領域名 鑑賞 提案者 熊本市 熊本大学教育学部附属小学校 村上 正祐 授業内容 つくりたいもののイメージを広げる鑑賞活動 1 提案理由 子どもたちが意欲的に図画工作の学習に取り組むためには、まず表現や鑑賞の楽しさを感 じ、つくりだすよろこびを味わうことが必要である。しかし、単に描いたりつくったり作品 を見たりするだけでは、その楽しさを充分感じることはむずかしい。そこに教師の手だてが 必要になってくる。表現活動を意欲的にさせるには、導入段階で「おもしろそうだ。やって みたいなあ。 」と感じさせることだ。自分なりに表現するイメージをもたせ自分にもやれそ うだと思わせることが大切である。子どもたちは、表現したいもののイメージをもち、それ が広がる時に意欲的に表現活動に取り組もうとするからである。 そのためには、鑑賞活動を工夫することが大切だと考えた。鑑賞活動で、形や色などの面 白さに気づかせたり、見方や感じ方を広げさせたりすることで、子どもたちのイメージは広 がっていく。そこに子どもたちは、鑑賞や表現活動の楽しさを感じ、意欲的に取り組むこと ができるのではないかと考え、授業の実践を試みた。 2 実践内容 (1)実践事例1「ちびっこロダンになろう」 立体の鑑賞から興味・関心をもたせる 私たちの身のまわりには,オブジェや記念像などの立体の芸術作品が多く見られる。しか し,子どもたちは,そうした立体作品をじっくり見た経験がほとんどなく、関心を持つこと はまれである。そこで,立体の導入としてロダンの「考える人」を取り上げた。 「ロダンの 作品には,作者の気持ちを体の動きで表すという大きな特徴がある。 本実践では,作品の鑑賞から感じ取った「ポーズあそび」 「気持ちを動作に表す活動」を 取り入れながら鑑賞を行った。 授業の実際 授業では、実物を見せることができない。下のような立体をぐるりと回りながら見ている ような映像を使って鑑賞させた。 右斜めから見た画像 右横から見た画像 左後ろから見た画像 これを使えば、人数が多くても同じ方向から立体を見せたり、部分を拡大して見せたりす ることができる。体を動かしたりポーズをとったりしながら、気持ちを考えていくことは低 学年の子どもたちでも分かりやすい。本授業では、鑑賞の方法として作品のポーズのまね(ま ねっこあそび)や気持ちを表すポーズをつくる活動を取り入れた。 気持ちはポーズで表せることを知っても粘土を使ってすぐ表現できるわけではない。そこ で、モデリングワイヤー(自由にポーズを変えられるワイヤーを使った人形)で気持ちを表 すポーズをつくらせた後、粘土表現に発展させた。自分が一番表したい気持ちをはっきりさ せて,粘土での表現活動に入った。子どもたちは,粘土の人形を自分に見立ててポーズをい ろいろ変えたりして夢中でつくっていた。 モデリングワイヤー お互いに見せ合う (2)実践事例2「ふしぎなラッパ」 いろんな形のラッパ・笛の鑑賞からイメージを広げる 子どもたちの発想をいかしたラッパづくりを楽し ませたい。子どもたちのもつラッパのイメージを広 げさせるために、Web 上のコンテンツから集めた画 像を利用して鑑賞を行った。 鑑賞する視点をもたせ、 たくさんの画像を見せることでイメージを広げさせ ることをねらって実践した。 授業の実際 ホルンや雅楽器、海外の吹く楽器などを3点取り 上げた。これらの楽器の映像をプロジェクターで映し て、形の面白さに目を向けさせながら、子どもたち全 いっぱい、出てきたぞ コンピュータの楽器の画像 員で鑑賞させた。この後、Web 上から集めたおよそ70点の 楽器の画像を入力したコンピュータを使って鑑賞させた。子 どもたちが興味を持った画像をクリックすると、その映像が 拡大されるようになっている。コンピュータをインタラクテ ィブ(双方向的)に使う方法は、子どもたちを意欲的に鑑賞 させることができて有効であった。 子どもたちは、自分の興味のある映像を見ながら、いろん な形や特徴ある楽器を楽しみながら見ることができた。班ご とにコンピュータを使って楽しく鑑賞しながら、イメージを 広げアイデア図を描いていくことができた。 この楽器おもしろいぞ 3 まとめと今後の課題 実践1の鑑賞活動では、題材への興味関心をもたせたり、造形的な要素に気づかせて、 「ポ ーズ遊び」などを取り入れて気持ちをポーズで表すイメージをもたせたりすることができた。 また、実践2では、ラッパの形の鑑賞からいろいろなラッパの画像をたくさん見せることで、 つくりたいもののイメージを広げさせることができた。 しかし、鑑賞はただ見せればよいというものではない。形や色など造形要素に目を向けさ せたり、イメージを広げさせたりする鑑賞には画像の見せ方にしてももっと開発の余地があ る。それらの方法を実践し、整理していく必要がある。そのことが子どもたちの意欲的な表 現と鑑賞活動につながっていくと考えている。
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