制度 □確定給付 ■厚年基金 □適格年金 □確定拠出 □退職金 ■その他 内容 □年金財政 □事務サポート □法改正 □PBO ■その他 平成 24 年 3 月 12 日 第一生命 年 金 通 信 「数理室だより」68 号 企業年金数理室 年金用語解説・・・在職老齢年金制度 1.はじめに 以下、本稿では簡単のため「賃金」と表記しま 政府・与党による社会保障・税一体改革の年金 分野において、「在職老齢年金制度」の仕組みの 見直しが検討されています。 す。 ●基本月額 加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部 在職老齢年金制度とは、簡単にいえば、働きな 分)の月額を意味します。 がら年金を受け取ろうとする場合に、給料や年金 以下、本稿では簡単のため「年金月額」と表記 の額の大きさによって、受け取れる年金額が調整 します。 される制度のことです。 今回の数理室だよりでは、この在職老齢年金制 度について、その仕組みや歴史をはじめ、社会保 障・税一体改革における見直しの検討内容につい て解説したいと思います。 (1)60 歳台前半の在職老齢年金の仕組み ①賃金と年金月額の合計額が 28 万円を超える場 合、賃金の増加 2 に対し、年金 1 を停止 ②賃金が 46 万円を超える場合、賃金が増加した なお、厚生年金基金制度と在職老齢年金制度の 関係については、本稿の最後にご紹介します。 分だけ年金を停止 言葉の説明だけでは非常に分かりづらいです が、グラフにしてみるとイメージが沸きやすくな 2.在職老齢年金制度の仕組み .. 在職老齢年金は大きく「60 歳台前半(60 歳~ .. 64 歳)の在職老齢年金」と「60 歳台後半(65 歳 ります。 年金月額が 10 万円の人の支給停止グラフ 賃金+年金月額 ~69 歳)の在職老齢年金」の 2 つの仕組みがあり ます。 まずはそれぞれの仕組みについて解説したい 28 万円 と思いますが、その前に解説に必要な用語を 2 つ ご紹介します。 支給停止反映後 ●総報酬月額相当額 「その月の賃金(標準報酬月額)」と「直近 1 年間の賞与(標準賞与額)の合計を 12 ヶ月で 除した額」の合計額を意味します。 - 1 - 10 万円 支給停止反映前 18 万円 38 万円 賃金 例えば、年金月額が 10 万円の人は上図のよう な支給停止グラフとなります。 3.在職老齢年金制度の歴史と今後 老齢厚生年金はもともと、在職中は年金を支給 賃金が 18 万円に達すると一部支給停止となり、 しないことが原則(退職が支給要件のひとつ)と さらに 38 万円に達すると停止額が(38 万円-18 なっていましたが、高齢者は低賃金の場合が多く、 万円)÷2=10 万円となり、年金月額と同額にな 賃金だけでは生活が困難であったため、昭和 40 るため、全額停止となります。 年に 65 歳以上の在職者を対象に在職老齢年金制 度が創設され、昭和 44 年には対象が 60 歳台前半 (2)60 歳台後半の在職老齢年金の仕組み にも拡大されました。 ・賃金と年金月額の合計額が 46 万円を超える場 それ以降、高齢者の就労意欲を阻害しない観点 合、賃金の増加 2 に対し、年金 1 を停止 と現役世代の負担に配慮する観点の両者のバラ 同じように年金月額が 10 万円の人をグラフに ンスをとりながら、随時見直しが図られ、現在の 在職老齢年金制度に至っています。 してみます。 年金月額が 10 万円の人の支給停止グラフ 冒頭にも触れましたが、今年 2 月 17 日に閣議 決定された「社会保障・税一体改革大綱」(以下 賃金+年金月額 「大綱」)において、現行年金制度の改善検討項 目のひとつに、在職老齢年金の見直しがあげられ 46 万円 ています。 具体的には、60 歳台前半の仕組みについて、高 支給停止反映後 支給停止反映前 10 万円 齢者の就労意欲を抑制しているのではないかと の指摘を受け、調整を行う限度額を引き上げる見 直しを検討することになっています。 大綱では「就労抑制効果についてより慎重に分 36 万円 56 万円 賃金 析を進めながら、引き続き検討する」とされてお り、今後の議論の行方が注目されます。 賃金が 36 万円に達すると一部支給停止となり、 さらに 56 万円に達すると停止額が(56 万円-36 4.厚生年金基金と在職老齢年金の関係 万円)÷2=10 万円となり、全額停止となります。 最後に、厚生年金基金(以下「基金」)に加入 60 歳台後半の仕組みは、賃金と年金月額の合計 していた期間がある方の在職老齢年金について が 46 万円を超えるまで、全額支給されるため、 60 歳台前半の仕組みよりは支給停止基準がゆる 補足します。 基金の加入期間がある場合は、基金に加入しな かったと仮定して計算した老齢厚生年金の年金 く設定されていることがわかります。 また、平成 16 年の年金法改正により、平成 19 年 4 月から 70 歳以上の在職者は厚生年金保険の 額をもとに年金月額を算出します。 支給停止される場合は、まず国から支給される 被保険者ではありません(保険料負担がない)が、 老齢厚生年金が支給停止され、支給停止額が国か 60 歳台後半の在職老齢年金制度と同じ取り扱い ら支給される老齢厚生年金を超える場合には、基 で支給停止が行われています。 金から支給される年金が停止の対象となります。 なお、支給停止額の基準となっている 28 万円 や 46 万円という金額については、賃金や物価の 変動に応じて毎年見直されることになっていま なお、基金からの年金が支給停止となるか否か は各基金の規約により定められています。 以上 (企業年金数理室 深津 裕嗣) す。 - 2 - 「数理室だより」68 号 別紙 在職老齢年金制度の仕組みに関するまとめ(本紙の補足) ◆60歳台前半の在職老齢年金制度の仕組み◆ ・総報酬月額相当額(以下「賃金」)と基本月額(以下「年金月額」)の合計額が 28 万円を超える場合は、 以下のとおり支給停止されます。 年金月額 28 万円以下 28 万円超 賃金 46 万円以下 46 万円超 46 万円以下 46 万円超 支給停止額(月額ベース)の計算式 (賃金+年金月額-28 万円)÷2 (46 万円+年金月額-28 万円)÷2+(賃金-46 万円) 賃金÷2 46 万円÷2+(賃金-46 万円) 年金月額が 10 万円の人の支給停止グラフ 年金月額が 20 万円の人の支給停止グラフ 賃金+年金月額 賃金+年金月額 28 万円 28 万円 20 万円 支給停止反映後 支給停止反映後 支給停止反映前 支給停止反映前 10 万円 18 万円 38 万円 8 万円 賃金 46 万円 47 万円 賃金 ・賃金が 18 万円以下の場合、全額支給 ・賃金が 8 万円以下の場合、全額支給 ・賃金が 18 万円超 38 万円以下の場合、賃金の増加に対して ・賃金が 8 万円超 46 万円以下の場合、賃金の増加に対して 1/2 の割合で停止 1/2 の割合で停止 ・賃金が 38 万円の場合は停止額が 10 万円となり全額停止 ・賃金が 46 万円の場合、停止額は 19 万円 ・賃金が 46 万円を超えると、賃金の増加分がそのまま停止さ れるため、賃金が 47 万円を超えると全額停止 ◆60歳台後半の在職老齢年金制度の仕組み◆ ・賃金と年金月額の合計額が 46 万円を超える場合は、以下のとおり支給停止されます。 ・70 歳以上で厚生年金適用事業所に勤務している場合も、同様の仕組みにより支給停止されます。 支給停止額(月額ベース)の計算式 (賃金+年金月額-46 万円)÷2 ◆支給停止基準額の算出◆ ・支給停止基準額は法律上、以下のとおり賃金の変動等により自動的に改定される仕組みになっています。 支給停止調整額開始額 (H23 年度は 28 万円) 支給停止調整変更額 および支給停止調整額 (H23 年度は 46 万円) 【標準的な年金給付水準を基に設定】 具体的には、28 万円に平成 17 年度以後の各年度の再評価率の改定の基準となる率 をそれぞれ乗じて得た額(四捨五入で 1 万円単位)に改定されます。 【現役男子被保険者の平均標準報酬月額を基に設定】 具体的には、48 万円に平成 17 年度以後の各年度の名目手取賃金変動率をそれぞれ 乗じて得た額(四捨五入で 1 万円単位)に改定されます。 - 3 -
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