森林バイオマス利用における木材等低コスト供給システムの開発 (研究部 森林環境・生産利用グループ) ○山田隆信 平國俊昭 背 景 本県では、やまぐち森林バイオマスエネルギー・プランに基づき、森林バイ オマスの供給からエネルギー利用に至る一貫した利用システム(図1)を構築 し、「エネルギー地産地消」を推進することとしている。そのためには、化石 燃料や廃棄物系バイオマスとの燃料価格差を縮減する必要があり、森林バイオ マスの伐採・搬出・収集・運搬・チップ加工による「森林バイオマス低コスト 供給システム」の構築が重要な課題となっている。 目 的 皆伐や収入間伐時に生じる残渣(枝葉、梢端部、根元部)の発生及び収集工 程調査と、旺盛な成長で拡大が問題となっているモウソウチクの伐採及びチッ プ化工程調査を実施し、そのデータを基に「森林バイオマス生産コスト算出シ ミュレーションシステム」を構築し、低コスト化について検討する。 成 1 果 人工林残渣収集について (1) 残 渣 の 発 生 状 況 は 、 素 材 生 産 シ ス テ ム の 違 い に よ り 、 山 土 場 に 集 積 す る 「山土場集積型」、列状間伐の伐採列毎に分散する「路網上分散型」、伐 り捨て間伐や短幹集材などで林内に放置される「林内放置型」に分けるこ とができ、造材方法によって素材と残渣の比率が変わる。 (2)素 材 生 産 と 残 渣 収 集 に つ い て 21パ タ ー ン の 作 業 シ ス テ ム を 検 討 し た 結 果 、 スイングヤーダとプロセッサによる全木集材をベースとした作業システム で、残渣を大量に路網付近まで運び出せる事等から低コスト化を図れるこ と が わ か り 、 図 2 の と お り 4シ ス テ ム を 最 適 シ ス テ ム と し た 。 (3)さ ら に 、 プ ロ セ ッ サ に よ る 造 材 時 に 、 素 材 、 小 径 木 、 残 渣 に 分 別 集 積 し 、 分別毎の運搬の効率化により低コスト化を図れる。 (4)枝 葉 や 梢 端 部 の 運 搬 は 嵩 張 る た め 運 搬 効 率 が 低 下 す る が 、 大 量 供 給 の た め には収集が必要である。そこで、チップ化(図3)、圧縮することにより 低コスト化を図れる。 2 竹資源量とチップ化による低コスト化について (1)竹 桿 の 資 源 量 調 査 の 結 果 、 平 均 中 空 率 64.3%、 実 材 部 比 重 0.76、 中 空 を 含 む 比 重 0.26で あ っ た 。 ま た 、 調 査 竹 林 に お け る チ ッ プ 化 後 の 1,000本 あ た り 資源量を推定した(表1)。 (2)現 地 チ ッ プ 化 を 検 証 す る た め 、 3シ ス テ ム ( 図 4 、 5 ) の 工 程 調 査 を 行 っ た。現地チップ化により減容化できるだけでなく、枝払い作業を省略でき るため、低コスト化を図れる。 (3)ス イ ン グ ヤ ー ダ で 集 材 す る 場 合 、 伐 倒 方 向 に 関 係 な く 集 材 で き る 事 が わ か り、竹を重心方向へ安易に伐倒することで伐倒作業の効率化が図れる。 山口県林業指導センター提供 ≪展開1≫ ≪展開1≫ 既設火力発電施設での混焼システム 既設火力発電施設での混焼システム ●既存石炭火力発電施設での石炭との混 ●既存石炭火力発電施設での石炭との混 焼システムを構築する。 焼システムを構築する。 ※中国電力㈱・宇部興産㈱が技術開発, ※中国電力㈱・宇部興産㈱が技術開発, 実用化 実用化 森林バイオマス 低コスト供給システム ≪展開2≫ ≪展開2≫ 中山間地域エネルギー供給システム 中山間地域エネルギー供給システム 間伐材・竹材の 伐採・搬出 ●電力・熱の利用施設が集中配置されてい ●電力・熱の利用施設が集中配置されてい る中山間地域での中規模な地域電力・熱併 る中山間地域での中規模な地域電力・熱併 供システムを構築する。 供システムを構築する。 ※中外炉工業㈱が実証試験に着手 ※中外炉工業㈱が実証試験に着手 チップ化 輸 ≪展開3≫ ≪展開3≫ 送 小規模分散型熱供給システム 小規模分散型熱供給システム ●ペレット燃料による汎用・分散型小規模ペ ●ペレット燃料による汎用・分散型小規模ペ レット・ボイラー熱利用システムを構築する。 レット・ボイラー熱利用システムを構築する。 ※山口県森林組合連合会がペレット燃料製 ※山口県森林組合連合会がペレット燃料製 造施設を整備 造施設を整備 図1 森林バイオマスの供給からエネルギー利用システム ① 山土場集中型現地チップ化システム 皆伐地で全木集材により山土場に素材、残渣を集中させ、 枝葉等をチップ化 ② 山土場集中型現地圧縮システム 皆伐地で全木集材により山土場に素材、残渣を集中させ、 枝葉等をバンドリング ③ 路網上分散型現地チップ化システム 列状間伐地等で全木集材により路網上に素材、残渣を集中 させ、枝葉等をチップ化 ④ 路網上分散型現地圧縮システム 列状間伐地等で全木集材により路網上に素材、残渣を集中 させ、枝葉等をバンドリング -伐採- -集材- チェンソー スイングヤーダ 全木集材 -造材- プロセッサー 素材、バイオマス の分別集積 -搬出- -破砕・圧縮- グラップル付き バンドリングマシン トラック等 チッパー等 枝葉等の減容化 図2 人工林バイオマス低コスト供給最適システム 図3 山土場集中型現地チップ化システムのチップ化 表1 1000本チップ化後の層積・絶乾重量 区分 全竹 短桿 枝条 層積(m3) 123.2 67.5 55.7 絶乾(t) 26.5 15.2 11.3 比重 0.22 0.23 0.20 ① 全竹チップ化システム 全竹集材後全竹のまま現地チップ化、全チップを運搬 ② 枝条チップ化短桿集材システム 全竹集材後4m単位で短桿造材、枝条のみチップ化、短桿及 びチップを運搬 ③ 短桿集材システム(チッパーがないケース) 全竹集材後4m単位で短桿造材、枝条は枝払いし棚積、短桿 のみを運搬 -伐採- -集材- -集材・造材補助- -破砕- チェンソー スイングヤーダ グラップル チッパー 全竹集材 枝葉等の減容化 図4 竹林バイオマス低コスト供給システム -搬出- ユニック付き トラック等 図5 スイングヤーダによる全竹集材とグラップルによる 集材・造材補助 山口県林業指導センター提供
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