筑波大学大学院 筑波大学 内藤清志 浅井 武 中山雅雄 1 背景 サッカー エリアの相互侵入型 (L.グリフィンら, 1999) 「攻撃と守備が入り混じり、ゴール数を競う」 Ex.ハンドボール、バスケット、ホッケー、ラグビー 2 ボール保持とは… ボールポゼッションとも呼ばれ、ボールを自チー ムが所有している状態を維持すること ボールを保持している時間 点を取る(得点 増) 点を奪われない(失点 減) ボールを保持していない時間 点を取れない(得点 減) 点を奪われる(失点 増) 3 『ボールを7割支配できれば、8割の試合に勝てる』 (ヨハン・クライフ) ボールを所持することは、有効なチーム戦術である (アラン・ウェイド,1973) 一方で… 「Analysis of passing sequences, shots and goals in soccer」(Mike hughes,2007) ボール保持が少ない方 が得点に関係? ・ゴールに至った攻撃の80%はパス4本以内 ボールを保持するということは、『狙われる』という発想に陥りやすく、ボールを 持っていない状態から良い体勢でボールを得る方が有利 →アンチフットボール このバランスをどう考えるか (ヨハン・クライフ,2002) Ex. 2010南アフリカW杯の日本代表 4 ボール保持に関する先行研究 「大会で勝ち進むチームは、敗退するチームに比べて、 6本以上のパスが成功した攻撃が有意に多い」 「得点を生む攻撃のおよそ80%はパス4本以内の攻撃」 『Analysis of passing sequences, shots and goals in soccer』 Mike Hughes →勝敗、得点に与える影響を、パスの本数というもの に着目しており保持率という値ではない →W杯をサンプルにしており、試合数が少ない 5 ボール保持率が勝敗に与える影響という部分に関する先行研究はみられない 目的 ボール保持率 →ボール保持率自体が勝敗、得 点・失点にどのように影響を与え ているかを考察し、有効な戦術か どうかを検討する →サンプル数を増やし、リーグ間 によって差があるのか、特徴は反 映されているのかを検討する 6 方法 2012-2013シーズンの欧州リーグ(リーガエスパニョーラ・プレミアリーグ)計686試合 のボール保持率・勝敗・得点数・失点数のデータをインターネット上から収集し、ボール 保持率の変化に伴う勝率の変化及び、得点・失点の期待値の変化を算出した。 そこで得られた値を、①保持率と勝率、②保持率と得点、③保持率と失点において相関 調べた。求められた相関係数に対して、無相関検定を行った。 無相関検定を行う際の統計学的有意水準はp<0.01とした。 〈対象〉 リーガエスパニョーラ(スペイン) 全18チームリーグ戦 306試合 プレミアリーグ(イングランド) 全20チームリーグ戦 380試合 計686試合 〈分析項目〉 ボール保持率、得点数、失点数、勝敗 〈参照〉 http://www.transfermarkt.com 7 結果・考察 ①ボール保持と勝率の関係 ボールの保持率と勝率 →高い正の相関 (図1) ボール保持は勝率に強く関係している 図1 総合 100% 90% リーグ間の比較 リーガエスパニョーラ・プレミアリーグ ともに高い正の相関を示す (図2,3) 70% 60% 50% 40% r=0.83(p<0.01) y = 0.0163x - 0.3352 n=686 30% 20% 10% 0% 0 20 40 60 80 100 ボール保持率 (%) 図3 プレミアリーグ 図2 リーガ・エスパニョーラ 100% 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 80% r=0.89 (p<0.01) y = 0.0197x - 0.4844 n=306 勝率 (%) 勝率 (%) 勝率 (%) 80% 60% 40% r=0.71 (p<0.01) y = 0.0152x - 0.279 n=380 20% 0% 0 20 40 60 ボール保持率 (%) 80 100 0 20 40 60 80 100 ボール保持率 (%) 8 ②ボール保持と得点の関係 ボール保持率と得点 →中程度の正の相関 (図1) ボール保持は得点に関係 している 図1 総合 6 得点 (点) 5 4 3 リーグ間の比較 リーガエスパニョーラは高い正の相関 、プレミアリーグは中程度の正の相関 を示す(図2,3) →リーグ間の特徴の差か? C 2 r=0.70(p<0.01) 1 y = 0.0423x - 0.5453 n=686 0 0 40 60 ボール保持率 (%) 80 100 4 得点期待値 (点) r=0.78(p<0.01) y = 0.0531x - 0.8676 n=306 5 図3 プレミア 6 図2 リーガ・エスパニョーラ 6 得点期待値 (点) 20 3 2 5 r=0.52(p<0.01) 4 y = 0.0266x + 0.1046 n=380 3 2 1 1 0 0 0 20 40 60 ボール保持率 (%) 80 100 0 20 40 60 80 100 ボール保持率 (%) 9 ③ボール保持と失点の関係 ボール保持率と失点 →中程度の負の相関 (図1) ボール保持は失点に関係 している 図1 総合 6 5 r=-0.70 (p<0.01) y = -0.0423x + 3.6855 3 リーグ間の比較 リーガエスパニョーラは高い負の相関、 プレミアリーグは中程度の負の相関 を示す (図2,3) →リーグ間の特徴の差? n=686 C 2 1 0 0 20 40 60 80 100 ボール保持率 (%) 図2 リーガ・エスパニョーラ 図3 プレミア 6 6 5 5 4 r=-0.78 (p<0.01) y = -0.0531x + 4.4405 3 n=306 2 1 0 失点期待値 (点) 失点期待値 (点) 失点 (点) 4 4 r=-0.52 (p<0.01) 3 y = -0.0267x + 2.769 n=380 2 1 0 0 20 40 60 ボール保持率 (%) 80 100 0 20 40 60 80 100 ボール保持率 (%) 10 結言 ①サッカーにおけるボール保持率と勝率、得点・失点 は相関関係にあり、ボール保持率を高めるということ は、有効なチーム戦術であるといえる。 ②得点・失点においては相関の強さに、リーグ間にお いて差が見られた。リーガ・エスパニョーラの方が、プ レミアリーグに比べて試合の流れ(ボール保持)が、 チームの結果に関係しているのではないか。 ③今後は、ボール保持の諸要因の部分の検討が必要 である。 11 今後の課題 ①ボール保持と勝率、得点・失点に相関が見られたので、今後は「有効なボール 保持」とは何かという部分の検証の必要性 →ボール保持が高いのに負けた試合、保持率が低いのに勝った試合に着目して その理由を検証する(戦術的要因) 図2 保持率と得点 図1 保持率と失点 6 失点 (点) 5 4 r=-0.70 (p<0.01) 3 y = -0.0423x + 3.6855 n=686 2 得点 (点) 6 5 r=0.70(p<0.01) 4 y = 0.0423x - 0.5453 n=686 3 2 1 1 0 0 0 20 40 60 ボール保持率 (%) 80 100 0 20 40 60 80 100 ボール保持率 (%) ②今回、リーグによる比較で違いが見られたので、他のリーグとの比較の検討、 また、技能レベルの違いを考え、カテゴリー別での比較の必要性 12
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