ストレスと健康障害

第 25 回浪打病院健康教室
平成 18 年 7 月 13 日
ストレスと健康障害
菊
1.ストレスとは
なに
田
一
貫
?
本来、ストレスは、
「物体に圧力を加えることで生じる歪み」を意味する物
理学の言葉でした。
1936 年、カナダの生理学者『ハンス・セリエ』が、ネイチャー誌に「スト
レス学説」を発表したことから、生理学の分野でも「ストレス」が用いられ
るようになりました。
一般に、ストレスが溜まった状態を「ストレス」と呼びなれていますが、
外界の刺激に対する生体の反応の全てを「ストレス」といい、ストレス発散
やストレス解消のために行って、精神的・肉体的に加えられた刺激に対する
反応も「ストレス」と言っています。
また、ストレスの原因「人間関係」
「睡眠不足」など、ストレスを起こさせ
るものを「ストレッサー」と呼びます。
いま、手にゴムボールを持っている状
態を思い浮かべてください。
握ると、ゴムボールはへこみます。こ
のように、外部からの圧力(刺激)
『スト
レッサー』を受けて、生態に起こる反応
を『ストレス』といいます。
日本では、この外部からの原因(圧力、
刺激等)も『ストレス』と一般に言われ
ています。
1
例、「人間関係のストレスがあると、おちこむよね・・・・・・・」
「仕事のストレスで、ヘトヘトだよ」
同じ状態にあっても、ストレスの影響を強く受ける人とそれほどでもない
人がいます。
ゴムボールの空気圧が高ければ、握ったときのへこみは少しですみますし、
すぐもとにもどります。逆に、空気圧が低ければ少しの力でも大きくゆがん
でしまいますし、元に戻らないこともあります。
このときのゴムボールのへこみ具合が、心身にかかる「ストレス」の度合
いを表します。心身が元気で健康なら、一時へこんでも元に戻ります。しか
し、体が不調だと、小さなストレスでもダメージが大きくなってしまうので
す。
このようにストレス反応は、受け手の心身の状態によって大きく変わって
しまうのです。
2.ストレスの原因(ストレッサー)
①
物理学的要因;季節、天候、気圧、高温、寒冷等の変化、騒音、振動
におい、明暗、照明、放射線、空間等
②
化 学 的要因;空気、ガス、粉じん、各種化学物質等
③
生物学的要因;細菌、カビ、ウイルス、昆虫類、動物、植物等
④
社会学的要因;人間関係、労働条件、近所付き合い、賃金、税金等
⑤
個 人 的要因;加齢、病気、不安、不満、葛藤、焦燥感、過大責任等
①~⑤までのこと『人が自然界・社会環境から受けて生きていることすべ
て』がストレスになり得ます。
2
3.良いストレスと悪いストレス
ストレスはいつも悪者にされていますが、悪いことばかりではありません。
ストレスがまったくなくなると人は生きていられません。
4.
「ストレス」とは、さまざまな外的・内的刺激に対して、心身が反応するこ
とと、それに適応しようとする過程をいいます。
人は刺激を受けると、それに適応しようとします。
例えば・・・
『引越し』
まず、新しい環境・人間関係に慣れようとしますよね?
その時、「どんな町だろう?」「どんな人たちと知り合えるんだろう?」と
いうワクワクした気持ちになり、その状況を心地よいと感じるのであれば、
それは良いストレスと言えます。
3
一方、
「大丈夫だろうか…」と、不安でいっぱいになり、その状況が苦痛だ
と感じるのであれば、それは、悪いストレスとなってしまいます。
このように、ストレスには「良性(快)」と「悪性(不快)」があります。
全くストレスがない状態・過度なストレス状態(=悪性ストレス)は、心
身のバランスを崩し、自分自身や周りの人にまでも悪影響を及ぼすので、十
分に注意しなければなりません。
そうではなく、日常生活にハリを持たせ、私たちにやる気を起こさせてく
れる心地よいストレス(=良性ストレス)もあるので、ストレスを一概に悪
いものとは言えないのです。
そんな適度なストレスは、私たちの生活に欠かせません!
それを踏まえた上で、ストレスとの付き合い方を考えていくことが必要で
す。
「ストレスは人生のスパイス」
困難な状況を乗り越えた経験は人に満足と
成長をもたらします。その人が自ら乗り越え
ることができる程度に困難なことで、これを
乗り越えたときに、達成感と開放感を感じま
す。この場合の“ストレス”はよいストレス
と言えます。
しかし、問題が過度に難しかったり、自分の力では解決できなかったり、
解決の手段や、助力が得られなかったりして、状況を解決できず、達成感や
開放感の変わりに疲労感や、絶望感が持続すると、この“ストレス”は健康
に悪影響(心身の病気)を与えてくる可能性が高くなります。
そこで、
「ストレス」に対処するため、メンタルヘルスケアが必要になって
くるのです。
4