アンケート回収率向上方策 に関する実験研究

アンケート回収率向上方策
に関する実験研究
∼MM参加率向上方策のための基礎的検討∼
東京工業大学大学院理工学研究科
萩原 剛
太田裕之
藤井 聡
背景
モビリティ・マネジメント(MM)とは、
自主的な交通行動変容を促すための
コミュニケーション施策の総称
マス・コミュニケーション
(テレビ・ポスター・広報誌)
アンケート
に着目
ワークショップ
比較的安価に・多くの人に接触できる
接触者に占める参加者の割合
(アンケート回収率)が低い
既往研究より、
「丁重な調査依頼」「事前報酬の供与」等の
「工夫」によって回収率向上は可能
本研究の目的
MMにおいて
重要なコミュニケーション・ツールである
アンケート調査の
回収率向上に影響を与える要因を
3種類の調査より
実証的に検証する。
実験方法
„
同じ調査票の調査票に、
回収率向上のための工夫を加えて、
回収率の差異を検証する
„
„
„
„
„
„
„
配布方法
報酬
返信用封筒
事前ハガキ
リマインダハガキ
事前電話
依頼状への公印
静岡県浜松市・愛知県豊橋市(1017世帯)
カラー4色刷・12ページ
「地域への意識」「交通行動」等を調査
実験1
18条件を割り付け、回収率・コストを比較
配布方法
(3条件)
返信用封筒
(2条件)
報酬
(3条件)
ポスティング
切手貼付
無報酬
郵送
配布
訪問留置
回答
(事前報酬)
回収
事後報酬
謝礼送付
受取人払
(事前報酬)
工夫1:配布方法
ポスティング
調査員
郵送
(調査実施者)
訪問留置
調査員
郵便局
配布
方法
コスト
対象者宅
ポスト
対象者宅
ポスト
対象者
対象者
調査員人件費
郵送費
住基台帳手数料
対象者
(ポスティングより高い)
調査員人件費
工夫2:報酬
無報酬
報酬
コスト
事後報酬
事前報酬
アンケート回収後、
回答者に
図書券500円分を供与
アンケート配布時、
全員に
ペン2本(165円)を供与
(なし)
なし
工夫3:返信用封筒
切手貼付
返信用
封筒
コスト
すべての
返信用封筒に
切手を貼り付ける
対象者全員分の
返送郵送費
差出人払
返信された
分だけ
料金を支払う
返送された分の
返送郵送費
実験結果

条件
無報酬
事後報酬 事前報酬
合計
ポスティング
受取人払
11.7%
6.7%
21.7%
13.3%
( 7/60)
( 4/60)
(13/60)
(24/180)
20.0%
15.0%
36.7%
23.9%
(12/60)
( 9/60)
(22/60)
(43/180)
13.3%
26.7%
41.7%
27.2%
( 8/60)
(16/60)
(25/60)
(49/180)
18.3%
20.0%
31.7%
23.3%
(11/60)
(12/60)
(19/60)
(42/180)
16.3%
37.3%
48.0%
34.0%
( 8/49)
(19/51)
(24/50)
(51/150)
28.6%
34.0%
43.8%
35.4%
(14/49)
(17/50)
(21/48)
(52/147)
17.8%
22.6%
36.7%
25.7%

切手貼付
郵送
受取人払
切手貼付
訪問留置
受取人払
切手貼付
合計
(60/338)
(77/341) (124/338)
(261/1017)

実験結果:
「報酬」による差異
40
36.7
回収率(%)
35
20%向上
30
22.6
25
17.8
20
15
5%向上
10
5
0
配布1世帯あたり
追加コスト(円/世帯)
無報酬
事後報酬
事前報酬
0
180.1円
165.0円
事前報酬は回収率向上に効果を持ち、
かつ、事後報酬より安いコストで実施可能
「配布方法」と「返信用封筒」
による差異
平均17%
向上
40
回収率(%)
35
30
25
10%
34
35.4
27.2
23.9
23.3
向上
20
13.3
15
10
平均7%
向上
5
0
配布1世帯あたり
追加コスト(円/世帯)
ポスティング
0 119.4円
郵送
271.7円 369.5円
訪問留置
524.3円 626.7円
「ポスティング」では低い回収率しか期待できないが、
「切手貼付」や「郵送」により回収率向上が見込める
回収率向上には訪問留置がより有効である
(ただし、追加コストは大きい)
実験2
東京都目黒区・愛知県豊橋市(640世帯)
黒赤2色刷・8/12ページ
「環境意識」「環境配慮行動」等を調査
合計8条件を割り付け、回収率・コストを比較
事前ハガキ
(2条件)
事前ハガキなし事前ハガキ
あり
(郵送)配布
回答
報酬あり(事前)
回収
リマインダ
ハガキ
(2条件)
報酬
(2条件)
リマインダハガキなし
報酬なし
謝礼送付
あり
報酬あり(事前)
工夫4:事前ハガキ
なし
事前
ハガキ
事前ハガキを
送付しない
コスト
なし
あり
調査票を
送付する前に
「後日調査票を
送付する」旨の
ハガキを
送付する
対象者全員分のハガキ代
工夫5:リマインダハガキ
なし
事前
ハガキ
コスト
事前ハガキを
送付しない
なし
あり
締切を過ぎても
返答のない人に
返送を依頼する
ハガキを
送付する
締め切りを過ぎても返答のない対象者分の
ハガキ代
「(事前)報酬」の有無による差異
60
回収率(%)
50
19%
49.1
向上
40
30
30.3
20
10
0
報酬
配布1世帯あたり
追加コスト(円/世帯) 165.0円
「事前ハガキ」の有無による差異
60
回収率(%)
50
60
19%
49.1
50
7%
40
36.3
43.1
向上
40
30
30.3
30
20
20
10
10
0
0
報酬
配布1世帯あたり
追加コスト(円/世帯) 165.0円
事前ハガキ
54.7円
「リマインダハガキ」の有無による差異
60
回収率(%)
50
60
19%
49.1
60
50
7%
40
36.3
43.1
向上
40
30
30.3
50
40
30
30
20
20
20
10
10
10
0
0
0
報酬
配布1世帯あたり
追加コスト(円/世帯) 165.0円
事前ハガキ
54.7円
13%
46.3
33.1
リマインダハガキ
42.5円
回収率向上のためには、まず事前報酬の導入を検討し、
その上で、リマインダハガキや事前ハガキを検討することが望ましい
埼玉県内の事業所(382事業所)
黒単色刷・4ページ
従業員の通勤交通を調査
実験3
合計8条件を割り付け、回収率を比較
事前電話
(2条件)
依頼状へ
の公印
(2条件)
事前電話なし 事前ハガキ
あり
(郵送)配布
あり
公印なし
回答
報酬あり(事前)
回収
報酬
(2条件)
報酬なし
謝礼送付
報酬あり(事前)
工夫1:報酬
„
約250円相当の
三色ボールペンを、
のし袋(5円相当)に
入れて送付。
工夫6:事前電話(電話)
„
„
„
„
„
名簿にある代表電話番号に電話
通勤交通の調査を企画しており、県内の事業所に調査
票をお送りする予定です。
通勤の実態や通勤手当についてお聞きすることを検討し
ているが、そのような部署につないでほしい
(担当者に)調査票を送りたいが、
どちら様宛にお送りしたらよいでしょうか?
来週か再来週に、調査票をお送りします。
よろしくお願いいたします。
工夫7:依頼状への「公印」
○○株式会社
○○株式会社
公印 なし
公印 あり
回収率(%)
「(事前)報酬」の有無による差異
80
15%
70
向上
60
66.8
51.6
50
40
30
20
10
0
報酬
回収率(%)
「事前電話」の有無による差異
80
15%
70
向上
60
70
66.8
51.6
50
60
57.5
60.8
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
0
報酬
事前電話
回収率(%)
「依頼状への公印」の有無による差異
80
15%
70
向上
60
70
66.8
60
70
57.5
60.8
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
10
0
0
0
51.6
50
40
30
20
報酬
事前電話
57.1
61.2
公印
事業所を対象とした調査においても、
回収率向上のためには、事前報酬が有効である。
まとめ
„
„
アンケート調査の回収率向上に影響を与える要因(工夫)とそ
のコストを明らかにした
「事後報酬」より「事前報酬」の方が圧倒的に効果的
→例えば,配布形式の中では「訪問」が一番望ましいが,
「訪問だけ」よりは「郵送+事前報酬」の方が効果的.
„
„
その他,「リマインダハガキ」「事前ハガキ」や、
「事前電話」「公印」も効果的.
ただし,そうした「工夫」を組み合わせれば組み合わせるほど,
回収率が上がる...という訳でもない.
→ 効果的なものを,2,3種組み合わせるのがベストか.