第3講 ウェストファリア・システムの成立

2001 年度 戦争の政治・経済構造
第3講 ウェストファリア・システムの成立
◇ウェストファリア・システムの成立
・1618∼1648 三十年戦争
・カトリック×プロテスタント →ハプスブルク勢力×反ハプスブルク勢力
・1648 ウェストファリア条約
・神聖ローマ帝国の構成国に主権が認められ、主権国家が誕生
・ローマ法王や神聖ローマ皇帝の権威が否定 →キリスト教的統一世界の崩壊
→主権国家だけを構成単位とする国際システムが成立
=ウェストファリア・システム(西欧国際政治体系)
◇国際システム成立のための要件
①システムの目的について主要諸国の間に合意が存在すること
②適切な構造:相互作用する国家の数、地理的境界線や範囲、参加国間の力の分布、参加国
間の階層や序列
③共通に容認された手続き:システムの目的を実現するための規範、ルール、実践と制度
◇勢力均衡(バランス・オブ・パワー)
・超大国の出現は、システム全体の安定を崩す
・歴史的事例
・18 世紀:スペイン継承戦争後のユトレヒト体制
・19 世紀:ナポレオン戦争後のウィーン体制など
「勢力均衡の原理が平和維持のためのものであるというのは事後の理屈で、実際の目的は、<< 国際政治体
系>> のどれか一国が、他国を侵略して自国のパワーを増大しないようにすることによって各国の独立を維
持するしくみにすぎない 」(F. L. シューマン、長 井信一訳『国際政治 上 』東京大学出版会、19 7
3年、75頁)
◇戦争の違法化 *国際法の父:H. グロチウス『戦争と平和の法』(1625 年)
・正戦論(近世∼近代前半)
*自己防衛、奪われた財産の回復、悪行に対する処罰といった正当な理由があれば戦争を行うことは
許される →誰が正統なものと見なすのか?
・無差別戦争観(18 世紀半ば)
*戦争開始の手続きや戦争の遂行方法のみを国際法で規制
<交戦法規(jus in bello)>
①戦闘員と非戦闘員との区別
②二重結果:戦闘行為が無辜の民の殺傷を意図しない限り、意図せざる、あるいは付随的損失として
許容される
③目的と手段との釣合い
・戦争の違法化へ(第1次世界大戦以後)
・1924 国際紛争の平和的解決に関するジュネーブ議定書
・1925 ロカルノ条約
・1928 パリ不戦条約
<参考文献>
・加藤朗「戦争と倫理」加藤朗他『戦争:その展開と抑制』勁草書房、1997 年。
・ゴードン・A・クレイグ、アレキサンダー・L・ジョージ、木村修三他訳『軍事力と現代外交:歴史と
理論で学ぶ平和の条件』有斐閣、1997 年。