近年の米国のデジタル著作権関連法 の立法動向

近年の米国のデジタル著作権関連法
の立法動向
― US Digital Copyright Agenda in Recent Years ―
張 睿暎*
Ⅰ はじめに を及ぼした。
Ⅱ 今までのデジタル著作権関連法の立法
DMCA 以降のデジタル著作権関連法の
立法動向
1.提出された法案(Introduced Bills)
2.成立した法案(Passed Bills)
Ⅳ 終わりに
Ⅱ 今までのデジタル著作権関連法の立
法
Ⅲ
コンピューター・テクノロジーが現実化さ
れてから半世紀が過ぎたが,出版・音楽・映
画・放送などのコンテンツ産業の基盤に影響
Ⅰ はじめに
を与えるようになったのは,わずか 10年ほ
どのことである。コンテンツ産業の長年のビ
早稲田大学 21世紀 COE プログラムの若手
ジネスモデル,すなわち本・新聞・雑誌を売
研究者学術奨励事業の支援によって,2006
り,映画を上映し,音楽やテレビジョンプロ
年2月3日から 13日までアメリカを訪問し
グラムを放送するというのは初期のテクノロ
た。現在研究している「 DRM1 と Fair Use」
ジーとは何の問題もなく符合するように見え
というテーマの資料収集と,アメリカの知的
た。
財産の最新の議論と動向を調査するのが目的
デジタル海賊行為(digital piracy)の威嚇
であった。ここでは訪問の成果報告という意
も最初はまだ市場が耐えられるほどであった。
味で,米国におけるデジタル著作権関連の立
デジタル・エンコーディングされた CD やパ
法の近年の動向を概観してみたいと思う。
ソコンが普及されても,まだ 90年代半ばま
著作権は印刷技術の登場によって,その印
では遅い CPU 速度やメモリ容量の限界,低
刷・複写に対して権利者に複製権を与えると
い複製効率などで,そんなに大きい問題では
いう形で登場した。その後も技術の発展によ
ないように見えた。
り利用態様が変化する度に,それに応じて上
しかし,ネットワーク技術,圧縮技術,小
演権・上映権・演奏権・展示権・放送権・貸
型化技術の進歩,ナップスターのような新し
与権などが登場したわけである。
いファイル交換システム,ブロードバンドの
その後,コンピューターとインターネット
普及,従来のコンテンツのデジタル化など,
の登場により,著作物の利用形態には革命が
さらなる技術の発展で,デジタル技術は現存
生じた。そしてそれは既存の法制度にも影響
の著作権法の形に疑問を示すようになった。
*
早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程,
早稲田大学 21世紀 COE< 企業と法創造 > 知的
財産法制研究センター,リサーチ・アシスタ
ント
家庭内デジタルレコード技術が可能になる
前からも,レコード業界は家庭内複製が市場
に影響を及ぼすことを警戒していた 2。1984
年,米国レコード産業界は議会に,レコード
235 ―
― (sound recording)のレンタルを禁止させる
ために消尽理論(First Sale Doctrine)を改
正するように要求した 3。そしてソフトウェ
ア業界も同じような要求をした 4。
このような状況に対応するために,その後
米国でなされたデジタル著作権関連立法
( Digital Copyright Legislation)には下記の
ようなものがある。
1.Audio Home Recording Rights Act of
1992
非暗号化されたデジタル・フォーマット
( CD)で音楽が発売されて間もない 1980年
代半ばから,家電メーカーは消費者がレコー
ドをデジタル・コピーできる製品を作り始め
た 。 DAT( Digital Audio Tape) や DCC
(Digital Compact Cassette)のような技術は
品質の劣化のない著作物の複製を可能にした。
1980 年代初ビデオ録画技術が紹介されると,
著作権者は即時にこの製品の主な製造者であ
るソニーを訴えた。( Cahn v. Sony Corp,.
No.90 Civ. 4537((S.D.N.Y.1990.7.9.))
交錯する多様な利害関係はいったん,この
Audio Home Recording Rights Act of 1992.
( Pub.L.No.102-563,106 Stat.4237( codified
at 17 U.S.C.§§ 1001-10))で解決された。
著作権の歴史の中で初めて,政府は複製機器
の製造に技術的強制を負荷したのである。こ
の法は複製機器( devices)や空媒体 (blank
recording media)の販売にロイヤルティも課
した。
2.Digital Performance Right in Sound
Recording Act of 1995
「音楽( musical compositions)」と区別
される「レコード( sound recordings)」は
1972 年 ま で は 連 邦 著 作 権 法 で 保 護 さ れ な
かった。その時代にラジオ放送はレコードの
著作権者から公演権( public performance
right)を除外できるほどの政治的影響力を
持っていた。
その結果,1972年後半,ラジオ局が Frank
Sinatra が 歌 っ た Cole Porter 作 曲 の 「 I’ve
Got You Under My Skin」を放送したときは,
作曲家の Cole Porter だけがロイヤルティを
受け取ることができた。このような状況はレ
コード製作者や実演家を苦しませた 5。
インターネットが新しいメディア・チャン
ネルとして浮上したら,レコード会社はデジ
タル実演権を作ろうとした 6。彼らはイン
ターネットというこの新しい媒体が市場を危
うくすることをおそれたのである。
著作権法の Section106と 114を改正すると
いう妥協は「デジタル転送の方法により公に
な さ れ る ( publicly by means of a digital
audio transmission)」レコードの排他的実演
権を創設した。この条項の実質的な影響は,
レコードの権利者はダウンロード,アップ
ロード,ストリミングを含むデジタル実演
( digital performance)にロイヤルティを要
求できるということである。しかしこれには
様々な例外と制限がある。(DMCA により改
正された17 U.S.C. § 114参照)
3.No Electronic Theft Act of 1997
議会は無断で著作物を頒布した者に対して
の刑事的処罰を強化するために NET 法(No
Electronic Theft Act)を成立させた。これ
は United States v. La Macchia, 871 F. Supp.
531( D. Mass.1994)判例を受けて成立した
ものである。判例では「無断複製したソフト
ウェアを無償でユーザーに供給していたパソ
コン掲示板の運営者は連邦著作権法では処罰
できない,なぜなら政府はパソコン掲示板運
営者が著作権侵害から経済的利益を得ていた
ことを証明できなかったからである」として
いる。
NET 法は被告が経済的利益を得ないで行
う著作権侵害の様々な行動態様を犯罪化する
ことによって,今までの法律の抜け穴を塞い
だ。(18 U.S.C. § 2319参照)
4 . Digital Millennium Copyright Act of
1998(DMCA)
1990年代半ばデジタル海賊(digital piracy)
が横行することになり,コンテンツ提供者は
236 ―
― 1.提出された法案(Introduced Bills)
暗号化( encryption)やデジタル権利管理
( digital rights management: DRM)で著作
物を保護するようになった。しかしそのよう
Collections of Information Antipiracy Act
な技術はハッキングされる恐れがあり,実際
Title: To amend title 17, United States
Code, to provide protection for certain
collections of information. (H.R.354)
Sponsor: Rep Coble, Howard [NC-6]
(introduced 1/19/1999), Cosponsors (76)
Latest Major Action: 10/8/1999 Placed on
the Union Calendar, Calendar No. 212.
House Reports: 106-349 Part 1
に技術的保護装置の無断な迂回( unautho-
rized circumvention of technological protection measures)でハッキングされ,その
結果,権利者はさらなる強い保護を求めるよ
うになった。
1998 年成立したデジタルミレニアム著作
権法(Digital Millennium Copyright Act)は,
迂回禁止( anti-circumvention)と不正取引
禁止(anti-trafficking)条項でコンテンツ所
有者の主な懸念に答えた。もちろん強力な利
益集団であるインターネット・サービス・プ
ロバイダー( ISP)と放送局のための online
service provider safe harbor 条項を設けた。
しかし DMCA は当惑なルールで多くの議論
を呼び起こした 7。
ISP,放送局,家電メーカー,図書館連合,
コンピューター科学者,著作権法教授など
様々な利害関係者が,そのような著作権法の
拡張の影響に懸念を示し,公正使用( Fair
Use)を守ろうとした。多くのオブザバーが
DMCA が認める例外があまりにも狭く,伝
統的なフェアー・ユース(Fair Use)を極度
に制限すると考えている 8 9。
Ⅲ DMCA以降のデジタル著作権関連法
の立法動向(Hightlights of Copyright
Legislation after DMCA)
データベース保護のため著作権法( title
17, United States Code)を改正することを
目的とするこの法案は,収集情報の不正利用
を禁止することを目的とする。この法案の支
持者は出版社や全米不動産協会( National
Association of Realtors)や eBay など主に大
手のデータベース製作者である。
著作権法上,単純な事実情報は著作物とし
て保護されない。しかし,多くのデータベー
スは素材の選別や羅列,編集に創作性が認め
られれば著作物として保護される。データ
ベ ー ス の 無 断 複 製 は , NET 法 ( No Electronic Theft Act)などの連邦法や misappropriation and trespass laws のような州法に
よっても保護されうる。しかし,いくつの商
業データベース製作者は追加的な保護の保証
を欲しがり,現行法は充分な保護を与えてな
いと主張する 9。
この法案は 10/8/1999に Union Calendar11
(Calendar No. 212)に送られた。
米国はデジタルネットワーク化する情報化
社会に素早く対応するために,先駆けて判例
Digital Consumer Right to Know Act
や法律の制定をしてきた。しかしその代表的
Title: A bill to require the Federal Trade
Commission to issue rules regarding the
disclosure of technological measures that
restrict consumer flexibility to use and
manipulate digital information and entertainment content. (S.692)
Sponsor: Sen Wyden, Ron [OR] (intro-
な法律といえる DMCA は,多くの批判を受
けてきて,その「改悪」を修正することを求
める声が高かった。以下では 1998 年のデジ
タルミレニアム著作権法(DMCA)以降に提
出された各種の法案と,最終的に法律として
成立した法案を紹介する 10。
237 ―
― duced 3/24/2003)
Latest Major Action: 3/24/2003 Referred to
Senate committee.
Status: Read twice and referred to the
Committee on Commerce, Science, and
Transportation.
Status: Read twice and referred to the
Committee on Commerce, Science, and
Transportation.
デジタル権利管理(digital rights manage-
エンターテインメント・コンテンツとデジ
タル情報の不法な複製・頒布を防止するため
の技術には,消費者の合理的・私的・非商業
的で自由な利用を阻害する恐れがある。これ
は消費者がデジタル著作物を購入する際の利
用への期待を裏切り,コンテンツ・ホルダー
の市場影響力を不当に強化し,競争できなく
する恐れがある。
ment : DRM)技術を使用しているデジタ
ル・メディア商品に,自主的に告知とラベル
を貼るようにさせ,消費者が合法的に有して
いる再販売(resale)の権利や教育機関・図書
館に寄付する権利を DRM 技術で制限するこ
とを禁ずることを目的としている法案である。
この法案は 9/16/2003 に上院の通商・科学・
交 通 委 員 会 ( Senate Committee on Commerce, Science, and Transportation) に 回
付されている。
この法案は,このような懸念を解決するた
めに,情報やコンテンツ製作者に,コンテン
The Database and Collections of Infor-
ツ使用の際利用を制限しうる技術的装置につ
mation Misappropriation Act
いて情報を提供することを要求している。ま
Title: To prohibit the misappropriation of
certain databases. (H.R.3261)
Sponsor: Rep Coble, Howard [NC-6]
(introduced 10/8/2003), Cosponsors (9)
Related Bills: H.R.3872
Latest Major Action: 3/11/2004 Placed on
the Union Calendar, Calendar No. 252.
House Reports: 108-421 Part 1, 108-421
Part 2
た連邦貿易委員会(Federal Trade Commis-
sion : FTC)には,消費者の利用を制限す
る技術装置を公開させるルールを作ることを
命じている。
こ の 法 案 は 3 / 24 / 2003, 上 院 の 通 商 ・ 科
学・交通委員会
(Senate Committee on Commerce, Science, and Transportation) に 回
付されている。
Consumers, Schools and Libraries Digital
Rights Management Awareness Act of
2003
Title: A bill to provide for consumer, educational institution, and library awareness
about digital rights management technologies included in the digital media
products they purchase, and for other
purposes. (S.1621)
Sponsor: Sen Brownback, Sam [KS] (introduced 9/16/2003), Cosponsors (None)
Latest Major Action: 9/16/2003 Referred to
Senate committee.
下院司法委員会( House Judiciary Committee)と下院資源・通商委員会( House
Energy and Commerce Committee)による
長年の交渉にもかかわらず,この データ
ベース複製防止法案(Database and Collections of Information Misappropriation Act)
法案は多岐にわたる反対者の基本的な懸念に
答えられなかった。
法案では,データベース保有者が民事法廷
で,「一つのデータベースに含まれた情報の
うち相当量を,商用目的で他者に提供したす
べての人物」を訴える権利を認めている。
主にデータベース製作者や出版社からなる
238 ―
― 法案支持者は,データベースや情報が「財源
の 相 当 な 支 出 ( substantial expenditure of
financial resources)」により作られ維持され
た場合,その「量的に相当な(quantitatively substantial)部分」をとり,権利者の許諾
なく同じ市場に商業的に利用可能にすること
を不法とすることで,ある種のデータベース
の誤用を禁止しようとした。
もしこの法案が成立していたら,検索エン
ジンなどがインターネット・ロボットで他人
のデータベースに入り,相当量の情報を商用
目的で提供した場合も対象になる可能性あり,
伝統的な公正使用( fair use)への挑戦であ
り,データベースの中の『事実』まで著作権
で保護する結果になっただろう。
法案は教育・研究機関やジャーナリストに
ある程度の免責を認めるいくつかの狭い例外
を提示していたが,その例外さえも
“ shrink-wrap”や“ click-on”契約で防ぐこ
とができる。
こ の 法 案 は 3/11/2004 に Union Calendar
(Calendar No. 252)に送られた。
を禁止していることに対しての監督と規制を
要求している。
下 院 資 源 ・ 通 商 委 員 会 ( House Energy
and Commerce Committee)は何の改正も
なくこの法案を承認したが,この法案は
3/16/2004 に Union Calendar( Calendar No.
253)に送られた状態のままである。
Digital Media Consumers’ Rights Act of
2005(DMCRA)
Title: To amend the Federal Trade Commission Act to provide that the advertising or sale of a mislabeled copy-protected music disc is an unfair method of competition and an unfair and deceptive act
or practice, and for other purposes.
(H.R.1201)
Sponsor: Rep Boucher, Rick [VA-9]
(introduced 3/9/2005), Cosponsors (13)
Latest Major Action: 3/22/2005 Referred to
House subcommittee.
Status: Referred to the Subcommittee on
Commerce, Trade and Consumer Protection.
The Consumer Access to Information Act
of 2004
レコード業界が新しい形のコピープロテク
Title: To prohibit the misappropriation of
databases while ensuring consumer
access to factual information. (H.R.3872)
Sponsor: Rep Stearns, Cliff [FL-6] (introduced 3/2/2004), Cosponsors (18)
Related Bills: H.R.3261
Latest Major Action: 3/16/2004 Placed on
the Union Calendar, Calendar No. 253.
House Reports: 108-437
ションを使うのは自由であるが,市場にどん
どん著作権保護装置の付された CD が流通す
るのは状況を悪化するのみである。
消費者は,コピー・プロテクションがか
かった CD の再生や録音に制限があることを
適切に告知される権利がある。
消費者が事実情報にアクセスしようとする
ときのデータベースの誤用を防ぐためのこの
法案は,「データベースの誤用( misappro-
priation of a database)」の定義を狭く規定
しており,連邦貿易委員会( Federal Trade
Commission)に,個人当事者に提訴の権利
こ の 法 案 は 連 邦 貿 易 委 員 会 ( Federal
Trade Commission)にデジタルの音楽ディ
スク製品に適切なラベルを貼ることを指導す
る権限を与え,ラベルのないコピー・プロテ
クション CD の広告や販売は不公正な競争に
な る よ う に 連 邦 貿 易 法 ( Federal Trade
Commission Act)を改正しようとするもの
である。
この法案は: 3/22/2005 に通商・貿易・消
239 ―
― 費 者 保 護 小 委 員 会( Commerce, Trade and
Consumer Protection)に回付された。
アナログ・コンテンツをデジタルに変換す
る 機 器 ( device) に よ っ て 「 analog hole」
ができ,後にインターネットを通じて頒布さ
Benefit
Limiting
れる可能性もある。この法案は特定のアナロ
Advancement or Net Consumer Expecta-
Authors
without
グ変換機器にデジタル・コンテンツのセキュ
tions Act of 2003 (“BALANCE Act”)
リティ手段を要求している。
Title: To amend title 17, United States
Code, to safeguard the rights and expectations of consumers who lawfully obtain
digital entertainment. (H.R.4536)
Sponsor: Rep Lofgren, Zoe [CA-16] (introduced 12/14/2005), Cosponsors (2)
Latest Major Action: 12/14/2005 Referred
to House committee.
Status: Referred to the House Committee
on the Judiciary.
法案は,デジタル・テレビジョン(DTV)
のデジタル・コンテンツをインターネットに
再頒布することから保護する連邦放送委員会
( FCC)の「 Broadcast Flag」 Rulemaking と
も関連している。12/16/2005 現在下院司法委
員会( House Committee on the Judiciary)
に回付されている。
連邦放送委員会の「Broadcast Flag」決定
の経緯は下記のとおりである。
2003 年 11 月,連邦放送委員会( Federal
“BALANCE Act”と呼ばれるこの法案は
デジタル・コンテンツの公正使用(fair use)
と消尽の権利(first sale rights)を保護する
ことと,公正使用と消費者の期待利益を可能
にする「許される迂回(permissible circum-
vention)」を提供することを目的としている。
この法案は 12/14/2005 に下院司法委員会
( House Committee on the Judiciary)に回
付された。
Digital Transition Content Security Act of
2005
Title: To require certain analog conversion devices to preserve digital content
security measures. (H.R.4569)
Sponsor: Rep Sensenbrenner,F.James, Jr.
[WI-5] (introduced 12/16/2005), Cosponsors(1)
Latest Major Action: 12/16/2005 Referred
to House committee.
Status: Referred to the House Committee
on the Judiciary.
Communications Commission) は DTVs
( digital televisions) と パ ー ソ ナ ル ・ コ ン
ピューターにコピー・プロテクション装置を
付することを命令した。これに対して,2004
年1月全米図書館協会( ALA)が,放送コ
ンテンツのインターネット頒布を禁ずる
FCC の 決 定 ( FCC’s rule making on the
“broadcast flag”)に反対し提訴した。2005
年5月6日,裁判所は図書館協会と消費者の
申立てを認め,
“flag”を無効にした 11。
下院司法委員会( House Judiciary Committee)は同年 11月に,新しい“ broadcast
flag”規定のためのヒアリングを開催した。
上院通商委員会( Senate Commerce Committee)は 2006 年1月 31 日に“ broadcast
flag”や類似する海賊版防止技術(anti-piracy technology)に関するヒアリングを開催
するとしている。
2.成立された法案(Passed Bills)
Technology, Education, and Copyright
Harmonization Act(TEACH Act)
Title: A bill to amend chapter 1 of title 17,
United States Code, relating to the
240 ―
― 許可している。また受信できる場所を拡大し
exemption of certain performances or
displays for educational uses from copyright infringement provisions, to provide
that the making of copies or
phonorecords of such performances or
displays is not an infringement under certain circumstances, and for other purposes. (S.487)
Sponsor: Sen Hatch, Orrin G. [UT] (introduced 3/7/2001), Cosponsors (4)
Related Bills: H.R.2215
Latest Major Action: 9/25/2002 Placed on
the Union Calendar, Calendar No. 425.
Senate Reports: 107-31 House Reports:
107-687
Note: For further action, see H.R. 2215,
which became Public Law 107-273 on
11/2/2002.
た。旧法案は教室やこれに類似したところに
制限していたが,新法ではそのような制限は
ない。教育機関は今やどこでも学生と遠隔で
繋がることができる。伝送されたコンテンツ
の蓄積に関して旧法案は他者の著作物が含ま
れていても教育機関が遠隔教育伝送で受信し
たコンテンツを複製し保存することを許して
きた。新法は引き続きそれを認め,さらにコ
ンテンツの保有やそれに対する学生の一定短
期間のアクセスやコピーも許容している。ア
ナログ著作物のデジタル化に関しては,デジ
タル伝送のためアナログ著作物をデジタル化
することを許容する。しかしほとんどの場合
は著作物はデジタル形式で存在しない場合に
限って認める。これらの特権は様々な要件を
全部クリアした教育機関にだけ許される。使
用権限は一定の著作物,一定程度の量,一定
の条件によって制限される。
2002 年 11 月 2 日 , 膨 大 な 法 律 ( H.R.
2215: 21st Century Department of Justice
Intellectual
Property
Protection
Appropriations Authorization Act) の 一 部
として,
“Technology, Education and Copyright Harmonization Act”(the TEACH Act)
が法律として成立した。新法は Section 110
(2) について多くを改善した。しかしその利
点を享受するためには大学などの教育機関は
法が要求する要件を充足しなければならない。
教育者にとっての TEACH Act のメリット
は,一方向テレビジョン(closed-circuit television)だけを想定して作られた旧 Section
110 (2) を廃止したことである。旧法案は教
育者に限られた種類の著作物だけを実演する
ことを許し,それは教室またはこれに類似し
た場所でだけ受信することができた。このよ
うな制限は家や職場など教室以外の場所にい
る生徒に伝えられる現在のデジタル伝送には
適用されにくい。
新 Section 110 (2) は3つの著しい改善を
した。まず,使用が許される著作物を範囲を
広くした。ほとんどの著作物の展示と実演を
Courts Amendments Act of 2004
and
Title: To prevent and punish counterfeiting of copyrighted copies and phonorecords, and for other purposes. (H.R.
3632)
Sponsor: Rep Smith, Lamar [TX-21]
(introduced 11/21/2003), Cosponsors (6)
Related Bills: S.2227, S.2242
Latest Major Action: Became Public Law
No: 108-482
House Reports: 108-600
改正前に,18 U.S.C. § 2318は 偽造ラベル
をレコード,コンピューター・プログラムや
映画に貼ることを禁じていた。本法の第1章
( Anti-Counterfeiting Provisions) で は , こ
の § 2318 の 範 囲 を 大 幅 に 広 め た 。 ま ず §
2318 の侵害に対して個人も提訴できる。ど
んな著作権者も自分の権利が侵害され,また
は侵害される恐れがあれば提訴でき,裁判所
241 ―
― は実際の損害や侵害者の追加的利益や法定損
Ⅳ 終わりに
害を賠償命令できる。
次 に § 2318 の 対 象 を レ コ ー ド , コ ン
デジタル技術が呼び起こした著作権法上の
ピュータープログラム,映画のほかに,文学,
写真,グラフィック,彫刻,ビジュアルアー
問題に対応するための,90年代の米国の著
トにまで拡大した。
作権関連立法は主に既存の著作物の枠にデジ
最後に法案は,偽造や権利侵害品ではない
タルを追加する形であった。しかしそれだけ
という証明のため権利者によって使われる認
では解決できない問題も多く,結局はデジタ
証書またはこれに類似なものが付着権限なく
ルミレニアム著作権法を制定することになる。
無断で貼られ頒布されるなど,新しい種類の
この DMCA は多くの批判をうけ,今まで利
不法ラベル( unlawful label)にも適用され
用者が享受してきた利益をも奪う結果になっ
る。
た。著作権というのは法律が定める特定の方
式で著作物を利用することにだけ適用される
Family and Entertainment Copyright Act
のに反して, DRM は著作権法によって権利
of 2005
が付与されていないか,付与されたとしても
Title: A bill to provide for the protection
of intellectual property rights, and for
other purposes. (S.167)
Sponsor: Sen Hatch, Orrin G. [UT] (introduced 1/25/2005), Cosponsors (4)
Related Bills: H.R.357
Latest Major Action: Became Public Law
No: 109-9
House Reports: 109-33 Part 1
著作権の決める各種の例外と制限条項により
その権利行使が制限される著作物利用方式に
対しても事実上これを統制できるようにして
いるので,問題を起こしている。 DRM の効
果は法とは関係なくこれを適用する人の意図
によって,場合によってはその意図に関係な
く著作権の限界を超えてしまっているのが現
実であり,より強力な著作権保護を付与すべ
きであるという立場なので,伝統的な著作権
保護の原則を守ろうとする側と衝突するので
2005年4月 27日に Public Law No.109-9 と
ある。
し て 成 立 し た Family and Entertainment
Copyright Act of 2005は, 映画館での映画
の無断録画を犯罪化し,家庭内での映画視聴
の際に映画の不快な場面(offensive material)を消費者がスキップすることは著作権侵
害ではないことを明確にした。
こ の 法 案 の 第 4 章 の “ Preservation of
Orphan Works Act”では著作権法の Section
108を改正し,著作権者が見つからない,ま
たは見つけにくい著作物( Orphan Works)
に関して,図書館に音楽・映像・その他の
オーディオビジュアル著作物の保護機関の最
後の 20 年間の保存,育英,リサーチの権限
を与えた。
このような理由で,90年代に入ってから
デジタル・ネットワーク時代の権利者の権利
を守るための立法が多くみられる。
しかし 1998年の DMCA 以降の米国の著作
権関連立法では,利用者の利用様態を「規制」
し,権利者を保護しようとしていたデジタル
著作権関連法の弊害を見直し,利用者が今ま
で享受してきた利益,特に消尽( First Sale
Doctrine)と公正使用(Fair Use)など伝統
的な利益を守ろうという傾向がみられるとい
えよう。
以下,デジタル技術と従来の利用者の利益
との衝突問題に関しては,現在研究している
「DRM と Fair Use」という論文に委ねたい。
242 ―
― 注
1
デジタル権利管理( DRM: Digital Rights
Management)システムとは,権利者が自分
の権利を効果的に保護したり管理するために
適用するシステムをいう。この DRM はしば
しば技術的保護措置( TPM : Technological
Protection Measures) と 混 用 さ れ る が ,
TPM が著作物の特定の使用様態を統制する
ものであることに比べ, DRM は一般的にこ
れ に 加 え て 権 利 管 理 情 報 ( RMI : Rights
Management Information) を 基 礎 と す る 。
使用料の測定および使用料の支払い,情報の
同一性維持およびその確認,人やコンピュー
ターの認証や識別,情報とその出所の連結な
ど多様な機能から成るというこ点で,もっと
包括的な概念であるといえる。
United States Office of Technology
Assessment, Copyright and Home Copying :
Technology Challenges Law (1989.10) 参照
3 Record Rental Amendment of 1985, Pub.
L. No. 980450, 98th Cong., 2d.Sess, 98Stat,
1727 (1984) (codified at 17 U.S.C.§ 109(b)
参照
4 Computer Software Rental Amendments
of 1990, Pub.L. No.101-650, 101st Cong.,2d
Sess., 104 Stat 5089, 5134-37 (1990) (codified
at 17 U.S.C. §109(b) 参照
5 Steven J.D’Onofrio, In Support of Performance Rights in Sound Recordings, 29
UCLA L. Rev. 169 (1981) 参照
6 Lionel Sobel, A New Music Law for the
Age of Digital Technology, 17 Ent
L.J.3(1995.11)参照
7 David Nimmer, Puzzles of the Digital Millennium Copyright Act, 46 J. Copyright
Soc'y U.S., 401 (1999), David Nimmer, A
Riff on Fair Use in the Digital Millennium
Copyright Act, 148 Univ. Pa. L. Rev. 673
(2000)参照
8 Pamela Samuelson, Intellectual Property
and the Digital Economy : Why the AntiCircumvention Regulations Need to Be
Revised, 14 Berkeley Tech. L.J. 519 (1999),
David Nimmer, A Riff on Fair Use in the Digital Millennium Copyright Act, 148 Univ. Pa.
L. Rev. 673 (2000) 参照
9 DMCA 第 104条は,技術的保護手段の回避
および権利管理情報の除去・改変を禁止する
新規の制度と,109条(ファーストセールド
クトリン)と 117条(コンピュータープログ
ラムの複製に関する免責)という既存の条文
2
243 ―
― との関係を評価することを著作権局長らに義
務付けた。それに基づき 2001年8月に米国
著作権局長は連邦議会に「DMCA 第 104条報
告書( DMCA Section 104 Report)」を提出
した。報告書では ファーストセールドクト
リン やフェア・ユース法理など伝統的に認
められてきた著作権法上の法理が,デジタル
技術やネットワーク技術の出現・普及に伴い
どのような問題に直面しているか,また,こ
れからその問題にどのように対応していくべ
きかについて,詳細に述べている。原文はこ
ちら。( http://www.copyright.gov/reports/
studies/dmca/sec-104-report-vol-1.pdf)
10 法案の内容や状態については国会図書館サ
イトを参照 (http://thomas.loc.gov)
11 全米図書館協会(ALA)はこの法案に反対
を表明している。( https://www.ala.org/ala/
washoff/WOissues/copyrightb/dbprotection/databaseprotection.htm)
12 The House of Representatives has five calendars of business: the Union Calendar, the
House Calendar, the Private Calendar, the
Corrections Calendar, and the Calendar of
Motions to Discharge Committees. The rules
of the House provide that there shall be a
Calendar of the Committee of the Whole
House on the state of the Union, to which
shall be referred bills raising revenue, general appropriation bills, and bills of a public
character directly or indirectly appropriating money or property.
This is commonly known as the Union
Calendar and the large majority of public
bills and resolutions are placed on it on
being reported to the House. For a discussion of the Committee of the Whole House.
(下院サイト参照 http://www.house.gov)
13 American Library Association, et AL.,
Petitioners v.
Federal Communications
Commission and United States of America,
Respondents, Motion Pictures Association
Inc., et AL. Interventors : United States
Court of Appeals (For the District of Columbia Circuit) No. 04-1037 : Decided May 6,
2005:On Petition for Review of an Order of
the Federal Communications Commission