子どもたちの発想を生かした音楽活動の工夫

第2学年 音楽科学習指導案
日時 平成 27年10月27日(火)3校時
場所
2の1 教室
指導者
舩林 明喜美
【研究主題】
子どもたちの発想を生かした音楽活動の工夫
1 題材名
「こ の 曲 の ひ み つ を み つ け よ う
~ようすを思いうかべて~」
2 目標
○曲の表す場面と強弱とを結び付けて聴いたり表現したりする学習に、進ん
で取り組もうとする。
○伴奏を聴いて楽曲の気分にふさわしい歌い方で歌うことができる。
○場面の様子と強弱とを結び付けて聴き、感じ取ったことや考えたことを、
体の動きや言葉で表現することができる。
3 題材について
○ 本題材は、音楽を特徴づけている要素のうち、
「リズム」
「旋律」
「反復」
「拍の流れ」「強弱」が関連づけられている。それらの要素を「曲のひみ
つ」と名づけ、子どもたち自らみつけていくことを学習のめあてにしてい
る。
特に、着目させたいのは「強弱」である。強弱のもたらす効果や面白さ
を感じ取らせたい。
普段の音楽活動の中で、子どもたちは「音が大きくなった」「弱くなっ
た」などと発言する。しかし多くの場合、感じ取ったことを言葉にしてい
るだけで、大きくなった理由や、どんな場面だからそうなったのかという
ことまでは考えていない。本題材で、強弱について感じ取ったことを 2
年生なりに語り合いながら、強弱のもたらす効果や面白さについて考えて
いくことは、音楽の楽しみ方を広げることにつながっていく。
教材曲「トルコ行進曲」は、ドイツの作曲家ベートーベンの作品である。
祝祭劇「アテネの廃墟」のために作曲された付随音楽の中の 1 曲であり、
劇中、トルコ軍が入場してくる場面で演奏される。行列が遠くから近づ
いてきたあと、再び遠ざかっていく様子が、強弱の変化によってみごと
に描かれている。
前打音やスタッカートによる歯切れのよさが特徴となっている旋律と
3小節ごとに強弱による表情の変化が現れる旋律が交互に反復されてい
る。また、拍打ちをしながら鑑賞することで、旋律は異なっても、拍の
流れは一定であることに気付くことができる。
pp から始まり、だんだん強くなってffになり、後半でだんだん弱く
なって pp で終わるという強弱の変化に気を付けて聴くことで、軍隊の行
列が遠くから近づいてきたあと、再び遠ざかっていく様子を想像しなが
ら楽しく聴くことができる。
○ 本題材に関する子どもの実態は、次のとおりである。
①音楽の学習に意欲的に取り組む子がほとんどである。特に、曲に合わ
せて体を動かすことを好み、教師主導の音楽ゲームなどはとても喜んで
活動することができる。ただ、自分で感じたように表現するとなると、
人の様子を見て真似たり、アイデアは出すが恥ずかしがって動かなかっ
たりと、曲の場面を身体で表現することは苦手な子が多い。
②音楽を特徴づけている要素については、「速く(遅く)なる」「大きく
(小さく)なる」など表現することはできるが、
「どんな場面だから大
きくなったのか」など、場面の様子と結び付けて考えた経験はない。
4 指導計画(4 時間)
1 時 「はしの上で」を拍の流れを感じ取って手遊びをしながら楽しく歌う。
2 時 「トルコ行進曲」を拍のまとまりを感じ取りながら聴く。
3 時 「トルコ行進曲」を曲のひみつに気を付けて聴き、感じ取ったことを話
し合う。《本時》
4 時 「かくれんぼ」を歌い、強弱の工夫による表現の工夫を楽しむ。
5 支援の工夫
研究主題「子どもたちの発想を生かした音楽活動の工夫」に迫るため、次
の視点から支援を考えた。
視点1 子どもの考えを可視化する工夫
自分の考えを他者と交流する場では、共通の要素や仕組みに着目して話し
合うことができるように、楽曲の構造や子どもたちの考えを可視化する手立
てを工夫する。楽曲の構成図(赤・青のカード)や図形楽譜、体の動きなど
を基に考えを交流する中で、教師は「どこからそう考えたのか」
「どのような
理由なのか」と問い、それぞれの考えの違いを明らかにし、全体で共有して
いく。このように自分の言葉で考えを述べ合う学習を通して、子どもたちは
曲のよさや面白さと音楽の要素や仕組みとを十分に関係付けて理解していく
ことができると考える。
視点2
楽曲を分析的に聴かせるための工夫
音楽の要素や仕組みがどのような働きをしているのかをとらえやすくする
ため、楽曲の一部を取り上げて提示し、十分に曲と向き合って聴く場面を設
定する。子どもたちは既習の楽曲と比較することや、生活経験と結び付けた
語りを促したりすることで、ねらいとする要素や仕組みの働きや効果につい
て、実感を伴った理解へと誘うことができると考える。
視点3
曲と関わる楽しさを味わわせるための題材構成の工夫
子どもたちは楽曲に出会った際、曲から感じ取ったことは語るものの、そ
れを音楽の要素や仕組みと関係づけながら語ることは難しい。そのような子
どもたちの問いやつまずきを取り上げ、
「曲のひみつをみつけよう」と課題を
設定することで、今の自分の聴き方を見つめさせ、学ぶべき内容の見通しを
もたせていく。
課題を追究する場面では、楽曲を何度も聴く機会を設け、着目した要素や
仕組みを根拠として自分なりの聴き方をたどらせる。子どもたちは主体的に
曲と関わりながら他者と交流する中で、互いの聴き方や感じ方の違い、自分
の聴き方の変容に気付き、曲の味わい方をさらに広げていくことになる。
また、一連の学習の中で、ねらいに応じて鑑賞と表現の活動を関連付ける。
例えば、鑑賞の活動の中に表現活動を効果的に取り入れることによって、鑑
賞する曲の要素や仕組みを理解しながら聴くことができ、仕組みの理解が表
現の工夫につながっていくと考える。
視点4
聴き取ったこと・感じ取ったことの振り返りを促す工夫
聴き取ったことや感じ取ったことを言葉や文章、体の動き、絵などで表し、
自分の聴き方を振り返り、友だちとの共通点や相違点を明らかにしていく。
そのことで、それまでは気付かなかった聴き方に気付き、それぞれの感じ方
のよさや違いを認め合う態度や能力を育んでいく。
6 評価
ア 音楽への関心・
意欲・態度
イ
①2 拍子の拍のまと
まりを感じ取って、
手遊びをしながら歌
う学習に楽しんで取
り組もうとしてい
る。
①2拍子の拍の
まとまりを聴き
取り、2 拍子の
感じをつかんで
手遊びの仕方を
工夫し、どのよ
うに歌うかにつ
②手拍子を打ったり
体を動かしたりし
て、2 拍子の拍のま
とまりや楽曲の気分
を感じ取って聴く学
習に進んで取り組も
うとしている。
音楽表現の
創意工夫
ウ
音楽表現の
技能
①2 拍子の拍の
まとまりを感じ
取って、音楽に
合う手遊びを
し、楽曲の気分
に合った表現で
歌っている。
いて自分の考え
をもっている。 ②場面の様子を
想像しながら、
②関連する楽曲 強弱をつけて、
の鑑賞によって 楽曲の気分に合
気付いた音楽の った表現で歌っ
仕 組 み を 生 か ている。
し、どのように
③音楽を聴いて感じ 表現するかにつ
たことを、自分の表 いて自分の考え
現に生かそうとして をもっている。
いる。
エ
鑑賞の能力
①拍子の感じや
強弱の変化を感
じ取って、音楽に
合わせて体を動
かしながら、楽曲
の楽しさや演奏
のよさに気付い
て聴いている。
②音楽を形づく
っている要素の
特徴、それらがも
たらす効果を感
じ取りながら、場
面を想像するな
どして楽しく聴
いている。
7
本時案(3/4)
①
主
②
準備物
旋律の変化とともに強弱も変化することに気付きながら、場面のようすを思
い浮かべて聴くことができる。
眼
・ワークシート
・鑑賞曲
・旋律の図形楽譜・赤青カード(楽曲の構成図用)
・プロジェクター・映像
③
過
学習過程
学 習 活 動 ・ 内 容
○教師の発問や指示・予想される児童の
程
1 前時の学習を振り返る。 ○「トルコ行進曲」を曲に合わせ
つ
か
む
○教師の支援
反応
○原曲を通して聴かせ、曲の感じ
てその場で足踏みをしましょう。 に合わせてその場で足踏みをす
○曲を聴いて、どんなことに気付
るように促す。
きましたか。
○曲を聴いた気付きを発表させ
・リズムがありました。
ることで、「曲のひみつをみつけ
・行進しているみたいでした。
る」という本時の課題を設定す
・音が大きくなったり小さくなっ
る。
たりしました。
\
曲のひみつをみつけて、ようすをかんじとろう。
か
わ
る
2 「はじめのせんりつ」 ○図形楽譜に指を置いて、曲に合
うように動かしてみましょう。
と「もう 1 つのせんり
つ」を聴いて、違いに ・どうやって動かすんだろう。
・隣の人と見比べてみよう。
気付く。
○曲に合わせて、ワークシートの
・○さんのやり方は、曲にとって
を口ずさむように促し、主な旋律
も合っているな。
3 楽曲全体を聞き、構 ○「はじめのせんりつ」のときは
左を向いて足踏み、「もう一つ
成に気付く。
せんりつ」のときは右を向いて
図形楽譜をなぞり、視覚的に旋律
の違いに気付くようにする。
○図形楽譜をなぞりながら、旋律
に親しむようにする。
○旋律の変わり目を意識させる
ために、足踏みの向きを変えるよ
うに指示を出す。
足踏みをしましょう。
○旋律が変わったところで、どち
○赤と青が表裏になっているカ
らの旋律かカードを置きまし
ードをもたせ、「はじめのせんり
ょう。
つ」のときは赤、「もう 1 つの
・今、旋律がかわったよ。
せんりつ」のときは青のカードを
・赤青赤青・・・かわりばんこに
曲想を感じながら置かせる。
なっているよ。
○「くりかえし」っていいなあと
思うことはないですか。
・天気が晴ればかりだとつまらな
いから・・・
4 2つの映像を見て、 ○どちらの行進が曲に合ってい
ますか。
考えたことを話し合う。
・最初の行進だと、ずっと同じ大
きさで聞こえるよ。
・最後に小さくなるのは、きっと遠
くに行っちゃうってことだよ。
○曲のひみつ「くりかえし」に気
付き、身近な生活場面での「くり
かえし」のよさを語り合うように
する。
○撮影者の視点が異なる2つの
映像を見比べることで、場面の変
化と強弱の変化を、視覚的にも結
びつけて感じ取らせる。
\
振
5 今日の学習の感想を ○お家に人にこの曲のひみつを教
えましょう。
書く。
○伝える相手を決めて、この曲の
よさや面白さなどを手紙に書く
よう促す。
り
返
る
8
評
価
☆「曲のひみつ」と場面の様子を結び付けて考えることで、くり返しや強弱による面白さや
効果が理解できる。