単年度試験研究成績 (作成 平成16年3月) 研究課題名:県産米及び穀類の新規需要を開拓するための加工技術の開発 (低グルテリン米の利用に関する研究) 予算区分:県単 国庫 委託 担当研究室:食品開発部門資源利用担当 研究期間:継・中 担当者:大能俊久 平15年度(平15∼19年度) 協力・分担関係: 1.目的 腎臓疾患の患者はタンパク質の摂取を制限されるため、タンパク質の少ない米飯を主食 とすることが多い。新形質米として育成された低グルテリン米は、易消化性のグルテリン が少なく難消化性のプロラミンが多く、従って消化されるタンパク質が少ないため腎臓疾 患患者に向いていると考えられる。県内での生産量も増えており、平成15年度は400トン 以上の生産が見込まれている。 しかし、低グルテリン米は米飯としての食味などに問題があると考えられる。そこで、 低グルテリン米の食味の改良とともに包装米飯などの商品化を目指すことを目的とする。 今年度は、低グルテリン米の成分や米飯テクスチャーなど、基本的な特徴について検討 した。 2.方法 1)試料 試料は低グルテリン米大潟村産春陽を使用した。対照として普通精米あきたこまち を用いた。 2)成分分析 水分は135℃3時間乾燥法,粗タンパク質はケルダール法,粗脂肪は酸分解法,灰分 は550℃5時間直接灰化法,炭水化物は差し引き法とした.また、脱脂デンプンを調 整して、ヨウ素呈色比色法により、みかけのアミロース量を求めた。 3)タンパク質のSDS-PAGE 全粒粉から1.51%トリス、4%SDS、48%尿素、20%グリセリン、5%メルカプトエタノールを含むpH6.8の水 溶液でタンパク質を一晩抽出してSDS-PAGEを行った。 4)米飯テクスチャー 精米をそのまま、あるいは2.5倍量の蒸留水で5回水洗した後、1.6倍量の炊飯溶液に1 時間浸漬した。ナショナル電気炊飯器SR-W100で炊飯し、2時間後の米飯テクスチャーをテンシ プレッサーで測定した。 3.成果の概要 低グルテリン米は、粗タンパク質と粗脂肪があきたこまちに比べて少なく、みかけのア ミロース量が多かった(表1)。SDS-PAGEから、低グルテリン米でグルテリン関連のタン パク質が減少してプロラミン関連のタンパク質が増加していることが分かった(図1)。 また、米飯テクスチャーは低グルテリン米があきたこまちに比べて非常に硬く、粘りはほ とんど同じで、粘りを硬さで割ったバランス度は低い結果となった(表2)。 春陽は母:ニホンマサリ変異体、父:北陸153号であり、あきたこまちやコシヒカリな どの良食味品種から作られたものではない。そのため、アミロース量が多かったのであろ う。アミロース量が多いことと硬いタンパク質であるプロラミンが多いこと、が原因で低 グルテリン米は米飯テクスチャーが硬くなったと推察している。 あきたこまち 低グルテリン米 表1 低グルテリン米の成分 水分(%) 粗タンパク質(%) 粗脂肪(%) 灰分(%) 炭水化物(%) アミロース量(%) 15.7 6.1 0.7 0.4 77.1 14.5 15.7 5.6 0.5 0.4 77.8 21.5 glu:グルテリン pro:プロラミン 94.0k 67.0k 43.0k 30.0k glu(重合) glu(酸性サブユニット) glu(塩基性サブユニット) 20.1k 14.4k pro A:あきたこまち G:低グルテリン米 A G 図1 低グルテリン米のSDS-PAGE 表2 あきたこまち 低グルテリン米 低グルテリン米 低グルテリン米の米飯テクスチャー 水洗の有無 硬さ(N) 粘り(N) バランス度 なし 32.0 10.1 0.318 なし 40.4 10.3 0.261 あり 41.0 10.5 0.263 4.今後の問題点と次年度以降の計画 日本では軟らかくて粘りが大きい米飯が好まれることから、低タンパク質米の米飯テク スチャーを軟らかくする方法について検討していく。 5.結果の発表、活用等 県内企業の技術指導等で活用する。
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