夏 季 集 中 講 座 本年度は、新学習指導要領の改訂内容を踏まえ 、「子どもたちの『生きる力』をはぐく む教育の充実をめざして」をテーマに各分野で活躍されている10名の講師による集中講 座を実施した。 第1回 講 師 演 題 平成20年8月18日(月) 立命館小学校 深谷圭助 校長 『自ら学ぶ力を育てる地図帳指導』 内 容 学び方は「態度」として身に付かなければ意味がない。見え ないものを予測して見ようとする態度を育てる。地図を見るだ けではなく、地図を子どもに描かせて、それについて説明させ る。地図について子どもが説明する中で、子どもにとってわか りやすい地図になる。先生のアドバイスやコメント、解説も添える。子どもたちの地図に 対する抵抗感をなくし、地図帳を積極的に使おうと思わせるような指導が大切である。 キーワード *地図を「読む」環境づくり ・常に机の上に、すぐに使えるように地図帳を置かせる。 ・索引を活用させる。 ・地名を書いた付箋を地図帳の該当ページにはらせる。 ・地図帳を楽しみながら読む体験をさせる。 ・地図帳を普段から楽しみながら読ませる。 「朝読書」で地図帳を読む。 → 地図を読む習慣をつける。 教室の天井に地球儀をつるす。 → 常に触れて確かめられる環境をつくる。 教室の天井に東西南北を表示する。→ 方向感覚を身につける。 教室内に校区地図を掲示する。 → 身近な地域を空間的に把握する。 ・「 調べなさい」と言う前に調べる習慣をつけさせる。 ・魅力的な地図は「 発見 」に満ちている 。社会科以外で地図を「 読む 」機会を増やす 。 第2回 平成20年8月18日(月) 講 師 西宮ライフスキル研究会 演 題 『 ライフスキル∼学級で高めるセルフエスティーム∼ 』 内 容 西宮市の小学校教員を中心とした研究グループである。WHO が提唱する「日常生活で生じる諸問題を建設的に解決する能力 =ライフスキル」の考えを授業に導入した。ライフスキルは、 セ ルフ エ ス ティ ー ム が基 盤 に なる 。「自 分 は 価値 あ る 人間 だと 思える健全な自尊心=セルフエスティーム」は、まさに「生きる力」そのものである。セ ルフエスティームを高めることで優れたライフスキルを身につけ、生きていく上で直面す る問題に対して建設的で効果的に解決しようという気持ちが生まれる 。 「 よいとこビンゴ 」 「ハートビーイング 」「プッカの冒険」などのワークをとおして、ライフスキルについて 体感した。 キーワード *ライフスキルの5セット10のスキル (関連しあう2つのスキルを1セットとして分類) 1セット ①情動対処スキル ②ストレス対処スキル 2セット ③自己認知スキル ④他者理解スキル 3セット ⑤コミュニケーションスキル ⑥対人関係スキル 4セット ⑦意志決定スキル ⑧問題解決スキル 5セット ⑨創造的思考スキル ⑩批判的思考スキル *参考 「ライフスキル∼学級で高めるセルフエスティーム」 (西宮ライフスキル研究会発行)に、詳細が記載され ている。 本書は、授業力向上(カリキュラム)支援センター (伊丹市立総合教育センター内)で所蔵している。 第3回 講 師 演 題 平成20年8月19日(火) JT生命誌研究館 中村桂子 館長 『こどもは生きもの ∼このあたりまえの見方が教えてくれること∼』 内 容 「こどもは生きもの」である。しかし、改めて「生きる力」 と言わなければならないのはなぜか。生きものはすべて「生き る 力」 を 持 って い る 。「 生命 尊 重 」 と何 百 万 回言 っ て も生 命は 失われる。美しい名詞を言ってしまうと自動的に思考が停止する。動詞で話すといろいろ な 生 き 方 が 見 え て く る 。「 ひ ら す ら 生 き る 」「 巧 み に 生 き る 」「 わ き ま え て 生 き る 」「 よ く 生 き る 」。 文 部 科 学 省 の 提 唱 す る 「 生 き る 力 」 は 、「 よ く 生 き る 」 に 該 当 す る の で は な い か。経済・技術至上主義の人は、生命誕生以来綿々とつながってきた生命の扇の外に人間 がいると思っている。経済・技術至上主義の考えには、地域を、子どもを育てるという考 えがない 。「生きる力」は生きものとしての子どもが生きる社会の問題である。この地球 上で「よく生きる」ことができない子どもが10億人とも言われる現実の中で、子どもた ちが「生き生き」するには、どうすればよいかと考える「逆転思考」が必要だ。 キーワード *生きものはつながりの中に ・子どもは「生きもの 」。 例えば 、生まれたばかりの赤ちゃんが早く5歳になりたくても 、5歳にはなれない 。 1歳から5歳になっても、2、3、4歳なくして5歳とは言えない。 ・人間は生命の扇の中にいる。38億年の生命の歴史の中にいる。 バクテリアともキノコともつながっている。 人間は新しいものの中に、古いものが全部入って、古いものを使ってできている。 生きものは変化、成長しながら、1つの個体として時間を超えてつながっている。 ・先生の中で「いのち」についての思いを持ち続けてほしい。 *参考 6年生教科書 「国語 上 」(光村図書) P 24∼ P 29 「生きものはつながりの中に」 中村桂子 文 渡邉良重 絵 第4回 講 師 演 題 平成20年8月19日(火) 神戸女学院大学 遠藤知二 教授 『グッドデザイン!種子の模型をつかって生物進化の しくみを体験的に考える』 内 容 新学習指導要領では、理科学習において「実感をともなった 理解」や「見通しをもった観察・実験」による問題解決をとお して子どもが考えることを一層重視すると規定されている。 講座では、ヒョウタンカズラ(アルソミトラ)の種子の模型を紙やシールなどの簡単な 材料を使って作成した。模型を飛ばす実験を楽しみながら、試行錯誤を繰り返し、だんだ ん飛ぶように工夫する中で、飛行原理や進化の仕組みについて学んだ。 ヒョウタンカズラ( アルソミトラ ) の種子 ウリ科の熱帯アジアの樹木であ る。高さ50m程の大木に育ち、 ヘルメット大の果実をつける。そ の 実が熟すと400程(横幅約12c m) の羽 を もった 種子が グライ ダー のように飛び出すことから、飛行 機のモデルになった。 キーワード *なぜ生物進化を教えるのか ・生物は生態系の中での相互作用を通じて進化してきた。 ・人間の体、行動も進化の産物である。 ・「 自然選択による適応的な進化」は、生物を理解するための本質的な概念である。 ・今あるものが古いものを生かしてだんだん変化していく。これが進化である。 ・現生の生物は長い時間にわたる進化の歴史を背負っている。 第5回 講 師 演 題 平成20年8月20日(水) 滋賀大学 牧戸 章 准教授 『求められる・求めたい国語力とその学びの生成のた めに』 内 容 国 語 科 教 育 の 目 的 は 、「言 語 的 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 」 能 力 の 育成である 。 「 学力低下 」とりわけ「 読解力 」の低下という「 言 説」が支配的な状況の中、人としてどのような「ことば」を学 び、獲得すればよいのか。日本人は「伝え合う」ことが苦手な傾向にある。いろいろな子 どもがともに学び、ちがう価値観を共有し合う中で、受け止め合うことや関わり合うこと を大切にする「伝え合い」をとおして、コミュニケーション能力と思考力を育む。また、 学ぶ側と教える側の双方の立場で学び合う関係づくりが必要である。 しりとり (言葉・文章・イメージ) 対話劇 リレー物語 キーワード *求めたい「国語力」 ・ こ と ば の 「 記 号 論 的 意 味 」( 辞 書 に 載 っ て い る 意 味 ) と 「 存 在 論 的 意 味 」( 私 に と っての意味)を理解することにより、言語力が確立する。 ・「 思考力」=「自己内対話」 自分の中にも他者がいる。 ・コミュニケーションは言葉のキャッチボールではなく 、心のキャッチボールである 。 ・教師の予定している「答え」=「ゴール」にたどりつかせることが教育ではない。 「ここまで、来い!」ではなく、自分を乗り越えさせる学力をつけさせるという意 気込みが教師に必要だ。
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