特 集 アフリカビジネスの展望 アフリカ経済の今後と TICAD Ⅵへの期待 日本貿易振興機構(ジェトロ) 理事 平野克己 ブラジルに関してはマイナス成長だったと推計し 急成長を遂げてきたアフリカ経済 ているので、アフリカに関してはそれでもかなり 1980 年代以降ほとんど成長していなかったア 楽観的だ。その理由を世銀・IMF とも、 「アフリ フリカ経済は、資源価格が高騰し始めてから一転 カの経済成長を支えているのは資源輸出よりも旺 して急成長を続けてきた(図)。少なくとも GDP 盛な個人消費であり、したがって資源価格が低迷 値で見る限りアフリカ経済、特にサブサハラ(サ しても内需主導で成長を持続できる」と説明して ハラ砂漠以南)地域の総生産額は、原油をはじめ いる。しかし、果たしてこの説明は妥当だろうか。 資源価格の動向に強く影響されてきた。原油価格 とアフリカ地域 GDP 双方の時系列の相関係数を 測ると 0.97 にも達していて、これはロシアやサ 資源安、通貨安が与える大きな影響 資源高時代における高成長期の経済指標をみる と(表)、サブサハラ・アフリカにおける外需の ウジアラビアと同じレベルである。 2014 年後半からの原油価格急落を受け世界銀 成長貢献はマイナスで、固定資本形成(投資)の 行(世銀)や国際通貨基金( I M F)はアフリカの経 貢献度も少ない。サブサハラ・アフリカの経済成 済成長率を下方修正し、今のところ 15 年の成長 長は圧倒的に内需、それも個人消費に支えられて 率を 3.5%内外と推計している。他方、ロシアや きたのである。この点において世銀や IMF は正 図 サブサハラ・アフリカの地域 GDP と石油価格 (ドル/バレル) (10億ドル) 1,800 180 1,600 160 1,400 140 1,200 120 1,000 100 80 800 サブサハラ・アフリカのGDP合計 (左軸) 600 400 60 40 20 200 0 原油価格(右軸) 1970 1975 1980 1985 (出所)国連統計、UNCTAD 統計から筆者作成 4 2016年5月号 1990 1995 2000 2005 2010 0 2015
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