第4号「病気の時こそまず母乳を」

Seitai Mama の
オランダ育児メモ
「 病気の時こそまず母乳を 」
今回は母乳育児のお話です。私は IBCLC といって、
国際的な母乳育児コンサルタントの資格を持っていま
すが、
5 年ごとの資格更新のために、
常にアンテナを張っ
て、新しい情報やテクニックを手に入れています。時々
この欄で、私の知識をシェアさせていただきます。
● 高熱時に白湯?
季節の変わり目は、気温の急激な変化に体がついて
ゆけず、体調を崩すことが多いですね。この時期は、
赤ちゃんでも、下痢をしたり、風邪をひいて鼻が詰まっ
たり、ひどい咳が続いたり、初めて熱を出す子もいる
かもしれません。そんな時、いままで母乳一本でやっ
てきたお母さんが迷う時でもあります。
「熱が高くてかわいそう。汗もかくし、のどが渇くだ
ろうから、湯冷ましをあげた方がいいのかな ?』と考え
るのももっともですが、実は、こういうときこそ、ま
ず母乳を与えます。
病気によって体が弱っていれば、当然消化能力にも
影響が出てきます。そういう時に栄養も免疫も含まな
い湯冷しでお腹をいっぱいにさせてしまったら、大事
な栄養であるおっぱいを飲めなくなってしまいます。
● おっぱいに含まれる免疫は、それぞれのお母さんに
よって違います
おっぱいには、いろいろな形での免疫成分が含まれ
ています。特に IgA 抗体は、その赤ちゃんとお母さん
が暮らしている状況に応じて、お母さんが自分の体を
守るために体内で作られた、オーダーメイドの免疫で
す。つまり、家族に風邪ひきさんが出ると、お母さん
の体内では、その風邪をひかないように、そのウイル
スに対する IgA 抗体がすごい勢いで作られます。これ
がお母さんの血液からおっぱいに移行して、赤ちゃん
のお口に運ばれます。こうして赤ちゃんは、ほかの家
族がかかっている病気から、自動的に守られるように
なるわけです。あるいは、赤ちゃん自身が風邪を引い
たときにも、お母さんはもちろんその風邪ウイルスに
対する IgA 抗体を作りますから、それをおっぱいを通
じて赤ちゃんに与えると、症状の悪化を予防すること
ができます。これが、病気の時に母乳を飲ませる第二
の理由です。
特に、離乳開始前の、母乳だけで育ってきている赤
ちゃんには、病気の時こそほかの余計なものは与えず
に、おっぱいだけを飲ませるようにします。
お母さんは自分が病気になると、その病気に打ち勝
つために、体内でやはり IgA 抗体を作ります。それを
母乳を介して赤ちゃんに与えることで、赤ちゃんを、
自分がかかっている病気から守ります。
高熱でウンウン言っているときに、赤ちゃんの世話
をするのは大変です。お風呂に入れたり、おむつを替
えたり、といったことは、できるだけパートナーに手
伝ってもらえるといいですね。
● マスクの着用や手洗い、部屋の換気
母乳から風邪ウイルスが赤ちゃんにうつることはあ
りませんが、咳やくしゃみで赤ちゃんにウイルスを振
りかけてしまいますので、自分が病気の時には、その
状況に応じて、授乳時にはマスクをしたり、鼻水が出
ているときには、赤ちゃんに触れる前に手を洗う、な
どの注意が必要です。
また、部屋の空気は目に見えない菌やウイルスで汚れ
ています。オランダでは住まいの気密性が高いのでなお
さらです。マメに換気をして、
空気の汚染を防ぎましょう。
● お母さんが薬を飲んでいる場合
薬の成分が母乳に出ることを心配して、母乳を上げ
られない、と心配するお母さんが多いと思います。
オランダで処方される薬 ( 抗生物質を含む ) も、日本
から持ってきた市販薬も、母乳育児ができなくなるお
薬はまずありません。気になる場合には、下記のサイ
トで確認することもできます。
● 離乳食を始めていたのに・・・
病気になったために食欲が落ち離乳食が進まなく
なった、おっぱいばかり欲しがって食べなくなった、
ということになっても、心配しないでください。大人
でも、
病気の時は食欲が落ちます。そのようなときには、
元気になったらもう一度スタートすることにして、と
りあえずおっぱいをあげてください。赤ちゃんの消化
吸収能力を考えると、具合の悪い時には必要な栄養を
効率的に摂取できる母乳が一番です。病気に打ち勝つ
ための IgA 抗体も含まれているのです。さらに、お母
さんに抱っこされて、おっぱいに吸いつくことで得ら
れる精神的な慰めは、それだけで赤ちゃんの免疫力を
高める、何物にも代えがたい効果的なケアなのです。
『 マ マ の た め の お 薬 情 報 』 国 立 成 育 医 療 研 究 セ ン タ ー http://
www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/index.html
『母乳と薬ハンドブック』 大分県『母乳と薬剤』研究会編
http://www.oitaog.jp/syoko/binyutokusuri.pdf
● お母さんが病気の時はどうするの?
お母さんが病気の時、下痢をしていても、熱が出て
いても、赤ちゃんには母乳を飲ませます。母乳から風
邪ウイルスや、ウイルス性胃腸炎の原因であるノロウ
イルスやロタウイルスが赤ちゃんにうつる心配はあり
ません。
病気の時こそ母乳を
1 消化吸収がよい
2 免疫を含む
3 抱っこされて安心
小出 久美/ Kumi Koide:助産師・保健師・看護師・IBCLC
Seitai Mama として、産後の訪問看護(クラームゾルフ)、母乳育児相談、妊娠中から産後にかけての整体、
赤ちゃんの整体、医療通訳、を行っています。
HP: https://sites.google.com/site/seitaimama/home
HOLLAND RONDVAART
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