音楽科学習指導案

音楽科学習指導案
授
業
第2学年2組
場
所
音
指導者
1
題
材
名
日
本
の
教諭
楽
室
金
諭美
歌(心の歌1)
~詩情の味わいと曲想の工夫~
〇中心教材
2
「浜辺の歌」
指導にあたって
(1) 題材について
明治時代以降,西洋音楽の影響のもと,新しい日本独自の歌曲が数多く創作された。その
うちのいくつかは,現在でも「日本人の心の歌」として歌い継がれている。創成期の日本の
歌に親しみ,その美しさを味わわせるとともに,歌に込められた情緒や風情を味わうことで,
受け継がれた日本人の心情を感じ取らせていきたいと考えた。第2学年では,表現活動や鑑
賞活動を通して,A表現(1)ア「歌詞の内容や曲想を味わい,曲のふさわしい歌唱表現を
工夫すること」が掲げられている。これは自分が持ったイメージや感情の根拠を,作詞者の
思いや歌詞の扱い方,作曲者が意図している曲想の変化等から理解し,その楽曲に合った歌
唱表現を工夫することをねらいとしている。
教材曲は,「浜辺の歌」である。半年前に選考された「親子で歌いつごう日本の歌百選」
で大賞となった曲でもあり,作詞者の描いた浜辺の様子がこの曲の拍子とかかわって的確に
表現されているため,拍子感と曲想との関係を感じ取ることができる。また,明解な2部形
式で構成されているため,曲の形式を理解するのに適している。さらには,各フレーズに強
弱が細かく設定されており,その抑揚をしっかり表現することができる。この取組を通して,
古くから親しまれてきた美しい歌を,曲の音楽的要素を理解し,さらには,歌詞の情景をイ
メージしながら歌うことで,日本の歌のよさを豊かに感じ取り,現代にも歌い継いでいくこ
とにつなげたいと考え本題材を設定した。
(2) 生徒の実態
(男子15名
女子15名
計30名)
全体的に,明るく和やかな雰囲気で授業に臨んでいる。週1時間の音楽の時間をとても楽
しみにしている生徒が多い。その要因として考えられるのは,授業の導入に今流行している
ポップスを楽しく歌ってから本時の学習活動に入るようにしていることである。本題材でも
身近な音楽を仲間と一緒に歌い合わせる楽しさを味わわせ,歌うことに対しての抵抗感をな
くしていきたいと考える。4月当初に取り組んだ3部合唱では声量は今ひとつだが,比較的
短時間でハーモニーを創り上げることができたクラスでもある。本時は,期末テストも終え,
新しい活動になる。学級のつながりも増してきている時期でもあるので,一人一人の意見を
大切にしながら,授業の雰囲気を高めていければと思う。実態調査の結果概要は下記のとお
りである。
①
音楽関係(吹奏楽部)に所属している生徒
男子
②
女子
4名
0名
女子
6名
選択音楽を履修している生徒
男子
③
0名
表現技能について
・女声
15名
はりのある高音域が出る生徒がいない。
- 金1 -
ピアノを習っている生徒が2名おり,音程はしっかりと
取れるが,声量が今ひとつである。
・男声
15名
音程のしっかり取れる男子は,5名程いるが,まだまわりに
遠慮して大きな声を出せないでいる傾向にあり,声の中心に
なる生徒は2名程度である。
〔
音楽学習に関するアンケート調査結果 〕
〈6月2日
ア
男子15名
女子14名
計29名実施〉
音楽の学習は好きですか。
【男】はい12名 普通2名 いいえ1名
【女】はい13名 普通2名 いいえ0名
音楽の学習は好きか
12
男
2
1
13
女
2
25
計
0%
20%
4
40%
60%
80%
0
1
100%
はい 人数
普通 いいえ
イ
○1年生の頃から,親しみの持てるポップスを導入
歌に取り入れることで,音楽の時間に興味・関心が
高まってきている生徒が多くなってきていることが
うかがえる。
音楽の学習では,どの活動が好きですか。
【男】歌唱 8名 鑑賞4名
どの活動が好きか
特になし3名
4
7
1
3
【女】歌唱12名 鑑賞4名
11
2
3 0
特になし1名
男
女
15
計
9
4
器楽1名
器楽4名
3
○男子に比べ女子のほうが,歌うことに対して好意
を抱いているのが分かる。しかし,男子は変声期も
歌唱
なし
少しずつ安定期に入ってきているためか,昨年の調
査に比べ2倍の人数が歌唱領域に興味・関心を寄せている。器楽領域に関しては,アルトリ
コーダーでの演奏で,音域の広い「ラバースコンチェルト」を扱ったばかりの時期の調査だ
ったためもあり,苦手意識が高い結果となってしまった。
0%
20%
40%
60%
80%
100%
人数
鑑賞 器楽
ウ 歌うことで今,困っていることを書きなさい。
・声が出にくい
・音程がはずれる
・思うように高い声が出ない
・ハモりたいが他のパートにつられてしまう
・声量が足りない
・息が続かない
・低音が地声になってしまう
・腹筋が使えない
エ
オ
歌うときどんなことに一番気を付けていますか。
・音程
:21名
○音楽表現の表面的な部分の技能と精神的な面について
・声の大きさ
:14名
の回答がほとんどで,歌は「正しい音程で大きな声で歌
・歌詞の内容
:12名
うこと」を一番に考えていることが分かる。それを前提
・声を出す心構え:0名
にしながら,「強弱や表情」を指導する必要を感じた。
・強弱や表情
「詩情を感じ,考えて歌うこと」に目標を設定して,よ
り豊かな表現を目指す授業の工夫が大切である。
:2名
どのような音楽に興味を持って聴いていますか。
・ポップス
:26名
・ロック
:
3名
・クラシック:
3名
・童謡
1名
:
○現在の生徒が親しみを持って聴いている曲は,自分を
とりまく身近な状況(恋愛感情,社会情勢など)を題材
としたポップス系の曲が多い。その中にあって,古く昔
から日本の美しい風土を美しく描いた曲に触れること
- 金2 -
は,広く日本人が失いつつある日本人ならではの情緒を
考える良い機会だと考える。日本の名曲をじっくり味わ
わせたい。
「浜辺の歌」を知っていますか。
・日本民謡
:
1名
・特に聴いていない
カ
:3名
・ 曲名だけは知っている
・ 知らない
3名
26名
○この曲は,小学校5年生の鑑賞教材として取り上げられているが,実際に歌った経験や
印象に残らないまま過ごしてきた現状をふまえて指導していきたい。
キ
「日本の歌」,「童謡」といえばどんな曲を思い出しますか。
赤とんぼ(多数) ふるさと
海
夏の思い出
荒城の月
富士山
茶摘み
さくら
もみじ
おぼろ月夜
めだかの学校
ちょうちょ
まちぼうけ
雪
どんぐり
シャボン玉
チューリップ
かごめかごめ
こいのぼり
われは海の子
他
○やはり,学校の音楽の授業で扱ったと思われる曲名が多かった。日本のよき音楽文化を世
代を超えて歌い継ぐことの大切さを感じた。
(3) 指導観
マスメディアの発達などによって,いろいろなジャンルの音楽が氾濫している今日,歌詞
の内容に共感し,心から歌い上げられる「心の歌」は,いつの時代においても永遠の名曲と
して聴く人の心を満たすことができる。ここでは,「日本の歌」の代表作品に触れ,歌詞が
表す情景や詩情を味わわせながら,曲にふさわしいと思われる曲想や,表現の工夫にじっく
りと取り組ませたい。また,この学習活動を進めていく過程において,現在歌われていない
「浜辺の歌」3番の歌詞などにも触れ,生徒一人一人の感覚的,感性的な高まり,確かな歌
唱技術と美しい音楽を創りだそうとする意識を高めていければと思う。
2年生では「心の歌」として「浜辺の歌」の他に「荒城の月」を取り上げるが,この曲に
関しては,2学期後半に取り扱い,さらに,詩の理解や表現の工夫を通して「日本の歌」を
愛好させ豊かな感性の育成へとつなげていきたいと考える。
3
題材の目標
(1) 題材目標
・広く親しまれている日本の歌を味わい,愛好する心情を育てる。
・歌詞に込められた思いを感じ取って,表情豊かに表現できるようにする。
(2) 具体的目標
①関心・意欲・態度
ア
イ
日本の歌の歌詞の意味,背景にある情景や心情,歌詞の構成に関心をもたせる。
自己のイメージを生かして曲想豊かに,意欲的に歌唱表現させる。
②音楽的な感受や表現の工夫
ア 歌詞に込められた情景を思い浮かべ,イメージや感情を生かして歌唱表現を工夫させ
る。
イ 楽曲の特徴や詩と音楽とのかかわりを感じ取らせる。
③表現の技能
ア 日本の歌の歌詞の意味,背景にある情景や心情,歌詞の構成を理解し,自己のイメー
ジを生かして歌唱表現する技能を身に付けさせる。
- 金3 -
4
学習と評価の計画(2時間扱い)
時
数
題材名及び
目標
心の歌1
1
本
歌詞を生か
し,曲想豊
かに表現す
る能力を養
う
時
1
5
関心
感受
表現
鑑賞
主な学習活動
評価規準
意欲
工夫
技能
能力
・歌詞を読んでその情景
を思い浮かべる。
・歌詞唱をし,旋律の流
れを感じ取る。
・歌詞に込められた思い
を感じ取って歌う。
・浜辺の歌に親しみ表情
豊かな歌唱表現に積極的
に取り組んでいる。
・曲の雰囲気と詩情を味
わいながら,明瞭な発声
と正しい音程で歌ってい
る。
○
・曲の構成(2部形式)
について理解する。
・曲の雰囲気に合った強
弱の変化を感じ取って表
現する。
・歌詞のもつ意味や曲の
山を考えながら,曲にふ
さわしい抑揚表現や美し
い言葉の表現を工夫して
いる。
◎
◎
○
研究テーマとの関連
研究主題:学んだ知識・技能を活用し,思考力・判断力を身につける生徒の育成
~考える場面・伝え合う場面を効果的に位置づけた指導過程の工夫を通して~
・視点1
課題を探求する活動を取り入れた指導過程の工夫
音楽を表現したり,鑑賞したりする活動において,生徒の興味・関心の持てる教材の選択に
も目を向け,一人一人が考えて表現活動する中で表現力を高めて行きたい。浜辺の歌に関して
は,教科書に載っていない3番の歌詞を紹介し,その持つ意味などに触れることで課題を探求
する場面を作りたいと考える。
曲全体の流れの中で,抑揚表現や頂点構成を視覚的にもとらえられるようなワークシートを
工夫や,雰囲気を高める効果の教具の工夫を図り,抑揚表現の基礎を養いたい。
【手だて】・資料の工夫( 課題解決に向けて曲のできた背景にも触れ,生徒の興味・関心を
高めていく。)
・教具の工夫( 各曲に迫るためのワークシートの工夫と,レインスティックの活
用によって浜辺の雰囲気を醸しだす。また,資料集の写真などを
活用して歌詞の心情に迫っていく。)
・視点2
自分の考えや思いをまとめ,発表する活動を取り入れた指導過程の工夫
仕上げの段階において歌詞の理解や表現の工夫が不可欠になるが,その中の抑揚表現は表現
活動において基礎的能力の育成へとつながる重要な学習活動であると考える。ただ単に強弱記
号などの諸要素を楽典的に理解することではなく,諸要素と音楽とのかかわりを理解し,曲想
とどうかかわっているかに目を向けさせていきたい。また,歌詞に込められた想いをまとめ,
自分なりの言葉でまとめ,発表し合う場面を設定していきたい。
【手だて】・発表の場の設定(曲に込められた詩情についての考えをまとめ発表させる。)
(斉唱の曲だが,音程や声量のしっかりした生徒には,独唱の
場も与え,その曲の曲想を伝え合わせる。)
- 金4 -
6
本時の指導計画
(1) 題材名
「浜辺の歌」の詩情を味わおう
(2) 目標
①【関心・意欲・態度】
・歌詞の背景にある情景や心情,歌詞の意味に関心をもち,意欲的に歌唱表現に取り組む
ことができる。
②【表現の技能】
・曲の雰囲気と詩情を味わいながら,明瞭な発声と正しい音程で歌うことができる。
(3)
準備物
教科書
範唱・伴奏用CD
(4)
学習過程・・・・・別
(5)
評
縦書き歌詞
レインスティック
ワークシート
紙
価
①【関心・意欲・態度】
・日本の歌の代表作品「浜辺の歌」の背景に関心をもち,意欲的に歌唱表現に取り組むこ
とができたか。
(観察・記述)
②【表現の技能】
・歌詞の意味,背景にある情景や心情を理解し,明瞭な発声と正しい音程で歌うことがで
きたか。
(観察・発表)
- 金5 -
( 5 ) 学 習 過 程
段
階
学 習 活 動
形
態
1 既習曲の歌唱
導 ・今月の導入歌
入
「ありがとう」
一
斉
・
「ラバースコンチェルト」
10
2 今日の学習内容の確認
「浜辺の歌」の
詩情を味わおう
3 教材曲の鑑賞と
印象の発表
展
開
終
結
10
個
人
4 歌詞の大意の把握
(1番,2番)
・自分なりの言葉を使っ
て歌詞を表現する。
5 教材曲の歌詞唱
・
「浜辺の歌」の旋律を練
習する。
30
一
斉
6 歌詞の曲想の把握
・歌詞のもつ雰囲気を
つかむ。
・3番の歌詞の把握
☆なぜ3番は歌われなくな
ったのだろう?
・伴奏の効果を考える
・独唱による浜辺の歌を
聴く。
7 本時のまとめ
・まとめの歌唱
・自己評価カードに今日
の感想,反省を書く。
教 師 の 支 援
はC生徒への支援
○息を十分に吸って,リラックスした状態
で歌わせるために,隊形は自由に位置さ
せるが,姿勢や発声に気をつけるように
助言していく。
・英語に苦手意識を持っている生徒に
発音の確認をする。
・集中できない生徒に姿勢や口形をも
う一度アドバイスする。
○「日本の歌」の代表作品である「浜辺の
歌」に触れ,歌詞に込められた情景を思
い浮かべて歌えるようにすることを伝え
る。
○「浜辺の歌」の範唱を鑑賞し,その印象
を発表させる。
○〔あした〕,〔ゆうべ〕,〔さまよう〕
,〔も
とおる〕など現在使われていない言葉に
ついて簡潔に補足説明をする。
・机間支援して取りかかりが遅い生徒に
声をかけてアドバイスする。
○1,2番共に,
「も」で終わっていること
に注目させ,その後に続く作者の想いを
考えさせていく。
一
斉
個
人
□ 評 価 (方法)
準備物
・楽しみながら歌唱することが
歌詞
カード
できたか。
(観察)
・意欲的な態度で声を出うとし
たか。
(観察)
教科書
教科書
範唱
CD
ワークシ
ート1
□歌詞のもつ雰囲気を感
じ取って歌詞を深く考
えようとしていたか。
(観察・記述)
ワークシ
ート
1の☆
○聴唱法で1フレーズごとに歌わせる。
・歌詞の入れ方が,うまくいかない場合
は,ゆっくり範唱して歌えるようにする。
○もう一度,縦書きの歌詞をじっくり味わ
うことを話し,さらに現在では歌われて
いない3番の歌詞について触れ,その詩
情を探る。
○ワークシートに自分の考えを書かせる。
・はチェック事項
・積極的に声を出して,正確に
音程をつかもうとしていた
か。
(観察)
歌詞
ワークシ
ート
2の☆
○伴奏だけを聴き,6/8拍子の効果につ
いて発表させる。
○鮫島有美子(Sop)の3番までの独唱
を聴き詩情豊かな表現を感じとらせる。
一
斉
個
人
レ イ ン ス ・雰囲気を生かした表現はどん
ティック
持って聴いているか。
(発表・観察)
○本時まとめの歌唱表現になるように取り
組ませていく。
○本時の自分の取組を振り返って自己評価
させる。
○次時の活動の予告と次時への意欲を喚起
する。
- 金6-
な表現か,などに興味関心を
評価
カード
□歌詞の内容を理解して
表情豊かに歌唱するこ
とができたか。(観察)
・今日の目標に迫ることができ
たか。
(観察 記述)
日本の歌(心の歌)
資料1
「浜辺の歌」学習プリント
2年
組
番氏名
○浜辺の歌を聴いた感想を書こう
※予想される生
徒の意見
・ゆったりした感じ
・歌詞の意味がよく分からない
・歌いにくそう
など
辻堂海岸
○歌詞の大意をつかもう
手書き2番の歌詞
手書き1番の歌詞
・ゆうべ(夕方)
・あした(朝)
・もとおる(めぐれば,さまよえば)
・しのばるる(思い出される)
↓
現代語訳
※予想される生徒の意見
さまよう(散歩する)
↓
※予想される生徒の意見
夕方,浜辺を散歩していると,
朝,浜辺を散歩していると,
はるか昔出会った人のことが
は る か 昔 の でき ご と が 思 い 起 こ さ れ る
思 い起 こ さ れ る
浜 辺 に 吹 き 寄 せ る 波 の音 , 水 平 線 に 浮 か ぶ 雲
打ち寄せる波,返す波,月の色,
そ のか な た か ら 打 ち 寄 せ る 波
星 のま た た き
浜辺に打ち寄せられた貝の色
☆
す べ て 昔 と変 わ っ て い ない の だ な ぁ
- 金 7-
「浜辺の歌」
3番の歌詞
資料2
疾風(はやち)たちまち 波を吹き
さっとはげしい風が,波をまきあげて
赤 裳 (あ か も )の す そ ぞ ぬ れ も せ じ
赤い着物のすそは
病みし我は すべていえて
病んでいた私の病気はすっかり治って,
浜 辺 の 真 砂 (ま さ ご )
波に濡れてしまった
浜辺の真砂を歩く。
ま な ご い ま は ・・・
しかし,亡き愛しい子はいま・・・
☆なぜ歌われなくなったのだろう?。
※予想される生徒の意見
・1,2番と雰囲気が違う
・意味がよく分からない
・12番だけでも十分だから
など
※伴奏の効果
※予想される生徒の意見
寄せてはかえす波の音
〔本時の自己評価〕
2年
組
番
氏名
●日本の歌の代表作品「浜辺の歌」の背景に関心をもって取り組んだか。
A・B・C・D
●浜辺の歌の旋律を正しく歌うことができたか。
A・B・C・D
● 歌詞の意味,背景にある情景や心情を理解できたか。
A・B・C・D
今日の授業の感想
- 金 8-