1章補足 量子数について 文責 喜納克仁 さて分子や反応性を決める電子

1章補足
量子数について
文責
喜納克仁
さて分子や反応性を決める電子は原子核の周囲に存在しているわけであるが、
その電子が存在している場所は一様ではなく、原子核のまわりにタマネギのよ
うに層状になっている。それぞれの層を K 殻、L 殻、M 殻、N 殻という。K
殻、L 殻、M 殻、N 殻を順番付けすると、n=1, 2, 3, 4 となる。この n を主量
子数という。つまり、n=1 は K 殻、n=2 は L 殻、n=3 は M 殻、n =4 は
N 殻ということになる。また、それぞれの殻には電子が入る数が決まっていて、
K 殻 (n=1)には電子が2つ、L 殻 (n=2)には電子が8つ、M 殻 (n=3)に
は電子が18こ、N 殻 (n=4)には電子が32こ入る。つまり、電子の入る
数は、2n 2 となっている。
方位量子数 l で s, p, d, f 軌道を区別する。l=0 を s 軌道、l=1 を p 軌道、
l=2 を d 軌道、l=3 を f 軌道という。なお、n=1 のときは l=0 の s 軌道のみで
あるが、n=2 のときは l=0 (s 軌道)と l=1 (p 軌道)に区分けされる。n=3 のとき
は l=0
(s 軌道)、l=1 (p 軌道)、l=2 (d 軌道)となり、n=4 のときは l=0 (s 軌道)、
l=1 (p 軌道)、l=2 (d 軌道)、l=3 (f 軌道)となる。つまり方位量子数 l は 0 から
n–1(主量子数–1)の整数値をとる。まとめると、
K 殻 (n=1)は 1s (l=0)のみ
L 殻 (n=2)は 2s (l=0)と 2p (l=1)
M 殻 (n=3)は 3s (l=0)と 3p (l=1)と 3d (l=2)
N 殻 (n=4)は 4s (l=0)と 4p (l=1)と 4d (l=2)と 4f (l=3)
から成り立っているのである。
そして、s 軌道(l=0)には2こ、p 軌道(l=1)には6こ、d 軌道(l=2)には1
0こ、f 軌道(l=3)には14こ入ることが決まっている。つまり電子の入る数
は、2(2l+1)という関係式が成り立っている。
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問1
L 殻に入る電子の数と、2s 軌道と 2p 軌道に入る電子の和を比較しなさい。
問2
M 殻に入る電子の数と、3s 軌道と 3p 軌道と 3d 軌道に入る電子の和を比
較しなさい。
N 殻に入る電子の数と、4s 軌道と 4p 軌道と 4d 軌道と 4f 軌道に入る電
問3
子の和を比較しなさい。
2(2l+1)を l=0 から l=n–1 まで足し合わせた計算結果はいくらか。
問4
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次に電子がどの軌道に入っていくかの順番は決まっていて、
1s→2s→2p→3s→3p→4s→3d→4p→5s→4d→5p→6s→4f→5d→6p→7s→5f
→6d→7p...
となっている。
エネルギーとしては、1s が最も安定であり、順に不安定となっていく。注意
すべきは、3p 軌道の次は 3d 軌道ではなく 4s 軌道になっていることである。
対象の原子が1つ前の原子に比べて電子が入る場合、どの軌道に入るのかを
周期表に明示したのが以下の図となる。今まで示した周期表と違いがある。原
子番号2の He を H にくっつけた点、原子番号21
30の Sc Zn を*a と示
して、別途補足する表記とした。
s1
s2
1s
H
He
p1
p2
p3
p4
p5
p6
2s
Li
Be
B
C
N
O
F
Ne
2p
3s
Na
Mg
Al
Si
P
S
Cl
Ar
3p
4s
K
Ca
*a
Ga
Ge
As
Se
Br
Kr
4p
5s
Rb
Sr
*b
In
Sn
Sb
Te
I
Xe
5p
6s
Cs
Ba
*
*c
Tl
Pb
Bi
Po
At
Rn
6p
7s
Fr
Ra
**
*d
113
114
115
116
118
7p
d1
d2
d3
d4
d5
d6
d7
d8
d9
d10
*a
= 3d Sc Ti
V
Cr
Mn
Fe
Co
Ni
Cu
Zn
*b
= 4d Y
Nb
Mo
Tc
Ru
Rh
Pd
Ag
Cd
*c
= 5d Lu Hf Ta W
Re
Os
Ir
Pt
Au
Hg
*d
= 6d Lr
Rg
Cn
f1
Zr
Rf
Db
Sg
Bh
Hs
Mt
Ds
f2
f3
f4
f5
f6
f7
f8
f9
f10
f11
f12
f13
f14
*
= 4f La Ce Pr Nd Pm Sm Eu
Gd
Tb
Dy
Ho
Er
Tm
Yb
**
= 5f Ac Th Pa U
Cm
Bk
Cf
Es
Fm
Md
No
Np
Pu
Am
それでは、それぞれの原子について見て行こう。
原子番号1の水素 H は、1s 軌道に一つ電子が入るので、電子配置は「1s1」
となる。
原子番号2のヘリウム He は、1s 軌道にもう一つ電子が入るので、電子配置
は「1s2」となる。これで 1s 軌道は満タンとなる。
原子番号3のリチウム Li は、1s 軌道の次の 2s 軌道に電子が入るので、電子
配置は「1s22s1」となる。なお、「1s2」は He にあたるので、Li の電子配置は
「[He]2s1」とも書ける。次の原子番号4のベリリウム Be は、「1s22s1」もしく
は「[He]2s1」という電子配置となる。これで 2s 軌道は満タンとなる。
原子番号5のホウ素 B は、2p 軌道に一つの電子が入る。B の電子配置は、
「1s22s22p1」もしくは「[He] 2s22p1」となる。さて、原子番号10のネオン
Ne までは、この 2p 軌道に入っていく。Ne の電子配置は「1s22s22p6」もしく
は「[He] 2s22p6」となる。
原子番号11のナトリウム Na は、
3s 軌道に電子が入る。電子配置は「[Ne] 3s1」
となる。だんだん長くなってくるので「1s22s22p63s1」のような表記は省略する。
当然、原子番号12のマグネシウム Mg の電子配置は「[Ne] 3s2」となる。次の
原子番号13のアルミニウム Al から原子番号18のアルゴン Ar までは 3p 軌道
に入る。さらに、原子番号19、20のカリウム K、カルシウム Ca は 3d 軌道
には入らず、4s 軌道に入る。
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問1
答
次の原子の電子配置を書け。(1) C (2) Si
(1) [He]2s22p2
もしくは
1s22s22p2
1s22s22p63s23p2 (3) [Ar]4s2 もしくは
(3) Ca
(2) [Ne]3s23p2
もしくは
1s22s22p63s23p64s2
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さらに重い原子について見て行く。原子番号21のスカンジウム Sc から 3d
軌道に電子が入り始め、原子番号30の亜鉛 Zn まで 3d 軌道に電子が入って行
く。電子配置は「[Ar]3d104s2」となり、3d は 4s の前に記述する。
「[Ar]4s23d10」という記述をする本もあるが、ここでは前述のように統一する。
注意:実際は上記の順番どおりに入らない元素がある。3d 軌道に詰まって行くとき、4s 軌道から 3d 軌
道に電子が移る場合がある。例えば、
原子番号 24、Cr の電子配置は[Ar]3d44s2 ではなく、[Ar] 3d54s1
原子番号 29、Cu の電子配置は[Ar] 3d94s2 ではなく、[Ar] 3d104s1
3d 軌道はこの2つであるが、4d や 5d、4f、5f 軌道に詰まって行く時は、もっと多くの元素が順番どお
りに電子が詰まって行かない。
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問
以下の原子の電子配置を省略形で書け。
(1) Fe (2) Br (3) Sr (4) Cd
答
(5) I (6) Cs
(1) [Ar]3d64s2 (2) [Ar]3d104s24p5 (3) [Kr]5s2 (4) [Kr]4d105s2
(5) [Kr]4d105s25p5 (6) [Xe]6s1
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