戦略経営者に当社が紹介されました。

千
葉 県 市 原 市に本 社 を 構 える
赤 星 工 業 は、 非 鉄 金 属 の 溶
接 加・工のスペシャリスト 集 団 と
して知られる中小企業である。2
代目社長の赤星健二社長は、非鉄
金属に特化した自社の事業内容に
ついてこう紹介する。
「
当初は鉄の加工を手がけていま
したが、需要構造の変化などから、
必要に迫られて非鉄金属を扱うよ
うになりました。現在当社が得意
としているのはアルミニウムから
チタン、ニッケル、ニッケル合金、
タンタル、ジルコニウム、ニオブ
などほとんどが白色や黄色の非鉄
金属です。溶接を主体とするファ
ブリケーター・アッセンブラーと
して、非鉄金属を材料にしたあら
ゆる業種・産業の部品機器類をつ
くるというのがわれわれの存在理
由です」
自らを「町工場のオヤジ」と謙
遜する赤星社長だが、この会社、
ただの町工場ではない。軽金属か
らレアメタルまであらゆる非鉄金
属の溶接・加工に対応できるうえ、
一般部品から医療、宇宙関連装置
まで幅広い販路を持っているので
ある。手のひらに乗る容器から大
型の貯蔵タンク、サイロ、真空容
器まで多種多様なものづくりのノ
けに、その信頼性の高さが重要に
なってくるのです」
人当たり 件超の資格
同社のようなものづくり企業に
あって、品質水準を担保するのは、
「人 材の質の高さ」にほかならな
い。国内の重厚長大型産業がバブ
ル崩壊以降大幅な人員削減を実
施したことで、現在は技能労働者
が不足していると言われているが、
「人の力 」を最 大 限に伸 ばすこと
は、そのまま船に乗せて海外に納
送 す ること が 不 可 能 な 大 型 製 品
ウハウを蓄積しており、陸上で輸
よそ世界シェア 割を獲得するま
にもいち早く取り組んだ結果、お
換膜法」に最適な製造技術の開発
メーカーの工場に納入してきた。
問わず多くの石油プラントや化学
製品の溶接加工を手がけ、国内外
ンク、ブレンダー等数多くの大型
品することもできる。これまでタ
ほか変電設備で使用するアルミ容
産能力増強を果たしている。この
千葉県茂原市に工場を新設して生
ジアで伸びていた2008年には
でに至った。最終製品の需要がア
生産設備、樹脂ペレットのブレン
器類、リチウムイオン電池用銅箔
主力製品は世界シェア 割
感を示しているという。
電力の抑制と材料費節減のため、
が要求される③電気 分 解に使う
は比較的多く、とくにコスト節減
らない②数量が工業製品用として
などの非鉄金属を使わなければな
要求されるためチタンやニッケル
産する重要な装置で、①耐食性が
かせない化学工業の基礎原料を生
繊維、塩化ビニル樹脂製品には欠
と呼ばれる装置。アルカリや化学
セイソー ダを取り 出 す「電 解 槽 」
「
たとえば変電設備のアルミ容器
は、溶接部分に針の穴ほどの隙間
いか」と推察する。
「溶 接の信 頼 性 が高いからではな
増えているというが、赤星社長は
なメンテナンス業務の依頼が最近
くの実績を重ねてきた。このよう
補修・修繕や緊急時の対応で数多
機器の救急救命隊」として、製品の
社員を派遣する「プラント・設備
とつだ。電話一本ですぐに工場に
さらにメンテナンスや修理に対
する素早い対応も同社の特徴のひ
ダーシステムなどでも大きな存在
そうした製品群の中で、世界的
にも高シェアを獲得しているのが、
軽 量 化 と高い製 作 精 度 が要 求 さ
が空いてしまうだけで山手線が止
食塩を電気分解して塩素ガスとカ
れ る ── な ど 非 鉄 金 属 の な か で
げ ら れ る は ず も な く、
「一人 ひ と
い。その教育は一朝一夕に成し遂
現在主流となっている「イオン交
れる製品だ。 年以 上にわたり 電 解
同社は
槽を手がけてきた古参企業として
も高度な溶接加工技術が求めら
な新型プラズマ溶接技術の開発に
には大阪大学などと共同で画期的
究開発の機会も生み、2009年
生活 を支 える不 可 欠 な 技 術 な だ
ないところはありません。人々の
まってしまう可能性があります。
の5ミリ程度から ミリまで大幅
成功。溶接加工可能な板厚を既存
業プラントでその技術を用いてい
溶接は古い技術ですが、日本の産
り 新 卒 か ら じっく り と 育 て る 」
(赤星社 長 )ことが何より重要に
なるのである。
そのため同社の溶接技能者は全
員が正社員で、平均年齢 歳、平
年と年齢構成
に引き上げたことにより、変電所
や化学プラント向けのアルミ製タ
のバランスや定着率も良好。定年
ている。
ンクなどでの需要開拓が期待され
退 職 後 の 従 業 員 も「シ ニ ア ア ド
約 年にわたり黒 字 決 算を続
け、堅実経営を継続してきた赤星
・
バイザー」として活躍できる場が
工業。その優れた技術力や社員教
均勤続年数
用意されており、
「親子 代体制」
環境を積極的に整備してきた。
さんに 努 めること ができる 労 働
(赤 星社 長 )で人間 性・技 能の 研
した。今後の抱負について赤星社
パニー大賞」の優秀企業賞を受賞
価され、昨年「第 回グッドカン
育に対する真しな姿勢が高く評
最新鋭の機械の数ではなく、技能
は企業の原点である』というプラ
「当社は働く人が主体のプリミテ
ィブ な 伝 統 産 業 で す が、
『町工場
長はこう話す。
者の技能の積み重ねで成り立って
が技術を競いましたが、よりよい
イドを持ってやっています。冬季
せん」
らないという点は、企業もアスリ
いるからです。したがって機械装
この方針に従い同社は、技能者
の資格取得・研修のための費用は
ートと同じではないでしょうか。
オ リ ン ピッ ク で 世 界 中 の 競 技 者
惜しみなく投入している。その結
今後も他社とは『一味、半歩』先
した。また高度な技術を身に着け
います」 社会の役に立ち続けたいと思って
信頼される『時代の子』となり、
成績をめざして進歩しなければな
果、従業員の資格取得総数は80
を追求することで、お客さまから
件超と驚異的な数に達
た技 能 者の存 在は産 学 連 携の研
すると
0件を突破し、 人当たりで換算
備 率 とい う 指 標 も 意 味 を 成 し ま
はあまり関係ありません。当社は
「
投 資 促 進 税 制 で 最 新 設 備 の一
括償却が認められましたが、それ
30
● 赤星工業
2008年から稼働している茂原工場
2
15
47
を社是としてきた同社では、優れ
た技術をいかんなく発揮している
技能者が数多く存在する。赤星社
長はいう。
「
黄綬褒章を授与されたり、千葉
県の『現代の名工』に初の 代で
選ばれたりと当社の技能者の技術
レベルは高い。彼らは本当に誇る
べきテクニシャンで、いくら最新
鋭の機械をとりそろえたとしても
かなわないでしょう」
顧 客の信 頼 を 支 える技 術 力 を
担保するためには、社員教育を徹
底して行うことが一番の近道。ひ
とくくりに非鉄金属といっても溶
融温度や高張力、耐力などそれぞ
れの特性は多種多様で、それらす
べての知識と溶接の仕方について
精通しなければ一人前とはいえな
2
35
3
「第47回グッドカンパニー大賞」の優秀企業賞を受賞した赤星工業。
非鉄金属の溶接加工技術が高く評価されたものだが、
そのベースには「人材教育に資源を惜しまない」経営があった ──。
COMPANY DATA
32
THE STRATEGIC MANAGER 2014.3
2014.3
33 THE STRATEGIC MANAGER
13
8
赤星健二社長
アルミ製サイロブレンダー
5
1
30
●設 立 1946 年 3月
●所在地 千葉県市原市八幡海岸通5番地4
●TEL 0436-41-3366
●売上高 約20億円
●社員数 110 名
●URL http://www.akahoshi.co.jp/
プラズマ溶接の新技術を開発
1
40
8
人材育成
経営 Scramble
徹底した人材教育で品質高める
非鉄金属溶接の技能者集団