(1) 初年次教育とは - 関西大学 教えと学びのショーケース

CEAS を 使 っ た 初 年 次 教 育 の 試 み
∼文学部における初年次教育科目「知のナヴィゲーター」での事例∼
文学部 本村康哲
本 稿 で は 、 文 学 部 に お け る 初 年 次 教 育 科 目 「 知 の ナ ヴ ィ ゲ ー タ ー 」 に お い て 、 CEAS
を使用した授業実践事例を紹介する。
(1) 初 年 次 教 育 と は
現 在 、日 本 の 大 学 が 直 面 し て い る 問 題 と し て 、大 学 生 の 学 力 低 下 が 挙 げ ら れ て い る 。
その要因の一つは、自ら学ぶ方法を身につけていない学生が増加していることにある
と 考 え ら れ る 。 1 年 次 生 に 「 レ ポ ー ト を 書 い て 来 な さ い 」 と い っ て も 、「 書 い た こ と が
な い 」「 書 き 方 が 分 か ら な い 」「 ど こ を ど う や っ て 調 べ た ら よ い か わ か ら な い 」「 図 書 館
の使い方がわからない」といった反応は、全国の多くの大学教員がこの数年でしばし
ば経験していることではないだろうか。また、提出されたレポートを読んでみると、
どこかの資料の丸写しであったりすることもよくある。これは、本学においても例外
ではない。このような学生たちを目の前にして、教員はその責任を学生に押し付ける
だけでよいものではないであろう。
大学に入学したばかりの 1 年次生にとっては、高校と大学の違い、特に授業におけ
る形態の違いにとまどうことの方が多いようである。現在の多くの学生が大学入学ま
でに経験してきた学習は、授業で教師が書いた板書をノートに書き写し、教科書や参
考 書 と 共 に 暗 記 す る と い っ た こ と に 重 点 が お か れ て い る 。そ の 一 方 で 、大 学 の 授 業 は 、
教師がきれいな字で板書してくれるわけでもなく、時には全く板書も資料もなく、話
だけで終わってしまうこともある。このような学習環境の変化にとまどう学生は少な
くない。
こ の 時 期 に 学 習 環 境 へ の 適 応(「 移 行 」)に 失 敗 す る と 、在 学 中 の 4 年 間 だ け で な く 、
大学から社会への「移行」にも失敗しやすい。このため、大学入学から専門課程へ、
専門課程から社会へといった「移行」を円滑に促すための教育が今の大学には求めら
れている
1)
。「 初 年 次 教 育 」 と は 、 大 学 入 学 直 後 か ら 専 門 課 程 へ の 「 移 行 」 を 円 滑 に 行
うことを目的とした教育プログラムである。
文学部では、以下の 3 つの初年次教育科目を用意している。
・ 「 学 び の 扉 」 ··········· 各 専 修 で 専 門 分 野 へ の 導 入 を は か る 入 門 講 義 。
・ 「 知 へ の パ ス ポ ー ト 」 ··· 各 専 修 で 展 開 さ れ る 入 門 演 習 。
・ 「知のナヴィゲーター」 ·学問研究の共通スキル(学習スキル)を形成する演習。
こ れ ら の 中 で も 「 知 の ナ ヴ ィ ゲ ー タ ー 」( 以 下 「 知 ナ ヴ ィ 」 と 省 略 ) は 、 大 学 で 必 要
となる学習スキルの獲得に重点を置き、文献・資料の読み方、レポートの書き方、プ
レゼンテーション、ディスカッション、図書館の利用などの習得を目的とした科目で
ある。
以下、
「 知 ナ ヴ ィ 」で CEAS を 使 用 し て 授 業 運 営 を 行 っ た 実 践 事 例 に つ い て 報 告 す る 。
この文書は関西大学「教えと学びのショーケース」に掲載されているものです。
著作権は原著者が保持しています。第三者が非営利かつ教育的な目的のため、複製・再頒布することは許諾します。
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(2)「 知 の ナ ヴ ィ ゲ ー タ ー 」
「 知 ナ ヴ ィ 」 は 、 1 ク ラ ス 25 名 で 、 同 一 曜 日 同 一 時 限 ( 2006 年 度 は 春 学 期 の 金 曜 1
時 限 目 ) に 16 ク ラ ス 開 講 さ れ て い る 。 そ の 各 ク ラ ス 共 通 講 義 概 要 を 示 す 。
文学部のどの専修に進むにしても、大学生として学んでいくためには、いくつかの
基 礎 技 能 を 身 に つ け て お く こ と が 必 要 で あ る 。こ の「 知 の ナ ヴ ィ ゲ ー タ ー 」の 目 的 は 、
特定の専修に進むために必要な知識の習得ではなく、大学生として学ぶためのスタデ
ィー・スキルの育成にある。それは具体的には次のようなものである。
(1) 資料のポイントをつかむ:文献・資料を的確に読む能力。
(2) レジュメ・サマリーを作る:文献・資料の内容をまとめた文章を作成する能力。
(3) レポート・論文を書く:テーマに応じて、自分自身の見解をまとめた文章を作
成する能力。
(4) プレゼンテーション:調査した内容や自己の見解を口頭で発表する能力。
(5) ディスカッション:発表内容を的確に聞き取り、質疑、議論する能力。
(6) モティベーションを高める:人文学の研究への動機づけやテーマ発見。
( 7 ) 図 書 館 ・ コ ン ピ ュ ー タ の 利 用 技 術 : そ の 他 、大 学 で の 学 習 に 必 要 な 技 術 の 習 得 。
これらのうち、どのスキルを重点的に扱うかはクラスによって異なるので、下記の
「このクラスの概要」と「講義計画」を参照すること。
各 ク ラ ス の 担 当 者 は 、 こ の 講 義 概 要 に 示 さ れ た (1)か ら (7)の 目 的 の う ち 、 い く つ か
を 組 み 合 わ せ て 講 義 計 画 を 立 て る 。今 回 、報 告 者 が 担 当 す る ク ラ ス で は 、(3)レ ポ ー ト ・
論 文 を 書 く 、 (4)プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 、 (5)デ ィ ス カ ッ シ ョ ン 、 (7)図 書 館 ・ コ ン ピ ュ ー
タの利用技術の 4 つの項目を重点的に扱うことにした。
(3)実 践 事 例
「知ナヴィ」は、学習スキルを重点的に扱う授業であるが、学習と「移行」を円滑
に進めていくために、教員やクラスメイト同士のコミュニケーションにも配慮し、ペ
ア 学 習 や グ ル ー プ 学 習 を 多 く 取 り 入 れ た 。こ の た め 、資 料 閲 覧 と 課 題 提 出 だ け で な く 、
授 業 終 了 後 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル と し て 、 CEAS の グ ル ー プ フ ォ ル ダ や FAQ な ど
を積極的に活用していくことにした。
CEAS に 習 熟 さ せ る た め に 、 ま ず 第 2・ 3 回 目 の 授 業 で 、 PC 演 習 室 に て 利 用 方 法 の 説
明 を 行 う と 共 に 、 提 示 資 料 閲 覧 と 課 題 提 出 を 練 習 さ せ る 授 業 を 行 っ た ( 表 1 )。 現 在 の
1 年 次 生 は 、 高 校 で コ ン ピ ュ ー タ リ テ ラ シ を 学 ん で き て い る 。 こ の た め 、 CEAS の 利 用
に 関 す る 基 本 的 な 操 作 に つ い て は 、ほ と ん ど の 学 生 が 2 回 の PC 演 習 室 の 学 習 経 験 に よ
って習熟できるようになった。
今 回 、 授 業 中 に CEAS を 利 用 し た の は こ の 2 回 だ け で あ る 。 そ の 理 由 と し て 、 文 学 部
で 利 用 で き る PC 演 習 室 の 数 は 2 教 室 ( 演 習 室 A:24 台 、 演 習 室 C: 50 台 ) と 少 な く 、
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他クラスと共用利用せざるをえない。このため、その他の回では一般演習室で授業を
行 い 、 CEAS は 主 に 授 業 終 了 後 で の 学 習 に 利 用 さ せ た 。
1)資料提示
印 刷 し た 資 料 を 配 布 す る と 同 時 に 、同 じ フ ァ イ ル を CEAS の 提 示 資 料 と し て 配 置 し た 。
多くの学生にとっては、印刷された資料を好む傾向があるが、授業終了後に資料を紛
失 し た り 、ど こ か に 忘 れ て き た り す る 場 合 に も 学 習 の 継 続 が 可 能 と な る よ う CEAS に 配
置しておくことにした。
2)課題提出
課 題 提 出 は ワ ー ク シ ー ト を 用 意 し 、 そ れ に 記 入 さ せ た も の を 提 出 さ せ た 。 CEAS の 課
題提出は、何度でも提出できるように設定が可能である。このため、学生は一度提出
したものをダウンロードし、編集した後、再びアップロードできる。このような操作
を 指 示 し て お け ば 、 USB メ モ リ や フ ロ ッ ピ ー デ ィ ス ク 等 の 記 録 媒 体 が 手 元 に な く て も 、
イ ン タ ー ネ ッ ト に 接 続 さ れ た PC が あ る 場 所 な ら ば ど こ で も 学 習 の 継 続 が 可 能 で あ る 。
表 1
回数(月日)
第 1 回 目 (04/07)
第 2 回 目 (04/14)
第 3 回 目 (04/21)
第 4 回 目 (04/28)
4 クラス合同合宿
(04/29-30)
第 5 回 目 (05/12)
第 6 回 目 (05/19)
第 7 回 目 (05/26)
授業内容
オリエンテーションと
自己紹介
友人紹介の準備
(コ ン ピ ュ ー タ 演 習 室 )
友人紹介の準備
(コ ン ピ ュ ー タ 演 習 室 )
友人紹介スピーチ
飛鳥村セミナーハウス
で合同合宿
グループ・プレゼンテ
ーションの準備1
グループ・プレゼンテ
ーションの準備2
プレゼンテーション
第 8 回 目 (06/02)
とりあえずディベート
第 1 回目
第 9 回 目 (06/09)
とりあえずディベート
第 2 回目
図書館ガイダンス
第 10 回 目 (06/16)
第 11 回 目 (06/23)
立論レポートの作成
第 12 回 目 (06/30)
ディベートの準備
第 13 回 目 (07/07)
本格的なディベート
授業計画
提示資料
気になるコトやモノをみ
つけよう(プリント配布)
クラスメートを紹介しよ
う
750 字 で 友 人 を 紹 介 す る
文章を書く
発表原稿サンプル
−
提出課題
−
クラスメートを紹介する
ワークシート
750 字 で 友 人 を 紹 介 す る
文章を書く
−
−
−
グ ル ー プ・プ レ ゼ ン テ ー シ
ョン
プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン・ワ ー
クシート
配布資料
発表原稿
プ レ ゼ ン 評 価 シ ー ト (プ リ
ント配布)
−
−
プ レ ゼ ン 評 価 結 果( プ リ ン
ト配布)
ディベートとは
第 1 回ディベートの結果
(プリント配布)
第 2 回ディベートの結果
(プリント配布)
ディベートのためのリサ
ーチ
レポートの書き方
検索サイト
ディベートの作業手順
ブレストシート
エビデンスカード
立論ワークシート
−
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ジ ャ ッ ジ シ ー ト( プ リ ン ト
配布)
ジ ャ ッ ジ シ ー ト( プ リ ン ト
配布)
−
立論レポート
立論レポート(再提出)
ブレストシートの提出
エビデンスカードの提出
立論ワークシートの提出
ジ ャ ッ ジ シ ー ト( プ リ ン ト
配布)
3
3)グループフォルダ
最近の学生は他人とのコミュニケーションをとるのが苦手な学生が多い。そこで、
受 講 生 同 士 で の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 円 滑 に 行 わ れ る よ う に 、 CEAS の グ ル ー プ フ ォ ル
ダ を 利 用 し た グ ル ー プ 学 習 を 取 り 入 れ た 。今 回 は PC 演 習 室 が 毎 回 利 用 で き る わ け で は
な い た め 、実 際 に は 、授 業 終 了 後 の 自 宅 や IT セ ン タ ー で の 作 業 が 中 心 と な っ た 。ま ず 、
授業中にグループで課題作成のための計画を練らせ、授業終了後にグループフォルダ
を 利 用 し 、グ ル ー プ メ ン バ ー と の 意 思 疎 通 と 情 報 交 換 を 図 り な が ら 作 業 を 進 め さ せ た 。
図 1 は 、第 12 回 目( 6 月 30 日 )の 授 業「 デ ィ ベ ー ト の 準 備 」の 際 に 、グ ル ー プ フ ォ
ルダを使用させた例である。課題として、ブレストシート、エビデンスカード、立論
ワークシートの提出を義務付けた。登録日を見ると、授業終了後の当日から翌々日に
か け て ( 金 ・ 土 ・ 日 )、 各 自 が 自 宅 な ど で 学 習 を 進 め て い る 様 子 が わ か る 。 ま た 、 グ ル
ー プ 学 習 で 仕 上 げ た 課 題 は 、 CEAS の 課 題 提 出 機 能 を 使 っ て 各 自 提 出 を さ せ て い る 。
図 1
グループフォルダの使用例
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4)その他
グ ル ー プ 学 習 の 際 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル と し て 、 FAQ 、 BBS、 チ ャ ッ ト に つ い
て も 一 通 り の 説 明 を し て 利 用 を 促 し た が 、FAQ が 1 度 利 用 さ れ た の み に 留 ま っ た( 図 2)。
質問のほとんどは、授業中あるいは終了後に行われた。
BBS、 チ ャ ッ ト に つ い て は 、 使 用 す る 学 生 は ほ と ん ど 見 ら れ な か っ た 。 そ の 理 由 と し
て は 、 学 生 た ち が す で に 使 用 し て い る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル ( 携 帯 電 話 、 SSN 等 )
で連絡を取り合うケースが多いのではないかと推測される。
図 2
FAQ の 使 用 例
(4)ま と め
「知ナヴィ」は、学習スキルの習得が主眼であるが、初年次教育では、それ以上に学習環境
への適応、つまり「移行」が重要である。そのためには、実際の授業における教員やクラスメ
イト間での円滑なコミュニケーションがポイントとなる。今回、アンケートは実施していない
ので定量的な評価はできないが、CEAS の資料提示や課題提出、グループフォルダの機能は、
学生からはよい反応を直接得ている。また、授業中および授業後の数多くのグループ学習によ
ってコミュニケーションが活発化し、非常に熱心な学習への取り組みが見られたことを記して
おかなければならない。特に、授業後の個別およびグループ学習では、CEAS が効果的な役割
を果たしていた。
つ ぎ に 、 1 年 次 生 に PC を 利 用 し た 授 業 を 展 開 す る こ と に つ い て は 、 最 近 の ほ と ん ど
の 学 生 は 高 校 ま で に PC の 利 用 経 験 が あ る た め 、 問 題 は な か っ た 。 し か し 、 操 作 に は 多
少 の 巧 拙 が あ る た め 、 課 題 ワ ー ク シ ー ト に は Microsoft Word で 書 式 な ど を 設 定 済 み の
ファイルを用意し、枠の中に文字を入力させるだけにした。その結果、ほぼ全員が滞
りなく課題提出を行っている。
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な お 、こ れ ら の ワ ー ク シ ー ト に つ い て は 、3 月 下 旬 に く ろ し お 出 版 よ り 刊 行 予 定 で あ
る テ キ ス ト『 知 の ナ ヴ ィ ゲ ー タ ー 』 2 ) の 付 属 デ ィ ス ク に 教 材 マ テ リ ア ル と し て 収 録 し て
ある。また、いくつかの授業展開モデルを記した教授マニュアルについても、出版社
より別途配布予定であるので、ご高覧いただければ幸いである。
と こ ろ で 、2006 年 度 は「 知 ナ ヴ ィ 」が 16 ク ラ ス 開 講 さ れ た が 、こ の 内 の 7 ク ラ ス で
は PC 演 習 室 を 利 用 し た 授 業 が 行 わ れ た 。 し か し な が ら 、 先 に も 述 べ た よ う に 、 文 学 部
で は PC 演 習 室 を 2 教 室 利 用 で き る の み で あ る 。 今 の と こ ろ は 、 ク ラ ス 担 当 者 同 士 で 演
習室をローテーションしたり合同授業などで対応している。その一方で、グループ学
習 を 進 め て い く 上 で は 、1 人 1 台 の PC 演 習 室 を 常 時 利 用 す る 必 要 が あ る わ け で は な い 。
む し ろ 、 既 存 の 小 さ な 演 習 教 室 で 、 た と え ば 、 1 教 室 ( 収 容 人 数 25 名 程 度 ) に つ き グ
ル ー プ 数 と 同 じ 台 数 ( 6 台 程 度 ) の 無 線 LAN に 接 続 可 能 な ノ ー ト PC が あ れ ば 、 CEAS へ
のアクセス、ウェブ検索、ワークシート記入などが授業中に行えるため、よりよい教
育効果が期待できる。
今 回 、 授 業 中 に PC を 用 い て グ ル ー プ 学 習 を さ せ た ケ ー ス で は 、 担 当 教 員 が 個 人 的 に
6 台 の PC を 調 達 し て 作 業 を 行 わ せ た 。 し か し 、 PC が ネ ッ ト ワ ー ク に 接 続 さ れ て い な い
た め に ウ ェ ブ 検 索 や CEAS の 利 用 が で き ず 、 授 業 終 了 後 に 学 生 各 自 が IT セ ン タ ー ま た
は自宅(漫画喫茶やインターネットカフェで作業した例もあると聞く)で作業を行う
こ と と な っ た 。 と こ ろ が 、 学 生 た ち が PC を 囲 ん で グ ル ー プ 学 習 が で き る 場 所 は 、 今 の
ところ学内には見あたらず、授業担当者だけでなく学生にも負担を強いるものである。
ま た 、 現 在 の PC 演 習 室 や IT セ ン タ ー は 、 グ ル ー プ 学 習 の 利 用 に 適 し て い る と は い え
な い で あ ろ う 。 で き れ ば 、 ネ ッ ト ワ ー ク 接 続 さ れ た PC を 囲 ん で の グ ル ー プ 学 習 が 可 能
な演習室の設置が望ましいが、このような専用設備はコスト的に見て得策ではない。
せ め て 、 一 般 演 習 教 室 で 無 線 LAN 接 続 可 能 な 貸 出 用 ノ ー ト PC を 用 意 し 、 柔 軟 な 運 用 管
理体制のもとに供される設備があるとよい。これによって、初年次教育だけでなく専
門演習などにおいてもより発展的な授業展開が考えられるだけでなく、学生たちの自
主的な学習動機も拡大するため、大きな教育効果が期待できるのではないだろうか。
以上に述べたような学習スタイルを可能とする新たな教育設備の充実が待たれる。
参考文献
1 )濱 名 篤 , 川 嶋 太 津 夫:『 初 年 次 教 育
歴 史・理 論・実 践 と 世 界 の 動 向 』,丸 善 (2006).
2 ) 中 澤 務 , 森 貴 史 , 本 村 康 哲 編 :『 知 の ナ ヴ ィ ゲ ー タ ー 』 , く ろ し お 出 版 (2007).
この文書は関西大学「教えと学びのショーケース」に掲載されているものです。
著作権は原著者が保持しています。第三者が非営利かつ教育的な目的のため、複製・再頒布することは許諾します。
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