【病理】【676】肝臓原発悪性リンパ腫の一例 福井県 竹腰 友博,秋山 綾子

676
肝臓原発悪性リンパ腫の一例
◎竹腰 友博 1)、秋山 綾子 1)、高島 和佳 1)、川端 直樹 1)
市立敦賀病院 1)
[ はじめに ] 節外性に起こる悪性リンパ腫のなかで、肝
コ-は不均一、後方エコ-の増強を認める7㎝大の SOL が
臓原発悪性リンパ腫の頻度は 1%以下(文献により 0.4%程
描出され、充実性腫瘤が疑われた。
度)とされている。今回、我々は希少な症例を経験したの
経過:画像診断より典型的ではないが、HCC または
で報告する。
CCC の疑いと診断され肝葉切除術が行われた。切除された
[ 症例 ] 80 歳代、女性。
病変の割面は 8×6㎝大、境界は比較的明瞭だが被膜は認め
既往歴:虚血性大腸炎、慢性C型肝炎
られず中心部では壊死を呈していた。
経緯:下腹部痛、血便を主訴に当院を受診した。CT検査
病理所見:腫瘍の中心部は広範囲な出血性壊死の状態で、
にて肝臓S6 領域に内部不均一な低吸収を認める 6㎝大の占
周囲には大型リンパ球様細胞がびまん性に増殖していた。
拠性病変を認めた。肝腫瘍、炎症性偽腫瘍、肝膿瘍などが
免疫組織化学的には CD45(+)、CD20(+)、CD79α(+)、
疑われ精査目的で入院となった。
CD3(-)、bcl-2(-)、CD5(-)、CD10(-)、CD23(-)であった。以上
血液検査:CEA、CA19-9、AFP は正常範囲、AST、γ-
より、びまん性大細胞性リンパ腫と診断された。背景肝は
GTP、LDH、TTT、ZTT、4 型コラ-ゲン 7S は軽度上昇、
F3、A2 相当の慢性肝炎の像であった。
ALB 軽度低下、HCV 抗体陽性、ICG は正常範囲であった。
[ 考察 ] 肝臓原発悪性リンパ腫(DLBCL)は極めてまれ
造影CT所見:明らかな被膜は確認できず、内部は水濃度
な疾患であり、今回の術前検査では正診に至らなかった。
でやや不均一、ダイナミックスタディでは、早期濃染はな
臨床診断、血液検査、画像診断の結果が一致しない場合は、
く水濃度成分の増強も認められなかった。腫瘤辺縁部や内
肝臓原発悪性リンパ腫の可能性も考慮し、肝生検や可溶性
部に浮島のような部位が存在した。
IL-2 レセプタ-の測定などの追加検査を行うべきであると
超音波検査所見:肝臓S6 領域に比較的境界明瞭で内部エ
考える。 連絡先 0770-22-3611