∼ 給与等とみなされる外注費 ∼ 現場で起きた税務調査事例に学ぶ自社

現場で起きた税務調査事例に学ぶ自社の対処法
第 5 回
∼ 給与等とみなされる外注費 ∼
今回は、外注費として経理した支払いが、給与等に該当するとされた事例をご紹介します。
1. 概要
X 社は、電気工事の設計施工業を営んでおり、X 社の業務に従事した者に対して支払った金
銭について外注費として処理をしていた。この外注費は、業務に従事した者に対して、X 社が
指定した各仕事先において、X 社の代表者または現場代理人の指示に従って、基本的に8時か
ら17時まで、電気配線工事等の作業に従事してもらい、1日あたりの「基本給」に従事日数
を乗じた金額に、残業給、早遅刻分の減額を考慮した金額を支払ったものである。また各現場
で使用する材料や、工具、作業衣等は X 社が支給していた。
2. 判示内容
当該外注費は、請負契約に基づき支出した外注費にあたらず、給与等に該当するものである。
【理由】
① 事業所得・給与所得の定義
外注費とする場合、業務従事者側では事業所得となるが、本来事業所得は、自己の計
算と危険において独立して営まれ、営利性および有償性を有し、かつ反復継続して遂行
する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずるものである。また請負契
約に基づくものであるから、ある仕事の完成を約して労務に従事していなければならな
い。対して給与は、雇用契約に基づき、使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価
として使用者から受ける給付をいう。
② 今ケースの場合
業務従事者は、X 社の代表者や現場管理人の指示のもと、時間的、場所的な制限の中
で業務に従事しており、自己の現場で使用する材料や工具等を業務従事者自身が用意す
ることもない。さらに X 社では作業衣の購入費用を福利厚生費として処理しているこ
とや、従事者の健康診断費用を負担するなど総合的に考慮すると、その労務の実態は、
X 社の指揮監督下に労務に従事しており、雇用契約に基づいて勤務する従業員と何ら変
わらないといえる。したがって、当該外注費として処理した支出は給与等に該当する。
外注費として処理していたものが、給与所得等と指摘された場合、課税仕入れとはならず、
消費税の負担額が増額するに加え、源泉所得税の問題も生じてしまいます。
外注費として認められるためには、業務について仕事の完成を約して従事してもらい、万が一
仕事が完成しなかった場合には、報酬を減額等するなど、業務従事者の責任を明確にしたうえ、
請負契約を交わし、請求書のやりとりを行うよう心がけるべきです。また、業務従事者には、
必ず事業所得の確定申告をするよう指導しましょう。
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