本部より - 日本動物学会

(Z−50)
平成16年度 日本動物学会賞等の選考を終えて
日本動物学会学会賞等選考委員会
委員長 高橋三保子
国立大学の独立行政法人化の混乱の中,5月7日,今
本部より
年の学会賞等の選考を行った.残念なことに今年の動物
学会賞の応募者数は昨年と同数の5名であった.動物学
平成16年度
日本動物学会賞等の決定
という広い分野を含む動物学会らしく,応募された方の
分野も多岐にわたる.選考委員も5つの分野から出てい
るとはいえ,「動物学の進歩発展に重要な貢献をなす業
日本動物学会賞
績」を選考するのは容易ではない.研究業績・動物学の
蟻川謙太郎(横浜市立大学大学院)
進歩への貢献等,忌憚のない意見交換の末,本年は,
「チョウ類の光感覚に関する研究」
「チョウ類の光感覚に関する研究」の蟻川謙太郎会員と
藤澤敏孝(国立遺伝学研究所)
「ヒドラのペプチド性シグナル分子の組織的解析」の藤
「ヒドラのペプチド性シグナル分子の組織的解析」
澤敏孝会員の業績を評価し,2名を候補者として評議員
会に推薦した.
日本動物学会奨励賞
蟻川謙太郎会員は,「アゲハチョウはお尻でも見てい
千葉和義(お茶の水女子大学)
る」というびっくりする発見を端緒として,様々なチョ
「ヒトデ卵を用いた減数分裂と受精の研究」
ウ類を対象に,分子生物学,電気生理学,組織学,生理
深津武馬(産業技術総合研究所)
光学,行動学などの研究手法を駆使し,ユニークな研究
を展開してきた.アゲハチョウ尾端光受容器はオスでは
「昆虫類における共生微生物の機能,起源,進化に
交尾の成立をモニターし,メスでは産卵管の突出具合を
関する研究」
モニターする機能をもつことを明らかにした.また,複
日本動物学会女性研究者奨励 OM 賞
眼には6種類の色受容細胞が混在すること,構成する個
眼の多様性,一つの視細胞が2種以上の視物質を同時に
木下充代(横浜市立大学大学院総合理学研究科・博士
発現することの発見等,常識を覆す成果を挙げてきた.
研究員)
これらの独創的な研究成果が評価された.
「アゲハ脳における神経伝達物質と生理活性ペプチ
現在,網羅的解析はゲノムプロジェクトの中では極め
ドの分布地図作成」
沓掛磨也子(産業技術総合研究所・生物機能工学部門
て普通に行われている.藤澤敏孝会員は,二胚葉からな
・生物共生相互作用研究グループ・第一
る単純な体制の腔腸動物のヒドラを材料に,その遥か以
号非常勤職員(ポスドク))
前からペプチド性シグナル分子の大規模検索と同定を進
「社会性アブラムシにおける兵隊特異的発現プロテ
めてきた.ヒドラの遺伝子発現に影響を与えるペプチド
をシグナルペプチドと定義し,非特異的分解産物を排除
アーゼの機能と進化に関する研究」
して情報分子であるペプチドだけを同定する方法論を確
江上基金による若手研究者国際会議出席費用補助金授
立,微量にしか存在しないペプチド分子も検出し,約
与者
400のシグナルペプチドを同定した.それらの分子の機
能解析を進め,生理学・神経生理学・発生学の領域をこ
有岡幸子(慶應義塾大学)
えた研究を展開している.これからの進展も期待できる
第19回国際動物学会(北京)に出席
立派な成果をあげており,学会賞に相応しいと評価さ
笹倉靖徳(京都大学大学院)
The Second Annual International Conference on
Transposition
and
Animal
れた.
Biotechnology
今年の奨励賞には6名の応募があった.近い将来,学
会賞の対象者になるであろうと予想させるようなレベル
(Minneapolis)に出席
14
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の高い研究成果をあげた応募者が多く,選考は難航した.
した.興味深く,基礎的比較動物学のお手本のような論
苦難の末,次の2名を評議員会に推薦した.千葉和義会
文といえる.
員は,ヒトデ卵の減数分裂と受精の研究を行い,正常発
生の基盤となる分子機構や受精の生理的意義に独自の切
以下の2論文は一組として受賞対象とする
(2-1)Henmi, Y and Yamaguchi, T.
り口で解析し,多くの成果を挙げている.深津武馬会員
は,昆虫と微生物間の内部共生関係の機能・起源および
Biology of the Amphioxus, Branchiostoma
進化について,分子遺伝学から進化生態学的相互作用ま
belcheri in the Ariake Sea, Japan I. Population
で,様々なアプローチで独創的な研究を展開している.
Structure and Growth.
ミクロ生物学とマクロ生物学を統合し,スケールの大き
Zool. Sci. 2003, 20 (7): 897-906.
な研究に発展させることを期待させる優れた成果をあげ
(2-2)Yamaguchi, T and Henmi, Y.
ている.
江上学術表彰による若手研究者国際会議出席費用補助
Biology of the Amphioxus, Branchiostoma
金には11名の応募があり,2名を推薦した.有岡幸子会
belcheri in the Ariake Sea, Japan II. Reproduction
員は,北京で開催される第14回国際動物学会でポスター
Zool. Sci. 2003, 20 (7): 907-918.
発表を行う.笹倉靖徳会員は,米国ミネアポリスで開催
推薦理由:比較動物学的にきわめて興味深いナメクジウ
される The Second Annual International Conference on
オの集団の構成,繁殖について,有明海において4年間
Transposition and Animal Biotechnology で招待講演を
にわたり検索した精力的連作.この動物の理解ならびに
行う.発表表題が明確でないなど,応募様式に改善する
将来的保護のため(あるいは脊椎動物の進化を理解する
べきところが選考委員会の中で指摘された.
上でも)貴重なデータであり,さらには将来的な実験室
での研究を可能にする基盤をももたらす重要な業績とい
奨励賞は「将来の進歩発展が強く期待される若手研究
える.
者」に贈られる,となっている.研究者はいくつになっ
ても,道未だ半ば,自分は今後さらに発展する若手であ
以下の2論文は一組として受賞対象とする
る,と自認する人が多いに違いない.選考後の感想とし
て不謹慎ではあるが,若手にはおのずとメドとなる年令,
(3-1)Ito, I, Watanabe, S, Kimura, T, Kirino, Y and Ito, E.
立場もあるのではないだろうか.来年はさらに,未熟さ
Negative Relationship between Odor-Induced
があったとしても将来の発展を期待させる意欲的な沢山
Spike Activity and Spontaneous Oscillations in
の若者の挑戦的な応募を期待したい.
the Primary Olfactory System of the Terrestrial
Slug Limax marginatus.
平成16年度
Zoological Science Award が決定しました
Zool. Sci. 2003, 20 (11): 1327-1335.
(3-2)Ito, I, Watanabe, S, Kimura, T, Kirino, Y and Ito, E.
ZS 編集委員会(委員長 道端 齊会員)から,平成
Distributions of γ-Aminobutyric Acid Immunore-
16年度論文賞候補論文が評議員会に推薦され,評議員会
active and Acetylcholinesterase-Containing Cells
は,審議の結果,以下の5論文を平成16年度論文賞と決
in the Primary Olfactory System in the Terrestrial
定しました.
Slug Limax marginatus.
Zool. Sci. 2003, 20 (11): 1337-1346.
(1)Suzuki, A. C.
推薦理由:本論文は軟体動物ナメクジを用いて,嗅覚受
Life History of Milnesium tardigradum Doyère
容器官で観察される電気振動現象を,情報処理の立場か
(Tardigrada) under a Rearing Environment.
らその生理学的な意味づけに成功し,かつその振動を引
Zool. Sci. 2003, 20 (1): 49-57.
き起こす複数の神経ネットワークの存在も,解剖学的に
推薦理由:クマムシ類の1,Milnesium tardigradum の
明らかにしたものである.これらの結果は,動物界全体
生活史を入念に観察した記録.生殖,発生,脱皮サイク
において幅広く観察されるものの不明な点が多数ある嗅
ル,成長速度,などを,観察事実に基づいて克明に記述
覚受容時の電気振動現象の解明に,大きく貢献したもの
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と言える.研究の完成度は高く,内容も極めて優れてい
織化学などの方法によって,食道下神経節の3つの細胞
る.今後は多数の引用が期待される.
群で産生されていることがこれまでに示されていた.こ
れらの論文は,電気生理学の方法によって,実際に休眠
(4)
Yamamoto, T, Yao, Y, Harumi, T. and Suzuki, N.
を誘導する際にホルモンを分泌しているのは,そのうち
Localization of the Nitric Oxide/cGMP Signaling
の特定の細胞であることを明らかにしたものである.こ
Pathway-Related Genes and Influences of
のような方法によって真の分泌細胞を明らかにした例は
Morpholino Knock-Down of Soluble Guanylyl
貴重で,昆虫内分泌学における画期的論文である.特定
Cyclase on Medaka Fish Embryogenesis.
の細胞群が重要であることを示したものが(5-1)であ
Zool. Sci. 2003, 20 (2): 181-191.
り,そのほかの2細胞群は無関係であることを示したも
推薦理由:NO/cGMP 情報伝達系は多くの生理現象に関
のが(5-2)である.
与しているが,動物の初期発生における機能に関する知
トピックス
見はほとんど得られていない.著者らは初期発生におけ
る NO/cGMP 情報伝達系の機能解析を目的として,
日本動物学会賞 研究内容
NO/cGMP 情報伝達系の構成要素である,脳型 NO 合成
酵素(nNOS)および cGMP 依存性プロテインキナーゼ
チョウ類の光感覚に関する研究
(cGK I, II)をメダカより単離し,メダカ発生過程にお
ける各関連遺伝子の発現開始時期を RT-PCR ならびに
ホールマウント in situ ハイブリダイゼーション法を用
横浜市立大学大学院総合理学研究科
いてその発現時期とパターンを明らかにした.さらに著
蟻川謙太郎
者らは,アンチセンスオリゴヌクレオチドのメダカ胚へ
の導入による sGC 機能阻害実験を行ない,機能阻害胚
では体節形成の乱れが引き起こされることを明らかにし
た.また,GCS-beta1 機能阻害胚では著しい発生遅滞を
生じ,本情報伝達系の母系因子の重要性が示唆された.
本研究によって得られた知見は,従来不明な点が多かっ
た動物の初期発生における NO/cGMP 情報伝達系の機
能解明に,大きく寄与するものと考えられる.
略歴
以下の2論文は一組として受賞対象とする
1979年 自由学園最高学部理科コース卒業
1981年 上智大学大学院生物科学専攻修士課程修了
1983年 上智大学大学院生物科学専攻博士課程中退
1983年 横浜市立大学文理学部助手
1984年 理学博士(上智大学)
1996年 横浜市立大学理学部助教授
2000年 横浜市立大学大学院総合理学研究科教授
この間
オーストラリア国立大学客員研究員(1981.12–1982.3),三
菱化成生命科学研究所特別研究生(1983.4–10),アメリカ
NIH 奨励研究員 (1987.10–1989.3),JST さきがけ研究21研
究者(1997.9–2000.8)など.
(5-1)Ichikawa, T.
Firing Activities of Neurosecretory Cells
Producing Diapause Hormone and its Related
Peptides in the Female Silkmoth, Bombyx mori. I.
Labial Cells.
Zool. Sci. 2003, 20 (8): 971-978.
(5-2)Ichikawa, T. and Kamimoto, S.
Firing Activities of Neurosecretory Cells
Producing Diapause Hormone and its Related
Peptides in the Female Silkmoth, Bombyx mori.
はじめに
II. Mandibular and Maxillary Cells.
私は,自由学園で中学から大学までの10年間を過ごし
Zool. Sci. 2003, 20 (8): 979-983.
ました.最高学部と呼ばれる4年間の大学課程では理科
推薦理由:神経ペプチドである休眠ホルモンは,免疫組
コースで物理学と数学を中心に学びましたが,行動学関
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連の本もよく読みました.1973年にフリッシュ,ローレ
はしばらく放っておくと消えることも多かったので,そ
ンツ,ティンバーゲンがノーベル医学生理学賞を受賞し
のときも実験をひと休みしようと席を立ちました.つい
たことで,書店にはその手の本が目立っていたのだと思
でに標本を照明していたランプのスイッチも切りまし
います.昆虫少年だった私はこうした本に惹かれ,そう
た.ところが,照明のスイッチを切った瞬間,それまで
こうするうちに,将来は生物の研究がしたいものだと考
活発に出ていた活動電位が,同時に消えてしまったので
えるようになっていました.
す.おや,と思ってもう一度スイッチを入れると,また
当時も現在も,自由学園の最高学部は文科省の大学設
反応が出ます.消すと反応も消えます.
置基準には依らない独特な学校なので,卒業しても学士
不思議に思って私は,標本を見ながら光を点滅させて
の学位は得られません.学士はたいていの大学院でほぼ
みました.すると,アゲハは光が点灯するとそちらの方
唯一の入学資格とされていたため,もし大学院に進学し
向に首を曲げていることに気づきました.なるほど,複
ようとすれば,普通はもう一度どこかの学部で4年間勉
眼の反応がどこかを経由して腹部の神経から記録されて
強する必要がありました.例外は,早稲田大学大学院で
いるのだろう.ならば,複眼をとってしまえば反応がな
した.早稲田から自由学園に教えに来ていらしていた石
くなるはずだ.そこで私は解剖バサミを持ち出し,ナミ
居進先生にご相談してみると,上智大学大学院にも可能
アゲハの頭をチョンと切断しました.しかし反応はまだ
性があることが分かりました.上智では青木清先生にい
出ています.胸,腹・・・と徐々に標本を小さくしてゆ
ろいろとお骨折りいただきました.その甲斐あって,自
き,ついに残ったのは交尾器の一部とそこにつながった
由学園を卒業してすぐ,上智の修士課程に入ることがで
細い神経だけ.それでも光に対する反応はまだしっかり
きました.いまはどこの大学院も門戸を拡大しているの
と出ています.次に何をしようか考えていた私のところ
でこうした問題はほとんど無くなっていますが,当時の
に,川崎さんが研究室の奥から干渉フィルターを出して
私にとっては,研究生活の幸運なスタートでした.
きてくれました.川崎さんに手伝ってもらって,波長反
上智大学では,青木先生が「好きなもので好きなこと
応特性を記録しました.増子さんは熱心に,光受容部位
を」という方針で,自由に研究をさせて下さいました.
の構造を電子顕微鏡で調べるようにすすめてくれました.
研究室のスタッフは青木先生のほかは,助手の吉田昭広
ナミアゲハのお尻に“目”があると確信した私は,そ
さん(現 JT)お一人でした.学生は4人で,M2に増
の日,テーマを変えました.光受容細胞の反応特性,細
子恵一さん(現専修大)と佐藤哲さん(現東工大),M
胞の微細構造,中枢での情報処理経路などを調べ,上智
1が川崎雅司さん(現バージニア大)と私でした.川崎
大学から学位を頂きました1.
この話をすると必ず,お尻の目は何に使われているの
さんは卒業研究ですでに1年間を青木研で過ごしていま
した.それぞれに,研究対象にしている動物もゴキブリ,
か,という声が上がります.この問題には,横浜市立大
アリ,ミツバチ,イモリ,ウグイと,バラエティに富ん
学に移ったあとで,須山大輔君,藤井隆法君,高木信弘
でいました.私はチョウとともに,その仲間に加わりま
君の3名の学生諸君と取り組みました.お尻の目をつぶ
した.以来,チョウはずっと私のかたわらにいます.
すとチョウの行動にどんな変化が現れるかを調べ,最終
的には,オスはメスの交尾器と自分の交尾器が正しく噛
み合っていることを光のもれがないことで確認し2,メ
ナミアゲハ尾端光受容器の研究
ナミアゲハのお尻に“目”(光受容器)があることに
スは産卵するときに産卵管が十分に突き出ているかどう
気づいたのは M1の冬でした.修士研究のテーマは
かを産卵管に光が当たることで確認していると結論しま
した3.
「産卵行動神経メカニズムの解明」と決めていて,腹部
末端神経節からのびる神経束をひとつひとつ吸引電極で
チョウ類色覚系の研究
吸い込みながら,お尻にある機械感覚毛の反応を記録し
チョウの色覚に関する研究は,横浜市立大学で始めま
ていました.
ある日いつも通り実験を始めると,さまざまな活動電
した.横浜市立大学では江口英輔先生が長年,昆虫や甲
位がかなり高い頻度で記録されてきました.これはいわ
殻類の複眼について研究されていたので,その先生のも
ゆる“コンタミ”のようなもので,目的とする神経活動
とで仕事をさせていただいたことが強く影響していま
を解析するのにはひどく邪魔になります.こういう反応
す.江口先生とは,主にカニ複眼の細胞生物学的な研究
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をしましたが,一方で江口先生もまた,私に自由に研究
いたことです.蛍光を発する個眼と蛍光を出さない個眼
する時間を与えて下さいました.おかげさまで私は,チ
の混在は,個眼の性質に違いがあることを意味します.
ョウ類に関する研究も平行して継続することができま
それまで,複眼を構成する個眼はすべてが同一の性質を
した.
もったものだという,暗黙の了解がありました.しかし
昆虫色覚研究のパイオニアは,前述のフリッシュです.
それが必ずしも正しくないことが示されたわけです.
蜜と色紙とを組み合わせてミツバチの色覚を証明したフ
個眼は,具体的には何がどう違うのでしょうか.ナミ
リッシュの巧みな実験は,つとに有名です.その後の研
アゲハの場合,ひとつの個眼には9個の視細胞が含まれ
究で,ミツバチの複眼には紫外線・青・緑の3種類の視
ます.9個の視細胞が5種の色受容細胞のどれに相当す
細胞があって,これがミツバチの3原色系の基礎になっ
るのか,視細胞ひとつひとつに電極を刺しながら丹念に
ていることが突き止められました.つまりミツバチには,
調べていきました.分かったことは,個眼には色受容細
紫外線が見えるかわりに赤が見えないということです.
胞の組合せが異なる3つのタイプがあること,3タイプ
ミツバチとは違ってチョウ類には赤が見えるのではない
の個眼はほぼランダムに分布していることでした5.水
かという話は,実はかなり昔からありました.アメリカ
野真君は,蛍光のもとは3OH-レチノールで,これが個
の Gary Bernard は“チョウには赤視物質があるらしい”
眼遠位部に集中して分布しており,紫外線吸収フィル
と既に1979年の論文に書いていますし(Bernard, Science
ターとして機能していることを証明しました 6.また,
203: 1125, 1979),江口先生も1982年の論文(Eguchi et
個眼によって赤または黄色の色素があり,これが色フィ
al, J Insect Physiol 28: 675, 1982)でアゲハ類が赤受容細
ルターとして視細胞分光感度に影響していることも分か
胞を持つ可能性を指摘されています.決定的だったのは,
りました7.
オーストラリアのマティッチが,メスアカモンキアゲハ
このころ,私は初めて,視物質の分子生物学的実験を
の複眼から赤受容細胞の分光感度を記録したことでし
始めました.それまで分子生物学の経験は全く無かった
た.Tom Matic によれば,メスアカモンキアゲハの複
ので,大阪大学の尾崎浩一さんに手取り足取り教えてい
眼には,紫外線・青・緑・赤の4種類の視細胞があると
ただきました.電気生理学や組織学で得た結論が,分子
いうのです(Matic, J Comp Physiol A 152: 169, 1983).
生物学の実験でつぎつぎと確認されてゆく過程には,感
動しました.もちろん新しい発見も数多くありました.
私は,これは面白いと思いました.昆虫の色覚は紫
外・青・緑の三原色で,赤は見えない―それが定説だっ
特に驚いたのは,北本淳子さんがナミアゲハ複眼の中に
たからです.さっそくナミアゲハの複眼に電極を刺して,
は複数の視物質を同時に発現している視細胞が沢山ある
視細胞の分光感度を記録することにしました.猪熊和清
のを見つけたときです 8,9.この発見は,それまでアー
君とともに1年ほどデータをためてみると,ナミアゲハ
チファクトに違いないと思いこんでいた非常に幅広い分
の複眼には少なくとも5種類,紫外線・紫・青・緑・赤
光感度の説明に結びつき,これはナミアゲハ複眼の6番
の受容細胞があることが分かりました.Matic が紫外線
目の細胞となりました10.
4
受容細胞としていた細胞は,実は紫受容細胞でした .
複眼の構造やはたらきが細かく解明されてゆく一方
ひとつの網膜に色受容細胞が5種類という数は,当時と
で11,ナミアゲハは本当に色を見ているのかという疑問
しては最多でした.このあと,色々な昆虫で5種類以上
には,明確に答えることのないままに時が過ぎてゆきま
の色受容細胞の混在が報告され,なんと珊瑚礁に住むシ
した.実際,チョウ類の室内行動実験はほとんど不可能
ャコに至っては16種類もの細胞が見つかりました.
であるという風評もありました.そんな風評をものとも
このあと私はアメリカに留学し,少しだけチョウの研
せずに,事務机に乗るくらい小さなかごの中でナミアゲ
究から離れた時期がありました.ふたたび本格的にチョ
ハを自在にあやつる方法を開発し,ナミアゲハが色覚を
ウに取り組もうと考えた1996年,日本学術振興会の外国
もつことを証明したのは,今年の OM 賞を受賞される
人研究者短期招聘事業で,オランダ・フロニンゲン大学
木下充代さんでした.木下さんは,色紙の上で蜜を与え
の Doekele Stavenga さ ん に 来 て い た だ き ま し た .
てナミアゲハを訓練することで,求蜜中のナミアゲハが
Stavenga さんの滞在は,研究の大きな転換点となりま
色覚を使っていること,照明光の波長を変えても色の見
した.象徴的なできごとは,Stavenga さんがナミアゲ
えは変化しない,いわゆる色恒常性が,ナミアゲハにも
ハ複眼に紫外線下で強い蛍光を発する個眼の存在に気づ
存在することを見事に証明しました 12, 13.その結果ナミ
18
(Z−55)
アゲハは,色覚系の入口(複眼)と出口(行動)の両方
Kinoshita, M., Seki, T., Kitamoto, J. and Stavenga,
がバランスよく理解された唯一の昆虫になりました.
D. G. (1999) An ultraviolet absorbing pigment causes
a narrow-band violet receptor and a single-peaked
green receptor in the eye of the butterfly Papilio.
おわりに
Vision Res 39, 1-8.
上に述べたような研究は,もちろん私一人でできるは
7. Arikawa, K., Scholten, D. G. W., Kinoshita, M. and
ずもありません.多くの先生方,先輩,同僚,学生のみ
なさんによるご指導やご協力あっての成果です.特に,
Stavenga, D. G. (1999) Tuning of photoreceptor
研究室で日々実験に心血を注ぎ,努力を続けてきたポス
spectral sensitivities by red and yellow pigments in
ドク,大学院生,卒論学生諸君の功績は,いくら強調し
the butterfly Papilio xuthus. Zool. Sci. 16, 17-24.
ても言い尽くせるものではありません.こうして改めて
8. Kitamoto, J., Sakamoto, K., Ozaki, K., Mishina, Y.
振り返ってみると,研究室内外でのこうした方々のチー
and Arikawa, K. (1998) Two visual pigments in a
ムワークが実に絶妙なものであったということが,私に
single photoreceptor cell: Identification and
は実感されます.ここにすべての方々のお名前をもれな
histological localization of three mRNAs encoding
く挙げることはいたしませんでしたが,この場をお借り
visual pigment opsins in the retina of the butterfly
Papilio xuthus. J. Exp. Biol. 201, 1255-1261.
して厚くお礼申し上げます.また,これまで,文部科学
省と横浜市立大学をはじめ,多くの公的機関や民間団体
9. Kitamoto, J., Ozaki, K. and Arikawa, K. (2000)
から,多額の研究費をいただきました.心より感謝申し
Ultraviolet and violet receptors express identical
上げます.
mRNA encoding an ultraviolet-absorbing opsin:
年齢から単純に計算いたしますと,私の研究生活は折
Identification and histological localization of two
り返し点を少し過ぎたところになります.折しも今年は
mRNAs encoding short wavelength absorbing
日本動物学会創立125周年です.気の遠くなるような長
opsins in the retina of the butterfly Papilio xuthus.
い伝統をもつ学会から,もっとも権威ある賞をいただい
J. Exp. Biol. 203, 2887-2894.
10. Arikawa, K., Mizuno, S., Kinoshita, M. and
たことを励みに,後半の研究生活をさらに充実したもの
Stavenga, D. G. (2003) Coexpression of two visual
にしてゆきたいと,決意を新たにしています.
pigments in a photoreceptor causes an abnormally
broad spectral sensitivity in the eye of a butterfly,
文章中で引用した論文
Papilio xuthus. J. Neuroscience 23, 4527-4532.
1. Arikawa, K., Eguchi, E., Yoshida, A. and Aoki, K.
(1980) Multiple extraocular photoreceptive areas on
11. Arikawa, K. (2003) Spectral organization of the eye
genitalia of butterfly, Papilio xuthus. Nature 288,
of a butterfly Papilio. J. Comp. Physiol. A 189, 791-
700-702.
800.
2. Arikawa, K., Suyama, D. and Fujii, T. (1996) Light on
12. Kinoshita, M., Shimada, N. and Arikawa, K. (1999)
butterfly mating. Nature 382, 119.
Colour vision of the foraging swallowtail butterfly
Papilio xuthus. J. Exp. Biol. 202, 95-102.
3. Arikawa, K. and Takagi, N. (2001) Genital
photoreceptors have crucial role in oviposition in
13. Kinoshita, M. and Arikawa, K. (2000) Colour
Japanese yellow swallowtail butterfly, Papilio
constancy of the swallowtail butterfly, Papilio
xuthus. Zool. Sci. 18, 175-179.
xuthus. J. Exp. Biol. 203, 3521-3530.
4. Arikawa, K., Inokuma, K. and Eguchi, E. (1987)
Pentachromatic visual system in a butterfly.
Naturwissenschaften 74, 297-298.
5. Arikawa, K. and Stavenga, D. G. (1997) Random
array of colour filters in the eyes of butterflies. J.
Exp. Biol. 200, 2501-2506.
6. Arikawa, K., Mizuno, S., Scholten, D. G. W.,
19
(Z−56)
ヒドラのペプチド性シグナル分子の網羅的解析
たが,重要な点が2つあった.一つは,「誰もしていな
い」こと,2つ目は「すべて」の分子ということである.
国立遺伝学研究所発生遺伝研究部門・
そのようなときに,忽然と救世主が現れた.1992年10月,
総合研究大学院大学遺伝学専攻
□
遺伝研でヒドラ関係の研究集会を開いたときに,小泉修
藤澤敏孝
さん(福岡女子大)が連れてこられた当時広島大・総合
科学部の教授だった宗岡洋一郎さんが,自分は腔腸動物
からまだ生理活性ペプチドを単離していないので是非ヒ
ドラを使ってみたいといわれた.私たちはこのときとばか
りに,ペプチドをとるなら全部とりましょうという提案
をした.宗岡さんは活性検定をしながら精製するのが常
道で,私たちの全部という考えには賛同されなかった.
今でもよく覚えているが,懇親会の時タバコをのむため
に外に出られた宗岡さんを研究所宿泊施設の玄関前でか
略歴
なり長く説得した.結局,じゃあパイロット実験をして
1968年 京都大学農学部農林生物学科卒業
1970年 米国カンサス州立大学大学院生物学科修士課程修了
1972年 米国カンサス州立大学大学院生物学科博士課程修了,
Ph.D.
1972年 米国カリフォルニア大学アーヴァイン校医学部 ポス
トドクトラルフェロー
1974年 国立遺伝学研究所生化学遺伝部研究員
1986年 同・発生遺伝研究部門助教授 現在に至る
それで何とかなりそうなら全部という方法でゆこうとい
うことになった.早速ヒドラ150g を集めにかかり,その年
の12月には広島に送ったと思う.広島からの初回のデー
タが届いたのが1993年2月,その後続々とデータが到着
した.実際に精製を行ったのは当時修士課程1年の高橋
俊雄君(現サントリー生有研)であった.高橋君はその
後大学院の5年間,ひたすらペプチドの精製,構造決定,
化学合成を行い,文字通り獅子奮迅の活躍であった.
1.はじめに
3.なぜペプチドか?
表記の研究を私たちはヒドラペプチドプロジェクトと
呼んでいる.このプロジェクトをはじめて既に10年以上
これは先ず宗岡さんありきではあるのだが,私たちが
たった.ヒドラペプチドプロジェクトの歴史など関係者
ペプチドでゆこうと決めた理由はいくつかある.ひとつ
以外興味ないことではあるが,このような記事を書く機
は,ヒドラの形態形成は拡散性の低分子が一義的に制御
会はまたとないと思うので,来し方を整理するつもりで
しているという,理論,実験両面からの考えが支配的で
記してみる.ただ,どういういきさつでこの研究が始ま
あることであった.その上にたって,1981年にドイツの
ったかについて知ることは一概に役に立たないともいえ
Chica Schaller 博士らがヒドラの頭部形成を促進する形
態形成因子はアミノ酸11個からなる神経ペプチド
ないのではないかと思う.
(head activator)であるという論文を PNAS に発表し
た.しかしながら,head activator の頭部形成促進作用
2.ことの起こり
1992年頃,世の中は遺伝子組み換とショウジョウバ
はこのペプチドの持つ細胞増殖促進活性で十分説明でき
エ・センチュウ等のモデル生物が幅をきかせ(今日でも
ることがわかり,かつその分子的実態が(今もって)不
その状態は変わらないが),遺伝子操作のできないヒド
明であること,私たちがヒドラの形態形成には神経がな
ラは全く蚊帳の外であった.当時の発生遺伝研究部門教
くとも上皮だけで十分であることを示したこと等によ
授だった杉山勉さんとこの事態をなんとか打開すべくい
り,頭部形態形成因子は別に存在すると考えられた.そ
ろいろ策を練っていた.欧米の有力研究室が遺伝子操作
れが,ペプチドである保証はないが,アミノ酸の組み合
を実現すべく努力をしていたので,私たちは全く別の道
わせで様々な機能を持つペプチドが形態形成因子である
を志向しようと考えていた.その一つはヒドラの核蛋白
可能性は高いと考えた.さらに,ペプチドであれば遺伝
「すべて(転写因子を含む)」を同定しようというプロジ
子まですぐ行き着くはずだし,その後の解析が容易であ
ェクトであった.このプロジェクトは日の目を見なかっ
る.また,仮に所期の思惑がはずれたところで興味ある
20
(Z−57)
分子がとれることは疑いない,つまり転んでもただで起
というアルプスを背にした平和な村で2001年まで続い
きる必要はないという関西人的楽観があった.
た.因みに2003年はヒドラ・Nematostella EST プロジ
ェクトに衣替えした.
4.国際共同研究の始まり
5.国際共同研究の難しさ
ペプチドプロジェクトをはじめて約半年がたった頃,
噂を聞きつけたドイツ・ミュンヘン大学の Charles
プロジェクトの進展に伴って,これは私のリーダーシ
David 教授とその研究室の助手 Thomas Bosch 博士(現
ップの欠如にもよることであるが,国際共同研究の難し
キール大教授)から我々も仲間に入れろという連絡があ
さをいろいろ考えさせられた.一番大きな点は彼我の研
った.1993年の7月に小泉,宗岡,高橋と遺伝研発生の
究室から出てくるデータの食い違いであった.ヒドラ飼
メンバー(杉山,服田(現お茶大),清水と私)が集ま
育状況の違いが主たる理由と考えられたが,実験者の熟
り,今後の打ち合わせを行うことにしていたが,その2
練度の違いもあった.私たちのヒドラ飼育管理と実験手
週間前に David と Bosch 両博士が参加するという知ら
法の精度は海外のどの研究室より格段に上であるという
せがあり,結局彼らを加えたメンバーで研究の進め方を
自負があるので,いかにこちらのデータを論文に入れる
話し合った.同時に,日独共同研究を日本学術振興会,
かを腐心した.また,オーサーシップの問題もある.私
ドイツ研究財団(DFG)に各々申請した.ドイツ側の
のスタンスは同じ実験をしても筆頭著者は若い研究者,
申請は受け入れられ,日本側は却下されるという憂き目
私自身の名前の位置はこだわらないことであった.特に,
をみたが,今でもこの決定を不服に思っている.これは
後者に関しては共同研究を続けるならそうするのが最も
研究費の審査基準の問題で,日本では今でも実績主義で
外交的であると考えた.それにもかかわらず自己主張の
パイオニアを正当に判断できていないと考えている.こ
強い海外の研究者にはうんざりする.ここ3−4年程は
れでは新たな分野の創造など望むべくもない.話がそれ
主として日本の研究室間の共同研究に変わりつつあるの
たが,この会合でプロジェクトを日独共同で行うことと
もやむをえないところである.
した.
1993年9月にドイツで開かれた第5回国際ヒドロゾア
6.ペプチドプロジェクトの特徴
ワークショップで非公式にペプチドプロジェクトの話を
私たちの研究の進め方には他に例を見ないいくつかの
し,カリフォルニア大学アーヴァイン校の Hans Bode
特徴があった.第一は網羅的解析である.先ず,ペプチ
教授も加わることになった.翌1994年9月にすべてのメ
ドを機械的に単離し,その後活性のあるペプチドを同定
ンバー12人が集まり第1回国際ペプチドプロジェクト会
するというやり方である.このとき,単離ペプチドがシ
議を遺伝研で持った.<図1> この会議で,役割分担
グナル活性を持つかどうかは,それらにヒドラの遺伝子
を決めた.ペプチド精製は広島,活性検定は三島とミュ
発現を変化させる作用があるか否かを1991年に開発され
ンヘン,抗体作りは福岡,Bode 教授は適宜実験,提言
たディファレンシャルディスプレイ(DD-PCR)法を用
を行うこととした.この会議は2年に1度開かれる国際
いて検定したことである.私自身 DD-PCR 法で200近く
ヒドロゾアワークショップの前に南ドイツアイドリンク
のペプチドについて検定を行ったが,この方法はペプチ
ドの選択に重要な役割を果たした.ペプチドにシグナル
活性があると判断したときにはじめて構造決定を行い,
それに基づいて化学合成をし,合成ペプチドを用いて一
連の生物活性検定(細胞増殖,細胞分化,出芽,再生,
行動)を行った.この過程で生のペプチドを用いるのは
DD-PCR だけで,通常の精製過程では避けられない貴
重なサンプルの損失を極力抑えることができた.また,
生物活性検定には多量に使える合成ペプチドを使用した
ことも特徴の一つである.
さらには,同定したペプチドについて,逐一,抗ペプチ
ド抗体の作成,コードする遺伝子の同定と発現解析,ペ
図1
21
(Z−58)
プチドに反応する遺伝子の同定,可能なら受容体の同定
上皮が形態形成を一義的に制御する(前述)ことと一致
とこれも組織的に明らかにする体制をとったことである.
する.このほか,アミド化ペプチドとしてはじめて上皮
ペプチド Hym-301を同定した.
7.成果
神経ペプチドとしては,神経−筋接合部位で働く伝達
ヒドラには数百種類のシグナル活性を持つペプチドが
物質,他の神経を介して筋収縮・弛緩に効くニューロモ
存在すると推定したことを先ず挙げたい.このような推
デュレーター,神経分化を促進する分化因子等を数多く
定は網羅的な解析法を用いてはじめて可能で,今でも他
同定した.特に,ペプチドが筋肉に直接働くかあるいは
に例を見ない.数百種のペプチドは単純な体制のヒドラ
神経を介するかを区別するのは,上皮筋肉細胞のみから
からは予想外に多い.ただ,最近の EST 数の増大によ
なる上皮ヒドラと正常ヒドラでの反応を比較することで
りその数は約400種位と減少傾向にある.ただ,1つの
可能であり,このような便利な,しかも in vivo の系は
遺伝子が数種のペプチドをコードすることは普通である
私たち以外持っていない.現在,この系を用いて神経ペ
ので,遺伝子数は100から150くらいではないかと考えて
プチドとヒドラの行動の関係を調べているが,次々と興
いる.
味ある結果が得られている.
私たちが同定したすべてのペプチドについてここで述
1999年米国マイアミで北米神経科学会のサテライトシ
べることはできないので,いくつかの代表例を表1に示
ンポジウム「Neuropeptides in the Millennium」が開か
す.私たちの元々の興味である形態形成因子として足部
れた.私は,ペプチドプロジェクトを宣伝すべくポスタ
形成に関わる2種のペプチド,Hym323と Hym-346を得
ー発表をしたが,思いもかけずベストポスター賞
た.形態形成因子としての重要な特徴のひとつは位置情
(Elsevier Science Award)をもらった.おそらく,主
報を変化させることであるが,両ペプチドともそれを持
催者は無名の若者が表彰式に出てくるだろうと思ったに
つ.これらは上皮細胞由来で(上皮ペプチドと呼ぶ),
違いないが,あに図らんや白髪頭のオヤジが出てきたの
表1
上皮及び神経ペプチドの代表例
種類
ペプチド名
構造
発現部域・細胞
機能
KWVQGKPTGEVKQIKF
体幹部内外両胚葉上
足部形成促進
皮細胞
Hym-346
AGEDVSHELEEKEKALANHS
柄部下半・頭部内胚
足部形成促進
葉上皮細胞
Hym-301
KPPRRCYLNGYCSPamide
頭部外胚葉上皮細胞 触手形成促進
Hym-33H
AALPW
外胚葉上皮細胞
神経分化の抑制
Hym-35
EPSAAIPW
同上
同上
Hym-37
SPGLPW
同上
同上
Hym-310
DPSALPW
同上
同上
NPYPGLWamide
神経細胞
神経−筋接合部位伝達物質・芽体足部外胚
葉環状筋収縮
Hym-54
PMTGGLWamide
同上
同上
Hym-248
EPLPIGLWamide
同上
同上・内胚葉上皮筋収縮
Hym-249
KPIPGLWamide
同上
神経−筋接合部位伝達物質・芽体足部外胚
葉環状筋収縮
Hym-331
GPPPGLWamide
同上
同上
Hym-338
GPPhPGLWamide
同上
同上
Hym-370
KPNAYKGKLPIGLWa
同上
同上
Hym-176
APFIFPGPKVamide
同上
神経−筋接合部位伝達物質・体幹特に足部
外胚葉上皮筋収縮
Hym-357
KPAFLFKGYKPamide
同上
ニュロモデュレーター・触手の収縮
Hym-355
FPQSFLPRGamide
同上
神経分化の促進
上皮ペプチド Hym-323
神経ペプチド Hym-53
Hym-53~Hym-370までと Hym-176∼Hym-357はそれぞれ同一の遺伝子にコードされている。
22
(Z−59)
にはさぞ驚いただろうと思う.しかし,この受賞はうれ
ペプチドプロジェクトの代表的な発表論文
しかった.
Takahashi, T., Muneoka, Y., Lohmann, J., Lopez de Haro,
最近,研究所内の五條堀孝教授のグループとヒドラ
Bosch, T.C.G., David, C. N., Bode, H., Koizumi, O.,
EST プロジェクトを始めた.現在,7,000の独立したク
Shimizu, H., Hatta, M., Fujisawa, T., and Sugiyama, T.
ローンを得ており,マイクロアレーに乗せてある.これ
(1997). Systematic isolation of peptide signal
ら ESTs の中から多くの新規神経ペプチド遺伝子を同定
molecules regulating development in Hydra : I.
した.それら遺伝子の発現解析は進行中であるが,ヒド
LWamide and PW families. Proc. Natl. Acad. Sci.,
ラ神経系は考えていた以上に複雑なことがわかり,神経
U.S.A. 94, 1241-1246.
Yum, S., Takahashi, T., Koizumi, O., Ariura, Y.,
系の進化を考える上で重要なヒントを与えてくれた.
Kobayakawa, Y., Mohri, S. and Fujisawa, T. (1998). A
novel neuropeptide, Hym-176 induces contraction of
8.ペプチドプロジェクトの今後
the ectodermal muscle in hydra. Biochem. Biophys.
今後もペプチドの精製と構造決定は続くが,ヒドラ
Res. Comm. 248, 584-590.
ESTs が利用できることから遙かにスピードアップが期
待できる.私が,最も力を入れたいことはペプチドをリ
Yum, S., Takahashi, T., Hatta, M. and Fujisawa, T.
ガンドとする受容体の同定である.現在,進行中である
(1998). The structure of a preprohormone of a
が,早い機会に一つでも受容体の同定に至りたいと思っ
neuropeptide, Hym-176 in Hydra magnipapillata .
FEBS Letters 439, 31-34.
ている.
Grens, A., Shimizu, H., Hoffmeister, S., Bode, H.R., and
Fujisawa, T. (1999). Pedibin/Hym-346 lowers
9.終わりに
positional value thereby enhancing foot forma-tion in
今回栄えある動物学会賞をいただくことになったが,
hydra. Development, 126, 517-524.
対象となった研究は多くの共同研究者に支えられたもの
Takahashi, T., Koizumi, O., Ariura, Y., Romanovitch, A.,
で,この賞はこれらの人々と同等に分かつべきものと考
えている.この場をお借りして謝意を表したい.特に,
Bosch, T.C.G., Kobayakawa, Y., Mohri, S. Bode, H.,
宗岡洋一郎,杉山勉両氏にはプロジェクトの立ち上げか
Yum, S., Hatta, M., and Fujisawa, T. (2000). A novel
ら,ペプチドの単離,合成,さらには貴重な起案をして
peptide, Hym-355, positively regulates neuron
いただいた.また,高橋俊雄君の馬力で短時間に多くの
differentiation in Hydra. Development 127, 997-1005.
ペプチドが同定できたし,ポストドクの2年間彼は私の
Harafuji, N., Takahashi, T., Hatta, M., Tezuka, H.,
研究室でペプチド精製,構造解析ができるようにセット
Morishita, F., Matsushima, O., and Fujisawa, T.
してくれた.因みに,彼が学生時代とポストドクで支え
(2001). Enhancement of foot formation in Hydra by a
た宗岡さんと私が学会賞を受けたことになる.彼の貢献
novel epitheliopeptide, Hym-323. Development 128,
437-446.
は大である.また,小泉修さんと小早川義尚さん(九州
Bosch, T.C.G. and Fujisawa, T. (2001). Polyps, peptides
大)には抗ペプチド抗体の作成を受け持ってもらった.
and patterning. Bioessays 23: 420-427.
表舞台には登場しない役割を淡々とこなして頂いた努力
には頭が下がる.宗岡さんの退官後ペプチド合成を担当
Morishita, F., Nitagai, Y., Furukawa, Y., Matsushima,
してもらった広島大の松島治(現広島工大),森下文浩
O., Takahashi, T., Hatta, M., Fujisawa, T., Tsunamoto,
両氏,大量ヒドラ飼育を可能にした服田昌之君(現お茶
S., and Koizumi, O. (2003). Identification of a
大),その他各研究室の研究者,学生,技術員にも謝意
vasopressin-like immunoreactive substance in hydra.
を表したい.最後に,生物活性検定をしてくれた技官の
Peptides 6542, 1-10.
Fujisawa, T. (2003). Hydra regeneration and epithe-
杉本典夫さんが若くして逝かれたことは大変残念であっ
liopeptides. Developmental Dynamics 226, 182-189.
た.ご冥福を祈りたい.
23
(Z−60)
日本動物学会奨励賞 研究内容
し3),G が脂質リン酸化酵素(PI3キナーゼ)を活性化
することを明らかにしました4).これらのヒトデを用い
ヒトデ卵を用いた減数分裂と受精の研究
た減数分裂再開機構の研究は,レセプターに結合したホ
ルモンの情報が,どのように卵内に伝達されるかについ
お茶の水女子大学理学部生物学科
て,その初期過程を他の動物に先駆けて明らかにするも
千葉和義
のでありました.なお本研究をまとめますと,以下の図
式の斜体太字を明らかにしました.
はじめに
1-MAe レセプターe GTP 結合蛋白質 e PI3キナーゼ
ヒトデ卵母細胞は,ホルモンである 1-メチルアデニン
eMPF
(1-MA)によって容易に減数分裂を再開させ,かつ受
精・発生させることが出来ます.このようにヒトデが,
減数分裂と受精研究に最適なシステムとなり得たのは,
Ⅱ)減数分裂と受精:多くの動物の卵母細胞は,第一減
金谷晴夫博士を初めとした,わが国の多くの研究者の功
数分裂の前期で休止しており,ホルモン等の刺激で減数
績によります.その財産を基盤として本研究では,以下
分裂を再開しますが,減数分裂中期で再び休止し,受精
の3点について明らかにすることができました.すな
後に減数分裂は再開されます.すなわち多くの場合,減
わち,
数分裂は2回の休止があって,2度目の休止は受精で破
Ⅰ)1-MA レセプターeMPF までの細胞内情報伝達系
られるのです.たとえば,ヒトやカエルでは第2減数分
に GTP 結合タンパク質(βγサブユニット)と PI3
裂中期で,ホヤや昆虫類は第1減数分裂中期で休止して,
キナーゼが関与すること
受精を待ちます.しかし,ヒトデ卵母細胞を1-MA を含
Ⅱ)第1減数分裂の中期で卵母細胞は休止(MI アレス
んだ海水で処理すれば,休止せず減数分裂を完了します.
ト)すること
そのため本研究以前には,ヒトデ卵は中期休止しないも
Ⅲ)成熟卵は受精しないとアポトーシスすること
のだと信じられていました.しかしながら,当時は思い
です.本編では,減数分裂と受精の“絡み合い”具合に
付かなかったのですが,この考え方では説明しにくいこ
着目しながら,上記項目を紹介させていただきます.
とがありました.それは,ヒトデ胚が正常に発生するた
めには,「受精のタイミングが第一減数分裂中期付近
Ⅰ)減数分裂再開過程:ろ胞細胞から分泌された 1-MA
(1-MA 刺激の約30分後から1時間程度まで)である」
が,まずどのように卵母細胞内の情報伝達系を駆動する
という知見でした5).ところがヒトデ体内において,卵
かについては,明らかではありませんでした.これに突
巣が1-MA で刺激されると,内部の卵母細胞は一斉に減
破口を開けられたのは,百日ゼキのおかげでした.ヒト
数分裂を再開します.その後から卵は少しずつ海水中に
の子どもが百日ゼキに感染すると咳が止まらなくなりま
放出され,最後の卵が海水中に放卵されるのは,3時間
す.その原因として,百日ゼキ菌が分泌する毒素の活性
以上経過した後です.これでは,多くの卵は減数分裂が
が考えられます.すなわち百日ゼキ毒素は,ヒト細胞膜
完了してから海水中に放出され,受精することになって
の三量体 GTP 結合蛋白質(G)を ADP リボシル化する
しまいます.すなわち,受精の最適時を逃してしまって,
ことで情報伝達系を遮断してしまう,厄介な酵素活性を
多精になってしまうのです.そのような無駄なことが自
持っています.
然界で起こっているはずはなく,これまで信じられてい
たことのどこかに間違いがあるはずです.実にこの謎は
ヒトデは,百日ゼキには感染しないと思われますが,
実験的に百日ゼキ毒素を卵母細胞にマイクロインジェク
簡単な実験で解き明かすことができました.すなわち,
ションしたところ,1-MA 情報伝達系は阻害されました.
ヒトデ個体から海水中に放出されてきた卵が,減数分裂
さらに,卵細胞膜には百日ゼキ毒素感受性の G が存在
のどの段階にいるのかを観察すれば良いのです.その結
しており,ほ乳類の G と類似の構造を持つこと,1-MA
果,放出されたばかりの卵は GVBD したものであるが
レセプターと相互作用していることを明らかにしまし
(すでに知られていたことです)
,まだ極体を放出してい
た1,2).また G 以降の情報伝達系を明らかにするために,
なかったのです(今回明らかになった事実です).実際,
ヒトデ卵無細胞系での減数分裂再開過程の再現に成功
ヒトデ体内から卵を取り出して確認したところ,全て第
24
(Z−61)
1減数分裂中期で休止していることが分かりました.体
この現象の生理的な意義としては,“放卵されなかった
内から海水中に放出されることで,卵の減数分裂は再開
卵(未受精卵)が卵巣(または体腔内)で速やかに母体
されるのです.ヒトデはメスとオスの個体が集まって,
に再吸収される”という機構を反映したものと考えてい
一斉に放卵放精するので,減数分裂の再開と受精の時期
ます.他の動物でも未受精卵の死は観察されており,同
は,ほぼ重なりあうわけです.さらに,中期休止は
様な仕組みが関与していると予測しています.また視点
MAP キナーゼ活性によって維持されること,放卵後の
を変えて本現象を眺めれば,卵は本来死ぬようにプログ
細胞内 pH(pHi)上昇によって休止が解除されること,
ラムされていることが分かります.したがって「受精は
そして pHi 上昇は Na+/H+アンチポーターによって引き
死を回避する機構である」とも考えられ,新たな切り口
起こされることも明らかに致しました.どうやら,卵巣
で当該分野を理解する糸口がつかめたところです
内では Na+/H+アンチポーターの働きが抑制されている
ようです.すでに金谷博士らの 1-MA 発見から30年以上
以上まとめますと,本研究から以下の図式の太字部分
も経っているのですが,ヒトデ体内で“本当に起こって
が明らかになりました.
いたこと”が見過ごされていたことに驚きを感じていま
1-MAe レセプターe GTP 結合蛋白質e PI3キナーゼ
す.この中期休止は,先に説明いたしましたように正常
eMPFe第1減数分裂中期休止(MAP キナーゼ活性化)
発生を保証する受精タイミング補正装置として役立って
e放卵(Na +/H +アンチポーター活性による細胞内 pH
いると考えられます6,7).本研究をまとめますと,以下
上昇)
e減数分裂終了eアポトーシス(MAP キナーゼ
の図式の斜線太字を明らかにしました.
不活性化による p38MAP キナーゼ活性化)
e死(ただし
受精するとe減数分裂終了e発生)
MPFe第1減数分裂中期休止(MAP キナーゼ)
e放卵
(Na+/H+アンチポーター活性による細胞内 pH 上昇)
e
本研究では,ヒトデという非常に優れた実験動物を解
減数分裂終了
析することで,減数分裂と受精にまつわる個々の分子過
程を理解してきました.その結果,それぞれの過程は相
すでに述べましたように,ヒトデ卵では正常な受精は
互に干渉し合う一連の連続した生物現象であることがよ
GVBD 以降に成立します.GVBD 以前に媒精すると,
り明確に意識できるようになりました.特にこの数年の
正常な受精膜は形成されず,細胞内カルシウムイオン濃
研究から,「中期休止が正常発生を保証する受精タイミ
度の上昇も阻害されています.この原因として,未成熟
ング補正装置として働いている」こと,「受精はアポト
卵では,IP3レセプターの感受性だけでなく,カルシウ
ーシスを回避し発生させる機構である」こと,そしてそ
ムイオン対する表層顆粒の反応性も低いこと,減数分裂
れぞれに MAP キナーゼが関与していること,等々,驚
が再開されると,それぞれの感受性や反応性が高まり,
くべき新事実が明らかになりました.
正常に受精できるようになることを明らかにしました8−10).
本研究をさらに推進させることで,有性生殖を成り立
これらの結果からも,減数分裂と受精の進行が実に精妙
たせている精妙な仕組みとそれらの意義について,新た
に制御されていることが,明らかになってきました.
な価値基準を打ち立てたいと考えています.
Ⅲ)受精からの発生,または未受精からの死:発生生物
元紀博士のもとで行ったものであり,Ⅱ)からⅢ)まで
学の分野では,受精卵の発生運命は詳しく研究されてき
は,主にお茶の水女子大学において,筆者の研究室の大
ましたが,受精しなかった卵は「そのうちに力尽きて死
学院生達と共に行った成果であることを,付け加えさせ
んでしまうのだろう」などと考えられて,研究対象には
ていただきます.
なお,本研究Ⅰ)の多くは,東京工業大学において星
なっていませんでした.ところが,ヒトデ未受精卵(1MA 刺激を受けたもの)は力尽きて死ぬのではなく,む
1) Chiba, K., Kontani,K., Tadenuma, H., Katada, T.,
しろ同調的にプログラムされた細胞死(アポトーシス)
and Hoshi, M., 1993. Induction of starfish oocyte
を迎えることを,本研究で発見致しました.このアポト
maturation by the βγ subunit of starfish G protein
ーシスの実行には,MAP キナーゼ依存的に活性化され
and possible existence of the subsequent effector in
るカスパーゼ3と p38MAP キナーゼが関与します
11,12)
cytoplasm. Mol. Biol. Cell 4, 1027-1034.
.
25
(Z−62)
2) Tadenuma, H., Takahashi, K., Chiba, K., Hoshi, M.,
apoptosis in starfish eggs requires spontaneous
and Katada, T., 1992. Properties of 1-methyladenine
inactivation of MAPK (ERK) followed by activation
receptors in starfish oocyte membranes: Involve-
of p38 MAPK. Mol. Biol. Cell. 15, 1387-1396.
ment of pertussis toxin-sensitive GTP-binding
昆虫類における共生微生物の
機能,起源,進化に関する研究
protein in receptor mediated signal transduction.
Biochem. Biophys. Res. Commun. 186, 114-121.
3) Chiba, K., Nakano,T., and Hoshi, M.1999. Induction
of germinal vesicle breakdown in a cell-free
産業技術総合研究所 生物機能工学研究部門
preparation from starfish oocytes. Dev. Biol. 205 ,
生物共生相互作用研究グループ 深津武馬
217-223.
4) Nakano, T., Kontani, K., Kurosu, H., Katada, T.,
1.はじめに
Hoshi, M., and Chiba, K. 1999. G-proteinβγsubunit-
子どものころから虫ばかり追いかけていた.大学生の
dependent phosphorylation of 62-kDa protein in
ときにはアルバイトでまとまった金が貯まると亜熱帯の
early signaling pathway of starfish oocyte matura-
島へ飛び,レンタカーを借り切ってそのなかで寝泊まり
tion induced by 1-methyladenine. Dev. Biol . 209 ,
し,蓄えがつきるまで昼も夜も山の中を彷徨って,見た
200-209.
ことのない生き物との出会いを追い求めた.私が生態学
5) Meijer, L. and Guerrier, P.1984. Maturation and
や進化生物学に強い関心を抱くようになったのも,自然
fertilization in starfish oocytes. Int. Rev. Cytol. 86,
の中に生きるものの美しさと多様性に魅せられた者にあ
129-195.
りがちな成り行きだったのであろう.
6) Harada, K., Oita, E., and Chiba, K.2003. Metaphase I
なんとなく生物のことをやるならと東京大学の理学部
arrest of starfish oocytes induced via the MAP
動物学教室に進学した.授業や実習はそれなりにおもし
kinase pathway is released by an increase of
ろかったが,なにか納得がいかなかった.生態学の講座
intracellular pH. Development. 130, 4581-4586.
はなかったし,進化生物学はなおさらのこと.それまで
7) Oita, E., Harada, K., and Chiba, K.2004. Degradation
のフィールド経験からの皮膚感覚として,開放系の野外
of polyubiquitinated cyclin B is blocked by the
においていくら真摯に現象にとりくんでも,わかること
MAPK pathway at the MI arrest in starfish oocytes.
に限界があるような気がした.かといって,当時の分子
J. Biol. Chem. 279, 18633-18640.
生物学,発生学,内分泌学,生理学,神経行動学などに
8) Chiba, K., and Hoshi, M., 1989. Three phases of
は,確固とした進化生物的な視点は,少なくとも私の限
cortical maturation during meiosis reinitiation in
られた知識の範囲ではあまり感じられなかった.「進化
starfish oocytes. Dev. Growth Differ., 31, 447-451.
など科学とはいえない」と広言される先生方も散見され
9) Chiba, K., Kado,R.T., and Jaffe, L.A., 1990. Develop-
た.もっとも当時の状況では無理もなかった.PCR 法
ment of calcium release mechanisms during
もひろく普及しておらず,分子系統樹を構築することす
starfish oocyte maturation. Dev. Biol. 140, 300-306.
ら一般の研究者には高嶺の花だった頃のことである.
10) Iwasaki, H., Chiba, K., Uchiyama, T., Yoshikawa, F.,
Suzuki, F., Ikeda, M., Furuichi, T., and Mikoshiba,
2.内部共生との邂逅
K. 2002. Molecular characterization of the starfish1,
卒業研究をはじめる4年次に,アブラムシの共生微生
4,5-trisphosphate receptor and its role during
物をやっている石川統教授が赴任してきた.Lynn
oocyte maturation and fertilization. J. Biol. Chem.
Margulis の細胞内共生説(1)などとの絡みで,「進化」の
277, 2763-2772.
臭いがぷんぷんした.対象も慣れ親しんだ昆虫である.
11) Sasaki, K., and Chiba, K. 2001. Fertilization blocks
迷わず卒研生として研究室にはいり,以来ずっと昆虫類
apoptosis of starfish eggs by inactivation of the
における内部共生現象を主たる研究テーマとすることに
MAP kinase pathway. Dev. Biol. 237, 18-28.
なった.現在の私の研究室には,アブラムシばかりでな
12) Sasaki, K., and Chiba, K.2004. Induction of
く,ショウジョウバエ,アズキゾウムシ,マルカメムシ,
26
(Z−63)
ホソヘリカメムシ,ナガメ,メイガなどさまざまな虫た
マメ科植物は根粒細菌との共生によって窒素固定能を獲
ちが跋扈している.もちろんすべて,大変に興味深い共
得し,やせた土壌でも生育できるようになる.海底熱水
生微生物を体内に保有しているものばかりである.
孔のまわりにみつかるハオリムシ類は,口も肛門もない
巨大な蠕虫であるが,体幹の細胞内に莫大な量の化学合
3.コンパクトな生態系としての内部共生システム
成細菌を共生させ,普通の動物には有害であるはずの硫
それまで私は,当然のことながら,昆虫を“1匹の虫”
化水素から同化産物をつくりだして利用するという驚く
としか見ていなかった.ところが,昆虫類における共生
べき術を身につけている.
微生物の普遍性と重要性を認識するようになると,世界
5.進化的新奇性の起源としての内部共生
はずいぶんと違った姿に見えてきた.昆虫類は既知の生
物多様性の過半数をしめ,陸上生態系の中核を構成する
生物進化の原材料となるのは「遺伝する変異」である.
生物群であるが,種数にしてまず間違いなく半数以上が
もっとも基本的かつ普遍的な遺伝する変異は,DNA に
1種もしくは複数種の共生微生物を保有している.しか
生じる「突然変異」として生物集団にもたらされる.し
もそれら共生微生物の多くは,宿主の生存や繁殖に必須
かしそれだけではなく,より高次の過程として「性」が
であったり,宿主の生殖や生態に大きな影響を与えてい
ある.というのは,性には集団中のさまざまな個体に生
たりする.すなわち多くの昆虫(のみならず多くの生物)
じた突然変異をサンプリングして組み合わせ,新たな遺
というのは,実は複数の微生物との密接な複合系を構成
伝する変異をつくりだす効果があるからである.しかし
していて,それらの間の相互作用によって全体としての
性がこのように働くのは基本的には同種個体の間だけで
個体の性質が規定されている.つまり昆虫1匹1匹を,
あり,生殖的隔離という壁が厳然として存在する.この
複数の生物から成る生態系としてとらえることができ
ような障壁をこえてさらなる遺伝する変異を創出する過
る.しかもこの生態系は明確に区画化されたコンパクト
程として,種の壁を越えて新規な遺伝子が獲得される
な実体であり,構成要素をすべて同定することができ,
「遺伝子水平転移」や,機能的な微生物が丸ごと獲得さ
要素間の相互作用,個体群動態,物質交換,さらには系
れる「内部共生」が重要な意義を有すると考えている.
全体の性質を代表する重要なパラメーターである個体の
6.昆虫−微生物内部共生系:未探索の現象の沃野
適応度までもしっかりと把握することが可能なので
私の手元に1冊の本がある(2).19世紀末から20世紀半
ある.
ばくらいまでのドイツを中心とした一群の微生物学者
4.内部共生の普遍性と重要性
は,光学顕微鏡を唯一のテクノロジーとして,思いつく
このような内部共生関係がみられるのは昆虫類のみに
限りのあらゆる動物の体内微生物を探索する営みに没頭
限らない.陸圏水圏を問わず,無脊椎動物から植物や原
した.その集大成として Paul Buchner という碩学が著
生生物にまでわたり,微生物との恒常的な共生関係はき
したこの書物は,1965年に出版されてから現在に至るま
わめて普遍的にみられる.脊椎動物については,おそら
で,内部共生現象に関心をもつ者にとってのバイブルで
く高度な異物排除システムとしての獲得免疫機構を進化
あり,私にとっても未だに尽きぬ驚きとアイディアの源
させたために,腸内微生物叢以外の共生系は稀にしかみ
泉である.セミ,アリ,ゴキブリ,ゾウムシ,カメムシ,
られないが,これはどちらかというと例外的なケースで
アブラムシ,ハエなど,身の回りにいるありとあらゆる
ある.
虫たちの体内に,多種多様な微生物群が高度な共生系を
宿主生物はこのような内部共生関係の構築により,微
構築しているという事実が,圧倒的な量の手書きの図と
生物のもつ特殊かつ効率のよい機能をまるごと取り込ん
記載文によって提示される.しかもそれら興味深げな現
で,単独では利用不可能な食物や環境を利用できるよう
象のほとんどは,少数のモデル系に依拠した近代生物学
になる.シロアリ類は腸内原生生物叢の助けによって,
の潮流から置き去りにされ,以来まったく研究がなされ
消化が難しい木材セルロースを効率的に分解利用でき
ていない.
る.アブラムシ類は細胞内共生細菌に必須アミノ酸を効
ナチュラリストとしてのバックグラウンドをもち,生
率よく合成してもらうことによって,栄養的にきわめて
物の多様性と進化に心惹かれていた私という学生にとっ
アンバランスな植物汁液のみを餌として繁栄している.
て,このような未探索の現象の沃野を知ったときは,ま
27
(Z−64)
さに目の覚める思いであった.普段からなじみ親しんで
究者の皆さんと共に,以下に挙げる研究プロジェクトに
いた昆虫という姿の中に,このような豊かな見えざる世
取り組んでいる.
界が入れ子になって隠されていたとは.野山で見つけた
・新規内部共生微生物の探索および進化的起源の解明
(3-14)
(多様な昆虫類,ヒル類)
虫たちは,ただ採集して飼育したり標本として眺めて楽
・二次共生細菌の多様性と生物学的機能に関する研究
しむだけの存在ではなくなった.片っ端から組織切片を
(4-5, 10, 15-19)
(アブラムシ)
作製して観察し,古い記載がことごとく真実であること
・多重共生系における宿主−共生体および共生体−共生
を確認した.最新の組織化学的手法を,タンパク質の解
析を,分子生物学的技術を,分子系統解析を,細胞分画
体間相互作用の解析(アブラムシ,アズキゾウムシ,
法や培養法を,昆虫生理学を,難培養性微生物の解析法
(18-21)
ショウジョウバエ)
・共生微生物により宿主生物に賦与される新規生物機能
を,進化生態学の理論やコンセプトを,書物や先生や先
(18-19, 22)
の解析(アブラムシ,カメムシ)
輩や友人から次々と身につけていった.この未開の領野
・共生細菌から宿主へのゲノム水平転移の進化過程およ
を総合的に理解するには,分子レベルから進化生態レベ
(23)
び分子機構の解明(アズキゾウムシ)
ルにわたる技術と知識で武装し,昆虫学と微生物学の双
・共生細菌による宿主昆虫の生殖操作の分子機構の解明
方に通暁する必要があった.それは決して努力を要する
(21, 24)
(ショウジョウバエ)
作業ではなく,むしろ純粋に楽しみといえた.これが自
・腸内共生細菌のカプセル伝達システムを利用した,宿
分のライフワークになるであろうという予感があった.
主−共生者間の共進化の実験生態学的解明(マルカメ
そしてその予感は正しかった.
(22)
ムシ)
7.研究の展開
・外界細菌獲得型の共生系構築現象に関する生態,生理,
分子機構の解明(ヘリカメムシ)
もともと生物現象の多様性に惹かれていた私として
は,単一の研究テーマに集中して取り組むというよりは,
・昆虫寄生菌類における進化,寄主特異性,転移遺伝因
(25-27)
子に関する研究(冬虫夏草類)
むしろさまざまな対象に関心を抱き,研究の幅を拡げて
・社会性アブラムシにおける兵隊分化の生態,生理,分
いくことを志向した.ふりかえってみれば,研究テーマ
(28-32)
子機構の解明(アブラムシ)
を選ぶにあたってのポイントは以下のようなものだった
・昆虫による植物の形態操作であるゴール形成機構の解
といえる.
(33)
明(アブラムシ,エゴノキ)
1)生物現象として非常におもしろいものであること.
2)共生,寄生,生殖操作,形態操作,社会性といった,
9.何を知りたいのか,追求したいのか
高度な生物間相互作用をともなうものであること.
これらの具体的な研究に取り組んでいく中から,以下
3)分子レベルから進化生態レベルまでの多面的なアプ
のような本質的な問題に対する回答なりイメージなりが
ローチを要すること.
浮かび上がってくるに違いない.それらこそが私の知り
4)私がやらなければおそらく誰も手をつけないであろ
たいことであり,追求したいことである.
う現象や対象であること.
当然のことながら,独りで研究をすすめていた当初は,
内部共生関係や寄生関係の進化的起源はなにか?内部
広く浅くということにならざるを得なかった.しかしこ
共生に関わる分子機構にはどのようなものがあり,そこ
のような研究に関心を抱き,発想に共感し,志を同じく
では実際にどのような遺伝子が機能しているのか?遺伝
するポスドクや大学院生たちが次第に集まり,研究グル
子水平転移や細胞内小器官の進化過程について,どのよ
ープの形をなしていくにつれ,それぞれの研究テーマが
うな洞察が得られるのか?内部共生によってどのような
質的にも深化をとげ,それら研究テーマ間およびそれら
新規機能が獲得されうるのか?内部共生系がなぜ安定に
に取り組む研究者間においてポジティブなフィードバッ
維持されうるのか?宿主生物の体を1つの生態系として
クが働くような状況になっていった.
とらえたとき,宿主−共生微生物および共生微生物−共
生微生物の間にはどんな相互作用がみられるのか?ある
8.研究プロジェクト群
生物がどうやって他の生物の生殖,行動,形態といった
高次の生物現象を自在に操作できるのか?どのような生
現在の私の研究室では,ポスドクや大学院生や共同研
28
(Z−65)
態的,生理的,分子的機構によって生物の社会性が構築
ンスを与えてくださった多くの方々に心よりの謝意を表
され,維持されているのだろうか?
したい.
今後とも,志を同じくする仲間たちとともに,こうし
1) Margulis, L. Origin of Eukaryotic Cells. Yale Univ.
た研究に全力で取り組んでいくつもりである.少なくと
Press, New Haven, (1970).
もこの情熱,好奇心,そして新たな発想の続くかぎりに
おいて.
2) Buchner, P. Endosymbiosis of Animals with Plant
10.現状と展望について
3) Fukatsu, T. & Ishikawa, H. J. Insect Physiol., 38,
Microorganisms. Interscience, New York, (1965).
765-773 (1992).
私が学生だった頃よりも,生物学のミクロ分野とマク
4) Fukatsu, T. & Ishikawa, H. J. Mol. Evol., 36, 568-577
ロ分野の間の垣根は明らかに低くなりつつある.分子進
(1993).
化学および分子系統学の枠組みの完成と普及により,分
5) Fukatsu, T., Watanabe, K. & Sekiguchi, Y. Appl.
子生物学者でも進化的発想をもつことはもはや自明のこ
Entomol. Zool., 33, 461-472 (1998).
ととなった.発生学は分子機構の共通性をよりどころと
6) Fukatsu, T. & Nikoh, N. (1998) Appl. Environ.
した進化的視座にたち,Evo-Devo の旗印のもとに大き
Microbiol., 64, 3599-3606 (1998).
な展開をみせている.ショウジョウバエや線虫などのモ
デル生物系で開発され,洗練された分子遺伝学的技術は,
7) Fukatsu, T. & Shimada, M. Appl. Entomol. Zool., 34,
391-397 (1999).
少しずつではあるけれども,かつては「非モデル系」
8) Fukatsu, T. & Nikoh, N. Appl. Environ. Microbiol.,
「特殊」などと呼ばれて顧みられることのなかった,し
66, 643-650 (2000).
かしそれぞれにきわめて興味深い現象を有するさまざま
9) Subandiyah, S., Nikoh, N., Tsuyumu, S.,
な生物にも適用できるようになってきた.そのようなエ
キサイティングな時代に,進化生物学者として居合わせる
Somowiyarjo, S. & Fukatsu T. Zool. Sci., 17, 983-989
ことのできる幸運を喜びたい.
「何が研究できるのか」に
(2000).
10) Fukatsu, T. Appl. Environ. Microbiol., 67, 5315-5320
過度に発想を束縛されることなく,「何を研究したいの
(2001).
か」を真摯に考えて対象や現象を選び,自らが本当にお
11) Kondo, N., Ijichi, N., Shimada, M. & Fukatsu T. Mol.
もしろいと思える研究をおこなうことができるのだから.
Ecol., 11, 167-180 (2002).
12) Kikuchi, Y. & Fukatsu, T. Appl. Environ. Microbiol.
11.おわりに
69, 6082-6090 (2003).
多種多様な生物の研究のよりどころとなる組織とし
て,日本動物学会がきわめて重要な役割を果たしてきた
13) Kikuchi, Y., Sameshima, S., Kitade, O. Kojima, J. &
ということは衆目の一致するところである.今回このよ
Fukatsu T. Appl. Environ. Microbiol., 68, 999-1004
(2002).
うな形で動物学会より顕彰いただけることは大変な名誉
14) Kikuchi, Y. & Fukatsu, T. Appl. Environ. Microbiol.,
であるとともに,これまで信じて進んできた方向でよか
68, 4637-4641 (2002).
ったのかな,と意を新たにする機会ともなった.今回の
15) Fukatsu, T., Nikoh, N., Kawai, R. & Koga R. Appl.
受賞対象となったのがいろいろな研究テーマのうちの特
Environ. Microbiol., 66, 2748-2758 (2000).
にどれなのかはよくわからないが,いずれにせよ私だけ
16) Fukatsu, T., Tsuchida, T., Nikoh, N. & Koga, R.
の研究でないことは明らかである.多すぎて名は挙げら
Appl. Environ. Microbiol., 67, 1284-1291 (2001).
れないが,日々共に研究にいそしんでいる共同研究者の
17) Tsuchida, T., Koga, R., Shibao, H., Matsumoto, T. &
皆さんとともに喜びたいと思う.
Fukatsu, T. Mol. Ecol., 11, 2123-2135 (2002).
思いかえせば私は,「昆虫類における内部共生現象」
18) Koga, R., Tsuchida, T. & Fukatsu, T. Proc. R. Soc.
というおそらくは終生のテーマに引きあわせてくださっ
Lond. B, 270, 2543-2550 (2003).
た石川統先生をはじめとして,先生や先輩や上司に常に
19) Tsuchida, T., Koga, R. & Fukatsu, T. Science 303:
恵まれてきた.生意気ばかりで実績もなく,勢いのみは
1989 (2004).
一人前であった私を見まもり,励まし,さまざまなチャ
29
(Z−66)
20) Ijichi, N., Kondo, N., Matsumoto, R., Shimada, M.,
学大学院生命理学研究科生命科学専攻生体情報学Ⅰ)/高見梨沙
(5;630–8506
Ishikawa, H. & Fukatsu T. Appl. Environ. Microbiol.
奈良市北魚屋東町 奈良女子大学大学院人間文化
研究科生物科学専攻分子細胞生物学講座細胞情報学分野春本研究
68, 4074-4080 (2002).
室)/氏家康孝(3;950–2181
21) Anbutsu, H. & Fukatsu, T. Appl. Environ. Microbiol.
新潟市五十嵐2–8050
新潟大学大
学院自然科学研究科前野研究室)/川口亜弥(3;950–2181
69, 1428-1434 (2003).
県新潟市五十嵐2の町8050
境科学専攻濱口研究室)/Gusev, Oleg A.(6;700–8530
22) Fukatsu, T. & Hosokawa, T. Appl. Environ.
山市津島中3–1–1
Microbiol., 68, 389-396 (2002).
岡山県岡
岡山大学大学院自然科学研究科進化・環境研究
室)/藤田喜久(7;903–0213
23) Kondo, N., Nikoh, N., Ijichi, N., Shimada, M. &
新潟
新潟大学大学院自然科学研究科地球環
沖縄県西原町千原1番地 琉球大
学理学部海洋自然科学科諸喜田茂充教授気付け 琉球大学大学教育
Fukatsu T. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 99, 14280-
センター)/岡野一郎(3;950–2181
14285 (2002).
8050番地 新潟大学大学院自然科学研究科生命・食料科学専攻井筒
研究室)/後藤康之(6;739–0526
24) Hurst, G. D. D., Anbutsu, H., Kutsukake, M. &
新潟県新潟市五十嵐二の町
広島県東広島市鏡山1–3–1
広
島大学大学院理学研究科生物科学専攻附属両生類研究施設発生遺伝
Fukatsu T. Insect Mol. Biol., 12, 93-97 (2003).
学部門)/武内史英(3;305–8572
茨城県つくば市天王台1–1–1
筑波大学大学院生命環境科学研究科沼田研究室)/中澤友紀(3;
25) Fukatsu, T. & Ishikawa, H. (1996) Insect Biochem.
113–0033
Mol. Biol., 26, 383-388 (1996).
東京都文京区本郷7–3–1
東京大学大学院理学系研究科
生物科学専攻分子生理学研究室)/早川英介(4;411–8540
26) Nikoh, N. & Fukatsu, T. Mol. Biol. Evol., 17, 629-638
県三島市谷田1111
(2000).
静岡
総合研究大学院大学生命科学研究科遺伝学専
攻)/大野智久(3;153–8902
東京都目黒区駒場3–8–1
東京大学
大学院総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系松田研究室)/
27) Nikoh, N. & Fukatsu, T. Mol. Biol. Evol., 18, 1631-
竹本訓彦(5;565–0871
1642 (2001).
大阪府吹田市山田丘1–3
大阪大学大学
院生命機能研究科生命機能専攻河村研究室)/中村真理子(3;
28) Shibao, H., Kutsukake M., Lee J. & Fukatsu T. J.
169–8050
Insect Physiol., 48, 495-505 (2002).
新宿区西早稲田1–6–1
早稲田大学教育学部生物学教室
菊山研究室)/清水 裕(4;411–8540
三島市谷田1,111
伝学研究所)/上野裕則(3;305–8572
29) Shibao, H., Lee, J. M., Kutsukake, M. & Fukatsu T.
1–1–1
Naturwissenschaften, 90, 501-504 (2003).
筑波大学生命環境科学研究科 筑波大学生命環境科学研究
科沼田研究室)/満武里奈(3;153–8902
30) Shibao, H., Kutsukake, M. & Fukatsu, T. Proc. R.
国立遺
茨城県つくば市天王台
東京都目黒区駒場3–8–1
東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻松田良一研究室)/吉田
真明(5;560–0043
Soc. Lond. B, 271, S71-S74 (2004).
大阪府豊中市待兼山町1–1
大阪大学大学院
理学研究科生物科学専攻常木研究室)/中田友明(3;169–8050
31) Shibao, H., Kutsukake, M. & Fukatsu, T. J. Insect
新宿区西早稲田1–6–1
Physiol., 50, 143-147 (2004).
早稲田大学教育学部理学科生物学教室菊山
研究室)/角田宗一郎(5;657–8501
32) Kutsukake, M., Shibao, H., Nikoh, N., Morioka, M.,
神戸市灘区六甲台町1–1
神
戸大学理学部生物学科洲崎研究室)/藤本貴史(1;041–8611
北
海道函館市港町3–1–1
Tamura, T., Hoshino, T., Ohgiya, S. & Fukatsu, T.
北海道大学大学院水産科学研究科生命資源
科学専攻育種生物学講座)/原 祐子(3;113–0033
Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., in press (2004).
区本郷7–3–1
33) Fukatsu, T., Aoki, S., Kurosu, U. & Ishikawa, H.
進化学研究室)/萱嶋泰成(3;223–8521
Zool. Sci. 11, 613-623 (1994).
東京都文京
東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻免疫分子
横浜市港北区日吉4–1–1
慶應義塾大学・法学部・生物学教室)/秋山吉寛(1;060–0810
北海道札幌市北区北10条西5丁目 北海道大学大学院地球環境科学
研究科生態環境科学専攻環境情報医学講座岩熊研究室)/高橋一彰
会員異動
(2;980–8578
仙台市青葉区荒巻字青葉 東北大学大学院生命科
学研究科多様化機構分野山本研究室)/金子美代子(3;169–8050
東京都新宿区西早稲田1–6–1
所属支部番号
前喜洋(3;152–8550
1. 北海道,2. 東北,3. 関東,4. 中部,5. 近畿,6. 中四国支部
早稲田大学教育学部生物学教室)/竹
東京都目黒区大岡山2–12–1
東京工業大学
大学院生命理工学研究科生体システム専攻本川研究室)/高久康春
7. 九州,8. 海外
(5;606–8501
京都府京都市左京区吉田近衛町 京都大学大学院
医学研究科・先端領域融合医学研究機構)/久富裕子(7;842–
新入会(6/10日現在)
8585
松本太朗(7;890–0056
科生物学研究室)/成瀬 貫(7;907–1311
鹿児島市下荒田4–50–20
鹿児島大学水
町黒島136
産学部漁業基礎工学講座 鹿児島大学水産学部漁業基礎工学講
座)/田代純久(3;950–2181
新潟県新潟市五十嵐2–8050
佐賀県神埼郡神埼町大字尾崎4490–9
沖縄県八重山郡竹富
日本ウミガメ協議会附属黒島研究所)/菊地有由美
(3;294–0301
新潟
西九州大学健康栄養学
千葉県館山市香11
お茶の水女子大学大学院人間
大学大学院自然科学研究科生命・食料科学専攻前野研究室)/北島
文化研究科ライフサイエンス専攻清本研究室)/菊地亮介(4;
有夏(5;678–1297
930–0887
兵庫県赤穂郡上郡町光都3–2–1
兵庫県立大
30
富山県富山市五福3190
富山大学理学部生物学科生体制
(Z−67)
御学講座内山研究室)/片桐信人(4;422–8529
谷836
宮城教育大学理科教育講座出口研究室)/荒城雅昭(3;305–8604
静岡県静岡市大
茨城県つくば市観音台3–1–3
静岡大学理学部生物教室田中研究室)/田口 恵(2;
990–8560
山形県山形市小白川1丁目4–12
富山県富山市五福3190
学理工学研究科生物学専攻松田研究室)/山嵜敦子(4;920–1192
山形大学理学部生物学科中内研究室)/築
石川県金沢市角間町 金沢大学大学院自然科学研究科生物科学専
田淳爾(6;広島大学生物圏科学研究科水族生理学研究室)/小松崎
攻)/石井清夏(6;700–8530
悦子(3;156–8550
部生物学科行動生理研究室)/川口晃司(3;153–8902
東京都世田谷区桜上水3–25–40
日本大学大学
黒区駒場3–8–1
院総合基礎科学研究科相関理化学専攻生物化学研究室)/阿武千春
(6;780–8520
高知県高知市曙町2–5–1
476
東京都目
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻生命
体情報学1講座)/嶋田健一(3;153–8902
兵庫県赤穂郡
目黒区駒場3–8–1
東
京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系松田研究
東京都八王子市宮下町
杏林大学保健学部環境生命科学研究室)/Kaftanovskaia, Elena
(4;464–8601
岡山大学理学
上郡町光都3丁目2番1号 兵庫県立大学大学院生命理学研究科生
東京都世田谷区桜上
日本大学大学院総合基礎科学研究科相関理化学専攻生
物化学研究室)/松本誠治(3;192–8508
岡山市津島中3–1–1
環境科学系奥野研究室)/川上 功(5;678–1297
高知大学理学研究科細胞
分子工学研究室)/小林 大(3;156–8550
水3–25–40
富山大
山形
研究科生物学専攻中内研究室)/渡辺由紀子(2;990–8560
市小白川町1丁目4–12
農業環境技術研究所生物環境安全
部)/捫垣友三香(4;930–8555
山形大学大学院理工学
室)/網本靖子(7;810–8560
福岡市中央区六本松4丁目2番1
号 九州大学大学院理学府生物科学専攻細胞機能学講座)/川津真
名古屋市千種区不老町 名古屋大学生物機能開発
利用研究センター純系動物器官機能利用分野)
/Bubenshchikova,
吾(7;810–8560
Ekaterina(4;464–8601
学院理学府生物科学専攻細胞機能学講座小早川研究室)/本郷儀人
名古屋市千種区不老町 名古屋大学生物
(5;606–8502
機能開発利用研究センター純系動物器官機能利用分野)/小境久美
子(3→3;154–0002
東京都世田谷区下馬4–1–5
附属高等学校)/諏訪僚太(7;903–0213
静岡県静岡市大谷836
田中研究室)/福田七穂(3;277–8562
(6;739–8521
沖縄県西原町字千原1
片平2–1–1
横浜市港北区日吉3–14–1
広島県東広島市鏡山1–7–1
広島大学総合科学部総
宮城県仙台市青葉区
東北大学大学院生命科学研究科微小脳解析分野水波
研)/篠 至厚(5;606–8585
東京大
京都市左京区松ヶ崎海道町 京都
工芸繊維大学繊維学部応用生物学科化学生態学研究室)/張 岩
学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻分子認識化学分
野)/小林真悠香(3;223–8522
京都市左京区北白川追分町 京都大学大学院理学
合生理学研究室)/渡邉英博(2;980–8577
静岡大学理学部生物学教室
柏市柏の葉5–1–5
(3;950–2101
慶應
新潟市五十嵐2の町8050番地 新潟大学理学部生
義塾大学大学院理工学研究科基礎理工学専攻星・松本研究室)/紺
物学科小林研究室)/高尾大輔(3;153–8902
野 在(3;415–0025
3–8–1
静岡県下田市5–10–1
筑波大学大学院生命
東京都目黒区駒場
東京大学大学院総合文化研究科生命環境上村研)/村山壮一
(3;305–8572
環境科学情報生物学専攻稲葉研究室)/久枝由佳(5;630–8506
茨城県つくば市天王台1–1–1
筑波大学大学院生命
環境科学研究科沼田研究室)
奈良市北魚屋西町 奈良女子大学大学院人間科学研究科生物科学専
攻個体機能学講座)/岡本 卓(5;606–8502
九州大学大
研 究 科 生 物 科 学 専 攻 動 物 学 教 室 動 物 行 動 学 研 究 室 )/ 伊 藤 直
東京学芸大学
番地 琉球大学理工学部海洋環境学専攻日高研究室)/久保田 眞
(4;422–8529
福岡県福岡市中央区六本松4–2–1
京都府京都市左京
区北白川追分町 京都大学大学院理学研究科動物学教室動物系統学
研究室)/島 達也(5;573–0163
17–18–302
浜市港北区日吉3–14–1
住所・所属変更(6/10日現在)
大阪府枚方市長尾元町5丁目
日本ウミガメ協議会)/小林真悠香(3;223–8522
横
木原孝洋(5→5;564–0053
慶應義塾大学大学院理工学研究科基礎理工
学専攻星・松本研究室)/田中悠里(5;630–8506
大阪府吹田市江の木町33–94
大日
本製薬株式会社・薬理研究所)/今井真理子(2→3;294–0301
奈良市北魚屋
千葉県館山市香11
お茶の水女子大学大学院人間文化研究科ライフ
西町 奈良女子大学大学院人間文化研究科生物科学専攻細胞情報学
サイエンス専攻生命科学系清本研究室)/坂 晋(1→1;060–
分野春本研究室)/新村英明(3;152–5881
0812
2–12–1
東京都目黒区大岡山
東京工業大学生命理工学研究課生体システム専攻本川達雄
研究室)/出口真理子(4;920–1192
札幌市北区北12条西6丁目 北海道大学大学院薬学研究科生
体分子薬学専攻細胞分子薬学講座生化学分野)/吉原正雄(6→;
石川県金沢市角間町 金沢
739–8526
東広島市鏡山1–3–1
広島大学大学院理学研究科生物科
大 学 大 学 院 自 然 科 学 研 究 科 生 物 科 学 専 攻 )/ 荻 野 由 紀 子 ( 7 ;
学専攻情報生理学研究室)/古川康雄(6→6;739–8521
860–0811
市鏡山1–7–1
熊本市本荘2–2–1
熊本大学生命資源開発研究・支援セ
ンター動物資源開発研究部門)/末友靖隆(5;657–8501
神戸市灘区六甲台町1–1
井俊裕(4;517–0004
三重県鳥羽市菅島町429–63
学部生命理学科)/上原亮太(3;153–8902
3–8–1
兵庫県
4;930–8555
神戸大学理学部生物学科洲崎研究室)/藤
3327–204
東京都目黒区駒場
富山大学理学部生物学科山
広島県東広島市鏡山1–3–1
究科生物学専攻情報生理学講座)
仙台市青葉区荒巻字青葉149
31
奈良県奈良市中町
近畿大学農学部水産学科水産生物学研究室)/吉永雅史
(3;722–0073
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻生命環境系馬
渕研究室)/中野 剛(2;980–0845
富山県富山市五福3190
崎 研 究 室 )/ 大 谷 哲 ( 1 → ; 6 3 1 – 8 5 0 5
名古屋大学理
東広島
広島大学総合科学部行動科学講座)/原本真二(4→
広島大学大学院理学研
「生物科学ニュース」の購読・ご利用のおすすめ
近年の生命科学の進歩はめざましく,新しい分野が次々と開かれ,その結果として新しい学会や雑誌が次々と設
立・刊行されると共に,日々各種の会合がめまぐるしく催されております.もはや個々の学会や個人がこれらの情報
を処理していける時期ではなくなってきております.
この時代に対処してゆくために「生物科学ニュース」は日本動物学会および日本植物学会の和文情報誌として,会
員への情報伝達,広報はもちろん,生物学に関連した学会・国際会議・シンポジウム・講演会・研修会などの開催予
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32
関連記事掲載を御希望の方は,「生物科学ニュース」最新号を参照の上,記事を簡潔にまとめ,下記編集局宛にお送
り下さい.編集委員会が関連記事と認めた場合には無料で掲載させていただきますが,様式の統一のため記事の手直
しを行なうことがあります.なお,編集委員会では記事の要約表現の改訂を独自に行なうことがあります.また学会
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○
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○
記事送付先:〒113–0033
○
原稿をお送り下さる場合,以下の点にご留意下さい.
東京都文京区本郷2–27–2
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1)生物科学ニュースに原稿をお送りいただく場合は,生物科学ニュース編集局([email protected])に,電子メ
ールの本文または添付書類(テキストファイル,マイクロソフトワードまたはアップルワークス書類に限る.ファイ
ル名に拡張子を付ける.)で,Subject に「ニュース原稿」と記入の上,お送り下さい.フロッピーディスクを郵送い
ただいても結構です.なお,修飾文字や特殊文字をご使用の際は,同時にプリントアウトしたものをファックス(033814-6216)にてお送り下さい.図表等のファイルについては,予めご相談下さい.書式等は生物科学ニュース最新号
をご参照下さい.
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3)掲載原稿の締切日(必着)は以下の通りです.
No.394
2004年10月号 2004年8月16日(月)
No.395
2004年11月号 2004年9月13日(月)
No.396
2004年12月号 2004年10月12日(火)
No.397
2005年1月号 2004年11月15日(月)
No.398
2005年2月号 2004年11月29日(月)
No.399
2005年3月号 2005年1月17日(月)
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生物科学ニュース
No.392
2004年8月 (月 刊)
定価 270円(消費税込)
運営委員会
社団法人 日本動物学会 蟻川謙太郎・久保英夫・窪川かおる(http://wwwsoc.nii.ac.jp/zsj/)
社団法人 日本植物学会 杉山宗隆・作田正明・米田好文(http://bsj.or.jp/)
編集委員会
社団法人 日本植物学会 青木誠志郎・喜多陽子・澤 進一郎・中西 史・作田正明(幹事)
社団法人 日本動物学会 赤染康久・小畑秀一・鈴木 忠・服田昌之・久保英夫(幹事)
発 行 (社)日本動物学会・(社)日本植物学会 生物科学ニュース編集委員会 〒113–0033
東京都文京区本郷2–27–2
東真ビル/FAX 03–3814–6216
印 刷 昭和情報プロセス株式会社 〒108–0073
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購読申込:(財)日本学会事務センター学術情報事業部/〒113–8531
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34
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東京都文京区本郷3–22–5
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