音 楽 科 学 習 指 導 案 平成 23 年 11 月 29 日(火)5校時 鹿 児 島 2年2組 指 導 者 1 題材 2 題材について (1) 日本の歌を歌い継ごう 市 立 男子 18 名 長 田 中 女子 15 名 教 諭 大 迫 学 校 計 33 名 淑 子 (教育芸術社「中学生の音楽」) 題材設定の理由 本題材は,日本の音楽が西洋音楽と出会い発展していった時期の作品を通して,日本人が 大切にしてきた自然や人の心への思いを感じ取り,日本の文化や日本語のもつ美しさを味わ うことを目的としている。 現代の中学生は,様々なメディアを通して多様な音楽に親しむ機会に恵まれている。しか し,現代曲に触れる機会は多いが昔から歌い継がれてきた曲や日本の伝統音楽に触れる機会 は少なくなっており,興味関心を持てない子どもが多い。また,合唱曲などを歌うことは好 きであるが,日本の歌曲を歌い,歌詞を味わいながら表現したり,歌詞を表現するために歌 い方を工夫しようとする意識は低い。 「音楽は,音色,リズム,旋律,和声,形式,速度,強弱といった様々な要素で構成され ている。それらの諸要素が,楽曲の雰囲気を決定づけることに大きく関わっている。そこで, 音楽を形づくっている諸要素を知覚し,それらの働きが生み出す楽曲の雰囲気を感じ取らせ ることが,表現を工夫していこうとする意欲や表現の技能を高めていくことにつながってい くと考える。 また,音楽の諸要素を理解し,それらと歌詞との関わりを感じ取らせながら楽曲に合った 表現の工夫を考えていく活動を通して日本の音楽の美しさを味わわせることが,日本の音楽 に対する興味・関心を高め,歌い継いでいこうとする姿勢につながるのではないかと考え, 本題材を設定した。 音楽の諸要素を理解するためには,読譜力が必要である。楽譜から得られる情報を自ら読 み解き,表現に生かしていくことは,将来にわたって音楽を愛好していく心情の育成にもつ ながっていくものと考える。そして,本校の研究テーマである「確かな学力を身に付ける指 導」を達成していくためにも,中学校3年間を通して読譜力を育て,習得させることに重点 を置きたいと考える。どの題材においても,読譜力を高めるということを基盤にして音楽の 諸要素に関する知識・技能を習得させ,表現・鑑賞活動へ活用していくことを,意識して取 り組んでいる。 -1- (2) 教材観 ア 「浜辺の歌」 林 古渓 作詞 成田 為三 作曲 大正時代に作曲された日本歌曲である。 作詞者が病を患ったときに作詞されたもので,浜辺を歩く作詞者の気持ちを考えたり, 美しい日本語で表現されている浜辺の様子を思い浮かべながら歌唱させるのに適している 曲である。 8分の6拍子の伴奏が波の情景を表しており,拍子感と曲想の関係を感じ取らせること ができる。また,指揮の方法(6つ振り,2つ振り)による曲想の変化も感じ取らせるこ とができる。 二部形式(a,a’,b,b”)で構成されており,曲の形式を理解させるのに適して いる。 イ 「荒城の月」 土井 晩翠 作詞 滝 山田 廉太郎 耕筰 作曲 補作・編曲 明治時代に作曲された日本歌曲である。 七五調の文語定型詩で,日本語の美しさや哀愁を感受させることに適している。 歌詞の重厚感や悲哀を,短調の響きで表現しており,歌詞と調性の関係を感じ取らせる ことができる。 二部形式(a,a’,b,a’)で構成されており,曲の形式を理解させるのに適して いる。 滝廉太郎が作曲した曲と,山田耕筰が補作編曲した曲の2曲があり,それぞれの「荒城 の月」を比較することで,音楽の諸要素が楽曲に対しどのような雰囲気の変化を与えるか を感じ取らせる活動に適している。 新学習指導要領に示されている「我が国で長く歌われ親しまれている歌曲のうち,我が 国の自然や四季の美しさを感じ取れるもの又は我が国の文化や日本語のもつ美しさを味わ えるもの」にふさわしい曲であり,共通教材として取り扱うことを示されている。指導に あたっては,歌詞の内容や言葉のもつ響き,旋律や短調の響きなどを感じ取ることから, 日本の歌曲独特の美しさを味わい,曲趣にあった表現を工夫することができる。 3 (1) 生徒の実態 アンケート結果(30名) Q1 Q3 音楽は好きですか? Q2 合唱することは好きですか? 好き・・・・・・・・・20名 好き・・・・・・・・・14名 好きでも嫌いでもない・10名 好きでも嫌いでもない・15名 嫌い・・・・・・・・・ 嫌い・・・・・・・・・ 0名 日本の歌曲は好きですか? 好き・・・・・・・・・ Q4 6名 1名 楽譜を読むことは簡単である はい・・・・・・・・・ 2名 好きでも嫌いでもない・18名 簡単な時と難しい時がある7名 嫌い・・・・・・・・・ いいえ・・・・・・・・21名 6名 -2- Q5 楽譜に書かれているト音記号の音程を読むことはできる はい・・・・・・・・・・・・・19名 いいえ・・・・・・・・・・・・11名 Q6 楽譜に書かれているリズムを読むことはできる はい・・・・・・・・・・・・・ 2名 読める時と読めない時がある・・11名 いいえ・・・・・・・・・・・・17名 (2) 考察 明るい雰囲気の学級で,音楽の時間も積極的に活動している。 この学年は1年時に「夏の思い出」「赤とんぼ」,2年1学期に「浜辺の歌」を学習して いるが,アンケートにもあるように,現代の合唱曲に対しては好んで活動する生徒が多いが, 単旋律の日本の歌曲を扱うと意欲が低くなる傾向にある。 しかし,歌詞の意味や音楽の諸要素のかかわりを教えていくと,歌唱表現が自然と変化し, 意欲が高まる姿をこれまでの授業において見てきた。日本の歌曲をより深く味わうことで, 興味・関心を育成し,歌い継いでいこうという意欲につながっていくのではないかと考える。 また,1年時よりリズムの聴き取りや,リコーダーでの楽曲演奏,指揮活動を通して,リ ズム,音程,拍子を中心に読譜力を高める指導を継続して行っている。しかし,アンケート にもあるように音程を読むことよりもリズムを読むことを困難に感じている生徒が多い。音 程を読むことは,小学校からのリコーダー学習が継続して行われているため,定着度が高い と思われる。リズムにおいて,複雑なリズムを聞き取って真似をすることは簡単にできるが, なかなか読みとることができない。また,リズムを読むためには拍子感が欠かせないが,拍 子を感じ取ることが困難な生徒も多い。 そこで,旋律や楽曲の構成としては簡単な「浜辺の歌」や「荒城の月」などの日本の歌曲 の学習を通して,リズムを読み取ったり拍子感を養う活動が必要であると考える。また,読 み取ったリズムや拍子が,その他の音楽の諸要素とどのようにかかわって曲の雰囲気を作り 出しているかを感じ取らせる学習につなげていきたい。 4 題材の指導目標と評価規準 (1) 指導目標 ア 歌詞の内容や曲想を味わわせ表情豊かに歌唱表現することで,日本歌曲に興味・関心を 持ち,歌い継いでいこうとする心情を育てる。 イ リズムや速度,形式など音楽の諸要素の働きを理解して,自分なりのイメージをもって 歌唱表現の工夫をする。 ウ 歌詞の内容や曲想,旋律と強弱との関連に気を付けて,曲にふさわしい歌唱表現をする 技能を身に付ける。 -3- (2) 評価規準 評価の観点 評価規準 ① ○観点A 歌詞が表す情景や心情,それぞれの曲の表情 表現(1) や味わいに関心をもっている。 音楽への関心・ ② 意欲・態度 学習指導要領との関連 ア 歌詞が表す情景や心情,曲の表情や味わいを 歌詞の内容を味 わう。 生かし,曲にふさわしい音楽表現を工夫して歌 う学習に主体的に取り組もうとしている。 ① ○観点B 拍子,速度,旋律の音のつながり方やフレー 共通事項(1) ズ,強弱を知覚し,それらの働きが生み出す特 音楽表現の創意 工夫 ア 質や雰囲気を感受している。 ② 音楽の諸要素や 要素同士の関連の 拍子,速度,旋律の音のつながり方やフレー 知覚とそれらが生 ズ,強弱を知覚し,それらの働きが生み出す特 み出す特質や雰囲 質や雰囲気を感受しながら,歌詞が表す情景や 気の感受。 心情,曲の表情や味わいを感じ取って曲にふさ 表現(1) わしい音楽表現を工夫し,どのように歌うかに ア ついて思いや意図をもっている。 ① ○観点C 表現の工夫。 歌詞が表す情景や心情,曲の表情や味わいを 表現(1) 生かした,曲にふさわしい音楽表現をするため 音楽表現の技能 曲にふさわしい に必要な,発声,日本語の発音,呼吸法などの イ 曲種に応じた発 声。 技能を身に付けて歌っている。 5 指導計画(全6時間) (1) 指導内容 配当時間 教材 重点 第1時 「浜辺の歌」 習得 第2時 「浜辺の歌」 習得 第3時 「浜辺の歌」 活用 第4時 「荒城の月」 習得 第5時 「荒城の月」 習得 (本時) 第6時 「荒城の月」 活用 「浜辺の歌」 主な学習活動 ・ 「浜辺の歌」を歌えるようになる。 ・歌詞の意味,内容を理解する。 ・階名唱をする。 ・8分の6拍子について理解し,歌詞と拍子感のかか わりを感じ取らせる。 ・強弱記号や速度記号に着目し,表現に生かす。 ・歌詞のイメージと,曲の盛り上がりを考えながら表 情豊かに歌う。 ・ 「荒城の月」を歌えるようになる。 ・歌詞の意味,内容について話し合い,理解する。 ・滝廉太郎と山田耕筰の楽譜を比較し, 違いに気付く。 ・滝廉太郎と山田耕筰の楽譜の違いを,理解しながら 歌うことで,曲想の変化を感じ取る。 ・2部形式について理解する。 ・曲の構成と歌詞の内容を考えながら表情豊かに歌 う。 -4- 評価 A① B① A② B② C① A① B① B② A② B① C① (2) 基礎・基本となる知識・技能 ○歌詞の意味について理解する。 知識 ○八分の六拍子や四分の四拍子の拍子感覚について理解する。 ○二部形式について理解する。 ○速度記号について理解し,楽曲の雰囲気を左右する要素の一つであることを知る。 ○歌詞の内容に合った声で歌うことができる。 ○八分の六拍子や四分の四拍子の拍子感覚を生かして表現することができる。 技能 ○楽譜を見て,八分の六拍子や四分の四拍子を読み取ることができる。 ○二部形式や曲の盛り上がりを表現に生かすことができる。 ○楽譜に書かれてある音楽の要素の変化に対応して表現を変えることができる。 6 本時の実際 (1) 教材名 「荒城の月」 (2) 本時の目標 ア 日本の歌曲への興味・関心を養うことで,歌い継いでいこうとす姿勢を育成する。 イ 音楽の諸要素の働きが曲想にかかわることを理解する。 ウ 歌い比べたり,根拠をもって批評文を作成したりすることで,日本の歌曲の良さや美し さを味わう。 (3) 授業の展開 過程 学習活動 時間 1 リズムの読み取りをする。 指導上の留意点 教材・教具 ・滝廉太郎作曲の「荒城の月」のリ ワ ーク シ ー ・2つのリズムの楽譜を読み取 5 ズム譜と山田耕筰編曲の 「荒城の月」ト① り,叩き比べる,読み取ったリ 分 のリズム譜を配布し,グループごと リズム楽譜 ズムをグループごとに発表する。 に叩かせて2つの楽譜から受ける印 象の違いを感じ取らせる。 2 2つのリズムは同じ「荒城の ・作曲と編曲の違いについて,きら ワ ーク シ ー 月」のものであることを知る。 きら星のメロディを使って簡単に説 ト② 明する。 2つの楽譜 教 え 3 滝廉太郎の「荒城の月」と山 ・主旋律を演奏するピアノに合わせ る 田耕筰編曲の「荒城の月」を相 10 て歌わせる。 場 違点を確認しながら歌ったり鑑 面 賞したりすることで,感じ取っ ・比較しながら歌い,鑑賞する中で た雰囲気の違いをワークシート 感じ取った雰囲気の違いをワークシ に記入する。 ートにまとめる。 分 ・独唱のCDを鑑賞させる。 【言語活動】 -5- CD2種類 4 本時の目標を知る。 なぜ滝廉太郎作曲の「荒城の 月」と山田耕筰補作編曲の「荒 城の月」は雰囲気が違うのだろ う。 5 滝廉太郎の「荒城の月」と山 ・共通点や相違点をグループごとに ワ ーク シ ー 田耕筰編曲の「荒城の月」の楽 20 話し合わせる。 譜を比較しながら,相違点を確 理 分 ト② 相違点:①1か所音程が違う部分 認する。 がある。 解 ②楽譜の書き方が違う。 の ③速さの記号が違う。 確 ④強弱記号の設定が違 認 う。 6 相違点を意識しながら再度, ・相違点が,曲の雰囲気を決定づけ 2つの「荒城の月」を歌う。 7 る要素であることを確認させる。 2つの「荒城の月」の一つを 選び,批評文を書く。 ・批評文を書くことで音楽の諸要素 10 と曲想のかかわりを確認させ,それ 分 ぞれの良さを感じ取らせる。 ・自分がより好きな方を選び,PR するように記述させる。 理 ①どのような点が好きであるか。 解 ②歌詞をより良く表現していると の 思うのはどちらか。 深 【言語活動】 化 8 批評文の発表を行う。 ・聴いたり表現する側の感じ方の違 5分 いにも着目させる。 【言語活動】 ・どちらもすばらしい作品であるこ とにも気付かせる。 9 次時の予告を聞く。 ・次時は作曲の形式について学習す ることを知る。 (4) 評価 ア 日本の歌曲への興味・関心を養い,歌い継いでいこうとする姿勢を育成することができ たか。 イ 音楽の諸要素の働きと曲想のかかわりを理解することができたか。 ウ 比較したり,根拠をもって批評文を作成することで,日本の歌曲の良さや美しさを味わ うことができたか。 -6-
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