フォーラム堺学 堺学シリーズ講演会の開催 堺の歴史と文化を発掘し、堺の魅力を多くの方に、 深く知ってもらうため、大阪府立大学上方文化研究 センターとの共催による「堺学シリーズ講演会」を次 のとおり全6回開催しました。 場所:大阪府立大学 中百舌鳥キャンパス Uホール白鷺 ①10月23日 「幕末・明治 堺の教育史 ―往来物と堺版教科書―」 和田 充弘氏(同志社大学社会学部 嘱託講師) ②10月30日 「鳥井駒吉と堺の酒造業の歴史」 竹田 芳則氏(堺市立中央図書館) ③11月13日 「世界遺産登録をめざす百舌鳥古墳群」 十河 良和氏(堺市世界文化遺産推進室) ④11月20日 「終戦時首相 鈴木貫太郎と堺」 白神 典之氏(堺市博物館) ⑤11月27日 「堺地域の歴史地震 ―安政の大地震記録に学ぶ―」 矢内 一磨氏(堺市博物館) ⑥12月25日 「与謝野晶子と堺 ―田辺聖子『千すじの黒髪』から―」 フォーラム堺学 中 周子氏 (大阪樟蔭女子大学 教授(田辺聖子文学館副館長)) フォーラム フォーラム堺学 第21集の発行 「堺学シリーズ講演会」の内容から次の4テーマ を収録し、フォーラム堺学第21集として発行しまし た。 ・「幕末・明治 堺の教育史 第二十一集 ―往来物と堺版教科書―」 ・「鳥井駒吉と堺の酒造業の歴史」 ・「世界遺産登録をめざす百舌鳥古墳群」 ・「与謝野晶子と堺 ―田辺聖子『千すじの黒髪』から―」 94 Urban vol.27 (フォーラム堺学 第 21 集 本文より) 「幕末・明治 堺の教育史 ― 往来物と堺版教科書 ―」 和田充弘(同志社大学社会学部嘱託講師) 子どもと師匠・教員たちが実際につかっていた書物を材料としながら、幕末から明治時代の中頃まで、 堺の教育がどのような特徴を持っていたのか、そのことについてお話しさせていただきます。 ひとつめは現在、堺市立町家歴史館として公開されている清学院(せいがくいん)というお寺のこと です。そこに残されている往来物(おうらいもの)というテキストについてです。もうひとつは近代を 迎え、堺が県庁所在地だった頃、この地元でつくられていた小学校の教科書についてです。 そして近代的な学校教育の制度や考え方を堺ではどのように採り入れたのかについて、すこし難しい お話もさせていただきます。 「鳥井駒吉と堺の酒造業の歴史」 竹田芳則(堺市立中央図書館) 駒吉には酒造イノベーターというのがふさわしい名前かなと思いますけれども、酒造をベースにした いろんな経営戦略をつくりました。しかもそれは地域の酒造仲間とともに活動をされていました。酒造 に限らず、駒吉は南海電鉄の創業者としても知られております。 ほかに、アサヒビールですね。これも鳥井駒吉が創業者ということで、非常に画期的な実績だと思い ます。それに関連してラベルデザインをおこなった、中井芳瀧(なかいよしたき)という浮世絵画家の ことについても触れたいと思います。それから駒吉の人となりということで、個人的な活動、生活につ いても若干、お話をいたします。 次に堺と酒造ということで、駒吉以外の人も含めて、堺と酒造業についての歴史をお話しします。 「世界遺産登録をめざす百舌鳥古墳群」 「世界遺産登録をめざす百舌鳥古墳群」というテーマでお話をさせていただきます。私は一昨年まで堺 市の文化財課で、百舌鳥古墳群の発掘を十年ほど担当してまいりました。今は世界文化遺産推進室に所 属し、百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録事業に従事をしているところでございます。 今日は世界遺産のご説明、それから百舌鳥古墳群のご説明、とくに皆さんご興味があるかと思われます、 仁徳天皇陵古墳のご説明をさせていただきたいと思います。 フォーラム堺学 十河良和(堺市世界文化遺産推進室) 「与謝野晶子と堺 ― 田辺聖子『千すじの黒髪』から ―」 中周子(大阪樟蔭女子大学教授・田辺聖子文学館副館長) 堺時代の晶子については、あまりはっきりしたイメージを持つ人が少ないのではないでしょうか。「駿 河屋のいとはん」という十代から二十代前半までを堺で過ごし、和歌もつくっています。そしてさまざ まな雑誌に投稿し、採用されています。 今回はそのような人格をつくり上げた堺時代を、晶子の歌と文章によってたどります。また従来、堺 時代の晶子の歌はただ「古臭い」という一言ですまされてきましたが、なかなかいい歌をつくっていた のではないかと私は考えますので、そのあたりもお話しさせていただきたいと思います。 また田辺聖子を取り上げましたが、田辺聖子が描く『千すじの黒髪』の中の晶子像は、堺時代の晶子 の真の姿に迫っているのではないかと考えます。そこで田辺聖子が『千すじの黒髪』において生き生き と描いた晶子像もみていきたいと思います。そして晶子と堺の深いかかわりを、今回はたどっていきた いと思います。 Urban vol.27 95
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