建設発生土を盛土材へ有効活用した一事例

【90】
全地連「技術フォーラム2010」那覇
建設発生土を盛土材へ有効活用した一事例
㈱宇部建設コンサルタント
1. はじめに
○德原
裕輝
⇒CBR≧6が必要である。
近年、建設リサイクル法の厳格な遵守により,コンク
リートガラやアスファルトのリサイクル率は90%程度と
高いリサイクル率を示している。
〔歩道盛土〕
トラフィカビリティーの確保
⇒施工時に10t ダンプトラックの走行が可能となるコー
一方、建設発生土や木材のリサイクル率は60%程度と
依然として低水準である。今後、リサイクル率のさらな
る向上のためには,リサイクル率の低い材料を積極的に
ン指数が必要である。
⇒コーン指数 qc>1,200kN/m2
1)
が必要である。
〔土羽土〕
法表面の雨水による侵食を防止するため,粘性または細
有効活用していくことが重要である。
今回は,道路の拡幅工事において現道の腹付け盛土を
粒分混じり礫等で被覆する必要がある。
行う工事である。特に他工事で発生した盛土材料として
適さない不良土を盛土材料に転用することにより有効活
3.使用材料
今回使用した建設発生土の材料試験結果を以下に示
用した事例について紹介する。
す。
2.道路計画
表-1.力学試験結果
CBR 値
2.3%
本計画は既設車道に腹付け盛土を実施することにより
2車線+歩道を追加し,道路を拡幅するものである。拡幅
側の現地盤面の高さは,現道から1~2m 程度であり,現
道程度の高さまで盛土を構築することにより幅員を確保
する。
図-1に道路計画断面を示す。
コーン指数
388kN/m2
表-2.粒度試験結果
礫分
2~75mm
砂分
0.075~2mm
細粒分
0.075未満
34.0%
31.6%
34.4%
地盤材料
の分類名
粘性土質
砂質礫
表-3.土質区分基準2)
下り車線
歩道
上り車線
歩道
路床盛土
歩道盛土
現 道
As
土羽土
As
路体盛土
図-1.道路計画断面図
盛土材料には敷均し・締固めが容易で締固め後のせん
断強度が高く,圧縮性が小さいものが望ましい。
特に道路盛土では盛土の部位ごとに求められる性能が
異なる。このため,これらの必要な性能以上の材料を使
用することが必要となる。
各盛土部位に求められる性能を示す。
〔路体盛土〕
路床からの自動車荷重を支えるとともに,自重による
崩壊に対して十分に安定である必要がある。
盛土上を10tダンプトラックが走行する必要がある。
⇒10tダンプトラックのトラフィカビリティー(施工機
これらの試験結果をもとに上表を参照すると,この建
設発生土は“第4種発生土”に相当する。このため,この
発生土を利用しない場合,産業廃棄物として処理しなけ
ればならない。
なお、盛土のうちの路体として求められる強度は“第
械の走行性)の確保
2 1)
⇒コーン指数 qc>1,200kN/m
が必要である。
〔路床盛土〕
舗装を支持している層で舗装下面より厚さ約1mのほ
ぼ均一な支持力を持つ安定した構造とする必要がある。
路床の支持力(CBR 値)確保
3種発生土” 相当である。
上表より,この建設発生土は盛土材料に適さない材料
と判断できる。
ただし、本材料を盛土材に用いる場合にはセメント系
または石灰系の固化材を混合することにより,必要な強
全地連「技術フォーラム2010」那覇
表-5.添加材料比較表
度を有する材料に土質改良することができる。
本工事では、他工区からのまとまった材料の搬入が期
待できない状況にあったため,この建設発生土に対して
必要な土質改良を実施し、盛土を構築することとした。
4.盛土材への適用に対する問題点
施
工
性
この建設発生土を盛土材料に利用する場合、下記項目
が問題点となる。
①CBR 値が小さい(CBR=2.3)ため,路床盛土としての支
持力が確保できない。
②コーン指数が小さい(qc=388kN/m2)ため,施工時のト
ラフィカビリティーが確保できない。
コ
メ
ン
ト
③高含水の状態を保持しやすい材料であるため,転圧が
困難であり、現場密度等の盛土の品質が確保できない。
④本計画は,盛土高が平均して2m 程度と比較的低いため
路体の影響が道路面に出やすい。
この建設発生材料を盛土材として使用するには,これ
セメント系固化材
・仮置きヤードにて撹拌・
混合の直後からセメントが
固結を始めるため,現場に
搬入後すぐに転圧する必要
がある。
・転圧が遅れ,固結してし
まった場合には,産廃処分
としなければならない。
・セメント系固化材である
ため,六価クロム溶出のリ
スクがある。
・六価クロムが溶出する場
合,これに対応する固化材
とする必要が生じる。この
場合,材料費が増加し、経
済性が劣る結果となる。
石灰系固化材
・仮置きヤードにて撹拌・
混合後も 4,5 日放置しても
再転圧が可能である。
・盛土として必要量の改良
が厳密にできる。
×
○
×
○
経
済
性
評
価
・六価クロムのリスクがな
いため,周辺環境に対して
安心な材料である。
・早期に改良効果が期待で
きる(トラフィカビリティ
ーの早期向上の必要性)
以上より、CBR=20の改良地盤であれば,10t ダンプト
らの問題点を解決しなければならない。
これに対して,今回はセメント系または石灰系固化材
を添加することによりこれらの問題点を解決することと
ラックに求められるコーン指数 qc≧1,200(kN/m2)を満
足する。
〔施工性〕
した。
固化材を添加する目標強度は、以下の通りに設定した。
・トラフィカビリティーの確保・・・qc>1,200kN/m2
1)
混練後,4~5日後でも転圧可能なため,混練ヤードで
多く改良しても次の日に使用できる。(セメント系固化
材では固結が始まっているため,混練後直ちに盛土に使
・路床の支持力・・・・・・・・・・CBR=12,20%
用しなければならない)
〔環境性〕
5.配合試験結果
セメント系では六価クロム溶出のリスクがある。これ
配合試験結果を以下に示す。
に対して,石灰系ではこのリスクがないため,環境面に
表-4.配合結果一覧表
添加材
目標 CBR(%)
設計添加量
(kg/m3)
石灰系
12
30
セメント系
12
20
20
※)
30※)
50※)
65
おいて優位である。
8.おわりに
※)・・・各添加剤の最低添加量
今回は、改良土の撹拌用ヤードが近隣にあったことや
以上の結果より、セメント系では65kg/m3,石灰系では
ほぼ同一種類の発生土が大量にあったため,好条件にて
30kg/m3の添加量で目標の CBR 値以上を満足する土質材
実施することができた。実際に工事で採用するには経済
料に改質出来ることが確認できた。
性が大きく影響するため,ヤード,搬入経路などを十分
検討し,購入するより経済的な計画とする必要がある。
また,施工箇所周辺は田園地帯であったため,六価ク
6.添加材料の選定
添加材料を選定するために,セメント系,石灰系固化
材の比較検討を実施した。表-5に示す比較表より使用す
る添加材料を石灰系固化材に選定した。
ロムのリスクのない石灰系の固化材の使用は有効であっ
た。
今回,盛土の安定性に関する検討が出来なかったこと
は今後の課題である。更なる試験・調査により盛土材料
への適用の有効性を検討したい。
7.盛土材への適用性
《引用・参考文献》
〔強度〕
ここで、この CBR=20相当に改質後の土質材料をコーン
1) 社団法人日本道路協会:道路土工要綱,pp.287,2009.4.
2) 社団法人日本道路協会:道路土工盛土工指針,pp.134,
指数に概略で換算すると,
2010.4.
qc=(290~320)×CBR・・・①3)
3) 社団法人地盤工学会:地盤調査の方法と解説,pp.518,
①式に CBR=20 を代入すると,
qc=(290~320)×20=5,800~6,400(kN/m2)
≧1,200(kN/m2)
2004.6.