be2009.5,No.2 2014.9.No.27 4 年の経過で典型的な腺癌画像に到った肺癌の 1 切除例 現病歴.60 歳代の女性.主訴 胸部異常影.4 年前,検診 で胸部異常影(図 1a)を指摘された.同時に撮られた CT でもスリガラス様陰影(GGO)を認め(図 2a),再検を勧め られたが,放置していた.4 年経った今年,異常影の増 大を指摘され,当院を紹介された.腫瘍マーカーは陰性, 喫煙歴はなかった. 図 1a.4 年前 図 1b.入院時 画像所見.図 1a では判然としない病変部(元画像では認 識可能)も,今回入院時には径 20mm の淡い陰影となっ て判別できるまで増大した(図 1b,矢印).一方,4 年前 の CT で認められた 25×12mm の GGO 病変は(図 2a) 胸 膜陥入を伴って 25×22×34mm に増大し,中心部の solid 部分も明瞭となって,径の半分近くを占め,明らかな胸膜 図 2a.4 年前 図 2b.入院時 陥入像も認められた (図 2b). 合同カンファレンス.肺癌が強く疑われ,生検を勧めた が,患者は即手術を希望した.それも 1 つの選択枝と考 え,PET,MRI で遠隔転移を否定した後,臨床的に 1 期 図 3a.辺縁部 図 3b.中心部 肺腺癌の診断の下,呼吸器外科に転科した. 手術所見.陥入を伴った病変部胸膜は白色状で広範に肥厚し,直下に比較的大きな弾性軟の腫瘤 を触れた.これらの所見及び術前の臨床所見から術中迅速診断による根治術の選択は不適と判断 図4 し,初めより上葉切除を実施した.術後は順調に経過し,現在 外来通院中である. 病理組織学的検索.腫瘍細胞は肺胞上皮置換型(図 3a)を主体として,一部(図 3b)で乳頭, 腺房状に浸潤する混合型腺癌で Noguchi Type C1)と診断された.脈管侵襲,胸膜浸潤はなく, #4R,#7,#11,#12 に転移も認めず,T2aN0M0 の stage1B と診断された. 考察.近年,CT によって見つかった小型スリガラス様陰影の診療機会が増え,経過観察か,精 査かの判断に苦慮する症例が少なくない.悪性度は中心部の solid 部分(浸潤性)の比率に関連 し,予後はスリガラス様陰影(GGO 部分,非浸潤性)に対し,solid 部分が増すほど不良となる 2). 2013 年の日本 CT 検診学会の指針によれば,GGO を含む結節では 15mm 以上、solid な結節で は 10mm 以上の場合に精査すべきとされている.今回の症例では初回検診時,既に径 15mm 以 上の GGO 陰影があり, 4 年後にはその陰影の増大と共に solid 部分も全体の 50%近くになっ 図4 て,危うく治癒切除の機会を逸するところであった. 1)Noguchi M: Pathology of Lung Carcinoma―Recent Adenocarcinoma Classification―:Japanese, Journal of Lung Cancer―2012;52:339,2)Suzuki K et al. “Early” peripheral lung cancer: prognostic significance of ground glass opacity on thin-section computed tomographic scan,Ann Thorac Surg,2002;74:1635
© Copyright 2024 Paperzz