炭水化物制限食(低炭水化物食)について

H25 年 糖尿病ケアチーム通信 第3号
炭水化物制限食(低炭水化物食)について
テレビや雑誌などで取り上げられる炭水化物制限食ですが、今年3月に日本糖尿病学会の提言が出され
ました。現在、糖尿病治療ガイドには食品交換表を用いた食事療法のみが紹介されおり、十分なエビデンス
がない炭水化物制限食が今後どのように扱っていくべきなのでしょうか。
炭水化物制限食とは 1990 年代に流行したアトキンスダイエットが有名ですが、食事中に含まれる炭水化
物を制限するものです。一般的な食事は炭水化物が総エネルギーの 50~60%(1日 150g以上)になります
が、アトキンスダイエットでは第一段階として 20~40gと極端に制限します。そこから目標体重が近くなったら、
炭水化物を少し増やしペースダウンさせます。目標体重になれば炭水化物は体重が増加しない量に保つ必
要があります。たんぱく質や脂質は摂ってもかまわないということですが、このダイエットの欠点は、たんぱく
質や脂質を摂り過ぎていると目標体重まで落ちないということです。この状態を長期間続けると、脂質が総エ
ネルギーの 30%を超えてしまい、冠動脈疾患のリスクを増加させます。このため、動脈硬化性疾患予防ガイ
ドラインでは、脂質エネルギー比を 25%以下にするように勧めています。リスクを増加させないためには、炭
水化物が多いご飯やパン、麺類、芋類などを制限し、なおかつ脂質の多い肉や魚、豆腐や納豆、卵も控える
までして理想の食事と言えます。
これは、糖尿病治療ガイドで紹介されている食品交換表の方法と近いものがあり、脂の少ない肉、魚を多
めに摂りごはんを減らすか、ごはんなどをしっかり決められた量摂るかの違いです。
また糖尿病性腎症や慢性腎臓病(CKD)などの腎臓疾患がある方は、たんぱく質を増加できないため、こ
の炭水化物制限食には向きません。
しかし、炭水化物を控えることは、食後の血糖値の上昇を抑える効果もあり、高度肥満者に対しては体重
減少を図りやすい手段で
日本糖尿病学会の提言から(栄養素比率に関する骨子)2013 年 3 月
あるため、決して悪いこと
ではありません。自己判
● 総エネルギーを制限せずに、炭水化物のみを極端に制限して減量
断でのみ実施するので
を図ることは勧められない。
はなく、医師、管理栄養
● 三大栄養素の推奨摂取比率は、一般的には、炭水化物が総エネル
士に相談して、安全に進
ギーの 50~60%(1日 150g以上)、たんぱく質は 20%以下を目安
めていくことが大切です。
として、残りを脂質とする。
日本糖尿病学会では
● 糖尿病腎症などの合併症や脂質異常症の有無に留意し、身体活動
炭水化物制限食もさらに
や病態、患者さんの嗜好に応じて、炭水化物摂取比率の増減を考
調査・研究を要する。有
慮してよい。
効かつ安全に実践されて
●
脂質摂取率の上限は、可能な限り 25%エネルギーとし、n-3系
いることを常にモニターし、
多価不飽和脂肪酸の摂取量を増やすなど、脂肪酸の構成にも十分
その中から、新しいエビ
に配慮する。
デンスを構築していかな
● 炭水化物摂取量の多寡(多い少ない)によらず、食物繊維は1日
ければならないとしてい
20g 以上の摂取を促す。高血圧を合併している場合は、食塩1日
ます。
6g 未満とする(1型糖尿病については、別個の検討を要する)。
お知らせ
次回の糖尿病チームの勉強会は 9 月 9 日(月)17 時 15 分から管理栄養士の高屋信也が、「炭水化物制限
食について」お話しさせていただきます。場所は十和田市立中央病院別館2階講堂です。資料準備の都合上、
事前に出席者数を把握したいので栄養科:高屋信也(0176-23-5121、内線:2292、受付時間:月曜~金曜の
8:30~17:00)までご連絡下さい。申し込みがない場合での参加も受け付けますのでお気軽に参加下さい。
文責 十和田市立中央病院 管理栄養士 高屋信也