ウサギ編:回答者 小沼 守先生

ウサギ編:回答者
小沼
守先生
Q1:ウサギの胃潰瘍の診断はどの様に行うのでしょうか?
A1:確定診断は陽性造影検査か、内視鏡がないと確定診断ができませんが基本的には両方
の評価は難しいです。よって、24 時間以上の絶食があった場合は、胃酸が強いため胃潰瘍
になると報告がありますので、当院では 24 時間以上の絶食を疑う症例は胃潰瘍があると仮
判断し治療をします。
Q2:カイウサギの透明な鼻汁について
4-5 歳のカイウサギが 2 ヶ月前より透明な鼻汁を排出しております。パスツレラ検査で陰
性であり、くしゃみ、膿性鼻汁、食欲不振等の症状はありません。ニューキノロン系の抗
生物質の投与を 2 週間継続しましたが、変化がありません。治療の必要性を教えてくださ
い。また、他のウサギに対して病原性はありますでしょうか?
A2:Pasteurella multocida は弱い菌なので分離できない場合もありますし、一度広域抗
生物質を使用したら死菌してしまいます。すでにニューキノロン系の抗生物質を投与して改
善が得られないとしたら、理由として以下が考えられます。①細菌性ではない、②ニューキ
ノロン系に耐性のある菌(その場合はゲンタマイシンの点鼻もあります)
、③その他の疾患
(歯牙疾患、鼻涙管閉塞、胸腔内疾患、何らかの刺激物、ストレス)です。くしゃみが比較
的単純な原因のことも多いので、特に、環境の問題(不適切な温度や湿度、過度な干渉、不
衛生なケージ、繊維質不足の食生活)をもう一度評価してください。それらに問題がなく、
くしゃみに流涙症が併発している場合は、歯牙疾患、鼻涙管閉塞を除外するためマンモグラ
フィーなどの頭部 X 線検査または涙管洗浄等も検討してください。
Q3:ウサギでの消化管造影検査は、造影剤投与後、胃からの排出が何時間待てば閉塞と判
断し手術にふみきりますか?また、直腸までの通過時間はおよそどれ位でしょうか?
A3:ヨード系の造影剤を使用すれば早ければ 30 分以内、遅くとも 1 時間以上胃内から排
出されなければ閉塞を疑います。ただし緊張などで消化管が停滞することもありますので、
流れる時間だけではなく臨床症状(食欲廃絶、元気消失)やショック状態(低体温、徐脈、
低血圧)であるかが手術をふみきる条件となります。もちろん手術前に貧血や肝リピドーシ
ス、腎機能低下などがあるか確認し、それらがあればその対症療法も行います。直腸までの
通過時間ですが、ウサギの便は、通常便と盲腸便に選択的に排出されますので言及できませ
んが、通常便は 4-5 時間、一番長くかかる盲腸便は 12 時間くらいかかります。ただし犬
猫のようにウサギで直腸までの通過時間を計るのは特に臨床的意義はないと考えられます。
Q4肥満ウサギは普通のウサギに比べどんな疾患のリスクが高いのでしょうか?
A4:肥満ウサギはほとんどがペレット中心の食生活です。そうすると繊維質不足で肥満と
なります。食事中の繊維質の役割は毛球症の予防、盲結腸の働きを促進、栄養素の消化、腸
内細菌叢の調節(腸性毒血症の予防)を行っております。また、ペレットは高蛋白、高可消
化炭水化物、低繊維なので、これだけだと高蛋白が食糞の低下を招き、高可消化炭水化物は
腸性毒血症を誘発し、低繊維は盲腸の異常発酵により腸性毒血症を促してしまうので、肥満
ウサギはちょっとしたきっかけで食滞などの病気になりやすくなると考えられます。
Q5ウサギの吸入麻酔はイソフルレンよりセボフルレンの方がよろしいのでしょうか?
A5:イソフルレンは呼吸器系経由で主に代謝されるので、肝臓や腎臓に障害をもつような
ウサギでも安全な麻酔薬です。イソフルレンの欠点はガスの臭気により呼吸抑制反応(息止
め)があることです。セボフルレンはガス臭気が尐ないので呼吸抑制反応があまりないこと
でウサギには使用しやすいですが、
代謝が早すぎる場合もあるのでイソフルレンの方が臨床
的には使用しやすいと考えられます。尚、ハロタンは可燃性で血管拡張や血圧低下を招くの
であまりお勧めできません。
Q6:術前に転移像の認められなかった子宮腺癌のウサギにおいて卵巣子宮全摘出を行った
場合の予後について教えてください。また、摘出後の化学療法等を検討するべきか教えて
ください。
A6:ウサギでは転移病巣の治療に成功した報告はありません。犬猫ではドキソルビシンや
白金製剤のシスプラチン、カルボプラチンが用いられますが、ウサギにおける安全性が確立
されておりません。よって術後の治療は必要なら疼痛管理(NSAIDs やブトルファノー
ル)が中心となります。転移があるとしたら症例により術後 5 ヶ月~2 年で発現することが
あります。よって当院での経過観察法は、免疫賦活作用のあるサプリメント(AHCC、Dフラクション)を投与しながら、術後 2 年は 3-4 ヶ月に 1 回の X 線検査、半年から 1 年に
1 回全身の精査を行っております。
Q7:強制給餌の投与量を教えてください。
A7:MS ライフケア(イースター)やクリティカルケア(OXBOW)などのウサギ専用粉
末飼料でも良いですが、警戒心の強いウサギにはいつものペレットフードを粉末にして、茶
こしし、それに水か 100%果汁または野菜ジュース、時にヨーグルトなどで適当な濃さにし
て与えます。それらをシリンジの先穴が大きい経腸栄養注入シリンジにて 1 回 5-15ml/kg
与えます。投与回数は最低限 1 日 1-2 回ですが、イレウスの症例では受け付けない場合も
ありますし、極端な消化管停滞を示す場合は、1 日の水分必要量も考えて、状態をみながら
尐量を数回に分けて与えるほうが理想的と考えられます。
Q8:ウサギの前立腺疾患は去勢後の予後は良いのでしょうか?
A8:去勢後は前立腺腫大が改善し、排尿障害がなくなるので予後は良いと考えられますが、
膀胱結石などを併発している場合は、治療に時間がかかることがあります。
Q9:ウサギ膀胱造影に使用するカテーテルと造影剤の種類と手技を教えてください。
A9:当院で使用しているカテーテルはアトム栄養カテーテル(3-6Fr, 体の大きさにより
選択)です。造影剤はイオン性製剤のイオタラム酸メグルミン(コンレイ)を 5-10ml / head
を使用し、雄の場合は無麻酔で陰茎からカテーテルを挿入し造影剤を注入しております。
フェレット編:回答者
三輪
恭嗣先生
Q1:フェレットのインスリノーマの診断と治療法と生存率
A1:基本的に血糖値の測定結果で以下のように判断しています。
Glu<60
インスリノーマと仮診断
60<Glu<80 インスリノーマが疑わしい
80<Glu
インスリノーマの可能性は低い
60-80 の場合には後日再測定、もしくは 2~3 時間の絶食後再測定を行うか何らかの疑わし
い症状が出たら再検査をお勧めしています。
以前は同時にインスリン濃度の測定を行うこと
も勧められていましたが、基本的にはインスリン濃度の測定意義はそれほど高くなく、あく
まで血糖値の測定結果を補助的に支持する程度だと考えられています。CT も含め画像診断
の有効性はそれほど高くなく、確定診断は試験開腹により病理学的に診断します。
Q2:インスリノーマに対する内科療法(ステロイドの使用方法)とアログリセムの使用は
A2:臨床症状と血糖値の測定結果により、食餌療法のみ、食餌療法とステロイドの併用に
より治療しています。ステロイドは 0.25-2 ㎎/kg,SID-BID の範囲で定期的に(2 週間~2-3
ヵ月)血液検査等により副作用の有無を確認しています。副作用がみられる場合はステロイ
ドの量を調整するか、肝庇護剤や H2 ブロッカーなどを併用します。アログリセム(ジアゾ
キシド)は、以前国内で入手できずかなり高価な薬だったのであまり使用していませんが、
最近ではシェリングプラウから入手できるので、ステロイドの副作用(肝臓や消化器という
より、肥満が多い)がみられる場合や何らかの理由でステロイドが使用できない際には使用
しています。ただ、やはりプレドニゾロンに比べると高価な薬です。
Q3:脾腫と診断する際の超音波検査所見(大きさや形など)
A3:脾腫は単純にフェレットの通常の大きさよりも明らかに大きい場合に脾腫と言ってい
ますが、具体的な大きさは主に主観的なものです。大切なことは脾臓の大きさではなく大き
くなりすぎた脾臓により動きにくいとか四肢で立ち上がれないなどの臨床症状がみられる
かということと、
脾臓の表面や内部に腫瘤やエコー源性が異なる部分があるかどうかなどで
主に判断しています。
Q4:巨大食道症の治療と管理の仕方
A4:残念ながら巨大食道症に対する有効な治療方法は私の知る限り報告されていないと思
います。対症療法として立位による給餌と給餌後 15-60 分くらい立位を維持し、常に誤嚥
に注意するように飼い主様に伝えています。流涎がひどい場合や症状(逆流性食道炎など)
によってはメトクロプラミドやスクラルファートなどを使用することもあります。
Q5:フェレットにおける総胆汁酸の測定意義、総胆汁酸の基準値や検査センター
A5:フェレットの総胆汁酸測定の意義を詳細に調査した報告は今のところありません。こ
のため、食前食後に測定することの意義や正常値についても不明です。参考として、猫での
解釈を外挿するということがアメリカで言われています。現在、VetScan(アメリカでは比
較的一般的に使われており、総胆汁酸も測定できる)でのフェレットにおける正常値がある
か確認してもらっています。
Q6:フェレットの凝固系の項目と基準値
A6:フェレットの凝固系検査と基準値に関しては一つ報告されています。PubMed など
で使用した薬剤や結果が abstract として閲覧できます。
Vet Clin Pathol.2008:37(3).pp286-288. Coagulation values in normal ferrets (Mustela
putorius furo) using selected methods and reagents.
本院では、ルーチンでの凝固系の検査は行っておらず、何らかの出血傾向が疑われる場合
には輸血を行ってから処置を行うなどで対応しています。ただ、セミナーでもお話ししたよ
うに一例ですが、肝臓の FNA(25G 針使用)を行い帰宅後皮下および腹腔内の出血と思わ
れる原因で斃死した症例がいるため注意は必要だと思います。
Q7:肝細胞癌の肝葉切除で特別な方法は行ったか?
A7:通常の犬や猫で行う方法で行いました。通常の外科器具以外で使用したものはヘモク
リップのみです。また、腫瘍の基部が大きな場合には炭酸ガスレーザー(
(有)ニューテッ
ク、ULTRA DREAM PULSE DELUXE DS-40U)を使用することもあります。
Q8:スライドにあった右副腎を左右から摘出した症例では超音波吸引装置などの特別なも
のを使ったのか?
A8:通常の外科器具とヘモクリップで摘出しました。本院には超音波乳化吸引装置などが
ないため使用していませんが、
右の副腎摘出に対しては各々の先生がそれぞれの方法を試し
て良好な成績が得られているようです。
Q9:スライドにあった胆管閉塞の症例のオペ後の内服やフードの変更は行ったのか、した
方がよいのか?
A9:一般的な肝庇護剤(ネオミノファーゲン、グルタチオンなど)や利胆剤(ウルソなど)を
術後約 2 ヵ月使用し、その間 2-3 週間隔で血液検査を行い異常がないことを確認して投薬
を中止しました。中止後も 2~4 週間間隔で血液検査を行い、現在は 3 ヵ月おきに検診を兼
ねて経過を観察しています。
Q10:脾臓や肝臓の FNA は無麻酔で行っても危険ではないのか?ニュートリカルテクニ
ックを使うのか。
A10:ほとんどの場合、全体が均一に腫脹した脾臓や肝臓の FNA は無麻酔で行っていま
す。
その際にはしっかりと保定するか御質問にあるようにニュートリカルなどを舐めさせな
がら行っています。非常に暴れるもしくは腫瘤性病変などがみられ特定の部位を FNA した
い場合には麻酔や鎮静をすることもあります。麻酔や鎮静はイソフルレン単独もしくはメデ
トミジンやミダゾラムなどを使用しています。
Q11:ウサギとフェレットの心電図での R 波の高さの正常値はどのくらいまでですか?
A11:フェレット:P波は猫同様小さいですが、R波は犬と同様高いです。報告が2つあ
ります。R 高さ(mV) ①2.21±0.42(1.4-3.0)と②1.46±0.84 です。ウサギ:第Ⅱ誘導では P
波、R 波、T 波が小さくR波は参考文献に載っているのは 0.03-0.039mv です。
参 考 文 献 : Ferret, Rabbits, and Rodents Clinical Medicine and Surgery.2nd
ed.pp58-66,213.2007.WBsaunders.New York
Q12:フェレットの輸血の方法、抗凝固剤、ステロイドの使用、PCV が何%以下の時考
慮するのか、副反応の頻度・交差試験を行えば安全かどうか?
A12:基本的にフェレットには明確な血液型がなく、犬猫に比べると比較的安全に輸血が
行えるとされています。輸血の判断や方法に関しては基本的に犬と同じです。ステロイドの
使用や交差試験の実施に関してですが、当院では、通常、輸血前にプレドニゾロン(1-2 ㎎
/㎏)を単回投与しており、交差試験は実施していません。副作用に関しては、複数の供血
フェレットからの輸血や複数回の輸血症例も含めて経験していません。
爬虫類編:回答者
田向
健一先生
Q1:ケヅメリクガメ 17.5 ㎏の大きさの X 撮影は可能でしょうか?
A1動物用 X 線診断装置では一般に困難と思われます。当院では、ヒト用 X 線装置を用いて
います。撮影距離 100cm,12mas,100kvp 程度で撮影を行っています。
Q2:オキシトシンの量はどのくらいでしょうか?
A2:大型のカメでは多量のオキシトシンが必要となりますが、通常、1U/㎏ im の用量を
使っています。
Q3.抱卵期間は餌を食べないとのことですが、大型の場合、3~4ヶ月も食べないのでしょ
うか?
A3:大型のカメでも3~4ヶ月絶食することは考えにくいので、生殖器系疾患として、卵
停滞、卵塞、卵胞鬱滞などが考えられます。
Q4:食欲旺盛のカメは消化管の運動が発達して肺野に重なってみえるから、肺野が見えな
くなるのでしょうか?
A4:ラテラル像、RC 像において、特にリクガメで盲腸を有する種類では、餌を食べると消
化管内容物が背側に膨らみますので、それが肺と重なって肺野が見えにくくなります。
Q5:12~15 歳のミシシッピアリゲーターの食欲不振、腹部やや膨満、発情様行動があり
食欲不振の原因として考えられるものは何でしょうか?ちなみに X 線検査はできません。
Q5:食欲不振は様々ですので、X 線検査、血液検査などを行い、診断する必要があります。
Q6:テレホンカードを食べてしまった。食欲不振と因果関係はありますか?
A6:恐らくですが、その可能性は低いと思われます。
Q7:外見から雌雄の区別はつきますか?
A7:総排泄口の形態で見分けると言われていますが、私は存じていません。
Q8:水棲カメの強制給餌は何を使っていますか?
A8:テトラ社のレプトミンというカメ用ペレットをすりつぶして液状にしてゾンデで与え
ています
Q9:トカゲの腹水貯留、元気食欲消失の個体がいます。原因など考えられるのであれば教え
てください。
A9:身体検査、血液検査、画像診断などを用いて、総合的に診断しないとなんともいえませ
ん。
小鳥編:回答者
小嶋
篤史先生
Q1:2ヶ月まえから嘔吐をしている8歳のタイハクオウムが、食欲はあるが、食べた物は
1~2日のうちにすべて戻し、便も出ていない。4時間後の X 線造影でもそ嚢から流れず、
腺胃は拡張し、腺胃と筋胃内にはビーズが存在する。腸内のビーズは1週間ごとの X 腺で
は位置は変移し、肥厚している様子である。輸液と内服で維持しているが、これからどの
ように検査・治療をすれば良いのか、教えてください。
A1:実際に診ていない症例の話は難しく、見当違いな話をしてしまうことが多々あります
ので、参考程度にお聞きください。まず全身状態を把握するためCBC、生化は行うべきか
と思います。次に腺胃拡張の鑑別診断として、PDD、胃炎、胃がん、抗酸菌症、異物閉塞、
鉛中毒、アスペルギルス症などの可能性を否定しておけると話がスムーズです。
さて、
造影剤がそ嚢から通過しない場合、
まず後部食道での通過障害がまず考えられます。
これは肺炎に続発して生じることが多いのですが、
他の原因による食道障害によっても生じ
ます。また、後部食道に物理的閉塞が無くても、消化管の神経的障害によりそ嚢に食滞が生
じることがあります。特に本症例の場合、呼吸器疾患の徴候が記載されていないこと、
吐出では無く、嘔吐と記載されていることから、後部食道閉塞といいきれない状況にありま
す。物理的なイレウスの場合、メトクロプラミドはリスクがありますが、外科のリスクは鳥
で非常に大きいため、
物理的イレウスが確定されていない状況下での投与は価値があります。
それでも通過しない場合、胃チューブの設置が推奨されます。もし内視鏡があれば後部食道
の状況を事前に確認しておくと良いと思います。
さらに内視鏡ガイドで口腔内より胃にチュ
ーブを挿入できますので、通過時間の速いイオヘキソールを流し、X線撮影を行い、胃以下
の通過障害の有無を確認できます。胃以下に通過障害がなければ、そ嚢を切開し、チューブ
を外に出し留置します。また、切開の際にそ嚢の一部を採取し、病理検査を実施することで
PDDをチェックすることができます(精度はやや低いですが)
。胃以下に通過障害があれ
ば、開腹手術を行い、障害を取り除いてください。内視鏡が無い場合、そ嚢を切開せずに後
部食道へチューブを挿入するのにはややコツがいります。うまく挿入できなければ、そ嚢切
開下で後部食道の入り口を目視して挿入するしかありません。もし、外科を行わないのであ
れば、神経性イレウスであることを祈り、メトクロプラミドを倍量投与、炎症性の後部食道
閉塞であることを祈り、デキサメタゾンをショットで投与し、通過が再開するのを待つぐら
いでしょうか。肺炎像が見られているようでしたら、ネブライザーも試してみるとよいと思
います。
Q2:卵管を摘出した場合に排卵が停止すると聞きますが、本当でしょうか?
排卵があった場合のリスクを教えてください。
A2:卵管と卵巣の間にはフィードバックが存在し、卵管を摘出した場合、
排卵は停止します。しかし、何事にも例外はあり、卵管を摘出しなければならないほどの異
常(=過発情)がある個体では、排卵が生じる可能性があります。しかし、このような個体
では卵管摘出をしなかったとしてもいずれ卵墜は起きるでしょうから
(卵管摘出術でおなか
を開けると、卵墜がすでに起きている例は非常に多いです)
、卵管摘出を行わない理由には
なりません。卵墜のリスクですが、多くの個体が、いくら卵墜しても問題を起こしません。
しかし、中には癒着による消化管蠕動障害を起こす例がありますし、卵墜直後にショック死
する例も稀ですがあります。ちなみに、私はこれまでのところ、卵管摘出個体の卵墜死亡例
には遭遇したことがありません。