:7月11日 「コンピュータグラフィック」 河口教授 30777 梅城 崇師 1)講義概要 シミュレーションの表現方法であるコンピュータグラフィックスの歴史と現状についての話で あった。特に現在の日本が置かれている立場について熱く語ってもらった。 2)考察 授業中に見た映像について、考察を交えながら感想を書きたい。 まず、月尾嘉男先生が 1967 年に発表された「風雅の技法」である。初めてコンピュータを使 って作られた作品であり、一枚一枚をプロッタし、それを 16 ミリにコマ撮りして動画とした。現 在の CG の元祖とも言える作品で、逆に CG が 30 年程度の歴史しかないということを実感させら れた。コマ撮りにしても非常にきれいに図形が動いており、技術の高さがうかがえる。学生時代 に夏休みをつぶして作ったと言われるが、当時にしては完成度の非常に高いものであると思う。 次に 1972 年に発表された、指のシェーディングアニメーションを見せてもらったが、とても 30 年前の技術とは思えなかった。当時のコンピュータの性能を考えると、ここまでできていると いうことに驚嘆せざるを得ない。ボイジャー飛行のアニメーションも見たが、現在でも十分通用 するもので、結構な完成度である。 更に、1980 年に発表された、市松模様とガラス玉による世界初のレイトレーシングモデルを見 せてもらった。当然まだ私は生まれていない。現在では1万円程度のソフトで簡単にできるが、 初めて行った際は苦労があったであろうと思う。何せ、現在の CPU の先祖である i80386 の更に 10 年も前の話なのである。あれ程綺麗なグラフィックを出力するための苦労は容易に想像できる。 以上のように、CG の歴史を見て、コンピュータのダウンサイジングの勢いの凄さを感じる。 30 年前に大学生が夏休みかけてやったことは、今は講義時間にでもできる。20 年前にスーパー コンピュータで1ヶ月費やして計算した特殊効果も、今ではどのパソコンでもリアルタイムに可 能なのである。更に現在では、メタボールなどによる形状表現や、ラジオシティやリフレクショ ンによる光表現も開発が進んでおり、テライユキに代表されるようなバーチャルアイドルや、全 編 CG の映画が当然のように作られている。 そこで、先生も言われていたことであるが、日本の技術がアメリカに比べて遅れ気味である。 CG ソフトとしては、日本産は Shade と六角大王が有名であるが、プロユースとしては Adobe 系 や 3D Studio MAX などの外国産が多勢である。ハードウェアはもっと悲惨で、Ge Force に代表 される NVIDIA はアメリカで、RADEON に代表される ATI はカナダである。日本では、PS2 の グラフィックチップを東芝が作っているくらいである。 また、アメリカではハリウッドという巨大な映画産業の上に、ILM や DreamWorks という CG 製作会社が構え、そこに SGI や Intel ベースのスーパーコンピュータレベルのマシンを揃え、物 理学やら解剖学やらの博士を雇いといったことをして、最先端の映像を作り出している。日本で はそのような企業は存在しない。 韓国ソウル大や、中国清華大では、国策としてそのような分野に力を注いでいるようであり、 たしかに日本も注ぐべきである。このような、既存の技術を使ってそれをより高度なものにして いくというものは日本が得意な分野であった。現在の日本が、欧米やアジアに対して対抗できる とすれば、汎用コンピュータよりも、先の PS2に示されたようなゲーム分野ではないだろうか。 実際に、PS2 の描画プロセッサ「エモーション・エンジン」は世界最高水準であり、ゲーム機シ ェアもトップである。この分野を通して世界を狙うことが、日本が映像産業に対して世界に冠た れる唯一の道ではないかと思う。
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