「経腸栄養療法について」

病院部会研修会要旨
「経腸栄養療法について」
経腸栄養について、栄養剤の分類、投与ルー
ト、経腸栄養の合併症・その対策について(胃
ろう)お話頂いた。
(1)経腸栄養とは
*経腸栄養法種類
経口栄養法:栄養療法において最も生理的
経管栄養法:強制栄養法
*経腸栄養法の特徴と適応
【特徴】・静脈栄養より生理的かつ管理が容易
・安全性が高くコストが安い
【適応】・消化管閉塞がなく、吸収能が維持さ
れ、消化管の安静を必要としない
経口摂取が不可能又は不十分
・栄養チューブの留置が可能
・栄養チューブ留置部位より遠位に消
化管瘻孔がない
*経腸栄養の利点
小腸粘膜の栄養源となり、それにより腸管
粘膜血流が増加し、小腸絨毛の活動が行わ
れる。
そのため感染の危険性が低減する。
→細菌血液内侵入(バクテリアトランスロ
ケーション)が起こりにくい。
(2)経腸栄養剤の分類
経腸栄養剤の分類は窒素源の形態で分類さ
れる。(分類表参照)
経 腸 栄 養 剤 の 分 類
種 類
自然食品流動食 半消化態栄養剤
消化態栄養剤
窒素源
たんぱく
たんぱく
糖質
デンプン
デキストリン
デキストリン
脂肪
多い
やや少ない
極めて少ない
消 化
必要
多少必要
不要
残 渣
多い
少ない
極め少ない
浸 透 圧
低い
比較的低い
高い
三大
栄養素
アミノ酸 ・ ペプチド
(3)投与ルート
投与ルートは投与期間によって分類される。
短期間(約1ヶ月~1ヵ月半が目安)は経鼻
チューブ、長期間は胃ろう、空腸ろうが望ま
しい。
*胃内投与と空腸投与の違い(チューブ先端位置)
胃内:短時間で投与でき、間欠投与が可能
誤嚥のリスク高い
空腸:長時間かけて注入(持続投与)
誤嚥のリスク高い患者に適応
*投与速度
経腸栄養の開始時はできる限り経腸栄養ポン
講師:テルモ㈱ 大阪統括支店
学術チーム 芹生 珠紀氏
プを用い、20~30ml/時の速度で24時間持続
投与。1~2日ごとに20~30ml/時ずつ投与速
度をあげ、目標エネルギーが投与できる速度
にあげていき、間欠投与へ移行する。
胃内投与;200ml/時以内
空腸投与:100ml/時以内
下痢が生じた場合は、前の投与速度に戻す。
(4)経腸栄養(胃ろう)の合併症とその対策
*PEG(経皮内視鏡的胃ろう造設術)とは
内視鏡を用いて胃の内腔と腹壁の皮膚表面に
瘻孔を形成する内視鏡的手術の1つである。
*胃ろうの利点
・脳血管障害・認知症により経口摂取不能と
なった患者の長期栄養管理が行える。
・QOLの向上が期待できる。
・トラブルが少なく、管理が簡単である。
・経口摂取と併用できる。
*経腸栄養の合併症と対策
【合併症】
①栄養剤の漏れに伴う皮膚炎
栄養剤の漏れが持続すると、皮膚が常時湿
潤となり皮膚炎(カンジダ皮膚炎)の発
生。
②ストッパー締め付けによる瘻管の圧迫壊死
シャフト長を調節できない、余裕がない。
③胃ろう栄養中の胃食道逆流
胃食道逆流による誤嚥性肺炎。
【対策】
①皮膚の洗浄(瘻孔周囲を清潔に保つ)
皮膚炎がある場合は生理食塩水にて洗浄。
②シャフト長に遊びを持たせて固定する。
定期的に回転させ可動性を確認する。
③注入量、注入速度の調節、体位の配慮。
口腔内の清潔維持。栄養剤の固形化。
(5)経腸栄養剤投与時の水分投与
*経腸栄養剤の水分
1.0kcal/ml→約80-85% 1.5kcal/ml→約75%
2.0kcal/ml→約70%
*追加水分投与
追加水分投与は栄養剤投入前後どちらでも良
い。栄養剤への水分混合は、細菌の増殖を招
き感染の危険性が増加するため水分投与は別
にする。
(文責 病院 藤田美代子)
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