もとい ますろう 氏名(本籍) 学 位 の 種 類 元井 益郎(東京都) 博 士(薬学) 学 位 記 番 号 論 博 第 347 号 学位授与の日付 平 成 28 年 3 月 18 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 2 項該当 学位論文題目 露地栽培アガリクスの機能性に関する研究 論文審査委員 (主査) 教授 大野 尚仁 教授 杉浦 宗敏 教授 野口 雅久 教授 新槇 幸彦 論文 内 容の 要旨 日 本 の 人 口 減 少 と 高 齢 化 は 、国 力 と 財 政 に と っ て 大 き な マ イ ナ ス 要 因 と な っ て い る 。 『 日 本 の 将 来 推 計 人 口 』に よ れ ば 、2025 年 に は 、75 歳 以 上 の 人 口 割 合 は 全 人 口 の 18.1% と な る 。 2060 年 に は 、 人 口 は 8674 万 人 に ま で 減 少 し 、 75 歳 以 上 の 人 口 割 合 は 全 人 口 の 26.9% に な る 。ま た 、高 齢 化 に 伴 い 国 民 医 療 費 の 増 加 は 必 至 で あ り 、増 加 を 防 ぐ 手 立ては、喫緊の課題である。その中で注目されてきたのが病気になる前のいわゆる未 病段階での対策である。普段の生活からバランスの良い食事や適度な運動を心がける ことが、病気発症のリスクを減らし、健康寿命を延伸し、結果的に医療費、介護費な どの抑制に繋がる。日本人の食生活は動物性高脂肪食などの欧米型に移行しているの で、バランスの良い食生活のためには、それらを整え補う「機能性食品」の素材の開 発と研究が重要である。 ア ガ リ ク ス 、 学 名 Agaricus brasiliensis は ブ ラ ジ ル 原 産 の 担 子 菌 で あ り 、 日 本 で はヒメマツタケやカワリハラタケなどとして健康食品素材として用いられてきた。申 請 者 は 1995 年 か ら 20 年 間 に わ た り 本 菌 に つ い て 多 面 的 に 開 発 研 究 に 携 わ っ て き た 。 本 研 究 で は 、独 立 行 政 法 人 産 業 技 術 総 合 研 究 所 特 許 生 物 寄 託 セ ン タ ー に 寄 託 (寄 託 番 号 FERM P-17695)さ れ た 、 Agaricus brasiliensis KA21 株 ( 以 下 、 A.brasiliensis と 略 ) を用い、露地栽培アガリクスの機能性について検討した。 本論文は、第一章「原核ならびに真核生物システムを用いた露地栽培アガリクスの 安 全 性 試 験 」、 第 二 章 「 露 地 栽 培 ア ガ リ ク ス の 機 能 性 臨 床 研 究 」、 第 三 章 「 ヒ ト 抗 β グ ル カ ン 抗 体 価 に お け る 露 地 栽 培 ア ガ リ ク ス 服 用 の 効 果 と が ん 患 者 に お け る 抗 β -グ ルカン抗体の研究」で構成されている。 第一章 原核ならびに真核生物システムを用いた 露地栽培アガリクスの安全性試験 アガリクスは古 くから健康食品素 材として我国で汎 Table Results of mouse micronucleus test at 24h after administration (5 mice each) Control 用されてきたが、 2006 年 に は 輸 入 Test (1000mg/kg) された本菌由来の 食品による健康被 害の報告がなされ、 Cell Counts Group Positive control* Percent MPCE per PCE NCE PCE Mean 76.2 123.8 0.381 SD 9.12 9.12 Mean 87.8 112.2 SD 9.73 9.73 Mean 73 127 SD 13.55 13.55 2000 PCE P Value for MPCE** 5 2.24 0.439 1 0.71 0.365 30.2 0.00 19.28 *Oral administration of 100 mg/kg cyclophosphamide. 安全性についてさ **P<0.05 was considered statistically significant. らに詳細に検証す PCE : polychromatic erythrocytes ; NCE : normochromatic erythrocytes ; る必要性に迫られ MPCE : micronucleated polychromatic erythrocytes. た。申請者は、本研究に着手するにあたり、まず本菌株の安全性について検討するこ と と し た 。 そ こ で 、「 細 菌 を 用 い る 復 帰 突 然 変 異 試 験 」、「 マ ウ ス 小 核 試 験 」、 な ら び に 「 マ ウ ス リ ン フ ォ ー マ TK 試 験 」を 実 施 し た 。 復 帰 突 然 変 異 試 験 で は 、検 体 を 粉 末 と し て 注 射 用 水 に 懸 濁 し 、50 か ら 5000μ g/plate の 濃 度 範 囲 で 評 価 し た 。ま た 、代 謝 的 活 性 化 を 評 価 す る た め に S9mix 存 在 下 お よ び 非 存 在 下 で 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 変 異 コ ロ ニ ー 数 は 、被 験 物 質 中 の ア ミ ノ 酸 含 量 相 当 し か 認 め ら れ ず 、変 異 原 性 は 否 定 さ れ た 。 マウス小核試験では、シクロホスファミドを陽性対象として検定した。その結果、小 核の出現頻度ならびに赤血球中に占める幼若赤血球の比率は、いずれも陰性対照群と 検体投与群との間で有意差を認めなかったことから、小核の増加作用を示さないこと が 分 か っ た (Table)。 ま た 、 マ ウ ス リ ン フ ォ ー マ TK に 対 し て も 細 胞 毒 性 を 示 さ な か っ た 。 さ ら に 、 共 同 研 究 者 と と も に 、 健 常 人 に 6 か 月 に わ た り A. brasiliensis を 摂 取 さ せ た と こ ろ 、 特 別 な 有 害 事 象 は 認 め ら れ な か っ た ( eCAM Vol.5(2)205-219.2008)。 こ れ ら の こ と か ら 、 本 研 究 で 使 用 し て い る A. brasiliensis は 細 菌 , 細 胞 , マ ウ ス , ヒトのいずれにおいても安全が高いことを明らかとした。 第二章 露地栽培アガリクスの機能性臨床研究 近 年 の 研 究 に よ り 、 A. brasiliensis は 、 β -グ ル カ ン や ビ タ ミ ン D を 多 量 に 含 む こ とが報告されている。また、製品化の過程を工夫することで、ペルオキシダーゼ、ポ リフェノールオキシダーゼ、ラッカーゼなどの抗酸化酵素を有していることを確認し て い る 。 ま た 、 こ れ ま で の 臨 床 研 究 に お い て 、 A. brasiliensis の 摂 取 に よ り 、 免 疫 機 能 を 賦 活 す る 結 果 ( NK 細 胞 の 活 性 化 ) が 得 ら れ て い る 。 し か し な が ら 、 A. brasiliensis の Quolity of Life(QOL)の 改 善 を 中 心 と し た 機 能 性 に つ い て は 知 見 が 得 ら れ て い な い 。 そ こ で 今 回 、 A. brasiliensis を 含 有 す る 食 品 の QOL 改 善 効 果 を 調 査 す る こ と を 目 的 と し て 、 A. brasiliensis 含 有 食 品 を 12 週 間 連 続 摂 取 す る オ ー プ ン 試 験 を 行 っ た 。 登 録 被 験 者 数 は 24 名 と し 、 被 検 食 品 を 12 週 間 摂 取 さ せ 、 肌 の 状 態 、 排 便 の 状 態 、 髪 の 状 態 、 体 の 状 態 お よ び 睡 眠 の 習 慣 に つ い て 34 の ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 っ た 。 被 験 者 に 摂 取 開 始 か ら 6 週 後 ( 43 日 目 ) お よ び 12 週 後 ( 85 日 目 ) に 、 体 調 確認、身体測定、理学検査、唾液検査、特殊検査の各検査およびアンケート記入を実 施 し た 。ま た 、12 週 目 に は 上 記 検 査 に 追 加 し て 、一 般 臨 床 検 査( 血 液 )も 行 っ た 。 そ の結果、試験期間中にいくつかの自覚症状の訴えと、他覚症状が観察された が、症状 はすべて軽度であり、重篤な有害事象は見られなかった。また、抜け毛の量、白髪の 量、疲労感・倦怠感、目の疲れ、肩こり、手足の冷え、日中覚醒困難、目覚めの良さ のスコアが、それぞれの摂取前に比べて有意に改善した。また、水虫症状に関して も 改 善 傾 向 を 示 し た 。 こ の よ う に A. brasiliensis は 多 彩 な 生 理 機 能 増 強 効 果 を 示 し た こ と か ら 、 こ の 効 果 は 主 要 成 分 で あ る β -グ ル カ ン だ け で な く A.brasiliensis に 含 ま れる特徴的な成分、例えば、味覚、臭覚を正常化し食欲を増す亜鉛、疲労感を和らげ るビタミン B 群、ビタミン D などの関与も考えられる。 第三章 ヒ ト 抗 β -グ ル カ ン 抗 体 価 に お け る 露 地 栽 培 ア ガ リ ク ス 服 用 の 効 果 と が ん 患 者 に お け る 抗 β -グ ル カ ン 抗 体 の 研 究 担子菌子実体の多 * 糖類に関する体系的 な研究によって、 A.brasiliensis の 子 実 体 は 、 10% 以 上 の β -グ ル カ ン を 含 み、免疫調節作用を 示 す β -グ ル カ ン の 主な構造は、β(1,3)-D-グ ル カ ン に高分岐は、マウス における抗腫瘍効果、 腎臓の保護作用、肝 Figure Comparison of the increase in the anti -BG IgG, IgM, or IgA antibody titer in A. brasiliensis group .The anti -BG IgG, IgM, or IgA antibody titer was measured by E LIS A using CSBG-coated plates. The rate of increase in the titer was 臓の保護作用、ラッ calculated. トにおける心臓の保 compared with before taking (p<0.01, paired t -test). * : Anti-BG IgA antibody was significantly increased after taking 護作用、ヒト臨床におけるNK細胞活性化作用、糖尿病や肥満の徴候を軽減する作用 な ど 、 多 様 な 生 物 学 的 活 性 が 報 告 さ れ て い る 。 本 章 で は 、 A. brasiliensis の 含 有 す る β -グ ル カ ン に 対 し て ヒ ト は 特 異 抗 体 を 有 し て い る か を 検 討 す る た め に 、健 常 人 な ら び に が ん 患 者 血 清 を 用 い て 、 β -グ ル カ ン を 固 相 と し た ELISA 法 に よ っ て 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 1) 健 常 人 は A.brasiliensis の β -グ ル カ ン に 対 す る 抗 体 を 有 し て い た 。 ま た 、 2) ヒ ト 抗 体 は 病 原 性 真 菌 Candida albicans 由 来 の β -グ ル カ ン で あ る CSBG と 交差反応性を示した。これらのことから、この抗体は抗真菌感染免疫に寄与している 可 能 性 の あ る こ と が わ か っ た 。さ ら に 、3) ボ ラ ン テ ィ ア 個 々 の 力 価 を 比 較 す る と 、個 人 差 が 顕 著 で あ る こ と か ら 、 β -グ ル カ ン 感 受 性 に は 個 人 差 が あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 ま た 、4) 抗 体 は ク ラ ス ご と に 構 造 的 な ら び に 機 能 的 な 特 徴 を 有 し て い る の で 、ク ラ ス ( IgG、 IgM、 IgA) ご と の 抗 体 価 を 調 べ た と こ ろ 、 IgG ク ラ ス の 抗 β -グ ル カ ン 抗 体 の 力 価 が 最 も 高 く 、IgM お よ び IgA ク ラ ス の 抗 体 も 検 出 さ れ た 。ま た 、5)A. brasiliensis 服 用 が 各 ク ラ ス の 抗 β -グ ル カ ン 抗 体 価 に ど の よ う な 変 化 が あ る の か 検 討 し た と こ ろ 、 増 加 率 に 個 人 差 が あ る も の の IgG は 平 均 増 加 率 が 30.4% 、 IgM49.5% 、 IgA ク ラ ス は 、 服 用 後 有 意 に 増 加 し 、 最 も 高 い 平 均 増 加 率 90.3 %を 示 し た ( Figure)。 ま た 、 6) が ん 患 者 血 清 を 用 い て 抗 β -グ ル カ ン 抗 体 価 を 測 定 し た と こ ろ 、力 価 は 患 者 ご と に さ ら に 著 し く 異 な っ た が 、抗 体 価 が 消 失 す る こ と は 無 か っ た 。β -グ ル カ ン は 免 疫 機 能 の 強 化 の た め に 汎 用 さ れ て お り 、 抗 β -グ ル カ ン 抗 体 が ど の よ う に 関 与 し て い る の か 興 味 深 い 。 β -グ ル カ ン に 対 す る 抗 体 が 生 じ る 理 由 に つ い て は 明 確 な 答 え が 無 い 。 病 原 真 菌 C. albicans と 交 差 反 応 性 を 示 し た こ と か ら 、常 在 真 菌 な ら び に 環 境 中 に 存 在 す る 病 原 真 菌 に よ る 感 染 に よ っ て 特 異 抗 体 が 上 昇 し た 可 能 性 が あ る 。共 同 研 究 者 は 小 児 で は 抗 β グルカン抗体価が低いこと、ウシ胎児血清でも著しく抗体価が低いことを報告してい る。これらのことは、環境真菌の暴露によって抗体価が上昇した可能性のあることを 強く示唆している。 総括 アガリクスは、ブラジル原産で、日本では「ヒメマツタケ」や「カワリハラタケ」 として知られており、機能性食品の原料やサプリメントとして広く使用されてきた。 担子菌の子実体(茸)は、菌株、栽培条件及び産地によって安全性・機能性成分が 著 し く 異 な る 可 能 性 が あ る の で 、菌 株 ご と 、栽 培 条 件 ご と に 評 価 す る こ と が 必 要 で あ る 。 本 研 究 で は 原 産 国 で 露 地 栽 培 さ れ た A.brasiliensis を 使 用 し た 。 本 研 究 で は 、 A. brasiliensis に つ い て 、 in vitro 及 び in vivo か ら そ の 安 全 性 を 明 ら か に し 、 ヒ ト 臨 床 試 験 を 行 い QOL 改 善 効 果 を 示 す こ と を 明 ら か に し た 。又 、A.brasiliensis の 摂 取 で 抗 β -グ ル カ ン 抗 体 の 力 価 が 上 昇 す る こ と を 見 出 し た 。更 に 、IgA ク ラ ス で 最 も 顕 著 な 増加が認められたことから、経口摂取することによって、皮膚や粘膜面の感染防御機 能を強化している可能性のあることが示唆された。 申請者らの研究グループでは,長年にわたり機能性食品の開発研究を行ってきた。 20 世 紀 後 半 に は 、末 期 が ん 患 者 の QOL 改 善 効 果 が 強 く 意 識 さ れ た が 、エ ビ デ ン ス レ ベ ルが低く、科学的には低迷した。近年になって自然免疫研究が進展すると共に 担子菌 の菌体成分に対する特異的受容体が発見され 、機能発現が分子レベルで解析されるよ うになってきた。また,超高齢社会の到来によって未病への期待が強くなったことか ら機能性食品への期待がさらに高まってきた。このような栄養価を豊富に含み、安全 性、機能性のエビデンス(科学的裏付け)のある機能性食品の積極的 な摂取とその人 にあった適度な運動が、人々の免疫力増強・感染防御に繋がり、未病から健康に、そ して、健康長寿に、更に医療費の低減化に繋がることが期待される。 【研究結果の掲載誌】 Int. J. Med. Mushrooms,6, 41-48 (2004); Int. J. Med. Mushrooms,14,135-148 (2012); Int. J. Med. Mushrooms, 11,117-131 (2009); Int. J. Med. Mushrooms, 9,799-817 (2015) 論 文 審 査 の結 果 の要 旨 日本は高齢化が著しく進みつつあり、国民医療費の増加をもたらしている。これを 防 ぐ 手 立 て の 実 施 は 、喫 緊 の 課 題 で あ り ,「 機 能 性 食 品 」素 材 を 開 発 す る こ と は 予 防 医 学 的 視 点 か ら 重 要 で あ る 。ア ガ リ ク ス 、学 名 Agaricus brasiliensis は ブ ラ ジ ル 原 産 の 担 子菌であり、申請者は長年にわたり多面的に開発研究に携わってきた。本研究では、 露 地 栽 培 ア ガ リ ク ス ( A. brasiliensis) の 機 能 性 に つ い て 検 討 し た 。 第 一 章「 原 核 な ら び に 真 核 生 物 シ ス テ ム を 用 い た 露 地 栽 培 ア ガ リ ク ス の 安 全 性 試 験 」 で は 、 A. brasiliensis の 安 全 性 に つ い て 検 討 す る た め , 1) 細 菌 を 用 い る 復 帰 突 然 変 異 試 験 、2) マ ウ ス 小 核 試 験 、な ら び に 3) マ ウ ス リ ン フ ォ ー マ 試 験 を 実 施 し た 。1) で は 、 検 体 を 粉 末 と し S9mix 存 在 下 お よ び 非 存 在 下 に 検 定 し た 。そ の 結 果 、変 異 コ ロ ニ ー 数 は 、被 験 物 質 中 の ア ミ ノ 酸 含 量 相 当 し か 認 め ら れ ず 、変 異 原 性 は 否 定 さ れ た 。2) で は 、 シクロホスファミドを陽性対象として検定した。その結果、小核の出現頻度ならびに 赤血球中に占める幼若赤血球の比率は、いずれも陰性対照群と検体投与群との間で有 意 差 を 認 め な か っ た 。3) で は リ ン フ ォ ー マ に 対 し て 細 胞 毒 性 を 示 さ な か っ た 。こ れ ら のことから、本菌株は十分な安全性を示すことを明らかとした. 第 二 章「 露 地 栽 培 ア ガ リ ク ス の 機 能 性 臨 床 研 究 」で は 、A. brasiliensis の Quality of Life (QOL)の 改 善 効 果 を 調 査 す る こ と を 目 的 と し て 、被 検 食 品 を 12 週 間 連 続 摂 取 す る オ ー プ ン 試 験 を 行 っ た 。登 録 被 験 者 数 は 24 名 と し 、摂 取 開 始 か ら 6 週 後 お よ び 12 週 後 に 、 体調確認、身体測定、理学検査、唾液検査、特殊検査の各検査およびアンケート記入 を 実 施 し た 。ま た 、12 週 目 に は 一 般 臨 床 検 査( 血 液 )も 行 っ た 。そ の 結 果 、抜 け 毛 の 量、白髪の量、疲労感・倦怠感、目の疲れ、肩こり、手足の冷え、日中覚醒困難、目 覚めの良さのスコアが、それぞれの摂取前に比べて有意に改善した。これらのことか ら 、 当 該 食 品 は QOL 改 善 効 果 を 有 す る こ と を 明 ら か に し た 。 第 三 章「 ヒ ト 抗 β -グ ル カ ン 抗 体 価 に お け る 露 地 栽 培 ア ガ リ ク ス 服 用 の 効 果 と が ん 患 者 に お け る 抗 β -グ ル カ ン 抗 体 の 研 究 」 で は 、 当 該 食 品 の 摂 取 に よ る 抗 β -グ ル カ ン 抗 体 力 価 へ の 影 響 に つ い て 、 ELISA 法 に よ っ て 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 1) 健 常 人 は A. brasiliensis の β グ ル カ ン に 対 す る 抗 体 を 有 し て い る こ と 、 2) が ん 患 者 血 清 も 抗 β -グ ル カ ン 抗 体 を 有 す る が ,力 価 の 変 動 幅 が 激 し い こ と 、3) こ の 抗 体 は 病 原 性 真 菌 Candida albicans 由 来 の 細 胞 壁 β -グ ル カ ン と 交 差 反 応 性 を 示 し た こ と か ら 、 抗 真 菌 感 染 免 疫 に 寄 与 し て い る 可 能 性 の あ る こ と 、 4) 当 該 食 品 を 摂 取 す る と 抗 β -グ ル カ ン 抗 体 力 価 が 上昇することから真菌に対する感染防御能が上昇する可能性があることを明らかにし た。 以 上 ,本 論 文 は A. brasiliensis の 機 能 性 食 品 と し て の 安 全 性 と 機 能 性 に つ い て 基 礎 的 ならびに臨床的視点から明らかにし,国民の健康寿命の延伸や高齢化対策として有用 な機能性食品素材を開発した.したがって、本論文は博士(薬学)の学位論文として 相応しい価値あるものと判断する。
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