疾患別説明書:くも膜嚢胞 (AC-60) 船橋市立医療センター脳神経外科(平成 14 年 9 月 5 日作成) 1、くも膜嚢胞(Arachnoid Cyst)とは くも膜嚢胞とは、くも膜でできた被膜の中に髄液が局所的に貯留している状態であり、 先天的な疾患である。発生頻度は人口の 0.1∼0.3%といわれている。 大脳縦裂間 頭蓋骨 硬膜 くも膜 軟膜 皮質 橋静脈 くも膜嚢胞 ①中頭蓋窩、シルビウス裂 (50-65%) 四丘体部 トルコ鞍上部(5-10%) 円蓋部(5-10%) 斜台部 小脳虫部 大孔 小脳橋角部 中頭蓋窩 小脳橋角部 トルコ鞍上部 円蓋部 小脳虫部 -1- 2、くも膜嚢胞の分類 1)症状の有無による分類 (1) 無症候性(無症状) たまたま CT, MRI の検査を行ったときに偶然に発見される。 くも膜嚢胞による自覚症状も他覚症状はない。 (2) 症候性(症状あり) ① 嚢胞に接した頭蓋の局所的な膨隆 ② 嚢胞の圧迫による局所神経症状 ③ 嚢胞により脳室系が閉塞し水頭症、頭蓋内圧亢進症状をきたす ④ 外傷により嚢胞の近くに硬膜下水腫、硬膜下出血が生じる (3) 因果関係不明 頭痛、てんかん、発達遅滞などの症状はあるが、それがくも膜嚢胞が原因なのかどう か因果関係不明 2)Galassi(1982)の分類:シルビウス裂くも膜嚢胞の分類 Ⅰ型:交通性嚢胞 周囲の脳槽と交通 Ⅱ型:部分的交通性嚢胞 Ⅲ型:非交通性嚢胞 3、くも膜嚢胞の経過 (1)くも膜嚢胞の増大 大きな嚢胞は増大傾向がある。しかし小さな嚢胞が増大する可能性は少ない。 (2)くも膜嚢胞と出血(硬膜下血腫の合併) 慢性硬膜下血腫の 2.4%にくも膜嚢胞が認められる。くも膜嚢胞に合併して発生する 出血のリスクは、0.004%/year であり、それほど高い頻度ではない。 4、治療 無症状の小さな嚢胞の場合は、手術しないで経過観察を行う。脳を圧迫し症状をあら わしているような大きな嚢胞では手術を行う。 ① 嚢胞を開放し、くも膜下腔と交通をつける。 ② 嚢胞腹腔シャントを行う。 -2-
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