シンガポール事務所

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【経済成長の持続を目指して】シンガポール
リー・シェンロン首相は 20 日夜、シンガポール国立大学においてナショナルデー・ラリー
(独立記念集会)での演説を行った。
首相のナショナルデー・ラリーでのスピーチは就任以来3回目で、マレー語、中国語、英語
でそれぞれ演説した。
今年のスピーチのキーワードは、
「経済」
、
「地域」
、
「人口問題」
、
「デジタル時代」
、
「国民意識」
である。内容は以下のとおり。
・「経済」については、今後も安定したシンガポールの経済成長が続くと予想しているが、さ
らに新たな取り組みとして、生命科学分野においては患者の治療方法などについての調査研究、
浄水技術分野ではこれまでシンガポール企業が培ってきた技術の活用、デジタルメディア分野
ではナンヤン工科大学が開発しているソフトウエアに対する資金面の援助を行っていく。また、
カジノを含む総合リゾート開発などによる雇用機会の確保などを進めていく。
・「地域」については、シンガポールの経済は海外の状況に左右されることから、石油価格の
高騰やテロリズムの脅威、また、東南アジア地域にも不安定な要素を抱える国々があることに
留意する必要がある。
・「人口問題」については、経済をより発展させていくためには人口を増やしていく必要があ
るが、人口 400 万を維持するのにあと少なくとも年間1万4千人もの出生を要することや多く
のシンガポール人が海外に流出していることを踏まえ、新たに設立される首相府管轄の市民
権・人口機構(Citizenship and Population Unit)による海外からの移民を奨励するとともに、
今年 1 月に設立した海外シンガポール人機構(Overseas Singaporean Unit)を通じ、海外在住
シンガポール人が帰国した際の就労などにかかる支援を行い、人材の確保に努めていく。
・
「デジタル時代」については、IT の進展に対応するため、シンガポール全土に亘って高速イ
ンターネット網を整備する一方、国民も情報化社会がもたらす危険性について注意を払う必要
がある。
・
「国民意識」については、シンガポール人の世界進出やシンガポールへの移民受入れ、
「デジ
タル時代」がもたらす新たなコミュニケーション技術の進展による交流活動が拡大している中
で、シンガポール人同士の絆を強くする国民意識の醸成が肝要となってきている。
シンガポール人一人ひとりが国を作っているという意識が大事であり、国民は自らその意識を
持ち、団結して努力しなければならない。
首相は、シンガポールは経済を含め、いろいろな問題に直面しているが、国が一丸となって
打ち勝ち、急速に変わり行く世界の中で子供たちに明るい未来を与えようと締めくくった。
(Channelnewsasia.com、straitstimes.asiaone.com、JIJI-Web 記事参照)
【マレー系優遇政策と自由貿易協定】マレーシア
貿易相ラフィダ・アジズ(Rafidah Aziz)氏は、マレー系民族を優遇するブミプトラ政策(※)
に関して、世界のどんな国や機関にその廃止を迫られようと、廃止する考えのないことを重ね
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て強調した。
これは、マレーシア政府と米国政府との間で現在進行している自由貿易協定に関する協議の
中で、アメリカ政府が政府調達などにおけるブミプトラ政策によるマレー系民族の優遇廃止を
要求してくるのではないか、という憶測に対して答えたものである。
貿易相は、
「総人口の 60%を占めるマレー系民族を優遇することは内政問題であり、また、
アメリカ政府もマレー系民族優遇政策の必要性を理解している。政府調達の透明性に関する議
論であれば、我々は進んで議論するが、いかなる国や機関にブミプトラ政策に関して口出しさ
れても、それは我々の主権の問題であって、議論の余地はない。
」と述べた。
ブミプトラ政策下の政府調達に関しては、外国人投資家からは、ブミプトラ政策によって政
府調達における入札の透明性が確保されておらず、また、マレー系民族以外の民族にその入札
機会が制限されているという不満がある。
※
ブミプトラ政策
「ブミプトラ」とはマレー語で「土地の子」を意味する。民族間の経済格差を縮小するために
先住のマレー人などを優遇するもので、実質的にはイギリス植民地時代以来貿易などで巨額の
富を手にしていた華僑・華人の政治や行政主たる産業における活動に制限をかけるものであっ
た。この政策に対して、マレーシア全土の華僑・華人は昔から比較的中国系人口の多かったシ
ンガポールに流れ込み、シンガポールの連邦離脱に至った。ブミプトラ政策で優遇の対象とな
る「ブミプトラ」は、マレー人のほか、山地やボルネオ島などのオラン・アスリも含まれ、華
人・華僑とインド系を除く国内のほとんどの民族である。ブミプトラ政策では、会社の設立な
どの経済活動のほか、公務員の採用などでもブミプトラが優遇されている。この政策によって
政治・行政におけるマレー人の優位確立には成功したが、政策を推進した前首相マハティー
ル・ビン・モハマドは近年の著書で、「マレー人には勤勉さが足りない」などと、マレー人優
遇が思い通りの成長につながらなかったことを述べている。
(15 August 2006 The Jakarta Post、Wikipedia(日本語版)参照)
【自治体行政サービスの改善に向けて~地方自治体国際会議 2006】マレーシア
サバの州都コタ・キナバルで、地方自治体国際会議 2006(International Conference on Local
Government 2006)が8月 22 日から3日間にわたり開催された。この会議は、サバ経済行動委
員会(Sabah Economic Action Council)とマラ工科大学サバ・キャンパスの共催により、自
治体職員や研究者を対象に開催されたもので、「地方自治体による行政サービス提供の強化
(Enhancing Service Delivery by Local Authorities)
」をテーマに、基調講演と 50 を超え
る事例発表が行われた。
連邦を代表して、住宅・地方自治体省のアンワール地方自治体局長が基調講演を行った。講
演の中で、同局長は、これまで、地方自治体が住民へ提供する行政サービスの質が低いと非難
されてきたことを挙げ、今般、サービスの質を改善するため、同省は、「地方自治体のサービ
ス改善のための 64 ステップ」という計画を策定したと述べた。この計画は、短期(32 ステッ
プ)
、中期(21 ステップ)
、長期(11 ステップ)からなり、これを十分に実行すれば、“Super
Local Government”になることができる、と個々の自治体の取り組みを促しながら、併せて自
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治体への直接的な指導監督を担当する州に対して実施に向けた協力を要請した。
この「64 ステップ」は、①サービス提供の体制・プロセス改善の取り組み(Web サイトの充
実や手続の電子化など情報通信技術の活用、いわゆる ISO 規格(国際標準規格)の取得促進、
など)
、②コミュニティへのサービス改善の取り組み(公衆トイレや水路など公共施設の改善、
効率的なごみ処理、住民参加を促す、など)、③国家の経済成長を促す取り組み(投資家に魅
力的なビジネス環境の創出、など)という3つのテーマから構成されている。
また、同局長は、自治体から民間への業務委託が進んでいないと指摘しており、今後、この
ステップの実施段階で、民間への業務委託を積極的に活用するよう、自治体に求めていくもの
と思われる。
このほか、各分科会では、民間企業でいう顧客サービスの観点からサービス改善を考えるも
の、ごみ収集など具体的な行政分野でサービスの改善を検討するもの、財政状況を分析するも
の、などさまざまな発表が行われた。各地から集まった自治体職員にとって、日常の業務に直
結しているとあって、発表に対する質疑も活発であったのが印象的であった。
(22, 23 August 2006 同会議に出席)
【
「忘れえぬタイ」をスローガンに観光客増を目指す】タイ
タイ政府観光庁は、
「忘れえぬタイ(Thailand Unforgettable)
」をスローガンに、2007 年の
海外旅行客の入り込み数目標を前年比 15%増の 1,500 万人に設定し、5,475 億バーツの観光収
入を目指すと発表した。
特に観光宣伝のターゲットとなる主要なマーケットとして、まず、ヨーロッパ(英国、スカ
ンディナビア諸国、フランス、イタリア、ロシア、スペイン)から目標収入の 35%を、そして
東アジア(中国、日本、韓国、香港、台湾)からは同じく 33%を見込む。
旅行ガイド誌「ロンリープラネット」の調査によれば、タイは安さと食べ物のおいしさ、そ
してアウトドア・アクティビティなどで若者の間で最も人気のある旅行先である。観光客の
様々なニーズに対応するために、観光庁は次の5つのジャンルを定めて、さらに客を呼び込む
ための宣伝活動に力を入れるという。
1.定番の観光地
バンコク、プーケット、パタヤ、サムイ、チェンマイ
2.新しい観光地
コ・チャン(注 1)
、コ・ランタ(注 2)
3.スポーツ・アクティビティ
ゴルフ、ダイビング、ヨット
4.最新流行の観光メニュー
ブティックホテル、スパ&ウェルネス、メディカル・ツーリ
ズム
5.2006 年度の目玉メニュー
チェンマイ園芸博覧会(2006 年 11 月1日~2007 年1月 31
日)
また、観光庁は、外国人観光客の誘致に向け、タイの観光関連情報の提供のほか、ホテルや
ツアーの予約を行なえるウェブサイト(http://www.thailandhotdeal.com)を開設して観光PR
を行なっており、1年間でオンライン予約約2万件、関連収入2億バーツを達成したいとして
いる。
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(注 1)タイ湾沿いのカンボジアとの国境近くのトラート県にある島。プーケットに次いで
タイで2番目に大きな島である。
(注2)タイ南西部アンダマン海に面したトラン県にある島。プーケットから南に 100km ほ
どの距離である。2004 年のインド洋津波の影響はあったものの被害は比較的少なか
った。
(22 August 2006 Bangkok Post 等参照)
【新しいポリマー製紙幣が流通予定】ベトナム
ベトナム国立銀行は、8 月 30 日からポリマー製紙幣の新しい 20 万ドン札及び1万ドン札の
流通を開始すると発表した。
(1万ドンは約 72 円)
新しい 20 万ドン札は 148mm×65mm でベージュ系の色合い、1万ドン札は 132mm×60mm で現
行の 10 万ドン札に近いグリーン系の紙幣である。
いずれも既に流通している他のポリマー製紙幣と同様に、国家の紋章、ホー・チ・ミン大統領
の肖像画、紙幣価格の数字及びベトナム文字が印刷されている。20 万ドン札の裏面にはハーロ
ン湾の風景が、また1万ドン札の裏面には石油掘削の様子が印刷されている。
新ポリマー製紙幣は、耐久性の向上と偽造防止を目的に発行されるものであるが、現行の1
万ドン札は引き続き有効なものとして取り扱われる。
新紙幣は、既に流通している2万ドン・5万ドン・10 万ドン・50 万ドン札に続く、ベトナ
ムで5番目及び6番目のポリマー製紙幣となる。
小額通貨については硬貨への置換が進んでいることから、ベトナム国立銀行は今後1万ドン
以下の紙幣は発行しない予定である。
(16 August 2006 Viet Nam News 参照)
【ラオス初の鉄道開発】ラオス
ラオス初の鉄道建設計画の第1段階として、首都ビエンチャンとタイ・ノンカイ県とを結ぶ
ラオス・タイ友好橋から、ハドサイフォン県ドンポシ村までの 3.5 ㎞の区間を今年 10 月上旬
に着工予定であるとラオス鉄道局(LRA)のソンサク報道官が言明した。今回の建設にはタイ
政府からの低利借款1億 9,700 万バーツ(約 530 万米ドル)相当が利用される。
タイ側では、首都バンコクを起点にノンカイ県まで鉄道が整備されており、メコン川を国境
線として架けられたラオス・タイ友好橋近くのノンカイ駅とビエンチャン市との間で鉄道建設
が実現されれば、両国の首都が直結されることになる。なお、1994 年のオーストラリアの無償
資金供与によるラオス・タイ友好橋の建設時には、すでにラオス・タイ政府間においてビエン
チャン市とノンカイ県の間を鉄道で結ぶことを合意しており、橋の中央部には鉄道が敷設され
ている。
ソンサク報道官によると、第1段階の工事完成後は引き続き、タイ、フランス各政府の協力
により、ハドサイフォン県ドンポシ村からソッカム村までの9㎞が建設されるという。また、
ラオスと他のメコン川流域諸国を結ぶ鉄道の開発により、国内外へ物資を安全かつ安価に輸送
することができ、ラオスのような内陸国にとっては特別な意義があると語ったとのことだ。
(11 August 2006 Lao News Agency 等参照)
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