Medical Aroma News

Medical aroma News
(月刊第 14 号)
2015 年2月号
Medical Aroma News
■発行/鳥居医療総研 統合医療研究所
T-LAB.〒231-0003 神奈川県横浜市中区北仲通 3-34-2 キクシマ関内ビル3階
TEL 045-305-6853
「Medical Aroma News」は、統合医療研究所「T-LAB.」より、皆様の健康の維持・増進、また「未病」に有効な情報
をお伝えしております。T-LAB は、アロマセラピーや音楽療法をはじめとした統合医療(holistic medicine)全般における心
とからだへ、その効果の客観的測定をおこなう施設です。人の無意識における気分の偏りやゆらぎ、それに伴う自律神
経系内分泌系の変調を把握し、より効果的な治療法を考案し、統合医療で未病やさまざまな症状や疾患への新しい治
「動的平衡」
療法の可能性の確立を模索する研究機関です。
アロマセラピーの研究最前線
アロマセラピーで使用するエッセンシャルオイル=精油は、中近東・西アジアで 10~11 世紀ごろに
は抽出技術が確立されており、主に香料や薬として使われていました。日本には江戸時代に西洋医学が
伝わった際、精油を利用したヨーロッパの治療法と併せて伝来しました。日本でも精油の蒸留が行われ、
輸出もしていたようですが、合成香料の開発と共に廃れていったようです。近代のアロマセラピーが日
本に紹介されたのは 1980 年代に入ってからでイギリスのロバート・ティスランド著「アロマテラピ
ー〈芳香療法〉の理論と実際:
(原題 The Art of Aromatherapy)」が翻訳され日本で出版されたこと
がきっかけで、主にエステティック業界やリラクセーション業界が注目し広まっていきました。
現在では、単なる美容やリラクセーションにとどまらず、医学的見地からの効果が研究され、補完代替
医療として認知されてきています。
アロマセラピーが治療としてさらに認知され、その地位を確立するためには、誰もが納得できる科学的
根拠、理論が必要不可欠であることから、様々な研究が行われています。
今月は、精油、アロマセラピーによる様々な興味深い研究や症例報告をご紹介いたします。
■精油による脳神経活動の包括的制御に向けた脳機能マップ作成
神保太樹、塩田清二 1)昭和大学医学部顕微解剖学講座, 2)独ブランデンブルグ州立ヴィアドリナ大学
日本アロマセラピー学会誌 12(2): 75-75, 2013.
健常者 12 名(男性 9 名、女性 3 名、mean±SD,33.20±15.19 歳)を対象に、カモミール(Matricaria
recutita)、クラリセージ(Salvia sclarea)、グレープフルーツ(Citrus paradisi)、サイプレス(Cupressus
sempervirens)、サンダルウッド(Santalum album)、パチュリ(Pogostemon cablin)、フランキンセン
ス(Boswellia carterii)
、ペッパー(Piper nigrum)、ベルガモット(Citrus bergamia)、ベンゾイン(Styrax
benzoin )、 マ ジ ョ ラ ム ( Origanum majorana )、 ミ ル ラ ( Commiphora myrrha )、 レ モ ン グ ラ ス
(Cymbopogon citratus)の芳香曝露により、それぞれが脳機能に対してどのような特性を持つのか検討。
その結果、大きく脳の沈静化と活性化に分かれ、更に、
「前頭前野近傍活性化型」、
「側頭葉表層活性化型」、
「側
頭葉表層沈静化型」、
「側頭葉表層活性・沈静混合型」、「脳機能に直接影響しない」の5つの群に分類できた。
これは、アロマセラピーによって認知症やうつ病を治療できるという過去の報告と合致し、精油が脳のどの部
分を刺激するのかマップが得られたことから、精油を適切に用いることで認知症やうつ病などに対して更に有
効な治療法となると考えられる。
■メリッサ吸入法による Alzheimer 型認知症患者の脳活性に及ぼす効果
~NAT(Neuronal Activity Topography)による施術前後の脳波解析~
工藤千秋
くどうちあき脳神経外科クリニック
日本アロマセラピー学会誌
13(2):
78-78, 2014.
軽度~中等度の認知症患者 69 例に対してメリッサ(Melissa officinalis)を吸入する群(男性 6 例、
女性 29 例、年齢平均 78.4±6.6 歳)、吸入しない群(男性 7 例、女性 27 例、年齢平均 77.1±5.9
歳)で、施術前後における脳電位を NAT 解析した結果、メリッサ吸入群では、左前頭、頭頂、側頭葉
にかけて、脳波上、有意な脳活性の変化が見られ、メリッサが認知症の脳機能の改善効果を有する可能
性が示唆された。
■ペパーミント精油におけるアディポネクチン分泌促進効果
松本めぐみ, 前田和久, 伊藤壽記
13(2): 74-74, 2014.
大阪大学大学院医学系研究科生体機能補完医学講座
日本アロマセラピー学会誌
生活習慣病型がん患者または高度肥満患者 6 名の外科手術時に皮下もしくは内臓脂肪組織を採取し、ヒ
ト脂肪組織由来肝細胞を単離、培養した。これを脂肪細胞へ分化誘導した後、濃度 0.7%のイランライ
ン(Cananga odorata)、グレープフルーツ(Citrus paradisi)
、サイプレス(Cupressus
sempervirens)、ジュニパーベリー(Juniperus communis)、ひのき(Chamaecyparis obtusa)、
ペパーミント(Mentha piperita)、マンダリン(Citrus reticulata)、ラベンダー(Lavandula
officinalis)、レモン(Citrus limon)、ローズマリー(Rosmarinus officinalis)をそれぞれ添加し 48
時間培養し細胞上清中のアディポネクチンを測定したところ、特にペパーミント精油が有意にアディポ
ネクチンの分泌を促進することが判明した。
※アディポネクチン:脂肪細胞から分泌されるホルモン。インスリン受容体を介さない糖取り込み促進
作用、脂肪酸の燃焼、細胞内の脂肪酸を減少してインスリン受容体の感受性を上げる作用、肝臓の AMP
(アデノシン一リン酸)キナーゼを活性化させることによるインスリン感受性の亢進、動脈硬化抑制、
抗炎症、心筋肥大抑制などがある。
■在宅の脳原発悪性リンパ腫末期患者から学ぶこと-症例報告所澤いづみ メディカルアロマ&リフレ Tori 日本アロマセラピー学会誌
13(2):
93-93, 2014.
患者 75 歳女性。余命が少ないことを宣告された悪性リンパ腫末期患者が、定期的な施術と家族のサ
ポートにより ADL(日常生活動作)が拡大し、QOL(生活の質)の向上を導いている約 4 年半の経
過。患者は 2010 年に脳外科で脳原発悪性リンパ腫末期と診断を受け、脳外科手術を勧められたが、
拒否し在宅療養と在宅看取りを選択した。施術はアロマセラピーとリフレクソロジーによる両下肢浮
腫改善のため定期的に行った。初回訪問時はほぼ寝たきり、移動は介助による車いすの状況であった
が、6 か月後は、つかまり歩行で自力によるトイレ移動が可能となった。また、患者本人の前向きで
コツコツと物事を行う性格や、家族の協力体制がしっかりしていることもあってか、徐々に ADL が
拡大。2013 年の脳 MRI 検査の結果は、癌は沈静化しており、2014 年の脳 MRI 検査も悪化は診ら
れなかった。2014 年 7 月現在では、訪問診療、訪問看護は中止となり自力歩行による外来通院。
定期的な施術、アロマセラピストと関わりと、家族のサポートチーム医療の連携が ADL 拡大と QOL
向上に導いていると考えられる症例。
精油、アロマセラピーのお問い合わせは
T-LAB 有限会社 鳥居医療総研
(月刊第 14 号)
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