専門(修士のみ) - 環境変動解析学分野

北海道大学大学院環境科学院
地球圏科学専攻
物質循環・環境変遷学コース
平成 19 年 4 月入学
大学院修士課程入試試験問題
小論文・専門科目
1. 小論文は受験者全員が試験開始から 1 時間以内に解答せよ。答案用紙の受験科目欄には「小
論文」と書くこと。試験開始 1 時間後に小論文の答案用紙を回収する。小論文の解答が終
わったら、専門科目の解答を始めて良い。
2. 専門科目については、地球化学(コース関連問題)、化学、地学、物理学、生物学、数学の
計6科目各3問以上の中から合計3問を選択して解答せよ。ただし、複数の科目から選択
しても良い。各答案用紙の受験科目欄には、選択した科目名および問題番号を書くこと。
3. 問題1題につき答案用紙 1 枚を使用すること。答案用紙は裏を使っても良い。足りなけれ
ば申し出よ。
平成18年8月29日
1
2
小論文
課題:物質循環・環境変遷学コースを受験した動機と、入学後の研究に対する抱負について、
500 字程度で記述せよ。
小論文は受験者全員が試験開始から 1 時間以内に解答せよ。小論文の解答が終わったら、専
門科目の解答を始めて良い。
3
4
地球化学
問1(大気化学関連)
以下の(ア)-(オ)の用語群から2つを選びそれぞれ200字程度で解説せよ。
(ア)窒素酸化物
(イ)バイオマス燃焼
(ウ)エアロゾル
(エ)凝結核
(オ)アイスコア
問 2 (大気化学関連)
大気中のオゾン濃度(体積混合比)
は 20 ppb 程度から 150 ppb 以上まで大きく変動する。
対流圏オゾンについて以下の設問に答えよ。
(1) オゾン濃度 100 ppb の場合に、標準状態にある大気 1 m3 中に存在するオゾンの質量は
どれだけか、mg で答えよ(有効数字2桁)。ただし、標準状態1モルの気体の体積は
22.4 リットルとする。
(2) 都市大気中では、オゾン濃度は午前から午後にかけて増加し午後2時頃から夕方にか
けて最大となる。なぜオゾンは増加するのか、主な要因を複数あげその理由を説明せ
よ。
(3) オゾンは様々な大気成分と反応する。大気中で起こるオゾンの代表的反応を一つあげ、
それについて解説せよ(300字程度)。
問3(海洋化学関連)
次の文章を読んで問に答えよ。
海水中の溶存酸素は、ほとんどの場合、海水を採取したのち、
(a)
(ア)法で測定される。
溶存酸素濃度は海域によって異なるが、鉛直的に見るとほぼ同じ傾向を示す。表面海水の溶
存酸素濃度は水温、塩分から求めた(b)飽和濃度よりもやや(イ)くなることがある。酸
素は表層で生物によって作られた(c)(ウ)の分解の時に消費される。(ウ)が深層に向か
って沈降するので、水深約(エ)m付近で酸素濃度は(d)最も(オ)なる。この深さを(カ)
と呼んでいる。そして、海底に向かってその濃度は(キ)する。それは、(e)(ク)で沈み
込んだ海水が底層に運ばれているからである。
(1)ア からクにあてはまる語句または数字を答えよ。
(2)下線部分に関する以下の問いにそれぞれ数行程度で答えよ。
a.ア 法の原理を説明せよ。
5
地球化学
b.イになる理由を説明せよ。
c.このことに関連付けて太平洋と大西洋の酸素濃度の違いを説明せよ。
d.オ になる理由を説明せよ。
e.この海水の特徴を示せ。
問4(海洋化学関連)
次の5項目から2つを選んで、知れることをそれぞれ200字程度で述べよ。
(ア) 親潮(イ)メキシコ湾流(ウ)日本海(エ)オホーツク海(オ)南極海
問5(同位体地球化学関連) 次の全ての設問に答えよ。
(1) A 地点では月平均値の降水の安定同位体比が Meteoric Water Line に乗ることがわか
っている。ある月の降水のδD が-54‰であった。この時のδ18O を計算せよ。
(2) 同位体分別係数の定義を、水と水蒸気を例として5行程度で述べよ。
(3) 都市大気の CO2 濃度とその炭素同位体比を測定し、夕刻の交通渋滞時における CO2 濃
度と、そのδ13C の変化を観測した。この観測データから下の図を作成した。清浄な大
気のδ13C を-8‰と仮定し、図からわかることを述べよ。
-10
13
δ C (‰)
-15
-20
-25
-30
0
0.001
0.002
0.003
-1
1/CO2 濃度 (ppm )
6
地球化学
問6(同位体地球化学関連) 下の全ての問に答えよ。
(1)清浄大気中 CO 2 の濃度と炭素安定同位体比は、どのような長期的な変動をしているか。
その理由もあわせて 10 行程度で述べよ。
(2)動物の体の窒素安定同位体比(15N/ 14N)は食物連鎖に沿って濃縮することが知られて
いる。小さな池で植物プランクトン、動物プランクトン、および2種類の魚類(魚 A、
魚 B)の窒素同位体比を測定したところ、それぞれ、-1.2, 2.1, 5.4, 6.0‰という値
を得た。魚 A と B の窒素同位体比が異なる理由について、考えられることを 10 行以内
で述べよ。魚は植物プランクトンを餌とはしないこと、また、動物の体は餌のδ15N よ
り 3.3‰高くなるものとする。
問7(陸域化学関連)
(1)以下の文章は水質の検討項目を説明している。(a)と(b)はそれぞれの説明文に対応す
る水質の検討項目を答えよ。
(c)? (d)に関してはそれぞれの項目の説明を2行程度で記
述せよ。
(a) 酸化剤によって試料水を化学的に加熱分解し、このときに消費される酸化剤の量を
酸素量に換算したもの。
(b) 採水した試料水を暗条件下、一定温度で密閉容器に保った場合の微生物によって分
解される有機物量を酸素量に換算したもの。
(c) 硝化
(d) 脱窒
(e) 硫酸還元
(2) 以下の問いに答えよ。
(a) 湖沼の富栄養化について3行以内で記述せよ。
(b) 湖沼で発生するアオコについて3行以内で記述せよ。
(c) 空欄を埋めて文章を完成させよ。
(A)
とは、湖沼の生物の成育に必要な栄養物質が質的に量的に調和のとれ
ている湖に分類される。栄養塩の濃度レベルにより、(B)
、(C)
、貧栄養
湖の3つに区分される。また、(D)
とは、生物の成育に不都合な特定の化学物質
や腐植有機物が多い湖を指す。腐植型栄養湖、(E)
といった湖がこのタイプの湖に
分類される。
7
地球化学
問8(陸域化学関連)
河川や湖沼水中に存在する懸濁粒子の特徴について検討したい。以下の項目から2つを選
択し、それぞれの分析方法とその原理、ならびにそれぞれの項目から導き出すことが出来る
懸濁粒子の生成、起源、移行特性等の環境動態に関する知見をそれぞれ10行以内で記述せ
よ。
(ア)鉱物組成
(イ)元素組成
(ウ)有機物組成
(エ)バイオマーカー
(オ)放射性核種
問9(古環境学関連)
以下の質問(1)から(3)に答えなさい。
(1)下表の地質年代表は地球誕生以来の地質時代名を下から上へ向かい順に並べたもので
ある。空欄(a)? (j)にはいる地質時代名を記しなさい。
表1
地質年代表
第四紀
新生代
新第三紀
(a)
更新世
鮮新世
(b)
(c)
古第三紀
(d)
暁新世
(e)
中生代
ジュラ紀
(f)
(g)
石炭紀
古生代
デボン紀
(h)
(i)
(j)
先カンブリア時
代
8
地球化学
(2)古気候復元には観測記録とプロキシ記録が用いられる。観測記録とプロキシ記録の違
いを簡単に説明しなさい。
(3)下記の文を読み、質問(ア)? (エ)に答えなさい。
海底コアとは海底堆積物をコアリングあるいは掘削により柱状に採取したものである。海
洋環境を年? 千年単位で復元するのに有用である。堆積物中の底生有孔虫酸素同位比から大
陸氷床量が、微化石群集組成、有孔虫殻の Mg/Ca 比、アルケノン不飽和指標(UK 37)、テトラ
エーテル脂質環状構造比(TEX 86 )から(A)が、有機炭素やクローリン(クロロフィルの分解
生成物)の沈積流量から(B)が、底生有孔虫炭素同位体および Cd//Ca 比から(C)が、ダス
トの沈積流量から(D)が復元される。
(ア) 空欄(A)? (D)を埋めなさい。
(イ) 底生有孔虫の酸素同位体組成が大陸氷床体積を反映する理由を説明しなさい。
(ウ) 有機炭素濃度(gC/g)、堆積速度(cm/年)
、乾燥かさ密度(g/cm3 )から有機炭素沈積
流量を計算する式を示しなさい。
(エ) 海底コアの採取方法をひとつとり上げ、その原理を説明しなさい。
問10(古環境学関連)
次の論述問題(ア)と(イ)のどちらかを選び答えなさい。
(ア) ハインリッヒ事件について以下のキーワードを用いながら解説しなさい(20行以内)
。
キーワード:海底コア、氷山、氷床、アイスコア、海面変動、大気二酸化炭素濃度
(イ) ミランコビッチチューニングについて以下のキーワードを用いながら解説しなさい(2
0行以内)。
キーワード:氷床堆積、ミランコビッチサイクル、軌道強制力、海底コア、酸素同位体
組成、酸素同位体ステージ
9
化学
問 1
以下の質問に答えよ。なお、答えを導くための途中の過程または根拠の記述も省略せ
ずに、答案用紙に示せ。
(1)水溶液中の反応 C + D → E + F がある。C と D の濃度を変えながら反応速度 v を測定
したところ、以下の結果を得た。反応速度 v は-d[C]/dt = -d[D]/dt である。
[C] (mol L -1)
[D] (mol L -1)
v (mol L-1 s-1)
実験 1
4.0×10 -3
2.5×10 -3
1.6×10 -8
実験 2
4.0×10 -3
5.0×10 -3
3.2×10 -8
実験 3
5.0×10 -3
5.0×10 -3
4.0×10 -8
実験 4
6.0×10 -3
5.0×10 -3
4.8×10 -8
(a) C、
D それぞれについて反応次数を求め、
反応速度定数をkとして反応速度式を示せ。
(b)反応速度定数kを求めよ。単位も省略せずに書くこと。
(c)実験 3 において C の濃度が半分になるのに要する時間(秒)を求めよ。
(2)
気相におけるジメチルエーテルの熱分解反応
(CH3 )2O → CH 4 + CO + H2
は一次反応であり、反応速度定数 k は 773 K で 4.4×10-4 s -1 、823 K で 4.5×10 -3 s-1 で
ある。
気体定数R は、8.31 J K -1 mol -1、log e(45/4.4)=2.33、
e-4.5 =0.01、e-2.25 =0.11、e-0.66 =0.52、
e -0.45=0.64 とする。
(a) Arrhenius の式に基づき、反応の活性化エネルギーを求めよ。
(b) ジメチルエーテルの圧力を 40 kPa とし、773 K で熱分解反応を行った。反応開始から
1500 秒経過したときのジメチルエーテルの圧力を求めよ。
(c) ジメチルエーテルの圧力を 50 kPa とし、823 K で熱分解反応を行った。反応開始から
100 秒、500 秒、1000 秒経過したときの全圧力を計算し、時間とともに全圧力がどのよ
うに変化するか図(厳密に描く必要はない)を用いて説明せよ。
問2
以下の質問に答えよ。
(1)下の表はある地域に降った雨水中に含まれる主要なイオン成分の濃度を示したもので
ある。この雨水の pH は 4.6([H ]=25 µmol L )、また電気伝導度は 29 µS cm-1 であった。
この雨水に関する以下の問に答えよ。
+
-1
10
化学
イオン種
-1
濃度(µmol L )
2-
SO4
31.2
NO3
12.6
-
(A)
NH4
17.8
102.0
+
+
+
Na
K
(C) 6.4
2+
(B) Mg
15.3 11.5
(a) 雨水の pH の測定は、ガラス電極と pH メーターを用いる電位差測定によって行わ
+
れている。試料水の水素イオン濃度を[H ]とする時、25℃で観察される電位差 E は
ネルンストの式によって以下のように表される。
0
+
E = E + 0.059 log[H ]
今、pH 標準溶液(その pH を pHr とする )を用いた時の電位差を Er、雨水の時の電
位差を Es とする時、雨水の pH を Er、Es 、pHr で表せ。
(b) pH 標準溶液には幾つか種類がある。それらの一つについてその構成成分とおおよそ
の pH を示せ。
+
(c) 電気伝導度は雨水中のイオン種の量を示すものとして重要である。Na のイオン半径
+
+
は K よりも小さいにもかかわらず、その極限(無限希釈時の)モル電気伝導度は K
よりも小さい。その理由を 5 行程度で説明せよ。
(d) 雨水中に含まれる主要成分のうち、表の(A)に相当する一価の陰イオンと、
(B)に
相当する2価の陽イオンを示せ。
(e) 上記の表に記述された以外のイオン種の存在は無視でき、イオンバランスが成立する
+
と仮定した時、Na イオンの濃度を求めよ。
(2)難溶性塩の溶解平衡に関する以下の問いに答えよ。
-1
(a) Ag2 CrO4 を純水に溶かして溶解平衡にさせたときの Ag2 CrO4 の溶解度を S mol L とす
るとき、溶解度 S は Ag2 CrO4 の溶解度積 Ksp を用いてどのように表されるか。
-1
(b) Ag2 CrO4 を 0.01mol L AgNO3 溶液中で溶解平衡にさせたとき、その溶解度を求めよ。
-12
ただし、Ag2 CrO4 の溶解度積を Ksp = 4.5 × 10 として計算せよ。
-1
+
Ag2 CrO4 を純水に溶かした時と、0.01 mol L の Ag 溶液に溶かした時では、明ら
かに純水の方によく溶ける。このような効果は何と呼ばれるか。
(c) 溶解度積からは沈殿生成しないはずの金属イオン種が、他の金属塩の沈殿の生成に
伴われて沈殿中に混入してくることがある。このような現象は何と呼ばれるか。
問3
(1)
以下の質問に答えよ。
下記の反応の主な生成物の構造式を描け。また、それが生成する理由を中間体の共
鳴式を描いて説明せよ。
11
化学
NH2
Cl2
FeCl3
(2)2,5-ジブロモ-3-ヘキセンの考えられる立体異性体をすべて描け。
(3)つぎの反応における主な最終生成物の構造式を描き、その生成物が得られる理由を説
明せよ。
1. BH3, THF
2. H2O2, NaOH, H2O
(4) 下記の化合物を合成するために必要な Grignard 試薬とカルボニル化合物の組み合わ
せを1組描け。
OH
(5) つぎの合成について、反応条件などを明記した合成経路を示せ。
12
地学
問1 海洋大循環について述べた次の文章を読み,以下の質問に答えよ。
海洋では海水の流れによって大規模な循環が形成されている。北半球の表層では黒潮やガ
ルフストリームとして有名な強い海流 i) が流れている。また太平洋の赤道近くでは貿易風に
沿って西方に流れる ii)( a )海流がある。一方、これらの表層の流れの下層では大洋間に
またがる深層水の大循環がある。深層水大循環に沿って栄養塩濃度は増加することが知られ
ている。北半球のほぼ同緯度で観測すると、大循環の終点に近い太平洋の深層水では、出発
点である( b )の深層水に比べて、リン酸塩、硝酸塩は2倍以上になっている。一方、
両大洋間でのケイ酸塩の濃度差は大きく、太平洋深層水は出発点に比べておよそ7倍ものケ
イ酸を溶かしている iii) 。
表層水中の酸素は大気中の酸素と平衡状態にあり、その濃度は海水の温度と塩分によって
決まる。しかし、海水が深海に沈み込んで大気との接触を断たれると、海水中の有機物の酸
化によって消費された分だけ溶存酸素濃度が減少することになる。現場で実測された酸素濃
度と、水温と塩分より求められる飽和酸素濃度との差は、深層水となった後に酸化分解によ
って消費された酸素濃度を示し、これを( c )とよんでいる。深層水中の( c )とリ
ン酸塩濃度、硝酸塩濃度には一定の化学量論的関係が成り立っている。この関係は( d )
らによって提案された海洋プランクトンの化学量論モデル
られている。
iv)と近い組成比をとることが知
(1)
( a )( b )( c )( d )に適切な語句を入れよ。
(2)下線部 i)の海流を何と呼ぶか。
(3)下線部 i)のような海流が生まれる理由としてH・ストンメルが説明したのは次のど
れか。
(ア)大陸の周辺で表層水の流れが収束するから。
(イ)コリオリ因子は南北で一定とみなせるから。
(ウ)赤道付近では西風の貿易風が吹くから。
(エ)海洋大循環の結果、大洋の東西に海流が収束するから。
(オ)コリオリ因子は緯度とともに変化するから。
(4)下線部 ii)のように風によっておこされる海流を一般に何と呼んでいるか。
(5)下線部 ii)の海流に接しながら、正反対の方向に流れる表層流は下のどれか。
(ア)フンボルト海流 (イ)赤道反流
(オ)北赤道海流
(ウ)赤道潜流 (エ)ペルー海流
(6)次の図は、深層水中のある化学成分の濃度分布を示しており、上の記述の内容を反映
している。その成分とは何か、次の中から適切なものをひとつ選択せよ。
(ア)リン酸塩
(イ)溶存酸素 (ウ)ケイ酸塩 (エ)全炭酸
13
地学
(7)下線部 iii)の栄養塩の濃度変化の要因について記述した下の説明のうち、妥当なもの
はどれか。
(ア)大西洋では、太平洋よりもケイ藻の生息密度が高い。
(イ)太平洋は大西洋よりもCCDが深い。
(ウ)オパールの溶出は有機物の酸化とは直接関係しない。
(エ)海底堆積物からの栄養塩の溶出フラックスは大西洋のほうが大きい。
(オ)太平洋ではケイ藻とオパールを含む放散虫の生息密度が高い。
(8)下線部 iv)で示されたモデルによると、有機物が酸化分解するとき、リン酸1モルの
生成に対して何モルの窒素が生じるか答えよ。
(9)ここで説明された深層水の大循環が生じるのは主にどのような理由からか。8 行以内
で説明せよ。
問2
次の文章を読み、以下の質問に答えよ。
地球上の放射収支は緯度によって異なる。1年を通してみると、低緯度帯では( a )
が( b )を上回るため、放射のエネルギー収支は( c )となる。一方、高緯度帯
ではその逆で、エネルギー収支は( d )となっている。このような緯度による放射収
支の過不足は地球表面の加熱・冷却を意味するが、これにより地球の表面が暖まり続け
たり、冷え続けたりすることはない i) 。このような放射エネルギー収支の緯度による違
いは、地球大気の流れを起こす原動力となる。
14
地学
地球の自転も、球面上で観測される大気の動きを支配する重要な要因である。地球大
気は暖められると軽くなって上昇し、地上付近には( e )が形成される。一方、冷却
されると重くなって下降し、地上付近には( f )が形成される。気圧差が生じると、
( g )と呼ばれる力が大気に働き、流れが生じる。地球上では、( g )に加えて、
自転による見かけの力である( h )が加わることになる。
( h )は運動する物体に
働く力で、北半球では、進行方向にに対し( i )に働く。地表面の摩擦の影響を受け
ない上空では、( g )と( h )が釣り合った状態で風が吹く
風は( j )と呼ばれている。
ii)
ことになり、この
(1) ( a ) - ( j )に適切な語句を入れよ。
(2)下線部 i) について、その理由を答えよ。また、その理由には、具体的には3つの過
程があると考えられる。それらは何か答えよ。
(3)北半球中緯度帯の上空に吹く下線部 ii)
の風は、何と呼ばれているか答えよ。また、
その風の方向と、g、h の力の方向を下の模式図を答案用紙に描いて図示せよ。図中の
線は等圧線(または等圧面における等高線)を示す。
低圧側
高圧側
(4)北半球中緯度帯のように、南北に大きな気温差があると、
( j )は高度とともに強
さを増す。その様子を次の模式図を用いて考えてみよう。南の暖かい空気は密度が小
さく、北の冷たい空気は密度が大きい。中間にある M 地点において、( j )が高度
とともに強さを増す理由について説明せよ。(3)で用いたような模式図を描いて説明
してもよい。
600 hPa
800 hPa
1000 hPa
北(冷たい)
M 地点
南(暖かい)
15
地学
(5)地球表面に不均等に存在する陸も、大気の流れを変える重要な役割を果たしている。
ユーラシア大陸の存在が大気の流れをどのようにかえているか、4 行以内で説明せよ。
問3
次の文章を読み,以下の質問に答えよ。
都市や農地など人類の生活基盤は、最近の 180 万年間に堆積した( a )と呼ばれる地層
のうえに成立しており、多く場合、河川あるいは海岸に隣接した平野にある。平野は岩石が
様々な物理・化学的過程を経て風化し、細粒化した i) 堆積物で構成されている。この堆積物
は山地や丘陵などの斜面で生成され運搬されたものが多い ii) 。地形が急峻な日本では、
( b )
や( c )など多くの不安定な斜面地形が分布しており、地形変化が激しい。山地から平野
までの土砂流動に重要な役割を果たしているのが水である。液体水と土砂の混合物が急激に
斜面を流下する現象を( d )とよび、梅雨期や台風襲来時には各地で大きな被害をもたら
している。一方、水が氷として存在しうる寒冷圏では、( e )とよばれる土壌の凍結融解作
用が関与した、緩慢な土砂移動も重要である。
ある程度の期間、安定した状態を保つ土砂には、植物遺体が含まれるようになり土壌化す
る。土壌の組成は、母岩である基盤岩の化学組成に加え、降水量や気温などの気象や植生条
件などによっても影響を受ける iii) 。熱帯域では( f )が、寒帯では( g )、温帯では( h )
などの土壌が特徴的である。
(1)( a ) ? ( h ) に適切な語句を入れよ。
(2)下線部 i) の物理的風化作用について、次の語句を含めて 5 行程度で説明せよ。
(凍結、
融解、熱膨張)
(3)下線部 ii) について、アルプスやヒマラヤなどでは山岳氷河が土砂運搬に大きな役割
を果たしているが、山岳氷河の末端部で見られる特徴的な地形を2つ挙げ、それらの
形成過程や堆積構造についてそれぞれ3行程度で説明せよ。
(4)下線部 iii) について、土壌化される期間が長期に及ぶと、気候や植生帯に対応した土
壌が形成されるようになる。このような土壌を一般に何と呼んでいるか。
16
物理学
問1
以下の質問に答えよ。
(1) フィギュアスケートのスピンにおいて、スケーターが腕を体に引き寄せると回転が速くなり、
腕を伸ばすと回転が遅くなる。この現象の物理を説明せよ。さらに、下記の現象から同様の
法則が働いていると思われるものを 2 つ選び、どのように同じであるか、簡潔に述べよ。
(a) リンゴが木から落ちた。
(b) お風呂の水を抜いたとき、排水口のそばに渦ができた。
(c) コップの中の水をスプーンで回転させると、中央の水面がくぼんだ。
(d) コマの回転が弱くなってきたとき、コマは歳差運動した。
(e) 惑星の運動においては面積速度が一定である。
(f) ボールに回転を与えて投げたとき、ボールの軌道が曲がった。
(2) 断熱容器に入った気体の圧縮について考える。この気体は理想気体の状態方程式に従い、定
圧比熱 CP と定積比熱 CV の比 γ =
CP
は 1.5 であると仮定する。なお、気体定数を R とすると
CV
き、 n モルの気体では、 CP − CV = nR の関係がある。
(a) 断熱の場合の熱力学第 1 法則を式で表せ。また、その式の意味を言葉で説明せよ。
(b) 気体の温度を 273 K から 546 K まで上げるには、気体の体積をどれだけ小さくすれば良い
か。
(3)
3 次元空間中の質量 m の質点を考える。この質点には保存力しか働いておらず、そのポテン
シャルエネルギーが原点からの距離 r の関数として
1 2 1 2 4
kr − ka r
2
8
で与えられていたとする。ここで、 a と k は正の定数である。
U (r ) =
(a) この質点に働く力を求めよ。質点の位置ベクトルを r とし、力の方向が分かるように書く
こと。
(b) この質点を原点から速さ v0 で発射したとする。 v0 の値による質点の運動の仕方の違いを
述べよ。
問 2 細工したペットボトルに水をある程度詰め、ペットボトル内の空気に圧力をかけるこ
とで、水を勢いよく噴出させ、ペットボトル・ロケットとして打ち上げることが出来
る。ペットボトルの質量を M とし、ある時刻のペットボトル内の水の質量を m とす


る。水は、ペットボトルから一定速度 v 、かつ、単位時間あたり一定質量 a  = −
17
dm 

dt 
物理学
で噴出しているとする。空気抵抗がないものとし、重力加速度を g とする。以下の問
に答えよ。
(1) ペットボトルをなめらかな水平面に置く。水が水平に噴出しているときのペットボトル
の速度変化
du
を求めよ。
dt
(2) 質量 m0 の水が入ったペットボトルをなめらかな水平面に置き、静止状態から水を噴出さ
せた。全ての水が噴出したときのペットボトルの速度 u1 を求めよ。
(3) 次に、鉛直下向きに水を噴出した場合の運動方程式を立てよ。なお、鉛直上向きに座標 z
を取るものとする。
(4) 地面 ( z = 0 ) に置かれた質量 m0 の水が入ったペットボトルは、a と v との積 av がある値を
超えていると上昇する。そのとき、全ての水が噴出したときのペットボトルの速度 u2 、
および、高度 z 2 を求めよ。なお、log x の不定積分は x (log x −1)+ C ( C は積分定数)であ
る。
問3
断面が一辺 a の正方形で長さ l の十分長い (l >> a ) 角棒がある。棒に沿って端から x の位置
において、その密度 ρ が
x

ρ ( x) = ρ 0 1 + ,
l

(0 ≦ x ≦ l)
で与えられているとき( ρ0 は定数)、次の問に答えよ。
(1)
棒の重心 G の位置を求めよ。
(2)
棒を一様な密度 ρ L (< ρ0 ) をもつ液体に完全に沈める。棒を水平に保ったとき、浮力が 1 点
に集中しているとみなすことのできる点(着力点)の位置と棒に働く浮力の大きさとを求め
よ。
(3)
液体中に沈められた状態で棒の重心 G を固定し、G のまわりに自由に回転できるようにし
たとき、棒はどんな運動を始めるか、定性的に説明せよ。
(4)
G のまわりの棒の回転角を φ とするとき、(3)で説明した運動を記述する方程式を求めよ。
また、初期条件すなわち、時刻 t = 0 において、棒は水平に置かれ、静止している、の下で、
棒の回転角速度を φ の関数で表せ。ただし、棒の運動を妨げる液体の粘性抵抗はないもの
とし、G を通る回転軸のまわりの棒の慣性モーメントを I とせよ( I を具体的に求める必要
はない)。
18
生物学
問1 以下の質問(1)、(2)、(3)に答えよ。
(1)タンパク質の構造に関する文中(a)から(e)に適当な言葉を入れよ。
タンパク質を構成するアミノ酸順序をタンパク質の
(a)
と呼ぶ。アミノ酸の側鎖は
共有結合にはあずからないが、システインだけは例外でしばしば 2 個のシステイン残基が酸
化されて
(b)
結合を生じペプチド鎖同士が共有結合をする。
(c)
によって形
成されるタンパク質の部分的な繰り返し構造を
(d)
と呼び、代表的なものがαヘリ
ックスと
(e)
である。
(e)
は隣あったペプチド鎖の間で、
(c)
が形成
される。
(2)ある組織から精製単離した酵素 A は分子量 40,000 である。この酵素 A は 4 量体で 4
つの活性部位を持つ。至適条件下で、純粋な酵素 5μg は毎分 3.2μmol の基質を変換する
能力がある。この酵素 A の比活性と、活性部位1個あたりのターンオーバー数を計算せよ。
(3)1953 年にワトソン(Watson)とクリック(Crick)は生体内にある DNA の構造とし
て二重らせん構造モデルを提唱した。以下の問に答えよ。
(a) この発見(二重らせんモデル)は 20 世紀最大の生物学的発見であると言われている。そ
の理由を考えて 5 行程度で述べよ。
(b) このモデル提唱の後にクリック(Crick)が唱えたセントラルドグマとは何か。3行程
度で説明せよ。
問2 以下の文章を読み、質問に答えよ。
真核植物の光合成は葉緑体で行われている。 葉緑体は二重の膜に包まれた微小な顆粒
で、
(a) と呼ばれる膜構造が存在し、所々で
(a) が積み重なった
(b)
を形成している。
(a) の隙間部分は
(c) と呼ばれ、光合成に関する多くの酵素
が含まれている。
(a)
には光エネルギーを吸収する色素が存在し、吸収された光エネ
ルギーによって、水が分解される。これにより、酸素が発生し、また還元物質である
(d) および化学エネルギーである
(e ) が生じる。さらに、
(d ) と
(e )
および多くの酵素の働きで二酸化炭素が固定され、有機物が合成される。
(1) (a)から(e)に適切な語句を入れよ。
(2)文中下線部の代謝経路を何というか。また、この反応は葉緑体内のどの場所で行われ
るか記せ。
(3)文中下線部の代謝経路の違いにより、C 3 植物および C 4 植物と呼ばれる植物群がある。
C 3 植物としてイネ、ホウレンソウなど、C 4 植物としてトウモロコシやサトウキビなど
19
生物学
が知られており、近年、C 4 植物が行う光合成(C4 光合成と呼ぶ)を応用して、C 3 植物の
生産性を向上させる試みが行われている。生産性向上への応用にあたり、C 4 光合成の
代謝面から見た長所および短所をそれぞれ記述せよ 。
(4)光合成速度の測定法を 1 つ挙げ、その原理を含めて、10 行程度で説明せよ。
問3 以下の文を読み、図を参考にして質問に答えよ。
個体数を知りたいときに、ある生物の個体群 (a)の個体数を直接数えられないときには、個体
数推定法(b)が用いられる。個 体数推定法は、対象種や調査範囲に応じ、様々な推定方法があり、
どれが有効かを判断した上での方法選択が不可欠である。また、個体数推定法は、群集(c)推定
法にも応用されている。これらにより得られた結果から、個体数の年変動(d)などの推定が行わ
れている。
ある一定の広さの中に存在する個体数を密度と呼ぶが、密度は、図に示した
(a) 曲線
に近い変動をすることがある。この場合、この個体群の成長速度は以下の式で与えられる。
dN
N

= r1− N
dt
K

ここで、N は個体数密度、t は時間、r は個体あたりの増加率(内的自然増加率)、K は
(b)
個体数密度
である。
K
0
時間
図. 時間経過に伴う個体数密度の変化
(1) 下線部(a)、(c)の定義を、それぞれ 2 行程度で記せ。
(2)下線部(b)について、具体的な対象種および調査範囲を 1 つあげ、その地域でその種
の個体数を推定するには、どのような個体数推定法により測定されるか、その方法の手順
を 5 行から 10 行程度で説明せよ。また、その推定方法を用いる際に、考慮すべき点ある
いは短所を簡単に記せ。
(3)下線部(d)について、個体数の年変動が周期的に起こる個体群がある。その具体例を
20
生物学
あげ、個体数の年変動機構について 5 行から 10 行程度で答えよ。
(4)文中の空欄
(a)
(5)自然界において
、
(b) に適当な用語を入れよ。
(a) 曲線が成立するためには、いくつかの条件が存在する。それ
らの条件を列挙せよ。
21
数学
問1
r
r
x t +1 = Ax t
漸化式
について、次の問に答えよ。ここで t は時間ステップであ
り、
1

A=2
1




r  x1,t 

 
x
,
t =
3

 x 2 ,t 

2(1 + N ) 
1
である。
(1) N = 2 のとき、
A
(a) 行列
の固有値と固有ベクトルを求めよ。
(b) 求められた二つの固有ベクトルが直交することを証明せよ。
(2)
r
r
x ∗ = Ax ∗
を満たす
r ∗  x1∗ 
x =  ∗ 
 x2 
は平衡解と呼ばれる。
(a) 平衡解は固有値1の固有ベクトルであることを利用して、ゼロベクトル以外の平衡解が
存在する N (以後 N ∗ とする)を求めよ。
(b) N = N ∗ の時、
x1∗ , x2∗
2
(c) N ∗ = ∑ xi∗ である時の
r
x∗
が満たすべき条件を求めよ。
を求めよ。
i =1
問 2 次の問に答えよ。
r
(1)位置ベクトル r = ( x, y, z) とスカラー関数 φ =
よ。
r
(a) r ⋅ ∇φ
r
(b) φ∇ ⋅ r
r
(c) ∇ ⋅ (φ r )
r
(d) ∇φ × r
r
(e) φ∇ × r
r
(f) ∇ × (φ r )
22
1 2
1
x + xy + y 2
2
2
に関して以下を求め
数学
(2)行列
cos θ
 sin θ

− sin θ 
cos θ 
は、原点に対する角度 θ の反時計回りの回転を表す。
以下の問に答えよ。
x′
x 
(a) 変換前のベクトル   と、この行列による変換後のベクトル   の大きさが変わら
 y
 y ′
ないことを示せ。 また、上記2つのベクトルのなす角がθ であることを、両者の
内積をとることによって示せ。
(b) 次の式で表される楕円
x2 y 2
+
=1
22 32
を反時計回りに π / 4 回転させた際の方程式を求めよ。
問3
次の連立常微分方程式を考える。
d 2x
= −2 x + ay
dt 2
d2y
= ax − 2 y
dt 2
ここで、 a は任意の実定数である。次の質問に答えよ。
(1)一般解が有界であるための a の条件を求めよ。
(2) a = 1 であり、初期条件が t = 0 で x = 2, y = 0,
dx
dy
= 0,
= 0 であるときの解
dt
dt
を求めよ。
(3) a = 2 であり、初期条件が t = 0 で x = 2, y = 0,
を求めよ。
23
dx
dy
= 1,
= 1 であるときの解
dt
dt