6 単元の実際 - はばたけ秋田っ子ネット

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単元の実際
(1)オリエンテーション
本単元は,広く社会に目を向けて「食」について考え,意見文を書く単元である。そこで,
1時間目はオリエンテーションとして自分の食生活を振り返り,「食」について関心をもつ
時間とした。「食」について広く話題が出るように,食生活で気を付けていることや改善し
たいこと,家庭で話題になること,家庭の行事食など,振り返る視点を与えた。子供たちは,
自分の健康や栄養面での問題点や普段心がけていること,昨今の食に関する報道から感じて
いることや家庭で気を付けていること,家庭でのお祝
い事や行事のときの食事など ,「食」について多方面
から振り返り,発表し合うことができた。また,
「 食」
について自分の考えの広がりや深まりを実感できるよ
うに ,「食」についてのイメージマップを書く活動を
取り入れた。このイメージマップは,単元の導入時,
中盤,終末に書き足していく形で活用した。単元の導
入時はほとんどイメージを広げることができなかった
子供も,学習が進むにつれて,イメージが広がり,マ
ップに書き足せるようになっていった。自分の変容を
イメージマップ
自覚できることが,学習への意欲や自信につながって
いた。また,このマップをもとに自分が意見文で訴え
たい内容や提案を焦点化させていくことができた子供も
いた。
(2)主体的な情報収集活動のために
子供たちが ,「食」について自分なりの考えをもつこ
とができるように,新聞記事や本,年鑑などの資料を準
備した。新聞記事は廊下に掲示し,記事のコピーを掲示
ホルダーに入れておくことで,子供たちがいつでも自由
に記事を集めたり,調べたりできるようにした。図書資
料も自由に閲覧できるように,廊下にコーナーを設置し
た。調べた情報を項目ごとに整理するために,情報カー
ドを活用した。子供たちが「食」について自分の考えを
もつ手掛かりになるように,情報カードには,資料を読
んで共感したこと,疑問に思ったことなどについてまと
めるよう助言した。課外の時間にも情報を集めるよう助
言したところ,自宅の新聞から記事を集めてきたり,イ
ンターネットを利用して調べてきたりと,積極的に情報
収集活動に取り組んでいる姿が見られた。
情報コーナー
情報カード
(3)書くための思考を深めるために
①説明文「インスタント食品とわたしたちの生活」の活用
説明文を読んで,筆者の主張をとらえ自分の考えをもつためには,確かな読みの力が身に
付いていなければならない。本単元に入る前に,論旨の展開が明確な説明文を読み,説明文
を読む手順について確認する時間を設定した。説明文の段落構成を考たり,要約して筆者の
考えをとらえたりした。本単元では,「食」についての資料の一つとして,説明文「インス
タント食品とわたしたちの生活」(東書5上)を取り上げた。この説明文では,インスタン
ト食品の便利さと,それがもたらす問題点について述べられているが,インスタント食品の
善し悪しだけでなく,現在の食生活や食文化について広く考えることができる内容となって
いる。子供たちが「食」について考えを広げ,深められる教材文であると考え,本単元で取
り上げた。最初に,本文を要約し,筆者の主張をとらえた。次に,「食」について自分の考
えをもつ手掛かりの一つになるように,情報カードに要約文を
書いた。説明文「インスタント食品とわたしたちの生活」を取
り上げたことで,子供たちは,食生活や食環境,食文化など自
分なりの考えや視点をもって,情報収集活動を進めていくこと
ができた。さらに,自分の生活だけでなく,広く社会に目を向
けて「食」について考え,自分の考えや主張をもてるようにな
っていった。情報収集活動が進み,「食」についての自分の考
えが明確になってきたところで,意見文における自分の提案を
カードに書いた。提案カードは情報カードと色を変え,調べた
説明文を読む手順
情報(事実)と自分の提案とを区別し,整理しやすいようにし
た。
②情報交換会
より説得力のある意見文を書くために,情報を見直したり,どのような情報があればよい
か考えたりすることは,思考の広がりや深まりにつながると考え,情報交換会を行った。情
報交換会は,これまでに集めた情報の中から,自分の意
見文に使おうと思っている情報を,グループで交換し合
うことにした。グループは,提案内容は似ているが,互
いに違う情報を持っている者でグループを作った。情報
交換をして,参考にしたい友達の情報があったときは,
メモを取り,後で友達の情報カードのコピーをもらって,
自分の意見文を書くときに参考にできるようにした。子
供たちは,友達の情報を聞いて,自分にはない新しい情
報や自分の提案に結び付く情報を進んでメモをしていた。
情報交換会
情報交換会の後,子供たちから,「自分は調べていない情
報があって,参考になった。」
「自分の意見文に合う情報があった。」などの感想が出された。
③効果的な文章構成について
情報交換会の後,子供たちは友達の情報を参考にしな
がら自分の意見文の構成を考える活動に入った。相手を
納得させるだけの力のある情報はどれか考え取捨選択す
る作業は,思考の深まりにつながると考える。活動に入
る前に ,「話題提示,情報,提案」という意見文の構成
を再度確認し,自分の提案を明確に伝えるためには,情
構成を考える
報の選び方と並べ方が大切であることを伝えた。子供た
ちは,自分や友達のカードの中から,自分の提案をより明確に伝える情報はどれかを十分吟
味し,自分の意見文に使うものを選び出してから構成を考えた。情報交換の時間を十分保障
することで,自分の情報だけでなく友達の情報も取り入れた子供が多数見られた。情報の並
べ方については,前帯単元での学習を生かして工夫して構成を考えることができた。
(4)意見を明確にした文章を書くために
子供たちは,最初に話題提示文を書いた。「食」について考えるにあたって子供たちは,
自分の生活を振り返ることから出発し,調べ活動を通し
て,広く社会に目を向けていった。その学習過程を踏ま
え,話題提示文は自分の生活からエピソードを見付け,
問題提起の文章を書くことにした。書き進めることので
きない子供には,オリエンテーションで話題になったこ
とを想起するよう助言した。次に,自分の提案の根拠と
なる情報を,前時で考えた構成をもとに書いた。ここで
は,段落と段落のつなげ方でつまずいている子供が見ら
れた。書き出しの文例や接続詞の使い方のヒントを提示
書き出しのヒント
し,自分の考えを明確にして文章を書くことができるよ
う支援した。
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成果と課題
(1)成果
①情報収集の場の保障
新聞記事や図書資料,他社の教材文といった多様な資料を活用したことは,社会に目を向
けるきっかけとなり,「食」について視野を広げ,様々な視点から自分の考えをもつことに
つながった。
②情報交換会
情報カードを活用した情報交換会は,友達の情報を取り入れ自分の考えを深めるのに有効
であった。取り入れるにあたって,情報を取捨選択し,自分の提案に合った情報を整理する
ことができ,情報をより自分のものにすることができた。
③文章構成の理解
自分の文章構成を十分に吟味することができるように,自己評価の観点を具体的に提示し
たところ,説得力のある意見文にするためには,情報をどのような順序で展開すると効果的
なのか考え,文章構成を工夫することができるようになった。
(2)課題
①主張型意見文のモデルの提示
前帯単元では二者択一型の意見文を書いたが,本単元は前回とは違う主張型の意見文とい
うことで,書き方がよく分からず,戸惑っている子供が見られた。意見文を書く前に,主張
型の意見文の基本的な形式を提示する必要があった。「話題提示,問いかけの文,事例,自
分の提案」という枠組みや文章の形式などを具体的に提示することで,伝えたいことを明確
にして書き進めることができたのではないかと考える。
②情報を読み取る力
調べた情報を意見文の中でどのように取り上げたらよいか分からず,つまずいている子供
も見られた。調べた情報の要旨は何か,自分の提案とどのように結び付くのかが十分にとら
えられていないためであった。資料の内容を書き写すのではなく,資料から分かることを明
確にし,さらに資料に対しての自分の思いもまとめることができるよう,情報のまとめ方の
手順を提示し,資料を読み取る時間を十分に確保する必要があった。また,複数の情報を関
連させて書き進めることに難しさを感じていた子供も見られた。情報カードを書くときに読
み取った内容をもとに見出しを付けることで,スムーズに意見文を書くことができたと考え
る。今回の実践から,論理的な文章を書くためには,確かな読みの力が必要であることが分
かった。今後は読む力との関連を明らかにし,書く力の向上を図っていきたい。