個人データ保護を相対化してみる - 一般財団法人放送セキュリティセンター

個人データ保護を相対化してみる
情報セキュリティ大学院大学 教授
林 紘一郎
私はビジネスマンの期間(33年)の方が、学者としての経験(専業になってから18年)よりも長く、
社長業(兼、純粋アメリカ法人の取締役=執行の役割がない監督係)を経験したため、細かいことよ
りも大局的・第三者的にものを見る癖がついてしまった。このような「変人学者」の目で、わが国の
個人データやプライバシー保護論議の現状を見ると、少なくとも3つの誤解があるように思える。
第1の誤解は、個人データとプライバシーの保護が、意識的にか無意識的にか混同されていること、
そして個人データを保護するはずの個人情報保護法に、プライバシー保護の役割も混入させているこ
とである。この欠陥は、次のような3つの頭の体操をしてみれば、すぐに分かる。
① 「個人データの保護を強化すれば、プライバシーの侵害は減るでしょうか」。答えはイエスでも
良いが、その陰で個人データの利活用が委縮してしまうかもしれない。
② 「個人データの流出は損害賠償で補てんしてもらえるでしょうか」
。答えは、
「あなたが損害を
受けたこと、それが流出によるものであること、流出側に故意か過失があること」をすべて裁判
で証明した場合だけ損害賠償が認められるが、その額は決して多くはない。
③ 「プライバシーの保護のためには個人データの保護が一番大切でしょうか」。大切だと思う人も
いるだろうが、他のプライバシー要素(物理的侵入や名誉毀損など)の方が大切と思う人もいる
だろう。
第2の誤解は、個人データ保護は「秘密の保護法制」の一部だという理解がないことである。個人
データの保護も、その背後にあるプライバシーの保護も、「個人の秘密」を法的に保護する仕組みで、
法人の秘密である「営業秘密」を守る不正競争防止法や、
「国家の秘密」を守る特定秘密保護法と同
列である。また、情報の流通過程を特に保護する「通信の秘密」の規定がある。これらを包摂する概
念は、「秘密の保護法制」と呼ぶべきである。
最後に第3点として、秘密にはs
e
c
r
e
t
型とc
o
nf
i
de
nt
i
a
l
型があるが、そのような議論は皆無である。
プライバシーに関しては先進国の間だけでも、人格権重視のEU型、市場における契約重視のアメリカ
型、情報の授受当事者間の関係重視のイギリス型という、3つのパターンがある。前二者において、
個人の秘密であるプライバシーは、誰に対しても主張できるもの(s
e
c
r
e
t
)となるのに対して、イギ
リス型の授受当事者間の関係重視の立場からは、原則として両当事者を縛るもの(c
o
nf
i
de
nt
i
a
l
)とな
る。
この仕事についておられる皆様に、「個人データ保護を相対化して考えよ」と訴えても、「それは別
の人に言ってください。私の任務は個人データを守ることですから」と言われそうだ。しかし担当職
務を重視した最適化が、組織全体の最適化を妨げているかもしれない。情報は基本的には利用して初
めて価値を生むものであり、「利用が先で保護は後」をくれぐれもお忘れなきように願いたい。
1
REPORT
マイナンバー法、
制度整備の現状
東京工科大学 教授 手塚 悟
1.マイナンバー制度の概
要
の改善について意見具申することができる。
3.特定個人情報保護評価の概要
第183回通常国会におい
2014年4月20日、特定個人情報保護評価に関する
て、番号法関連4法案が国
規則及び特定個人情報保護評価指針が、それぞれ施
会審議を経て、5月24日可
行と適用された。
決成立し、5月3
1日公布さ
特定個人情報保護評価とは、特定個人情報ファイ
れた。番号法関連4法とは、
ルを保有しようとする又は保有する国の行政機関や
⑴「行政手続きにおける特
地方公共団体等が、個人のプライバシー等の権利利
定の個人を識別するための
益に与える影響を予測した上で特定個人情報の漏え
番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)
」⑵
いその他の事態を発生させるリスクを分析し、その
「行政手続きにおける特定の個人を識別するための
ようなリスクを軽減するための最適な措置を講ずる
番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の
ことを宣言するものである。具体的には、行政機関、
整備等に関する法律(整備法)
[36本の関係法律を束
地方公共団体、独立行政法人等が、しきい値判断の
ねて一部を改正]」⑶「地方公共団体情報システム機
フローに従って、基礎項目評価書、重点項目評価書、
構法(機構法)」⑷「内閣法等の一部を改正する法律
全項目評価書の作成を原則義務付けられている。
(政府CI
O法)」である。
4.特定個人情報保護ガイドラインの概要
マイナンバー制度は、社会保障と税の一体改革の
2014年5月17日の第17回特定個人情報保護委員会
政策を実現する際に、複数機関に存在する個人の情
において、特定個人情報保護ガイドラインの位置付
報について、同一人の情報であることの確認を行う
け等に関して検討が行われた。その際の資料の抜粋
基盤である。それはまた、社会保障と税の一体改革
を以下に記す。
の効率性や透明性を高めると共に、国民にとっては
「特定個人情報保護委員会は、個人番号を取り扱
利便性の高い公平で公正な社会を実現するための社
う者に対して、指導及び助言(番号法50条)、勧告及
会基盤である。仕組みとしては、⑴個人番号・法人
び命令(番号法5
1条)、報告徴求及び立入検査(番号
番号付番⑵情報連携⑶本人確認の主な3つの機能か
法5
2条)の権限を有している。特定個人情報の適正
ら構成される。
な取扱いに関するガイドライン(仮称)
(以下「本ガ
2.特定個人情報保護委員会の概要
イドライン」という。)は、番号法の運用の統一性、
マイナンバー法の第36条から第49条に、特定個人
法適合性を確保する立場にある特定個人情報保護委
情報保護委員会に関する記載がある。任務は、国民
員会として、こうした権限に基づき、特定個人情報
生活にとっての個人番号その他の特定個人情報の有
の適正な取扱いを確保するための具体的な指針とし
用性に配慮しつつ、その適正な取り扱いを確保する
て策定し、告示等として公表することとしたい。
ために必要な個人番号利用事務等実施者に対する指
導及び助言その他の措置を講ずることである。
2014年1月1日に設置された組織は、委員長1名・
委員6名の合計7名の合議制で運営される。任期は
5年で、国会同意人事により内閣総理大臣から任命
される。
また、本ガイドライン策定に当たっては、個人情
報保護法に基づくガイドライン等の整合性について
も確保することとする。」
5.マイナンバー制度の今後
2014年5月16日、I
T戦略本部新戦略推進専門調査
会の傘下にマイナンバー等分科会が、世界最先端の
主な所掌事務は、行政機関・地方公共団体・独立
I
T利活用社会のインフラとして、マイナンバー制度
行政法人等及び民間事業者・個人に対して、監視・
の普及と利活用を図るため、国・地方・民間が連携
監督、広報・啓発、国際協力、苦情処理、特定個人
して取り組むべき項目の中間とりまとめをした。具
情報保護評価に関する規則・指針の作成・公表を行
体的には、⑴個人番号カード⑵マイポータル/マイ
うことであり、内閣総理大臣にその所掌事務の遂行
ガバメント⑶個人番号/法人番号の3点に大別して
を通じて得られた特定個人情報の保護に関する施策
利活用を推進する。
2
REPORT
テンプグループ個人情報保護の取り組み
~個人情報漏えい事件による会社存亡の危機を乗り越えて「守る」から「守りながら活用する」への転換~
テンプグループホールディングズ株式会社 代表取締役社長 水田 正道
現在テンプグループは、
うことだ。派遣社員を思うがあまり、無理な話にも
人材派遣をはじめとする総
応じてしまいがちだが、できることと、できないこ
合的な人材ソリューション
とを明確にしなければ、公平性が保たれないばかり
を提供しており、関連会社
でなく、かえって派遣社員に迷惑をかける事態にな
74社、従業員10000名超の規
る。その場で即答できない事象は、すぐに緊急対策
模になっている。多くの個
本部にエスカレーションするよう徹底した。これは、
人情報と法人企業情報の
当社社員が一人で抱え込まずに、迷った時にはサ
マッチングが当社の事業の
ポートし判断する人間がいるという安心感を与える
中心であり、本業界におい
役割も担った。加えて、正確でタイムリーな情報提
ては個人情報の適切な管理を活用が会社の生命線で
供も行った。刻々と変化する状況の中、事実に基づ
ある。人材サービス業はいわば情報産業であり、個
く情報把握は、当社社員にとり重要な判断基軸にな
人情報は重要な経営資源と位置付けられる。
ると考えたからだ。
情報漏えい事故が発覚したのは1
998年に週刊誌か
また、流出した情報については、早急に回収の部
ら受けた1本の電話。当社の派遣スタッフの個人情
-
隊を立ち上げた。98年当時は、SNSはもとより、i
報が漏洩しているというものだった。事実を把握す
mo
de
もない時代だったので、情報の急速な拡散には
べく、調査したところ、当社の約9万名の派遣社員
つながらなかった。環境の異なる現代では難しかっ
の名前、住所、電話番号等が会員制の情報サイトで
たと思われる。
販売されていることが判明。犯人は当時当社に出入
その後、二度と同じ過ちは犯すまいと、徹底した
りしていた外部のシステムエンジニアで、システム
原因分析と保護対策構築のため、数億円をかけたシ
作業のかたわら、ノートPCにデータをダウンロード
ステムコンサルの導入や、情報保護推進部署の新設、
し持ち帰ったとわかった。会員制サイトの入会金1
個人情報保護ルールの再構築等、ありとあらゆる手
万円の代わりに、当社から持ち出した9万名の個人
を尽くして個人情報の保護を強化した。情報保護対
情報をサイト運営者に提供した。1万円のために、
策には、物理的対策、技術的対策、人的対策がある。物
9万名の個人情報を提供したことに、憤りを感じた
理的、技術的対策は、投資することで強化を図るこ
のを覚えている。
とができるが、もっとも重要なのが人的対策である。
さらに、当時はまだ個人情報保護法が制定されて
あるとき、社員が持ち出し可能な情報の入った書
いない時代。持ち出した情報は無体物であり、当時
類をなくしたと連絡が入った。金曜日の夜、オフィ
の法律では逮捕することは難しかった。
スに残っていた社員全員を集め、3人一組になって
情報漏えいが報道されると、登録派遣社員を中心
山手線全駅のごみ置き場や周辺で、書類を捜した。
に問い合わせが相次いだ。中にはゆすり、たかりの
膨大なごみの中から書類が見つかる可能性は限りな
類の電話もあった。この事件が発覚し、真っ先に私
くゼロに近い。それは承知していた。しかし、情報
が考えたことは、この漏えいにより当社の登録派遣
を紛失することがいかに大きな影響をおよぼすこと
社員がなんらかの事件に巻き込まれるようなことが
なのかを社員に身をもってわかってもらうために、
あってはならない、なんとしても派遣社員を守り、
あえて、私は先頭に立って社員とともにごみの山に
安全性の担保を最優先するということだ。そのため
入った。
にも、迅速に当社の判断基準を明確にすることが最
優先だった。
どんなに仕組みを整えようと、情報保護を担うの
は人。この個人情報漏えい事故も、年を重ねるにつ
情報漏えい後、当社社員は通常の営業活動を一切
れ風化してしまう。教育し続けるとともに、身をもっ
ストップし、1日中、派遣社員にお詫びと現状説明
て語り続けることで、情報保護の重要性は浸透し、
にあたった。頭を下げて回る当社社員に一貫して伝
それが文化となると考えている。
えたことは、
「できない約束はしてはならない」とい
3
REPORT
衛星放送サービスの高度化~4K・8K放送の普及・推進~
総務省情報流通行政局衛星・地域放送課長 鈴木 信也
2011年に放送のデジタル
ロードマップの目標年の設定に当たっては、受信
化が完了し、デジタル化の
機普及等の観点から、オリンピックやサッカーワー
メリットを生かした、より
ルドカップ等多くの人々がテレビ観戦を楽しむ国際
高画質で高機能な放送サー
的なスポーツイベントの開催年を踏まえました。
ビスへの期待が高まってい
ロードマップ策定後に2
020年のオリンピック・パラ
ます。一方、視聴者の視聴
リンピックの東京開催が決定し、4K・8Kの普及
ニーズの多様化や映像配信
に弾みをつける好機と期待されています。競技場の
サービスの多様化など、放
観客のみならず、日本全国の視聴者が、4K・8K
送を取り巻く環境は変化を
の臨場感ある映像で楽しんでいただける環境を整備
続けています。
こうした中、総務省においては、4K・8Kやス
するとともに、我が国の最先端技術を世界に発信す
る機会にしたいと考えています。
マートテレビなどの次世代放送サービスの実用化を
一方、4K・8Kの超高精細映像技術は、放送分
早期に実現し、新しいサービスやコンテンツを創出
野のみならず、広告、医療、設計・デザイン、防犯・
し、関連産業の国際競争力強化を図ること等を目的
監視、教育・学術などの分野においても、付加価値
として、
「総務省 I
CT成長戦略会議 放送サービス
創出の手法や課題解決の手段として、活用が検討さ
の高度化に関する検討会」(座長:須藤修東京大学大
れています。産業全体への大きな波及効果も期待で
学院教授、2012年11月~2013年6月)を開催し検討
きます。
を行い、2013年6月、4K・8K等の推進に関する
ロードマップを公表しました。
具体的な目標として、4Kについては本年2
014年
に試験放送、2
016年には本放送の開始を目指すこと
とし、8Kについては2
016年に試験放送を開始し、
2020年には本放送を目指すこととしました。
4K・8Kの「高画質」と放送と通信の連携によ
る「高機能化」を併せて実現するスマートテレビに
ついても一体的な推進・普及に取り組んでいくこと
としています。
現在、総務省ではロードマップの更なる具体化、
加速化及び課題解決のための方策の検討を進め、4
この目標達成に向けオールジャパンで推進する体
K・8Kのサービスの早期普及を図ることを目的と
制として、
2013年5月に、放送事業者、通信事業者、受
して、2014年2月から「4K・8Kロードマップに
信機メーカー等から構成される「一般社団法人 次
関するフォローアップ会合」(座長:伊東晋 東京理
世代放送推進フォーラム(Ne
xTVフォーラム)
」が
科大学理工学部教授)を開催しています。ロードマッ
設立され、試験放送開始のために必要な技術検証の
プに示された目標の実現に際しての課題及び課題解
加速やコンテンツ制作等の取組が進められました。
決のための具体的方策等について検討を進めており、
そして本年6月2日から、ロードマップの目標に
今夏を目途に一定の取りまとめを行う予定です。
沿 っ た 形 で、Ne
xTVフ ォ ー ラ ム の 4K試 験 放 送
総務省としては、今後とも、4K・8K等次世代
「Cha
nne
l4K」が、衛星放送、ケーブルテレビ及
の放送サービスの普及を後押しするとともに、放送
びI
PTVで開始されました。衛星放送では4Kテレビ
以外の分野における利活用も含め、我が国の経済成
と専用チューナがあれば、家庭で視聴可能です。ケー
長に資する施策として推進してまいりたいと思いま
ブルテレビ、I
PTVについては、当面は事業者等が
す。
公共スペースで実施するパブリックビューイングが
中心となります。
また、8Kについても、2016年に世界初の試験放
送の開始を目指し、関係者が連携しながら取り組ん
でいるところです。
4
REPORT
2014年度のケーブルテレビ行政について
総務省情報流通行政局衛星・地域放送課地域放送推進室長 徳光 歩
ケーブルテレビは、地域
るほか、4Kコンテンツの制作にも業界として意欲
密着型メディアとして、今
的に取り組んでいただいていると伺っており、大変
や加入世帯数は我が国全世
心強く感じております。
帯の半数以上である2,
800
並行して、当省においては、4Kなどの超高精細
万を超え、通信事業も含め
な映像技術を活用した放送を早期に実現するために
た全体の営業収益が1兆円
重要なテーマとなる伝送の効率化について、ケーブ
を超えたほか、放送分野及
ルテレビ伝送方式の高度化に関する技術的条件の検
び通信分野にとどまらない
討を進めております。
サービス展開も見られるな
デジタル放送への移行期として当省から2015年3
ど、国民生活及び地域住民にとって身近で不可欠な
月までの暫定的措置としてケーブルテレビ事業者に
存在に成長しています。
要請していたデジアナ変換サービスについては、こ
一方で、昨今、映像配信サービスの分野において、
の7月で残り9箇月を切りました。今年初めの調査
ケーブルテレビは国内外における激しい競争の荒波
で1台目のテレビからデジアナ変換を利用している
の中にあります。このような状況の中、総務省では
のは約5
5万の未契約世帯と推計しておりますが、円
次世代の放送が目指すべき姿を明確化するため、
「総
滑な終了に向けて、利用世帯の方々に地デジ対応の
務省I
CT成長戦略会議 放送サービスの高度化に関
受信環境を整えていただけるよう、総務省としても
する検討会」(座長:須藤修東京大学大学院教授)を
引き続き周知徹底に取り組んでおります。こちらの
開催し、昨年6月に4K・8K、スマートテレビ及
終了対策につきまして、関係の事業者の皆様におか
びケーブル・プラットフォームについてそれぞれと
れましては、これまで以上のご協力を何卒お願い申
りまとめを行いました。
し上げます。デジアナ変換サービスを視聴者の混乱
ケーブル・プラットフォームについては、その早
なく終了し、完全デジタル化を達成することで、次
期実現により、I
P映像配信サービスやI
D利活用など
なる時代のケーブルテレビへの飛躍となることを
ユーザーに対する便利で魅力的な新サービスの提供
願っております。
が可能となることから、業界共通の基盤としての構
ケーブルテレビは地域に密着した放送メディアと
築は喫緊に取り組むべき課題です。当該とりまとめ
いうのが存在意義の原点でありますが、ケーブル・
において特に整備が急がれる機能として掲げたI
Pに
プラットフォームの構築を経て、利便性の向上やコ
よる映像伝送機能については、I
P-VODサービスが
スト低減等によりこれまでの殻を破り、魅力のある
2013年8月から開始され、プラットフォームへの参
コンテンツや充実したサービスメニューを提供する
加事業者数も着実に数を伸ばしていると聞いていま
ことで、地域住民にますます信頼され、愛されます
す。I
Pリニア放送サービスについては今夏から事業
よう期待してやみません。当省としても引き続き知
性及び実現方法を検証するための試験を実施するこ
恵を出しながら応援していきたいと思います。
ととなっており、魅力的なインターフェースの実現
やI
P放送ならではの高機能の各家庭での利用に大変
な期待を寄せているところです。
また、ケーブルテレビ事業の更なる飛躍のために
は、4K・8K、スマートテレビなどの放送サービ
スの高度化も併せて取り組むべき重要課題であり、
この6月には日本で初の4K試験放送が開始されま
したが、ケーブルテレビ業界としても関係者の御尽
力により全国5
0箇所以上での取り組みがなされてい
5
MESSAGE BOARD
プライバシーマーク推進部から
(一財)放送セキュリティセンター プライバシーマーク推進部 審査室長 福田 敏治
当財団は、平成19年11月に財団法人日本情報処理
開発協会(現、一般財団法人日本情報経済社会推進
協会。略称J
I
PDEC)からプライバシーマーク審査
機関の指定を受け、今年で7年目を迎えました。当
初の審査対象範囲は、社団法人日本ケーブルテレビ
連盟(現、一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟)
と社団法人衛星放送協会(現、一般社団法人衛星放
送協会)の所属正会員のみでしたが、その後、更な
る範囲の拡大を行い、現在では後述のとおりの範囲
となっております。今後も事業者皆様への審査・認
定サービスの向上に努めてまいります。
<審査、認定実績の報告>
昨年度(平成25年度)の新規申請と他審査機関か
らの移管を合わせたSARCクライアント数実績は、
31社でありました。平成2
4年度は2
1社でしたので、
前年比148%となりました。
以下の表は、開所以来のクライアント数と業種別
内訳です。皆様のご支援のもと、着実に実績を上げ
ております。
<合併等による返上を除く実数>平成26年7月11日現在
年度/業種 CATV関連 放送関連 広告代理店 制作関連 その他
合計
H20年
6
9
0
1
0
16社
H21年
10
7
0
3
0
20社
H22年
6
1
3
7
0
17社
H23年
5
3
5
11
0
24社
H24年
4
3
3
10
1
21社
H25年
14
2
2
12
1
31社
H26年
1
1
0
6
1
9社
合計
46社
2
6社
13社
50社
3社
138社
※制作=CM制作、映像制作、出版、各種コンテンツ制作等
<個人情報保護セミナーの報告>
SARC主催の第11回個人情報保護セミナー(平成
26年7月3日開催)にて、プライバシーマーク推進
部 審査室が「プライバシーマーク審査の動向」と
題して、ご説明・解説した概要をご紹介致します。
1.新たな審査項目
・1-1 利用者情報の取扱い、アプリケーション・
プライバシーポリシーについて(スマー
トフォン等のアプリケーション配信事業
者対象)
・1-2 Ope
nSSLの脆弱性
・1-3 Wi
ndo
wsXPの使用
プライバシーマーク審査時に新たに確認を行って
いる項目を説明しました。1-1は、アプリ配信を
行っている場合、端末I
D、位置情報、通信履歴、ア
プリケーション利用履歴などの利用者情報も個人情
報と同等に位置づけること。アプリケーション・プ
ライバシーポリシーを示すことを求めています。1
6
-2と1-3は、最近顕在化した新たなリスクであ
り、1-2は修正済みヴァージョンへのアップデー
ト、新しい秘密鍵使用の証明書再取得等の対処。1
-3は、使用の中止、ネットからの切断等の対処が
あります。
2.解説公表による注意喚起
J
I
PDECは、解釈上に誤解等が発生していたため
「(個人情報と認識せず)顧客から預かる情報の取扱
いについて」を公表。この公表内容の解説をしまし
た。倉庫業、データハウジング業等でプライバシー
マークを取得する・取得している事業者は、事業の
用に供する個人情報と同等に位置づけて取り扱うこ
と。委託者側は、事前に約款等の確認並びリスク対
策を求めています。
3.今後の審査
・3-1 スマートフォン/タブレット端末-安全
管理状況を確認
・3-2 現地審査時の要着眼点-不備の原因・再
発防止
・3-3 PMS規程類-手順の具体化
・3-4 J
I
SQ15001:201X
今後のプライバシーマーク審査の動向について解
説をしました。3-1は、スマホ類の安全管理状況
を7月以降の審査から正式に確認することになりま
す。3-2は、今後の審査の方向性がPDCAをより
意識した審査となり、例えば不備な事象に対しては、
修正だけではなく、再発防止策を求めることになり
ます。3-3は、誰が読んでも実行できるように、
手順をより具体的に定めることも求めます。3-4
は、予定されている個人情報保護法が改正された場
合、プライバシーマーク審査の基準であるJ
I
SQ:
15001規格も改正される見込みです。
<SARCの審査対象領域>
現在のSARC審査対象(以下に所属する会員社が
対象)
・(一社)日本ケーブルテレビ連盟
・(一社)衛星放送協会
・(一社)日本民間放送連盟
・(一社)全日本テレビ番組製作社連盟
・(一社)日本アド・コンテンツ制作社連盟
・(一社)日本ポストプロダクション協会
・(一社)デジタルメディア協会
及び、上記各団体に所属する会員社の連結会社
・(一社)全日本シーエム放送連盟
・(一社)デジタル放送推進協会
・SARC賛助会員及びSARC賛助会員に所属する会
員社
MESSAGE BOARD
「認定個人情報保護団体」から
(一財)放送セキュリティセンター 個人情報保護センター長 秋山 剛人
個人情報保護センターの過去1年間の活動状況を
来年もより一層充実したセミナーを開催する予定
報告させていただきます。
ですのでご期待ください。
⑴ 対象事業者数推移
⑶ 対象事業者の方へのお知らせ
平成26年3月31日現在
ケーブルテレビ事業者 衛星放送事業者
計
① 個人情報保護指針の改定について
認定個人情報保護団体の「受信者情報取扱事
平成24年度末対象事業者数
190
70
260
平成25年度新規登録者数
5
0
5
同 登録抹消者数
▲1
▲8
▲9
に改定致しました。改定の主な目的は、総務省
平成25年度末対象事業者数
194
62
256
「放送受信者等の個人情報保護指針」の条文・
平成25年度における個人情報保護団体の対象事業
項文を全文掲載し、条文・項文ごとに「適切な
者は、新規登録5社、登録抹消9社で、全体では4
例」
「不適切な例」を例示したことです。今まで
社減の256社となりました。
より大幅に例示を増やし142事例掲載しました
⑵ 個人情報保護セミナーの実施
ので、是非HPでご確認ください。
業における個人情報保護指針」を平成2
6年5月
本年7月3日にJ
A共済ビルにて「第11回個人情報
② 苦情・相談事例追加の案内
保護セミナー」を開催しました。今回の講演は、ビッ
登録された対象事業者の方へ「会員専用ペー
グデータ、マイナンバー等皆様がご関心のある今日
ジ」より提供させていただいておりますが、個
的なテーマを選び、外部講師の先生方を3人お招き
人からの苦情・相談事例、対象事業者からの相
して貴重なご講演をいただきました。本誌に講演内
談事例を20余り追加し、全部で8
0以上事例集の
容を寄稿していただきましたので是非ご一読くださ
掲載をしております。こちらも是非HPでご確認
い。
し、ご活用ください。
第1講:本誌1ページ
⑷ 対象事業者未登録の方へ
・情報セキュリティ大学院大学 林紘一郎教授
最後に対象事業者の新規ご登録のご案内です。
et
とConf
i
dent
i
al
~」
「ビッグデータと秘密の保持~Secr
当認定個人情報保護団体は、衛星放送やケーブル
第2講:本誌2ページ
テレビ等放送分野の事業者の個人情報取扱いについ
・東京工科大学 手塚悟教授
ての相談センターです。
「マイナンバー法、制度整備の現状」
対象事業者として登録していただきますと、個人
第3講:本誌3ページ
と事業者間での個人情報に関する苦情処理の仲介を
・テンプホールディングス株式会社 水田代表取締役社長
受けたり、個人情報取扱いに関する相談や情報提供
「テンプグループ個人情報保護の取り組み」
を受けることができます。
~個人情報漏洩事件による会社存亡の危機を乗
(一社)衛星放送協会、(一社)日本ケーブルテレ
り越えて「守る」から「守りながら活用する」
ビ連盟加盟で未登録の事業者、或いは放送分野の事
への転換~
業者は、是非この機会にご登録いただきますようお
願い申し上げます。
尚、登録に関する詳細情報は、当財団のHPに掲載
されておりますので、ご確認ください。
以上、当センターの過去1年間の活動報告をさせ
ていただきました。今後とも寄せられる苦情・相談
に対して真摯で迅速な対応を心掛け、
「認定業務」に
邁進する所存です。関係者各位の引き続いてのご支
援・ご協力を是非お願い申し上げます。
7
MESSAGE BOARD
■SARCの主な動き (平成25年9月~26年8月)
全般
H25.9.1
H25.9.
13~9.
14
H26.3.4~3.5
H26.3.6
H26.3.
20
H26.6.5
H26.6.
23
H26.7.
30
SARCコミュニケーションズNo
.
26発行
MELTupフォーラムに協賛
MELTupフォーラムに協賛
第2回理事会
第2回評議員会
第3回理事会
第3回評議員会
MELTupフォーラムに協賛
プライバシーマーク業務関係
H25.9.6
第45回審査委員会~H26.8.7 第54回審査委員会
個人情報保護センター関係
H26.5.
29
H26.7.3
第11回管理運営委員会
第11回個人情報保護セミナー(J
A共済ビル カンファレンスホール)
人事異動
H25.
10.1
個人情報保護副センター長兼務衛星放送部長
清水 敏矢
水嶋康昌は9月30日辞職
■評議員・役員の構成
【評 議 員】
【役 員】
村上 政博 成蹊大学客員教授 一橋大学名誉教授 弁護士
理 事 長 辻井 重男 (一財)放送セキュリティセンター
苗村 憲司 情報セキュリティ大学院大学セキュアシステム
専務理事 水野 敦彦 (一財)放送セキュリティセンター(常勤)
研究所特別研究員
理 事 山崎 一郎 株WOWOW取締役
佐藤 和仁 株WOWOW常務取締役
〃 水野 善隆 (一社)日本ケーブルテレビ連盟理事・事務局長
仁藤 雅夫 スカパー JSAT株取締役執行役員副社長
〃 佐藤 謙 株スター・チャンネル管理本部本部長
大寺 廣幸 (一社)日本民間放送連盟常勤顧問
〃 園田 義忠 (一社)衛星放送協会専務理事
井川 泉 (一社)デジタルメディア協会理事
〃 小川 正人 スカパー JSAT株執行役員
浅見 訓男 (一財)マルチメディア振興センター専務理事
監 事 横尾 忠晃 (一社)電波産業会理事
■組 織 図
評議員会
理 事 長
理事会
専務理事
プライバシーマーク指定審査機関
プライバシーマーク推進部
総 務 部
審査室
総務経理課
認定個人情報保護団体
個人情報保護センター
衛星放送部
ケーブルテレビ部
編集・発行
一般財団法人
放送セキュリティセンター
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-9-2 エスパリエ平河町ビル
Te
l
:03-5213-4711 Fa
x:03-3263-9011
禁無断転載
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